地域周産期医療施設の 集約(共同運用)による 安全性の向上

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Presentation transcript:

地域周産期医療施設の 集約(共同運用)による 安全性の向上 泉州広域母子保健センター 産科医療センター 荻田和秀 RGMC Medical Center Rinku General

泉州地域の周産期医療 市立泉佐野病院 市立貝塚病院 周産期医療センター 産科医療センター 新生児医療センター 婦人科医療センター 泉南地区 市立貝塚病院 婦人科医療センター 生殖医療センター 40万人の地域人口 皮膚科 呼吸器内科 消化器内科 免疫内科 精神神経科 なし 2

泉州広域母子センター 2008年度実績 - 1098 130/日 120/日 269 帝王切開 685 48 手術数 98 多胎・早産 時間外産婦人科救急 130/日 120/日 平均外来患者数 269 帝王切開 685 48 手術数 98 多胎・早産 1095 分娩数 貝塚 泉佐野 (悪性腫瘍 64例) 産婦人科医療崩壊前に7自治体が共 同運用して待遇改善 ハイリスク対応周産期施設の存続 医師、助産師の人的資源の再配分・ 流動化の実現 2名当直による1+1以上の安心・安全 効果 医師勤務のon、offが可能となり過 重労働が軽減 1・2・3次救急にも対応可能となり、 単科では対応不可能な症例も受入 可能になった 専攻医の志望者が増加 (前置胎盤 26例) RGMC Medical Center Rinku General

産婦人科医の労働環境 当直回数、呼び出し回数の共同運用前後3ヶ月の比較 共同運用化前 2008.1~3 共同運用化後 2008.4~6 当直回数(回/月) 呼び出し回数(回/月) 産婦人科医の労働環境に関してですが、 1ヶ月における当直回数、一日平均の超勤時間、一ヶ月の呼び出し回数の共同運用前後3ヶ月の比較 共同運用前 共同運用後 当直回数  (回/月は2人当直体制のため。大きく変わっていません 平均超勤時間  (分/日) 約2時間と大きく変わっていませんが 婦人科へ共同運用した常勤医は20分ほど減少、詳しく調べると夜の超勤が短縮しており、分娩による居残りなどが減ったからと思われる 産科へ共同運用した研修医 192 156と30分減少した。これも詳しく見たところ、朝の早出による超勤が減少、当直が2人体制になったため、朝早く来なくてはならない機会が減ったものと思われる 呼び出し回数  (回/月)は約半減しました。 特に婦人科へ共同運用した常勤医に関しては、1/3以下に 産科へ共同運用した常勤医でも半分に減少しました これらのことから、数字で見た医師の労働環境は改善していると思われる RGMC Medical Center Rinku General (藤森, 日本産婦人科学会2009)

地域には受け入れられたか? 費用便益分析による住民への寄与度 基本評価基準 社会的割引率 評価期間 評価年 評価基準 4% 集約後40年 2008年度 便益/費用 基本評価基準 (橋本, 周産期シンポジウム 2010) RGMC Medical Center Rinku General 5

地域には受け入れられたか? 費用便益分析による住民への寄与度 基本シナリオと基本評価基準での結果 37.57億円 27.48億円 1.367 患者の便益+病院追加収益の現在価値 総追加費用の現在価値 費用便益率 (便益/費用) 37.57億円 27.48億円 1.367 (橋本, 周産期シンポジウム 2010) RGMC Medical Center Rinku General

地域別紹介患者(分娩) 泉大津 3施設 23人 岸和田 3施設 48人 泉北 3施設 14人 泉佐野熊取 3施設 100人 地域別紹介患者(分娩)  泉大津 3施設 23人 岸和田 3施設 48人 泉北 3施設 14人 泉佐野熊取 3施設 100人 直接受診 709人 貝塚 2施設 370人 泉南 2施設 17人 他府県 大阪府下 70 78 阪南 3施設 36人 未受診 31 RGMC Medical Center Rinku General 平成20年4月から 1500分娩中800人

夜間、休日の周産期救急医療体制 (件/月) 夜間、休日の周産期救急医療体制 (件/月) 共同運用前 貝塚 救急、時間外患者数は共同運用化前後で、一ヶ月で約10件程度増加した。 その増加には救急車による搬送件数が約8件とその多くを占めている。これは、大阪府全体で産科救急の医療体制が萎縮しているところで、当病院で、救急体制を充実させたためと考えられる。その結果、緊急の手術件数も、帝王切開は変わらないが、婦人科疾患や子宮外妊娠などの緊急手術の件数が急激に増加した。 3.2 4.2 1.6 2.4 0.6 0.4 0.2 救急隊による搬送件数 その他の緊急手術 母体搬送の件数 帝王切開術 RGMC Medical Center Rinku General (久松, 日本救急医学会シンポジウム 2009)

周産期合併症の変化 (件/月) *産科合併症:早産、常位胎盤早期剥離、 妊娠性高血圧症、前置胎盤 **早産:妊娠35週未満の出産 周産期合併症の変化  (件/月) 産科合併症は、増加し、早産率も増加した。 *産科合併症:早産、常位胎盤早期剥離、        妊娠性高血圧症、前置胎盤 **早産:妊娠35週未満の出産 RGMC Medical Center Rinku General (橋本, 周産期シンポジウム 2010)

母体搬送・NICU入院件数の変化 (件/月) 産科合併症は、増加し、早産率も増加した。 RGMC Medical Center Rinku General (橋本, 周産期シンポジウム 2010)

受け入れた母体救命目的の搬送 産科的出血 21件 重症妊娠高血圧症類縁疾患 6件 外傷 2件 意識障害 2件 薬剤性ショックなど 2件 産科的出血 21件 重症妊娠高血圧症類縁疾患 6件 外傷 2件 意識障害 2件 薬剤性ショックなど 2件 RGMC Medical Center Rinku General

全救急症例の内訳 産婦人科 救命センター Walk in 救急隊 ショック 意識障害 外傷 60.0% 39.6% 0.4% ショック 意識障害 外傷 全救急症例の内訳を改めてまとめますとwalk in60% 救急隊ないしOGCSからの要請による救急搬送が39.6%ありました。 救命センターへは、主なものとして、患者がショック状態である場合、意識障害がある場合、外傷がある場合を 救命センターに依頼しており、2008年度では全症例の0.4%をお願いいたしました。 患者 産科医 救命医 産婦人科 救命センター RGMC Medical Center Rinku General 12

症例1 もやもや病による脳室内出血 35才 G2P1 30w0d 買い物中に頭痛と嘔気出現し、救急要請。当院救急外来に搬送されるもそこで意識消失。救命センターへ収容となる。 もやもや病による脳室内出血 RGMC Medical Center Rinku General

経過 GCS:125 ,vitalは安定 CTG; reassuring FHR pattern EFBW1733g(+0.9SD), BPS8点 ⇒以降CTGフルモニター 同日、左脳室内ドレナージ施行 胎児肺成熟のためのステロイド投与開始 周産期管理を含めた治療が必要であると判断、第4病日にヘリコプターにて大学病院へ転院。 RGMC Medical Center Rinku General

症例2 36才 G1P0 数日前からの呼吸苦は放置していたが、突如増強し意識消失。家人が救急搬送依頼、救命救急センターで受け入れ決定した。 数日前からの呼吸苦は放置していたが、突如増強し意識消失。家人が救急搬送依頼、救命救急センターで受け入れ決定した。  到着時酸素10l投与化でもPa02 85mmHg pH=6.9のアシドーシスを呈しており、緊急挿管された。 腹部が膨満しており、妊娠の可否を判定するため産科当直医対診となった。超音波で推定2500gの胎児確認す。      RGMC Medical Center Rinku General

経過 心エコーでEF35%及び全周性にsevere-hypokinesisの所見。レントゲン上も著明な肺水腫と肺鬱血像を認めた。 未管理妊婦のPPCMと判断し、救命センターで帝王切開施行。 2676g女児 Ap2/6で娩出した。 その後母体は第3病日にCCUへ転棟。 利尿剤・βブロッカーなどの投与をうけ第10病日までに心機能は改善し一般病棟へ転棟。 第21病日退院となった。 RGMC Medical Center Rinku General

症例3 17才 G1P0 妊娠38週6日 既往歴;特記すべき事なし 高速道路走行中の自損事故による車外放出・多発外傷のため救急搬送依頼、救命救急センターで受け入れ決定した。  到着時GCS125 他のvitalは安定。  母子手帳を所持しており、同乗者の証言から妊娠38週6日と推定。 超音波上推定体重2800g、largest pocket 3.5cm、子宮口は閉鎖で性器出血はなく子宮もsoftであったが、不規則な子宮収縮を認めた。 RGMC Medical Center Rinku General

経過 CTにて右側頭骨の陥没骨折と硬膜下血腫が認められた。瞳孔の左右差が増大し、意識レベルも更に下がった。また、CTG上 late decelerationを認めたため開頭減圧+帝王切開を施行することとした。 当科、脳外科が執刀し、救命センターの医師が麻酔及び全身管理を担当した。 2758g女児 Ap1/2で娩出。 その後母体は意識を徐々に回復。 リハビリ目的で第25病日転院となった。 RGMC Medical Center Rinku General

シナジー効果 ランチェスターの法則通りの効果 集約化による産婦人科 診療の拡大 一次・二次救急大幅増 総手術件数・悪性腫瘍取り扱いの増加 三次救急への対応が可能 実力がつく研修病院として阪大関連病院の中で専攻医にトップの人気 シナジー効果 ランチェスターの法則通りの効果 RGMC Medical Center Rinku General

結語 小規模な地域病院2つを共同運用し集中と集約を行うことで、中規模基幹病院としての機能を獲得できた。 集約化(共同運用)は都市部の周産期医療を維持するだけではなく、重症例や合併症妊婦、悪性腫瘍、生殖医療などの取り組みを可能にし、地域産婦人科医療の機能・安全性向上に寄与しうる。 RGMC Medical Center Rinku General