伝染病の予防: 敵を知り、己を知らば・・・ 鹿児島玉龍高校 出前講義 2012年8月24日(金) 14:30~16:00 伝染病の予防: 敵を知り、己を知らば・・・ 病原体の種類: ウイルス、リケッチア、細菌、真菌、寄生虫 感染の三大要因:病原巣➜感染源➜伝播経路➜感受性者 伝染病とは? ヒトの伝染病: 痘瘡(天然痘、1980年根絶)、コレラ、・・・ 伝染病予防法( 1897) ➜感染症法(1999) 動物の伝染病: 牛疫(2011年根絶)、口蹄疫、・・・ 獣疫予防法(1897) ➜家畜伝染病予防法(1951) 人畜共通感染症: ペスト、狂犬病、インフルエンザ、・・・ 新興感染症: エボラ出血熱(1976)、エイズ(1991)、ウエストナイル熱(1999)、重症急性呼吸器症候群(SARS、2003)、新型インフルエンザ(2009)
ペスト菌は、イェルサンと北里柴三郎が1894年に発見した。 ペスト:中世の暗黒時代 ペスト菌は、イェルサンと北里柴三郎が1894年に発見した。 1347年 1348年中頃 1349年初期 1349年後半 1950年 1351年 1351年以後 わずかな発生 モンゴル地方の風土病が、シルクロードの交易の発達に伴って欧州に広がった。 全身に出血が起き、しばらくすると黒ずんで、その後死亡することから「黒死病」と呼ばれた。ヨーロッパ人口の1/3から2/3、約2,000万人から3,000万人が死亡したとされている。 英国の大ペスト(1664–1666) ロンドンで毎日6,000人が死亡
ペスト流行の仕組み ペストの予防・制御 1.検疫(1377年開始): 貿易船の40日間沖合停泊(ペストに罹った患者やネズミがいる船を着岸させない)➜病原体が不明でも対策は可能! 2.ノミやネズミの駆除 3.患者の隔離 全身に菌が回り、患者が咳をする度に周囲にペスト菌をまき散らす(肺ペスト)。これによって爆発的流行。 現在はペスト菌を殺滅できる抗生物質があるので、早期に治療すれば死ぬことはない。 ペストに罹ったネズミを吸血したノミがペスト菌をヒトに運ぶとリンパ節が腫れる(腺ペスト)。 自然界の保有動物
黄熱流行の仕組みと現状 吸血 ヒト(都市) サル(森) 南米とアフリカからの症例数の推移 原因究明に当った野口英世博士が犠牲 ネッタイシマカ ● 野生動物の間で循環するウイルスを制御することは困難 ● 都市部での蚊の駆除 吸血 サル(森) ヒト(都市) ネッタイシマカ ● 致命率が30%程度もある ● 渡航前にワクチン接種 ● 流行地では発生中の森に入らない ● 防虫剤の利用 南米とアフリカからの症例数の推移 2004年 患者数 死亡数 致命率( % ) アフリカ 124 13 11 南米 111 52 47 合計 235 6 5 28
エキノコックス症 成虫 卵 幼虫 捕食 汚染された山菜や沢水などを直接口にしたり、卵が付着した手指を介して感染する。腸内で卵から孵化した幼虫は数年から10数年で肝臓など様々な臓器へ移行して特有の病巣を形成する。北海道では毎年 10数名の患者が見つかっている。 日本ザル、ワオキツネザル、オランウータン等が死亡 1992年 釧路動物園 1994年 旭川動物園 キタキツネ等の野生動物には餌を与えない! 「餌付け」した後始末は?
狂犬病流行の仕組みと現状 野生保有動物 キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ 伴侶動物 イヌ、ネコ ヒト 犬の予防注射でヒトは防げる ● 発症したら100%死亡、治療法なし ● 世界で年間 5万人以上が死亡 野生保有動物 キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ 伴侶動物 イヌ、ネコ ● 全ての哺乳動物が感染 ● 唾液中のウイルスが咬傷や粘膜・傷口から侵入 ヒト 犬の予防注射でヒトは防げる 清浄国 日本、台湾、 オーストラリア、ニュージーランド、英国、アイルランド、スウェーデン、ノルウェー、アイスランド、ハワイ、グアム、フィジー アジアでは野生保有動物問題まで辿り着いていない
日本における狂犬病発生の経過 イヌ ヒト 1922年 家畜伝染病予防法ワクチン接種の義務化 1950年 狂犬病予防法 1897 1907 1917 1927 1937 1947 1957 1967 1977 1987 1997 10000 1000 100 10 1 1922年 家畜伝染病予防法ワクチン接種の義務化 1950年 狂犬病予防法 登録とワクチン接種の義務化 イヌ 1956年の6頭の犬の発生を最後に国内での発生は止まった。しかし、1970年にはネパールで1名、2006年にはフィリピンで2名が感染し、帰国後に死亡した。 ヒト 第一次世界大戦 関東大震災 敗戦 日本における狂犬病発生の経過
狂犬病の脅威 患者写真はウィキペディアより 咬傷から侵入した狂犬病ウイルスは神経を通って脳に達し、嚥下障害による恐水症状など興奮、麻痺、精神錯乱などの神経症状が現れる。脳神経や全身の筋肉が麻痺を起こし、昏睡期に至り、呼吸障害によって死亡する。 咬まれて直ぐに暴露後治療を受ければ発症しない。
暴露後処置: 世界保健機関(WHO)によれば、年間5万5000名が狂犬病で死亡しており、その多く(30–50%)が子供たちである。主な感染は、狂犬病に罹った犬に咬まれることで起きている。狂犬病で死んだ子供たちのほとんどは、咬まれた後でワクチン接種を受けていない。 狂犬病の動物に咬まれ、ワクチンを接種された人数は数百万人に達している。現在のワクチンは、発症を防ぐ効果が極めて高いが、発生国の多くはアジアの貧しい国々であり、ワクチンを買う金がない。 現在の日本では狂犬病の恐怖は判らないが、恐怖を味わう前に予防接種を受けよう! 報告した国の割合
イタリアにおける狂犬病発生の経過 2008年10月にキツネが散歩中のヒトを襲ったため、安楽死させて調べたところ狂犬病ウイルス陽性と判明した。幸いにも、咬まれたヒトは暴露後処置(ワクチン接種)を受けて発症には至らなかった。イタリアで最後の発生は1995年であった。 オーストリアおよびスロベニアと国境を接する アルプス森林帯の人気の観光地 ワクチンを混ぜた餌が上空から散布されたが、流行は止まらなかった。 初報 10/10/2008 1頭 キツネ 殺処分 経過報告1 29/10/2008 死亡 経過報告12 02/07/2009 飼いイヌ 経過報告36 16/02/2010 11頭 9頭 ウマ ネコ 経過報告43 09/04/2010 19頭 14頭 5頭 イタリア政府は、この事態を収束させることは困難であり、風土病となったと考えられるとした。発生は現在も収まっていない。
米国の野生動物において確認された狂犬病 1958~2008 米国の野生動物において確認された狂犬病 1958~2008 1995 1996 1997 1998 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 4 1 5 3 8 2 ニューヨーク州など東部で広がっている。アライグマは都会でも繁殖する。 米国では毎年数名が狂犬病の暴露措置を受けている キャンプ場でコウモリに咬まれる アライグマ スカンク スカンク 変異株 コウモリ キツネ CDC: Human Rabies
九州におけるアライグマの捕獲数 北海道や関東・関西の山には外来種のアライグマが陣取っている(ブラックバスと同じ)。 九州では長崎県で最も早く確認され、2005年には佐賀県でも捕獲され、福岡、大分、熊本でも観察されている。 飼い犬の登録と狂犬病予防接種が必ずしも徹底されておらず、日本に狂犬病が侵入した場合には深刻な事態になりかねない。 長崎県 佐賀県
麻薬の密輸入が絶えない中で、狂犬病は・・・ フランスでは2009年、2011年に、オランダでは2012年にアフリカで入手した犬を不法に持込み、それが狂犬病を発症したことで大問題となっている。 麻薬の密輸入が絶えない中で、狂犬病は・・・ 992 690 506 その他 342 韓国 253 タイ フィリピン 中国 不法入国および不法上陸 法務省入国管理局 周囲を海囲まれているから海外悪性伝染病が侵入しないと過信することは禁物である。テロリスト等が様々な病原体を持ち込んで散布する可能性は皆無ではない。
狂犬病に罹った1頭の犬が3頭に咬み付くと仮定 ワクチン接種率と狂犬病の広がり方 狂犬病に罹った1頭の犬が3頭に咬み付くと仮定 ペットフード協会が調べた犬の飼育頭数は 1,300万頭余りで、それらの登録頭数は 52%、予防注射頭数は 39%に過ぎない。 不法入国者の持込み等によって狂犬病が侵入したら、犬で蔓延し、アライグマの中にも定着するだろう。 法律で定められた登録と予防接種を遵守しよう。 :ワクチン接種済み :ワクチン未接種 :狂犬病 接種率80% 接種率40% ここで感染は止まる。WHOは70%以上の接種率を勧告している。
痘瘡(天然痘、ヒトだけが感染、1980年根絶) 古代から発生していた 免疫:同じ病気に罹り難くなる 紀元前1100年のミイラに痕跡 紀元前1100年のミイラに痕跡 致命率が高い:20~95% 子供の成長を祝う「七五三」 人痘法 古代インドで開発された予防法 元気な時に人為的に感染させる 18世紀までに世界各国に普及 免疫:同じ病気に罹り難くなる 牛痘法 エドワード・ジェンナーが1798年に実施 「牛痘にかかった者は痘瘡に罹患しない」 緒方 洪庵(1810~1863)日本近代医学の祖 1849年種痘の「苗」を入手し、普及 大坂に適塾を開き、人材を育てた 福澤諭吉、大村益次郎、長与専斎、佐野常民など明治初期に大活躍した偉人
冷蔵庫がない熱帯地域におけるワクチンの寿命 WHO痘瘡根絶計画(1967年開始) 冷蔵庫がない熱帯地域におけるワクチンの寿命 発生国数 患者数 1968 33 80,098 1969 30 54,257 1970 23 31,846 1971 15 52,769 1972 17 64,577 1975 5 19,278 1977 2 6
世界保健機関(WHO)憲章 前文(抜粋) 健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉 体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たさされた状 態にあることをいいます。 人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別される ことなく、最高水準の健康に恵まれることは、 あらゆる人々にとって の基本的人権のひとつです。 世界中すべての人々が健康であることは、平和と安全を達成する ための基礎であり、その成否は、個人と国家の 全面的な協力が得ら れるかどうかにかかっています。 健康増進や感染症対策の進み具合が国によって異なると、すべて の国に共通して危険が及ぶことになります。 健康を完全に達成するためには、医学、心理学や関連する学問の 恩恵をすべての人々に広げることが不可欠です。 一般の市民が確かな見解をもって積極的に協力することは、人々 の健康を向上させていくうえで最も重要なことです。 勉強する目的は?
新たに確認または大陸を超えたウイルス性疾病 疾病名 自然宿主 初発国 1957 1959 1967 1969 1976 1977 1981 1991 1993 1994 1997 1998 1999 2003 2009 アルゼンチン出血熱 ボリビア出血熱 マールブルグ病 ラッサ熱 エボラ出血熱 リフトバレー熱 エイズ ベネズエラ出血熱 ハンタウイルス肺症候群 ブラジル出血熱 ヘンドラウイルス病 高病原性鳥インフルエンザH5N1 ニパウイルス病 西ナイル熱(大陸移動) 重症急性呼吸器症候群(SARS) サル痘(大陸移動) 新型インフルエンザH1N1 ネズミ ? マストミス オオコウモリ? ヒツジ、ウシなど チンパンジー ネズミ? オオコウモリ カモ 野鳥 キクガシラコウモリ 齧歯類 人・豚・鳥 アルゼンチン ブラジル ドイツ ナイジェリア ザイール アフリカ ベネズエラ 米国 オーストラリア 香港 マレーシア 中国 全世界 メキシコ
エボラ出血熱: 現時点で、致命率が最も高い病気 現在も原因ウイルスが潜む野生動物種は特定されていない。 エボラ出血熱: 現時点で、致命率が最も高い病気 年 国 ウイルス型 症例数 死亡数 致命率(%) 2011-2 2008 2007 2005 2004 2003 2001-2 2000 1996 1994 1979 1977 1976 ウガンダ コンゴ スーダン ガボン 南アフリカ コートジボワール Sudan Zaire Bundibugyo Ivory Coast 53 32 149 264 12 17 178 59 65 425 1 91 315 52 34 284 318 16 14 37 137 10 7 157 44 224 66 254 31 22 151 280 25 71 83 41 88 75 82 100 72 81 60 計 2,299 1,490 現在も原因ウイルスが潜む野生動物種は特定されていない。
自分が生きることは、他の人の役に立つことで支えられる ウガンダにおける発生 2012年 ウガンダ保健省は、エボラ出血熱による16名の死亡を含め53名の疑い症例に達すると報告。 協力組織:WHO、米国疾病制御予防センター(CDC)、国境なき医師団(MSF) 国境なき医師団(MSF) MSFは26人からなる緊急対応チームを派遣。疫学、医療、給排水・衛生、物資輸送などの専門家で構成しています。メンバーはいずれも、エボラ出血熱を含むさまざまな"希少疾患"の流行に何度も対応した経験があり、研究を重ねたアプローチを採用しています。 自分が生きることは、他の人の役に立つことで支えられる
1890 1900 1910 1920 1930 1940 1950 1860 1970 1980 1990 2000 2010 インフルエンザ流行史 H2N8 スペイン風邪( 1918~19年):世界の約50%(6億人)が感染し、 2,000万人以上が死亡した。日本でも半数(2,400万人)が感染し、30万人以上の死亡者が出た。 ウイルス分離:豚で1930年、ヒトで1933年 アジア風邪(1957年):船が主な輸送機関だった時代に、わずか7ヶ月間で世界に広がった。 季節性インフルエンザ:香港風邪(1968年)とソ連風邪(1977年)を指す。 高病原性鳥インフルエンザHPAI H5N1:香港で1997年に発生し、2003から世界各地の家禽と野鳥に広がっている。 H3N8 H1N1 スペイン風邪 H2N2 H3N2 H1N1 香港風邪 ソ連風邪 H5N7 HPAI 新型インフルエンザH1N1 2009: 豚・鳥・ヒトのウイルス遺伝子 の融合体、メキシコで発生 H1N1 2009
ウイルスの構造と受容体 ウイルス表面にあるヘマグルチニン(赤血球凝集素、16種類)とノイラミニダーゼ(9種類)の組合せで型別する。これらの糖蛋白は変異が大きく、インフルエンザの種類が多い要因となっている。 ウイルス粒子成分を規定しているRNA遺伝子は8文節からなる。 100nm 受容体(レセプター)は鍵と鍵穴の関係で、一致したウイルスだけが細胞内に侵入し、増殖できる。不一致であれば感染しない。 トリ ウイルス ヒト ウイルス Α2-6 レセプター トリ細胞 Α2-3 レセプター ヒト細胞
インフルエンザ・ウイルスの流行模式 H5N1 「種の壁」を越えることは、頻繁に起きるものではないが・・・・ 通常は同一動物種内での流行 水禽類(カモなど) α2-3 H1~H16 (α2-3) ブタ α2-3、α2-6 ニワトリ α2-3 ウマ α2-3 H1、H3 (α2-3、α2-6) H5、H7 (α2-3) H3、H7 (α2-3) H5N1 通常は同一動物種内での流行 ヒト α2-6 H1、H2、H3 (α2-6) ウイルスのH型 (αレセプター対応) 動物細胞 αレセプター α2-6、α2-3 肺にはα2-3が存在する 矢印の形と太さは、感染の頻度を示す インフルエンザ・ウイルスの流行模式
2000万人以上の死亡は、戦争による死亡数をはるかに上回る。単年当りの死亡数は中世のペスト以上であり、史上最悪の伝染病であった。 スペイン風邪 2000万人以上の死亡は、戦争による死亡数をはるかに上回る。単年当りの死亡数は中世のペスト以上であり、史上最悪の伝染病であった。 中外製薬
年少者と高齢者の死亡率が高かった従来とは異なり、スペイン風邪では20~40歳の健康成人が死亡者の半数を占めた。働き手を失った家族は、その後も苦しい生活を強いられた。死亡者の多くは、細菌性肺炎を併発し、1週間以内に死亡したとされる。 この時ウイルスは未だ発見されていなかったのでワクチンはなく、細菌に有効な抗生物質も発見されていなかった。これらのことが、社会活動を止められない青壮年の被害を高めた側面がある。後年の研究でトリウイルスに由来することが判った。
世界流行インフルエンザ H1N1 2009の誕生 × ⇒ × ⇒ × ⇒ × ⇒ 古典的 ブタH1N1 季節性 ヒトH3N2 2種混合 トリ H?N? 3種混合 H3N2 PB2 PB1 PA HA NP NA MP NS 97-98 98 × ⇒ × ⇒ × 北アメリカ地域で ヒト⇔ブタ 軽症 新型 H1N1 2009 ユーラシア ブタH1N1 3種混合 H1N1 3種混合 H1N2 古典的 ブタH1N1 PB2 PB1 PA HA NP NA MP NS 09 2000 - ⇒ × ⇒
新型インフルエンザ 2009 による週間死亡数の推移(全世界) 米国とメキシコで新型インフルエンザA/H1N1感が発生していることが4月24日に発表された。 当初伝えられた 致命率は10%と高く、大きな衝撃を与えた。WHOは4月28日に 新型インフルエンザ警戒レベルを「3」から「4」に引き上げ、 翌日には「5」へ、 6月12日には「6」へと引き上げた。 累積死亡数の推移(全世界) その後、致命率は0.01%以下と判明したが、南半球が冬を迎えウイルスが強毒化する懸念が表明された。しかし、週間死亡数は、 12月21日の1176名をピークに減少した。 2010年4月末までに1万8000名が亡くなったが、これまでの季節性インフルエンザによる死亡数より遥かに少なかった。推定致命率は、0.01%以下。 2009 ~5/2 2009 ~12/21 2010 ~5/2
新型インフルエンザ 2009 による日本の年齢別死亡数 新型インフルエンザによる 年齢別死亡率(対10万) 死亡数は198名で、季節性インフルエンザの約1000名(基礎疾患者を含めると約1万名)を下回った。 :基礎疾患あり :基礎疾患なし 10歳未満の健康な子供達の死亡率が際立って高かったが、ワクチン接種は基礎疾患のある高齢者が優先された。そして、重度の基礎疾患のある高齢者がワクチン接種後に死亡した。 0~4 5~9 80~ 0~4 5~9 80~ 10~14 15~19 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 10~14 15~19 20~29 30~39 40~49 50~59 60~69 70~79 5歳階級 10歳階級 5歳階級 10歳階級
インフルエンザの予防 ワクチン接種: 糖尿病や免疫低下のある方は、流行期の前に毎年接種する。 ウイルスが毎年変化するので、それに合わせてワクチンは毎年作り変えている。100%防ぐことはできなくとも、症状を軽くしてくれる。 人混みを避ける: 自覚症状が出る前から呼気中にウイルスが排出される。流行情報を把握し、不可欠な外出も迂回路などで対処。マスクの着用は完全に防がないけれども、乾燥した空気に湿り気を与え、喉を保護してくれる(室内の加湿器と同じ効果)。 手洗い、うがい、洗顔: ウイルスで汚れた手で目や鼻をこすると粘膜からウイルスが侵入する。うがいと同時に、洗顔によって付着したウイルスを取り除く。 十分な栄養と休養: 基礎体力を保持する。徹夜などで疲れた時は感染し易い。 咳エチケット: 周囲のヒトにウイルスをまきちらさない。 早めの受診: 高熱が出始めたら、抗ウイルス薬治療(タミフルなど)を含めて医師の適切な判断を仰ぐ。
現時点で、ヒト・ヒト感染は起きていない! 世界流行インフルエンザウイルス誕生を防ぐために 1997年香港 高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)H5N1の人への感染 5月に3歳男児が原因不明で死亡したのを皮切りに、年末までに18人が感染し、6人が死亡した(致命率 33%)。 8月にトリウイルスだと判明したが、ヒト型に変異することなく直接感染したことの謎が残った。それまでは、養鶏場などでヒトが稀に直接感染することがあっても軽症で済んでいた。 2003年 HPAI H5N1の再発 渡りのルート 11月に、中国の北京で24歳男性の死亡例が発生した。同時期に韓国で家禽にH5N1が初めて確認され、 発生は2004年9月まで続いた。さらに、発生は東南アジアに広がった。 現時点で、ヒト・ヒト感染は起きていない! ヒト型H5N1ウイルスは未発生! 2005年4月 HPAI H5N1の世界流行 何十万羽もの渡り鳥が集まる中国中央の青海湖で野鳥が死に始めた。その後の数週間で様々な種の6,345羽の鳥が死亡した。これは、高病原性鳥インフルエンザが野鳥の大量死を引起した最初の報告事例である。水禽類はH1~H16の全ての型に感染するが、軽症でほとんど死なないとされてきた。コブハクチョウなどの大型水禽類が世界各地に渡り、H5N1を広げ、家禽での流行を引起すことになった。
水禽類とは、「水掻き」のある鳥類 カモ等の水禽類のインフルエンザは、一般的に消化器系感染であり、ウイルスは糞便中に排出される。すなわち、池や湖はH5N1ウイルスで汚染されている。 家畜化 マガモ アヒル 雁(ガン、カリ) ガチョウ アジアの伝統的稲作では、水田にアヒルを放して除草作業などを手伝わせている。 アヒルが放たれている水田地帯でHPAIが発生している。これが野鳥の鴨や雁などと自然交配を含めた濃厚接触を重ねて、春には北方の繁殖地へ渡っていく。シベリアの繁殖地で別の集団に感染が広がり、それらのカモ類が秋になると日本や韓国に渡ってきてニワトリへの感染源となる。こうした生態系の営みを変えられるか? FAO: 鳥インフルエンザの理解
家禽におけるH5N1の発生 死亡して見つかった数は平均で約1割であり、全群が殺処分されるのでこの8年間で6,300万羽が犠牲になった。平均すると毎年770万羽となる。命あるものを殺処分する心の痛み・・・ 2012年1~8月の発生状況 :継続中(家畜) :終息(家畜) :終息(野生動物) :情報なし
高病原性鳥インフルエンザH5N1 のヒト感染状況 (2012年8月10日現在) のヒト感染状況 (2012年8月10日現在) 患者数 死者数 インドネシア 191 159 エジプト 168 60 ベトナム 123 61 中国 43 28 カンボジア 21 19 タイ 25 17 アゼルバイジャン 8 5 トルコ 12 4 その他 6 患者数: 608名 死者数: 359名 致命率: 59% あなたは、鶏と心中できますか? イラク、ラオス、パキスタン、ナイジェリア、バングラディッシュ、ミャンマー、ジブチ
鳥インフルエンザA(H5N1)のヒト感染例:年齢、転帰別 2010年2月8日現在、総数441例 死亡(260例) 生存(181例) 季節性インフルエンザ 症例数 70歳以上 年齢層 死亡数 生存数
世界保健機関(WHO)の勧告 鼻や喉からH1N1は感染せず、ホコリとともに大量のウイルスを吸込んで肺に達した場合にのみ感染する。 ● 病気になったか死亡した動物を調理したり、喫食してはいけない。それは非常に危険である。 ● 流行地においては、自宅で食用と殺してはならない。 鼻や喉からH1N1は感染せず、ホコリとともに大量のウイルスを吸込んで肺に達した場合にのみ感染する。 アジアにおけるH5N1発生の8割以上が庭先養鶏で起きている。国内発生が起きても、市販の鶏肉や卵を食べることによって感染することはない。 写真はFAO日本事務所
日本における鳥インフルエンザの発生状況 2010年10月 2008年5月 北海道稚内市大沼 北海道佐呂間町 カモの糞 オオハクチョウ 北海道別海町 オオハクチョウ 2008年4月 秋田県小坂町 オオハクチョウ 2008年5月 青森県十和田市 オオハクチョウ 2004年3月 京都府・大阪府 ハシブトガラス 2004年2月 京都府京丹波町 2005~2006年 H5N2 茨城県(2ヶ所) 2007年2月 岡山県高梁市 2005~2006年 H5N2 埼玉県(1ヶ所) 2004年1月 山口県阿東町 2009年 H7N6 愛知県豊橋市(ウズラ) 2007年3月 熊本県相良村 クマタカ 20110-11年には10月の北海道に始まり全国で野鳥や公園の白鳥が感染し、家禽では 9県 24農場(宮崎 13件、千葉、愛知、三重で各 2件、島根、奈良、和歌山、大分、鹿児島で 各1件)。 2004年2月 大分県九重町 2007年1月 宮崎県(清武町・新富町・日向市)
世界は一つ、健康は一つ(One World, One Health) 「FAO、OIE、WHO、インフルエンザ連携国連機構、UNICEF、世界銀行」が2008年に合同で打ち出した、動物・人間・生態系の接点における感染症のリスクを低減するための戦略的枠組み。 人間の生活圏 野生動物の間に存在していた病原体が家畜や人に感染し、新たな病原体に進化 越境性疾病: 国境を越えて蔓延する人、家畜、動物の伝染病。 野生動物が暮らす森 新興感染症: これまで知られていない新疾病。人、家畜、動物の接点で発生。 開発 土地と水の使用に関する 決定が健康に対して実質的で 密接な関係を持っており、生態系の回復力の変化および病気の出現と拡大の様相の変化が現われる。 地球規模での病気の予防、広域調査、定期検査、制御、および緩和を図るべきである。
地球の誕生: 約46億年前 原始大気と原始海洋の誕生 最初の生命体(原核生物) 35億年前の最古の化石 緑藻類などの真核生物 10億年前 地球の誕生: 約46億年前 原始大気と原始海洋の誕生 最初の生命体(原核生物) 35億年前の最古の化石 緑藻類などの真核生物 10億年前 アオミドロ 1991年5月普賢岳の噴火 なし 生物の光合成 石灰岩CaCO3 地下有機物(化石燃料) 0.03% ただし増加中 二酸化炭素 CO2 酸素 O2 原始大気 大量 起源 原始地球から脱ガス その後 縞状鉄鉱などの酸化物 その後は大気中に蓄積 成層圏のオゾンO3層 現在 21%
大気と水に恵まれた地球で生命が誕生し進化してきた 大気中ガス濃度 炭酸ガス CO2 酸素 O2 光合成を行うラン藻類(シアノバクテリア) 27 46 35 10 緑藻類などの真核生物 5.1 脊椎動物の出現 脊椎動物の上陸 3.7 人類の出現 500万年前 陸上植物の出現 4.4 ほ乳類の出現 2.1 地球誕生 原始生物 地球にも寿命があり、地殻活動などの環境変化により絶滅した種もいる。人類は? ダーウィンの著書 1859年 「種の起源」 進化論 ミラーの実験 「化学進化」 原始大気と放電でアミノ酸ができる パスツールの実験 1862年 「生物は生物からしか生まれない」
ウイルスはエネルギー生産、蛋白合成に係わる酵素系を欠如しており、この図には含まれない 病原体 生物の系統発生学的位置 高等生物: 動物界、植物界、菌界 真性細菌 古細菌 寄生虫 Procaryote 原核生物 Eucaryote 真核生物 ウイルスはエネルギー生産、蛋白合成に係わる酵素系を欠如しており、この図には含まれない
生物の系統発生図 動物界 菌界 植物界 消化 吸収 光合成 原生生物界 モネラ界 真核生物、多細胞 真核生物、単細胞 原核生物、単細胞 分類学に基づいて動物界と植物界に大別したのはリンネ(1707 - 1778)であったが、ヘッケルが原生生物界を加えた系統発生図を描き(3界説) 、ホイタッカー(1920 - 1980)は原生生物界にモネラ界を、植物界に菌界を付け加えて「5界説」を唱えた(1959)。 消化 吸収 光合成 真核生物、多細胞 原生生物界 真核生物、単細胞 モネラ界 原核生物、単細胞 生物の系統発生図 生物の分類
エネルギー(生態)ピラミッド 菌界 動物界 植物界 太陽 微生物の菌類・細菌類などが中心。生産者や消費者の遺体や排出物の有機物を無機物に分解し、もとの環境に返す。 一次消費者を食べる生物 肉食動物 二次消費者 菌界 動物界 生産者を直接食べる生物 草食動物 分解者 一次消費者 自分で栄養素を作る 光合成植物 植物界 生産者 大地・大気・水 エネルギー(生態)ピラミッド
"contagium vivum fluidum" 1031年 ベルリン工科大学のクノールとルスカが開発 肉眼 光学顕微鏡 濾過性病原体 "contagium vivum fluidum" = soluble living germ 電子顕微鏡 1031年 ベルリン工科大学のクノールとルスカが開発 X線解析 新技術の開発!
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