セラミックス 第3回目 4月 29日(水) 担当教員:永山 勝久
3.セラミックスの構造 単結晶体と多結晶体について (a)単結晶体・・・結晶中の原子配列が連続で、一つの面方位のみ有する結晶 図:セラミックスの単結晶と多結晶の構造概念図 (通常の材料の単結晶と多結晶構造) (a)単結晶体・・・結晶中の原子配列が連続で、一つの面方位のみ有する結晶 (b)多結晶体・・・種々の大きさの結晶粒の集合体で、結晶粒同士の結合界面には 結晶粒界(非整合部分)が形成される(:通常の材料) (ex.半導体Si)
多結晶体・・・種々の大きさの結晶の集合体で、結晶粒同士の結合界面には 結晶粒界が形成される 結晶粒界が形成される 結晶粒界は異なった方位を有する結晶の結合部分(非整合部)であるため、 非整合界面に起因する格子欠陥や格子ひずみなどが発生し、かつ不純物が 偏析する 多結晶体の一般的組織構造 :①気孔(pore)が存在する ②不純物を構成主元素とした ガラス相の形成(:焼結部分液相化) ③冷却時に形成された微小亀裂 (凝固収縮に伴う結晶粒の異 方性により生じる微小割れ) 多結晶体中の構造欠陥(:結晶粒界, 気孔,微小亀裂,ガラス相) ↓ 強度特性を劣化させるため、高強度 セラミックス材料では気孔を減少さ せ、結晶粒を微細化させる (粒界、粒内) 図: 多結晶体の微細構造
『単結晶体の代表材料』 半導体Si [ 図1 参照 ] Si・・・精製による高純度化→電気抵抗の増加 99.999%:100kΩ ( 絶縁体 ) 半導体Si : 0.01% ( 1万分の1,100ppm ) の不純物ドープにより, 電気抵抗が1Ω以下 ( 10万分の1以下に低下 ) ・・・不純物ドープ:p型:3価元素添加 ( Bなど ) 電子が1個 不足 n型:5価元素添加 ( Pなど ) 電子が1個 過剰
「Containerless Crystallization of Silicon in Microgravity の新推進体制」 国際宇宙ステーション きぼう利用 日本実施テーマ 「Containerless Crystallization of Silicon in Microgravity の新推進体制」 テーマ提案者:永山勝久、栗林 一彦 (日本、芝浦工大) 共同研究者:Dieter M.Herlach (ドイツ航空宇宙局:DLR) うの 本学初の国際特許:PCT 自由落下部3mのショートドロップチューブを用いた 次世代高効率太陽電池用球状単結晶Si生成 国際特許出願番号:PUT/JP2008/073948 国際特許出願日:2008年12月25日
通常冷却・・・融点以上からの徐冷→多結晶Si 単結晶Si・・・単結晶を溶融部に接触させ,融体から徐々に引下げる [ CZ法 ] (a) アクセプタとホール (b) ドナーと電子 図1 不純物半導体のホールと電子 単結晶Si の作製 ( m.p. = 1412℃ ) 通常冷却・・・融点以上からの徐冷→多結晶Si 単結晶Si・・・単結晶を溶融部に接触させ,融体から徐々に引下げる [ CZ法 ] (工業的には直径300mmの単結晶が生産可能) 多結晶体・・・ 結晶粒 ( grain ) : 粒内の原子配列は一定 ( 整合 ) 結晶粒界 ( grain boundary ) : 原子の配列が不整合 ( エネルギーの高い状態 ) 粒界・・・電子の運動を妨害する ( 易動度,mobilityが低下 ) 半導体・・・ドープした微量元素が粒界に集中し,粒内での効果が発生しないため単結晶化する
※ 単結晶製造法[CZ法:チョクラルスキ-(Czochralski)法] 単結晶の種子結晶を高周波溶解や抵抗加熱法によって加熱・溶融し、 下部に設置された溶融体と接触し、上部に引上げ種子結晶と同じ方位 を有する単結晶を成長させる ・・・半導体Si製造用装置(~10インチ・ウエハ-作製用←大口径化) 固体Si-融液Siの接触界面における結晶成長(Crystal Growth) 図 CZ法で作製したBi12SiO20単結晶 図 単結晶製造装置(チョクラルスキ-法)
物質創製科学 現状の材料のプロセスと既存核生成機構 ○ 材料(物質)の製造(現状の材料プロセス) (ex. 金属合金,半導体,無機,有機(含 医薬品)材料) 結晶成長(Crystal Growth) 気相プロセス(ex. 半導体,薄膜材料など) 液相プロセス(ex. 単結晶材料のMelt Growth) 固相プロセス(ex. メカニカルアロイング,粉末焼結)
核生成(Nucleation) ※ 全ての材料の結晶成長の前駆段階としての 統一的現象および理論 (固相法の場合は,界面 growth が支配) 既存・核生成理論(核生成機構) 1. 均一核生成(Homogeneous Necleation) ・・・理想状態下で生じる本来の核生成現象 2. 不均一核生成(Heterogeneous Necleation) ・・・通常の材料製造・作製時における核生成現象 (ex. 基板上への薄膜作製,液相からの結晶作製(←溶融・凝固) ※ 核生成理論の推移 1926年:Volmer, Weber (Z. Phys. Chem, 119 (1926) 277. 1950年:D. Turnbull (J. Chem. Phys., 18 (1950)198.
ΔG(T, r) : 核生成に伴う系の自由エネルギー変化 r : 核の半径 σLS : 固-液間における界面エネルギー 既存核生成理論 核生成に対する駆動力 表面自由エネルギー項 体積自由エネルギー項 均一核生成 ・・・ 不均一核生成・・・ ΔG(T, r) : 核生成に伴う系の自由エネルギー変化 r : 核の半径 σLS : 固-液間における界面エネルギー ΔGv : 温度 T における単位面積当たりの固液間における 自由エネルギーの差 θ : 異種固相上に形成された凝固相(結晶化する液相) のなす角・・・異種固相(不均一核生成サイト)と液相 (核生成する凝固相)との接触角(濡れ角)
θ: 異種固相上に形成された凝固相(結晶化する液相)のなす角 ・・・異種固相(不均一核生成サイト)と液相(核生成する凝固相) との接触角(濡れ角) 異種固相に対してθ≒ 180°ならば,均一核生成として扱える.
既存「核生成理論」(Nucleation Theory) 均一核生成,不均一核生成ともに; 安定(平衡)結晶の成長のみを仮定した統一的理論 21世紀の材料科学(物質科学:Materials Science) における新たな展開 従来の安定平衡物質(製造,材料物性)の延長でよいか? 既存概念にない新たな構造と物性を発現する. ⇒ 新物質創製(≡非平衡相,非平衡物質)の探索 既存核生成理論に変わる 新たな『非平衡相の核生成理論』構築の必要性