中京大学 経済学部 湯田ゼミナール 安部竜生 石内翔也 川邉岳司 加藤雄也 蒲憲一郎 北村隼也 竹内健斗 彦坂啓太 平野瑛介 待機児童の現状と課題 中京大学 経済学部 湯田ゼミナール 安部竜生 石内翔也 川邉岳司 加藤雄也 蒲憲一郎 北村隼也 竹内健斗 彦坂啓太 平野瑛介 1
目次 2 1.定義 ・認可保育所と認可外保育所 ・全国の近年の傾向 ・名古屋市の傾向 2.待機児童発生のメカニズム ・需給曲線による分析 ・補助金の存在 ・潜在的待機児童の存在 3.シュミレーション分析 ・弾力値の推計 4.まとめ ・政策提案 2
待機児童について 待機児童とは? …認可保育所に入所・利用する資格を持ちながら、保育所の不足や定員が いっぱいであるため入所できない児童のこと。 都市部においては待機児童が深刻化 →認可保育所の数が慢性的に不足状態である 認可保育所と認可外保育所の違い 地方自治体では積極的な対策(増新築・サポートなど)により 待機児童数は減少傾向 例)横浜市(2013年)と名古屋市(2014年)は待機児童数ゼロを実現 3
認可保育所と認可外保育所の違い 4 認可保育所 認可外保育所 …施設の広さや設備、保育者の資格や人数などについて、国の基準を満たし 認可された保育所。保育料は世帯の所得に応じた軽減があり、自治体ごとに 異なる。自治体によっては第2子以降の保育料を減免する配慮もある。 例)公立と私立、家庭保育室等 認可外保育所 …認可保育所以外の保育施設。保育料の額は施設ごとに異なる。園庭がない ところが多い。 例)自治体の助成施設・事業所内施設・その他 4
一般的な待機児童の問題点 少子高齢化に伴い人口が減少しているため、将来的に労働力の確保が問題 になってくる。そのため女性の労働力が重要であり、この問題は女性の社会 進出に深く関わってくる。 近年の所得の低下により共働きをする家庭が増えているが、待機児童問題 により施設が不足していると家庭への影響が大きくなる。 待機児童を減少させることは国家単位でも緊迫の問題である。
全国の近年の傾向 6
名古屋市の近年の傾向 7
就学前待機児童数の年齢別割合 22741人 21371人 280人 0人 8
名古屋市の待機児童対策 9 2年連続(2011年・2012年)で待機児童数が全国ワースト1位 2010年から4年間で60億円の予算を投資して入所枠の拡大 保育所新設で解消 2013年→保育所39か所新設、5か所増築、家庭保育室を14か所拡大し、2339人分 新たに確保。 2014年→保育所14か所新設、6か所増築、家庭保育室を9か所拡大し、1027人分新 たに確保。 保護者の相談に乗って保育サービスや幼稚園の情報を紹介する嘱託職員 「保育案内人」を全16区に配置するなど 9
名古屋市の待機児童対策の問題点 名古屋市は急速に待機児童ゼロを目指したため、低年齢児対象の園や保育 室が増加し低年齢を超えた3歳以降の入所先が必要数確保できるのかが懸念 されている。 財政的な問題点として、名古屋市は待機児童等の対策に向けて補正予算を 組み込んだが、それでも名古屋市全体としての財政支出は約400億円近く の収支が不足状態である。 10
一般的な待機児童発生のメカニズム 11 価格設定による問題 ・補助金の存在 供給側の要因 ・必要な地域で不足している ・潜在保育士の存在 ・補助金の存在 供給側の要因 ・必要な地域で不足している ・潜在保育士の存在 需要側の要因 ・女性の社会進出 ・経済状況の悪化 ・需要側の要因 夫婦であっても夫が働いていることが多い日本においては、 未婚既婚問わず小さな子どもを持つ女性が働きに出るためには子どもをどこかに預けるしかなく、保育需要が生じる。 女性の社会進出の一因とも言うことができ、先で見たように 既婚女性が働くようになったことで夫婦共働き世帯が増加し保育需要が増大したことが挙げられ る。また、経済状況の悪化によって、保育料が安く済み安全性の高い認可保育所に預けるという 志向をより重視する家庭が増えた結果、他の無認可保育所や自治体単独施策に空きがあるにもかかわらず認可保育所に保育需要が集中し待機児童が生じてしまう場合は少なくない。 ・供給側の要因 全国で見た場合保育需要児童数を上回る施設収容数はあるものの、都市部のような必要とされている地域に足りていない 待機児童の多い都市部では、保育士の採用難と勤続年数の短さが深刻化 潜在保育士=保育士の資格は持ってるものの保育士として就労していないもの 約57万人 結果として、需要の急激な増加に、供給が追い付いていない 保育所を必要とする人数の増加 11 潜在的待機児童問題 11
名古屋市の認可保育所の負担内訳 保護者の負担が安く、安全性の高い 認可保育所に預けたい! ・総額468億円
保育市場の経済的分析 13 P:保育料 P*:補助金なしのP P':補助金ありのP C:保育所を必要とする人数 C*:補助金なしのC D S P:保育料 P*:補助金なしのP P':補助金ありのP C:保育所を必要とする人数 C*:補助金なしのC C':補助金ありのC E 待機児童発生のメカニズムをグラフを用いて説明 P* 待機児童の発生 P' 13 0 C* C' C 13
P S D S' P* S':待機児童対策 による供給増加 P' 14 0 C' C C*
補助金 15 国 ・待機児童解消加速化計画(H27~) 取組地方自治体 賃貸方式や国有地も利用した保育所設備(ハコ) 保育を支える保育士の確保(ヒト) 小規模保育施設などの運営支援 認可を目指す認可外保育施設への支援 事業所内保育施設への支援 補助金 ・課題 ○保育の量的拡大・確保(待機児童の解消)、教育・保育の質の向上 ○地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実 ・子ども・子育て支援新制度の実施(平成27年4月) 消費税の引上げにより確保する0.7兆円程度を含め、追加の恒久財源を確保し、 すべての子ども・子育て家庭を対象に、幼児教育・保育、地域の子ども・子育て支援 の質・量の充実を図る。 ○待機児童解消加速化プラン、保育士確保プラン、放課後子ども総合プランの実施 子ども・子育て支援新制度の創設 取組地方自治体 計画 ・待機児童の減少目標人数 ・保育設備目標量 15 15
保育所増設の背景 16 保護者の就労形態の多様化や核家族化の進行 延長保育や一時保育、休日保育等の多様な保育需要に対応するため。 就学までを見越した認可保育所の整備を増やしていかなければ、待機児童 の解消は不可能であるため。 潜在的待機児童の存在があるため。 潜在的待機児童とは? …認可保育所への入所申し込みをしたかを問わずに入所が出来てない児童。 潜在的待機児童は最大で85万人(厚労省)~364万人(民間研究機関)いるとさ れている。 潜在的待機児童の影響をモデル分析に当てはめて考えてみる。 16
17 D':S'に対しての 需要増加 P S D' D S' P* 新たな待機児童(潜在的待機児童) P' 0 C* C' C →本来ならE’において解消するはずだが、供給増加に合わせてさらに保育需要が高まる(D’) →新たな待機児童(潜在的待機児童の発生) →これを解消するために名古屋市はさらなる保育所を増設を計画している(前スライド) 新たな待機児童(潜在的待機児童) P' D':S'に対しての 需要増加 17 0 C* C' C 17
シュミレーション分析(1) 1.待機児童対策 →経常的に名古屋市の行政コスト増大の要因になる。 →経常的に名古屋市の行政コスト増大の要因になる。 →待機児童が増えたからと言って際限なく受け入れることは不可能。 2.待機児童対策により財政悪化を防ぐため、年間コストの推計が必要。 3.直近の名古屋市の保育所運営費のデータを用いて確認。 待機児童対策についてさらなる考察を深めると考えた。 待機児童対策は必要不可欠の政策(国家単位でも) ・潜在的待機児童対策のための供給増加はさらなる保育需要を招きイタチゴッコになる恐れがある。 ・S’’’のように新たに供給を増加すればその分財政負担は増加するため、財政悪化を招く。 年間コストを推計することで他方面での対策が見えてくる可能性がある。
19 S P D D' S' S'' P* 財政負担(補助金) 新たな財政負担 P' S'':名古屋市のさらなる 供給増加 0 C* C 供給増加 19 0 C* C C' C"
シュミレーション分析(1) 1.待機児童対策 →経常的に名古屋市の行政コスト増大の要因になる。 →経常的に名古屋市の行政コスト増大の要因になる。 →待機児童が増えたからと言って際限なく受け入れることは不可能。 2.待機児童対策により財政悪化を防ぐため、年間コストの推計が必要。 3.直近の名古屋市の保育所運営費のデータを用いて確認。 待機児童対策についてさらなる考察を深めると考えた。 待機児童対策は必要不可欠の政策(国家単位でも) ・潜在的待機児童対策のための供給増加はさらなる保育需要を招きイタチゴッコになる恐れがある。 ・S’’’のように新たに供給を増加すればその分財政負担は増加するため、財政悪化を招く。 年間コストを推計することで他方面での対策が見えてくる可能性がある。
シュミレーション分析(2):弾力値の推計 保育所運営費に対する保育所数の弾力値 保育所数を1%増加したとき、運営費は何%増加するか? 弾力値算出式 算出された弾力値は約0.83=約83%増えると推計。 留意点 使用した期間内のデータでは保育所数と運営費の増加率はともに約1.3倍 この推計は、あくまでも保育所数と運営費の推移のみから計算したものであ り、その他の要因の影響は含まれている可能性がある。 Y:2008~2014年の平均運営費 X:2008~2014年の平均保育所数 ・一般的な弾力値算出式に当てはめると、εは以下のように求められる。 ・83%という数字は一見大きく見える しかし、いくつかの留意点を考えればそれほど的外れな数字ではない可能性がある。 だが、計算に使用したのは保育所数と運営費の推移のみである。 →人件費問題等のそのほかの要因が影響している可能性も十分あり得るため、もっと大きな数字が求められるかもしれない。
まとめ 待機児童対策は自治体ごとの異なり、全国的にも数は減っているが潜在的 待機児童の対策が必要。 女性の社会進出等に伴った社会構造の変化、労働時間の多様化による新た な保育ニーズに合わせた対策が必要。 政策提案 現状の問題を考えると補助金の存在が大きな要因なのでは? →解決策としては保育料の引き上げが考えられる。
財政負担の軽減 P D D' S S''' S' P* P" P''':引き上げ後の保育料 S''':P''による供給 C''':P''によるC 引き上げ P' 減少 C* C''' C' C
参照 厚生労働省:保育所入所待機児童(平成26年10月) http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000- Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000078425.pdf 厚生労働省:保育関連状況取りまとめ(平成26年4月1日) http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000057750.html 名古屋市:子ども子育て支援協議会・報告事項(平成25年5月24日) 名古屋市:名古屋市における保育所待機児童数の推移 http://www.city.nagoya.jp/kodomoseishonen/cmsfiles/contents/0000060/ 60449/260527shiryou05.pdf http://www.city.nagoya.jp/kodomoseishonen/cmsfiles/contents/0000037/ 37890/siryou01-03.pdf http://www.city.nagoya.jp/kodomoseishonen/cmsfiles/contents/0000070/ 70632/150518heisei27nen4gatu1nitigenzainohoikusyotouriyouzyoukyou.pd f http://www.city.nagoya.jp/kodomoseishonen/cmsfiles/contents/0000037/ 37891/siryou02-all.pdf