ポリイミドフィルムの宇宙線に対する 耐性の研究 神奈川大学 大石富士夫、立山暢人 東大宇宙線研究所 瀧田正人 2003年7月13日~ (乗鞍宇宙線観測所・屋内・屋外借用)
Purpose 目的 構造、製造工程の異なる4種類のポリイミドフィルムにおいて、 乗鞍宇宙線観測所の屋外および屋内での宇宙線暴露、 電子線照射装置を用いたEB照射を行う。 劣化に伴う構造・物理変化や強度変化を解析する。 すでに航空・宇宙環境で一部使用されている PMDA系PI(Kapton)と二種類のBPDA系PIとの比較を行い、 BPDA系PIの航空・宇宙環境での使用の可能性を探ることを 目的とする。 Purpose
方法 ○ 環境 EB照射、乗鞍屋内暴露、乗鞍屋外暴露、熱水浸漬(40h)、 水蒸気暴露(40h) ○ 表面変化 色差測定(L*a*b*)①、光沢度測定(鏡面反射)、 VMS(ビデオマイクロスコープ・表面観察)、UV-VIS④ ○ 構造物理変化 引張強度試験②、 顕微鏡IR(赤外吸収スペクトル、ATR法)③
[ポリイミドの特徴] 熱可塑性、高温流動性、成形加工性、耐加水分解性に優れている 耐熱性(熱分解開始温度~500℃) 微細回路を持つベースフィルム、自動車・航空機エンジン廻り部品、電子電気部品、 電気絶縁性(誘電率3.2~3.4、高い絶縁破壊電圧、絶縁欠陥少) 電線、エナメル線、積層板、塗料、電子材料(保護膜、絶縁膜、レジスト等) フレキシブルプリント基板[OA機器,カメラ用]、電線被覆材等 半導体の応力緩和用(バッファーコート膜)、表面保護用 耐薬品性(有機溶剤に不溶、酸・アルカリの化学薬品に対し耐性、寸法変化率小) 耐放射線性(のCo-60γ線4,000Mradで強度、伸度が50%) ヒンジレス伸展マスト 半導体関連材料、自動車関連材料(複写機の軸受けや自動車のタイヤホイール)、液晶表示装置、ジェットエンジンカバー、スペース・シャトル、航空機構造体 など
Biphenyltetracarboxylic Sample(BPDA/ODA) Sample BPDA type PI + Biphenyltetracarboxylic dianhydride(BPDA) 4,4´-diaminophenylether(ODA) -2nH2O PI(BPDA/ODA ) [Rn]
Biphenyltetracarboxylic Sample(BPDA/PDA) Sample BPDA type PI + Biphenyltetracarboxylic dianhydride(BPDA) p-diaminobenzene(PDA) -2nH2O PI(s-BPDA/PDA ) [S]
Sample(PMDA type) Sample PI(PMDA/ODA ) PMDA type PI + Pyromellitic dianhydride(PMDA) 4,4‘-diaminophenylether(ODA) -2nH2O PI(PMDA/ODA ) Kapton type [K] ,APICAL type[A]
EB Electron Beam エレクトロンビーム(EB)は、高速の電子線である。 主に被照射物質の表面で作用する。 EBの高分子製品への利用例 ・滅菌処 ・照射架橋による表面改質 (ビニルテープ、電線の被覆材料等の耐熱温度・強度の向など) ・高分子製品へ塗布した塗料等の硬化(インキの高速乾燥、アクリル系塗料の塗布による光沢加工紙の製造、帯電防止材塗布による帯電防止フィルムの製造など) EB照射装置の概略図 EB照射装置の外観 (岩崎電気(株)製 CB250/15/180) フィラメントを加熱して熱電子を放出させ、フィラメント-窓(陽極)間に高電圧をかけてその電子を加速させることによってEBを発生させる。 Prev. Link
Electron Beam EB照射装置の設定条件 使用装置 :電子線照射装置CB250/10/180L(岩崎電気製) 加速電圧 :150KV 電流値 :7.16mA ドレン電流 :0.1mA 搬送速度 :5m/min 往復照射 K値 :17.7 照射回数 :4、8、16 time 酸素濃度 :300ppm以下 照射線量 :1000、2000、4000KGy 照射面 :両面 照射量(1回):250KGy
乗鞍宇宙線観測所で暴露を行った。 Cosmic rays 乗鞍宇宙線観測所で暴露を行った。 地理的位置:北緯36度6分、東経173度33分 標高:2770m(平均気圧720hPa) Cosmic ray Indoor exposure Outdoor exposure 観測された宇宙線の総量(暴露期間2003年7月13日~9月24日) 天頂角30度以内に入射した20MeV以上の荷電粒子(おもにμ粒子と電子)の数 1.11×10 8[個/m2] 中性子の数 1.50×108[個/m2] ( 0.15×5E-1cos3 [1/cm2・min・sr ・ MeV] 20<E<100MeV) 15×5 E-2cos3 [1/cm2・min・sr ・ MeV] E>100MeV M.Sato,1995,Nagoya-U
Cosmic ray (tokyo univ) Cosmic rays
Color difference2 L* a* Color difference① +White +Red -Black -Green Original L* +White -Black a* +Red -Green Indoor exposure Outdoor exposure Indoor exposure Outdoor exposure Original
b* ΔE Color difference① +Yellow Original Indoor exposure Outdoor -Blue
Tensile properties② Tensile test(Width)
FT-IR absorbance spectra(BPDA/PDA) FT-IR spectra③ 1513 1352 1692 C N O PI(BPDA/PDA) [S] %R Outdoor exposure Indoor exposure EB4000KGy Original 4000 3000 2000 1000 650 Wavenumber[cm-1] Fig.9 FT-IR absorbance spectra of PI(s-BPDA/PDA) in the 650-4000cm-1 region.
ベ ン ゼ ン 環 と 第 三 級 ア ミ ン の C - N 変 角 振 動 IR③ APICAL EB劣化 顕微IR(ATR法) FT-IR(A) %R EB4000KGy EB2000KGy EB1000KGy Original 4000 3000 2000 1000 650 Wavenumber[cm-1] ピーク(cm-1) 帰属 1708.14 イミド環のC=O伸縮振動 1495.04 ベンゼン環の骨格振動 1368.25 ベンゼン環と第三級アミンのC-N伸縮振動 1234.22 =C-O-C=逆対称伸縮振動 1084.76 ベ ン ゼ ン 環 と 第 三 級 ア ミ ン の C - N 変 角 振 動 808.03 P-二置換基を有するベンゼン環のC-H面外変角振動
ベ ン ゼ ン 環 と 第 三 級 ア ミ ン の C - N 変 角 振 動 APICAL-EB線 IR③ APICAL 屋外(宇宙線、紫外線) 屋内暴露(宇宙線)顕微IR(ATR法) FT-IR(A) %R Outdoor exposure Indoor exposure Original 4000 3000 2000 1000 650 Wavenumber[cm-1] ピーク(cm-1) 帰属 1708.14 イミド環のC=O伸縮振動 1495.04 ベンゼン環の骨格振動 1368.25 ベンゼン環と第三級アミンのC-N伸縮振動 1234.22 =C-O-C=逆対称伸縮振動 1084.76 ベ ン ゼ ン 環 と 第 三 級 ア ミ ン の C - N 変 角 振 動 808.03 P-二置換基を有するベンゼン環のC-H面外変角振動
UV-VIS spectra of PI④ RN UV-VIS(Rn) abs Wavelength[nm]
UV-VIS spectra of PI④ K UV-VIS(K) abs Wavelength[nm]
Conclusion 1)宇宙線による変化 2ヶ月の暴露では、BPDA/ODA [Rn]は引張強度および伸びの減少がほとんど見 られなかった。 屋内で暴露した場合と、宇宙線、紫外線、水分等の影響が考えられる屋外で暴露した場合を比較すると、外観変化に違いはあるが、強度や構造に違いは見られない。 Conclusion 2)EB照射 EB4000KGy照射までは、 BPDA/ODA[Rn]とPMDA/ODA[K]は引張強度および伸びの減少がほとんどない。 したがってEB用に使用できる可能性が確認された。 3) 1年暴露の資料について、現在解析中