地球環境変化予測のための地球システム統合モデルの開発(2) “成層圏”化学グループ進捗報告

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地球環境変化予測のための地球システム統合モデルの開発(2) “成層圏”化学グループ進捗報告 永島 達也 秋吉英治、坂本圭、今村隆史(国立環境研究所) 高橋正明(東大気候システム研究センター) 河宮未知生、滝川雅之(地球環境フロンティア) 平成18年度RR2002課題1,2,4合同運営委員会 平成19年1月30日@東大CCSR(柏)

背景 地球システム統合モデルの構成 元々対流圏ベース 成層圏化学の導入 CCSR/NIES 成層圏化学気候モデル (CCM) 大気モデル CCSR/NIES 成層圏化学気候モデル (CCM) 気候 (CCSR/NIES AGCM) エアロゾル (SPRINTARS) 大気化学 (CHASER) モデル相互比較(CCMVal)への参加 WMOオゾンレポートへの貢献 を目的とした実験の実施 海洋モデル 陸域モデル 気候 (COCO) 気候 (MATSIRO) 生物化学モデル (MPZD-type) 生物化学モデル (Sim-CYCLE) 植生動的モデル (SEIB-DGVM) 統合モデルの参照データとして利用 → K2の資源を利用

9・10月南極オゾン全量の最小値 3・4月北極オゾン全量の最小値 WMOオゾンレポート2002 (前回) Chapter 1: Controlled substances and other source gases Chapter 2: Very short-lived halogen and sulfur substances Chapter 3: Polar stratospheric ozone: Past and future Chapter 4: Global ozone: Past and future Chapter 5: Surface ultraviolet radiation: Past and future 9・10月南極オゾン全量の最小値        3・4月北極オゾン全量の最小値 ① 南極の春季オゾン量はハロゲン負荷の減少に応じて2010年頃には増加に転じる ② 北極域の将来予想は難しいが、今後の北極オゾンホール出現には否定的な結果

WMOオゾンレポート2002:問題点 CCMVal モデルによって将来予測実験の設定が異なる Transient vs Time slice 外部強制データ(SST、CO2、フロン) より多くのシナリオ実験・感度実験が必要 評価の対象が極域に限られている 2050年程度までの長期的な評価が不十分 強制に対するシグナルと内部変動の切り分けが困難 モデルの内部変動の大きさを検証する必要 ハロゲン負荷の将来見通しが大きくモデルに依存する モデルの輸送過程の検証が必要 次期WMOレポートに向けた実験の調整 CCMVal 各モデルの検証と相互比較

CCMVal Chemistry-Climate Model Validation activity for SPARC(Stratospheric Processes And their Role in Climate) 化学気候モデルの相互比較・プロセス志向検証計画(GRIPS計画の後継) 19モデルが参加(米[5]、独[5]、英[3]、日[2]、加・仏・伊・瑞[1]) 【目的】 力学、輸送、化学(含微物理)、放射に関する 17種のキープロセスを選定し、それらを特徴付ける31種の診断項目をCCM計算から求め、観測と比較して検証する

力学:波動の強制に対する成層圏の応答 プロセス 診断項目 モデル変数 観測データ 波動強制に対する成層圏の応答 下部成層圏気温 下部成層圏気温 下部成層圏気温 下部成層圏熱フラックス 下部成層圏熱フラックス 下部成層圏熱フラックス 観測事実: 極域下部成層圏の晩冬~早春にかけての気温は、少し前の時期での下部成層圏熱フラックス(v’T’)と良く相関する モデルの診断(北極域): 観測、モデルそれぞれについて、下部成層圏の熱フラックスと気温の散布図を描き、傾きや値の範囲などを比較する プロセス 診断項目 モデル変数 観測データ 波動強制に対する成層圏の応答 惑星波フラックス vs 極域気温 100hPaでの熱フラックス(1,2月)、50hPaの気温(3月).それぞれ期間平均、経度平均 気象場再解析データ

CCMVal Chemistry-Climate Model Validation activity for SPARC(Stratospheric Processes And their Role in Climate) 化学気候モデルの相互比較・プロセス志向検証計画(GRIPS計画の後継) 19モデルが参加(米[5]、独[5]、英[3]、日[2]、加・仏・伊・瑞[1]) 【目的】 力学、輸送、化学(含微物理)、放射に関する 17種のキープロセスを選定し、それらを特徴付ける31種の診断項目をCCM計算から求め、観測と比較して検証する 次期WMOレポートに向けたCCM実験の調整をおこなう

WMO オゾンレポート 2006の構成(予定) 第5章  成層圏オゾン変化と気候変化の関係? 第6章  CCMによるオゾンの将来見通し Section I Chapter 1: Long-Lived Compounds (Cathy Clerbaux and Derek Cunnold) Chapter 2: Very Short-Lived Halogenated Compounds (Kathy Law and Bill Sturges) Section II Chapter 3: Global Ozone: Past and Present (Martyn Chipperfield and Vitali Fioletov) Chapter 4: Polar Ozone: Past and Present (Paul Newman and Markus Rex) Section III Chapter 5: Climate-Ozone Connections (Mark Baldwin and Martin Dameris) Chapter 6: The Ozone Layer in the 21st Century (Greg Bodeker and Darryn Waugh) Chapter 7: Surface UV Radiation: Past, Present, and Future          (Alkis Bais and Daniel Lubin) Chapter 8: Projections and Impacts (John Daniel and Guus Velders) The 4 bullets are the key. The bottom part shows how the SPARC reports and reviews map on to the Assessment chapters. 第5章  成層圏オゾン変化と気候変化の関係? 第6章  CCMによるオゾンの将来見通し  過去25年程度の成層圏オゾン変動:モデルvs観測 6

CCMVal推奨実験 成層圏オゾンの過去・現在再現実験 成層圏オゾンの将来見通し実験 実験 期間 GHG フロン類 SST 太陽活動 QBO エアロゾル 太陽活動 QBO BrOY REF1 1980(60) | 2004 OBS OBSまたは 内部発生 成層圏オゾンの過去・現在再現実験 REF2 1980 2025 OBS A1Bシナリオ Abシナリオ IPCC実験から (1999) 固定値 内部発生可能な場合のみ 成層圏オゾンの将来見通し実験

CCSR/NIES成層圏CCM 分解能 化学系 重力波抵抗 水平 :T42(格子間隔約280km) 鉛直 :34層(地表~0.01hPa) 気相反応 :Ox-HOx-NOx-ClOx-BrOx 不均一反応 :PSC (STS/NAT/ICE)上の反応 重力波抵抗 地形性 :McFarlane (1987) 非地形性 :Hines (1997)

結果(1) 気候値、トレンド

全体的に10~15DU(3~5%)程度の過大評価が残る オゾン全量:季節変化 観測:TOMS (2000-2004) WMO2002提出データ:T21 (90-99) JFMAMJJASOND 90N 45N Eq 45S 90S JFMAMJJASOND REF1アンサンブル平均:T42 (2000-2004) JFMAMJJASOND 大気の球面形状を考慮した光解離計算 BrOx系化学反応 短波長(<200nm)での光解離パラメタ化 液滴PSC上での不均一反応 水平分解能の向上(560km  300km) 非地形性GWDの導入 全体的に10~15DU(3~5%)程度の過大評価が残る

1980-99平均オゾン全量のモデル間比較 観測 Eyring et al. (2006) 90N Eq 90S 90N Eq 90S AMTRAC 1980-99平均オゾン全量のモデル間比較 90N Eq 90S CCSR/NIES CMAM E39C 90N Eq 90S GEOSCCM LMDZrepro MAECHAM4CHEM 90N Eq 90S MRI SOCOL ULAQ 90N Eq 90S UMETRAC UMSLIMCAT WACCM Eyring et al. (2006) JFMAMJJASOND JFMAMJJASOND JFMAMJJASOND

オゾン全量:南極オゾンホールの水平構造 観測 TOMS モデル REF1 EMN 波数1の構造が観測に比べて弱い 1980-1984平均 1990-1994平均 2000-2004平均 観測 TOMS 波数1の構造が観測に比べて弱い モデル REF1 EMN

オゾン全量:北半球での極小イベント TOMS:1997年3月24日 REF1#1:1999年3月9日 似たような水平構造を持ったオゾン極小領域は再現されるが、オゾン最小値は観測ほど小さくならない

オゾン全量:経年変化 ← 全球年平均オゾン全量時系列 絶対値:10-15DUの過大評価 トレンド:過小評価 火山噴火のシグナルが強め 絶対値:過小評価傾向 トレンド:過小評価傾向 絶対値:ほぼ観測の範囲 ← 60N-90N, 3-4月平均(北極春) 黒線:観測(TOMS)  赤線:アンサンブル平均 ピンクトーン:アンサンブル範囲  ← 60S-90S, 9-10月平均(南極春)

下部成層圏気温:経年変化 REF1で計算された 成層圏気温(30hPa) 2 1 -1 -2

太陽11年周期変動に対応した 熱帯下部成層圏オゾンの変動 結果(2) 太陽11年周期変動に対応した 熱帯下部成層圏オゾンの変動 坂本圭1・秋吉英治1・永島達也1・L.B.Zhou1・高橋正明2 1国立環境研究所・2東京大学気候システム研究センター

太陽活動に対応したオゾンの変動 太陽活動に対応したオゾンシグナル SBUV SAGE Lee and Smith (2003) 40‐50km付近のピーク 20‐25km付近のピーク ←こちらに注目

帯状平均オゾンの回帰係数(年平均) 定常成分(α) 太陽変動(δ) 30hPa 70hPa 太陽変動に伴う変化量は全体の2%程度 [ppmv] [ppmv] 30hPa 70hPa 60S   30S EQ 30N 60N 60S   30S EQ 30N 60N 太陽変動に伴う変化量は全体の2%程度 中緯度中部成層圏、熱帯下部成層圏で値が大きい

帯状平均オゾンの収支 中・上部成層圏 → 化学生成の影響が大きい 下部成層圏 → 鉛直移流の影響が大きい 水平移流 鉛直移流 化学生成 [ppbv/day] 化学生成 60S 30S EQ 30N 60N 3 5 10 30 50 70 100 中・上部成層圏 → 化学生成の影響が大きい  下部成層圏 → 鉛直移流の影響が大きい

× × 太陽変動に伴うオゾン分布 × 基本場の鉛直流 基本場のオゾン鉛直勾配 × 太陽変動に伴う鉛直流 オゾン(α) オゾン(δ) 鉛直流(α) オゾン(δ) × オゾン(α) 鉛直流(δ) ×

太陽変動に伴う鉛直流(循環場)の変化の影響が大きい 太陽変動のオゾン分布×基本場の鉛直流 基本場のオゾン分布×太陽変動の鉛直流 [ppbv/day] 下部成層圏 → 太陽変動に伴う鉛直流(循環場)の変化の影響が大きい

まとめ CCSR/NIES 中層大気CCMを用いて成層圏オゾンの20世紀後半再現実験と将来見通し実験を行った。この結果はCCMValや次期WMOレポートにおいて使用される予定である オゾン全量は絶対値、季節進行とも他のモデルと同等以上に良く再現された → 他の量の検証はこれから 低緯度下部成層圏のオゾン量に観測に似た太陽11年周期同期成分が得られた。このオゾン変動は主に鉛直流速の太陽同期成分によって引起されている事が示された