ビオトープ造成事業後の 環境評価に関する研究 〜地表性昆虫の多様性を用いて〜 ビオトープ造成事業後の 環境評価に関する研究 〜地表性昆虫の多様性を用いて〜 20214001 榊原里奈
目次 背景 目的 方法 結果 まとめ 考察
背景 先行研究として,これまで庄内川・矢田川ではゴミムシ類に関する調査が実施され (塚田2010),地表性昆虫の群集構造がビオトープの環境を反映したもの(環境評価指標)となることがわかった.
地表性昆虫とは ヨーロッパを中心に環境指標生物として注目
2011年9月,台風15号の影響により,庄内川が反乱危険水域を上回り水位が堤防を越え.その結果多くの土壌が流出し河畔林が流された.
目的 土壌流出や堆積が起こった環境では地表性昆虫類の群集構造はどのように変化するのかに着目する. 今後のビオトープの維持管理に役立てることを目的とする.
目的 調査にあたり以下の2つの予想を立てた. 1.2011年の河川環境の撹乱から約1年後, 植生は徐々に回復をみせているが,地表性昆虫群集は 植生は徐々に回復をみせているが,地表性昆虫群集は ほとんど回復していないのではないか. 2.河川環境の遷移が逆行したことによって,地表性昆虫群集構造が撹乱後侵入型中心の種構成となって,森林性スペシャリストがほとんどいなくなってしまったのではないか.
調査地 庄内川‐草地 庄内川‐湿地 庄 内 川 庄内川ビオトープ 清須市 矢田川‐林 庄 内 川 矢田川‐草地 矢 田 川 矢田川ビオトープ
調査地 湿地 庄内川ビオトープ (施工後5年目) 2012年8月のようす 河畔林 草地
調査地 矢田川ビオトープ (施工後3年目) 2012年8月のようす 河畔林 草地
方法(野外調査) 50cm 50cm 採集方法;ピットフォールトラップ,ベイトなし・保存液なし 各調査地点に10個,計50個設置 調査期間;8月〜12月,24時間ごとに回収,計10回 種類をその場で同定し,種数と個体数を記録, 撹乱以前のデータと調査期間を合わせて比較した.
結果 29種423個体 の昆虫類が採集された. 地表性昆虫は、 13種132個体が採集された.
矢田川(林) 矢田川(草) 2010年 2012年 オオヒラタシデムシ オオハサミムシ キンナガゴミムシ ムネビロハネカクシ ヒゲジロハサミムシ ミイデラゴミムシ オオアトボシアオゴミムシ ノグチナガゴミムシ アオゴミムシ 2010年 2012年 ミイデラゴミムシ アオゴミムシ オオハサミムシ クロゴモクムシ ヒロゴモクムシ オオアトボシアオゴミムシ オオヒラタシデムシ 腐肉食 肉食 草食 雑食 庄内川(湿地) 庄内川(林) 庄内川(草) 2010年 2012年 オオハサミムシ ケラ クロゴモクムシ ミカワオサムシ ウスアカクロゴモクムシ セアカヒラタゴミムシ ヒゲジロハサミムシ ナガヒョウタンゴミムシ 2010年 2012年 オオヒラタシデムシ オオハサミムシ コブマルエンマコガネ エンマコオロギ ヒゲジロハサミムシ ヤマトゴキブリ ツチカメムシ ツヅレサセコオロギ ミツノエンマコガネ 2010年 2012年 オオハサミムシ クロゴモクムシ ヒゲジロハサミムシ ウスアカクロゴモクムシ セアカヒラタゴミムシ エゾカタビロオサムシ エンマコオロギ
各地点でのみ 採取された種 ・各地点により 大きなばらつき ・周囲の生息地 から多く飛来 ・矢田川-林は 撹乱の影響が 少ない 調査地 庄内川 矢田川 合計 和名 湿地 林 草 ウスアカクロゴモクムシ 9 オオキンナガゴミムシ 1 オオアトボシアオゴミムシ 10 キボシアオゴミムシ ヒメキベリアオゴミムシ 2 マメコガネ サビヒョウタンゾウムシ ヒメスナゴミムシダマシ クロコガシラハネカクシ 個体数 23 27 種数 5 ・各地点により 大きなばらつき ・周囲の生息地 から多く飛来 ・矢田川-林は 撹乱の影響が 少ない
個体数,種数 2011年の撹乱の影響 をうけ,個体数・種数 ともに大きく減少した.
評価方法 除歪対応分析(DCA) 指数 内容 Simpsonの多様度指数 同時に取った2種が同種である確率 Shannonの多様度指数 情報量を種数に置き換えて定義 McIntoshの多様度指数 個体間距離に基づく指数 Margalefの多様度指数 種数を個体数(対数)で除した指数 Pielouの均衡度指数 個体数×多様度指数 森下の類似度指数 地域間の生物群集構造を比較した指数 木元の類似度指数 Hurbeltの期待種数 サンプリング中に含まれる種数の期待値 Chaoの期待種数 石谷の撹乱度指数 ゴミムシのニッチ幅による指数 除歪対応分析(DCA)
多様度
多様度
均衡度,期待種数(Pielow’s evenness index, Chao’s richness)
各地点の撹乱指数 ⑤ ④ ③ ② ① 1 1.5 2 2.5 3 3.5 撹乱度指数 山林 畑地 市街地 河川敷 5 4 3 2 1 矢田川-草地 5 ④ 4 矢田川-林 ③ 3 庄内川-草地 2 ② 庄内川-林 ① 庄内川-湿地 1 山林 河川敷 畑地 市街地 1 1.5 2 2.5 3 3.5 撹乱度指数
DCA(除歪対応分析) 2010年 第2軸 第1軸は撹乱頻度(昆虫の環境選好性)を示す 第1軸
DCA(除歪対応分析) 2012年
まとめ 河川環境撹乱前に比べて 地表性昆虫の群集は個体数・種数ともに減少した. 5地点中,4地点で上位5種の割合が増加した. 地表性昆虫の群集は個体数・種数ともに減少した. 5地点中,4地点で上位5種の割合が増加した. 多様度・期待種数が減少した. 各調査地点において 撹乱後侵入種にばらつきがみられた. 矢田川の河畔林では定着している固有種がみられた. DCA(除歪対応分析)の結果,値が分散せず, 分類分けができなかった.
考察 2つの予想 1.2011年の河川環境の撹乱から約1年後,植生は徐々に回復をみせているが,地表性昆虫群集はほとんど回復していないのではないか. 8月から9月にかけて,一般的な河川敷環境に見られる昆虫の大量発生が見られ,総捕獲個体数は撹乱以前の6割程度まで回復していることがわかった. 2.河川環境の遷移が逆行したことによって,地表性昆虫群集構造が撹乱後侵入型中心の種構成となって,森林性スペシャリストがほとんどいなくなってしまったのではないか. 撹乱後侵入種中心の種構成となっていた.森林性種などの環境の特性を示す種が矢田川の河畔林以外でほとんどみられず,撹乱の影響がいまだ残っていることがわかった.
ご静聴ありがとうございました.