当院における産休後の臨床復帰支援システム 「ブラッシュアップセミナー」 久留米大学医学部小児科学講座1) いとう小児科2) 聖マリア病院小児科3) 寺町麻利子1) 岡松由記1) 岩谷麻実1) 永光信一郎1) 武谷茂2) 松石豊次郎3) 山下裕史朗1) 日本小児科学会の定める利益相反に関する開示事項はありません 【はじめに】 医師全体に占める女性医師の割合は近年増加傾向である。 当院小児科でも医局員の約4割が女性である。 しかし出産、育児で一旦離職した女性医師はワークライフバランスやブランク期間のため復職に悩むことが多い。 多くの女性医師の声をもとに同門の開業医を発起人とし、H17年に臨床復帰支援システムである「ブラッシュアップセミナー」(以降、「セミナー」と略する)を設立した。 2. セミナーの実績 ① 参加者数の推移 (人) 熊大 1名 熊大 1名 佐賀大1名 参加者数は初回10名であったが、H26年は20名と徐々に増加。 HPでセミナーの案内をしており、近隣の他大学からの参加もあり。 H27年は参加者数が減少。 <設立当初の目的> 離職中医師の社会とのつながりの再構築 同じ立場の医師の情報交換 自分のモデルケースに出会う 講師(現役医師)との交流 復職をする 気持ちを引き出す ※ 再就職のコーディネートは医局長に委ねる 【目的】 H27年で第10回目を迎えたセミナーの運営の実際を紹介する 参加者の数や離職期間・勤務状況の推移など、10年間の変化を明らかにする 今後の展望と課題について述べる (年) ② 新規参加者のセミナー参加時までの離職期間 【方法】 セミナー参加者に以下のような項目のアンケートに記入してもらい、回収した。 (1.休職の開始時期、2.現在の勤務状況、3.次年度のセミナーについての希望) アンケート結果やセミナー実行委員の記録をもとに、セミナー初回(H17年)〜第10回目(H27年)の参加者の数や離職期間・勤務状況、講義テーマを抽出し、その推移を後方視的に検討した。 *離職期間:何らかの形で産休から復職するまでの期間 (常勤・非常勤など問わない。) (年) 回が進むにつれて新規参加者の離職期間が短くなる傾向にある。 一方で、離職期間が5、6年の医師も散在する 。 【結果】 1. セミナー運営の紹介 ①セミナー運営委員の構成 セミナーの講師 (H27年 配布・HP用のポスター) ★ ★ H27年の新規参加者はなかった。 <運営委員> 発起人 主任教授 医局長 女性医師支援担当 実行委員(4人) (年) ③参加者の勤務状況の変化(不明の9名を除く) 年々、常勤・非常勤医師が増加している。 H27年の参加者には休職中の医師はいなかった。 <セミナーの講師> 大学の各専門分野上級医 開業医 セミナー出身の医師 (人) 常勤 : 幼児研究所 医師 保健所所長 大学・市中病院勤務 開業 非常勤 : 大学専門外来・研究室・医学教育 講義は午前・午後1コマ90分ずつ 参加費は1回3000円(昼食代込み) 会場内に無料の託児室あり! ④ 講義テーマの変遷 ②実行委員の年間スケジュール ★準備 (2月〜5月) ①セミナーのテーマ決め ②講師への連絡 ③日程調整 ④会場予約 ⑤保育士の手配 ⑥案内状作成・送付 ★当日 (9月〜11月) ①会場準備 ②セミナー司会・進行 ③アンケート配布 ④会場後片付け ★終了後 (12月) ①アンケート集計 ②講師や参加者へのアンケート結果のフィードバック 毎年、臨床各論が主体であったが近年、「臨床up to date」の内容が増えている。 (年) ③講義テーマの種類 【考察】 <医師としてのあり方:総論> 小児科医らしいコミュニケーション・スキル 医療事故とトラブルを防ぐ 初期臨床診断のコツ 子供のこころ、母親のこころ <臨床各論> 小児科医のための心雑音・心電図 てんかん診療の基礎知識 健診で注意したいポイント 外来で処方する抗生剤 Lets study Allergy 小児消化器のプライマリーケア 知って得する腎臓の話 H17年よりH26年まで参加者数は増加傾向であった。 要因として考えられること ①新規参加者がいることもあるが ②セミナー参加者の常勤への復職が進んでいないこともある H27年は参加者が減少していた。 要因として考えられること ①H27年は新規参加者がいなかった ②常勤・非常勤医師の割合が増加したためセミナーに参加できる人数が減った 教育の場になると同時に、情報交換の場となっており、 医局との連携により、セミナーを契機に復職する医師が増えている。 <臨床up to date> 予防接種最新情報2011~2015 先天性代謝異常up to date 小児感染症の最近のトピックス 乳幼児のBasic Life Support ④セミナー運営における年間費用の内訳 (過去10回の年度ごとの費用の平均) 〜今後の展望と課題〜 初回参加時の離職期間は短くなっていく一方で、離職期間が5、6年の医師の新規参 加も散在する。また、参加者の勤務状況は様々であり、多様なライフスタイルの医師 が参加していた。 離職期間が短い参加者の要望に応えて、講義テーマも臨床up to dateの内容が増え ているが、離職期間の長い参加者も少数いるため、そのバランスが課題である。 参加者の要望に応じてセミナーの内容や形態も変えながら、 復職への架け橋となるセミナーでありたい。 収入 (円) 支出 会費 20.5万 講師謝礼 10万 医局費 14.5万 保育士謝礼 11万 会場費 14万 計 35万 セミナーのコマ数、参加人数や託児の人数が多い年度ほど費用は多くかかる。 不足分は医局費より補助している。 地元ホテルの協力により、会場は昼食代のみで使用できている。