バイオテクノロジー詳論 バイオインフォマティクスの医療への応用

Slides:



Advertisements
Similar presentations
理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 発生・再生科学総合研究センター. 発生メカニズムの解明 1つの受精卵からどの様にして複雑な個体が発生 するのか。 再生メカニズムの解明 生物はどのようなメカニズムで、怪我や病気、加齢で失った 組織や臓器を再生するのか。 再生医療への学術基盤の構築 細胞移植を中心としたヒトの再生医療に応用可能な発生・再生メカニズムの.
Advertisements

神経発育と精神疾病 趙春傑 東南大学基礎医学院教授.
日本バイオインフォマティクス学会 バイオインフォマティクス カリキュラム中間報告
第8回Gunma Lipid Forum 『多くのエビデンスが証明する Small Dense LDLコレステロール測定の重要性』
免疫細胞の遺伝子解析を活用した臨床・研究の広がり
千葉大学医学部附属病院【病院セミナー室3】 千葉市中央区亥鼻1-8-1
第12回京都のがん薬物療法を熱く語る会 日 時 :平成27年10月1日(木) 19:00~ 会 場 :メルパルク京都 6階 会議室C
エージェントモデル シミュレーション.
研究テーマ 福山大学 薬学部 生化学研究室 1) 脂質代謝を調節するメカニズムに関する研究 2) がん細胞の特徴と
モード付き並列機械における オンラインスケジューリング
Geneticsから Epigeneticsへ
リスクの把握と自己管理(ロードマップ) 安価なゲノム解析技術 (固定リスクの把握) 塩基配列情報
ヒトゲノムの違いから わかること 東京大学大学院医学系研究科 国際保健学専攻 人類遺伝学分野 徳永 勝士 川崎市立川中島中学校
千葉大学医学部附属病院【病院セミナー室3】 千葉市中央区亥鼻1-8-1
分子プログラミングとは 生体分子=情報処理装置 分子コンピューティング 分子プログラミング 化学反応の自律的制御 → 自身にコード化
高尿酸血症と心腎連関セミナーin岡山 『 糖尿病とinnate immunity -尿酸の病態への関与- 』 『慢性腎臓病における
セルロース学会北海道・東北支部セミナーの案内
第44回千葉県腎セミナー 『腎尿細管薬物輸送の分子機序 :OAT1同定から20年の進歩』 『我が国の半月体形成性腎炎の治療法と予後の変遷』
生物科学科(高分子機能学) 生体高分子解析学講座(第3) スタッフ 教授 新田勝利 助教授 出村誠 助手 相沢智康
『学術講演会』のお知らせ ~新薬の適正使用のために~ ~薬剤師が知らねばならないこと~』 日時/ 平成29年10月19日(木) 19時~
国立大学法人 豊橋技術科学大学 平成28年度 社会人向け実践教育プログラム 計算技術科学実践教育プログラム 最先端データサイエンス講座
血液学入門セミナー 第15回:悪性リンパ腫ってなぁに? 日時:2009年2月25日(水) 午後7時から
生物統計学・第2回 全体を眺める(1) 各種グラフ、ヒストグラム、分布
シミュレーション論 Ⅱ 第15回 まとめ.
コンゴー赤染色 (Congo red stain) アミロイド染色
奈良女子大集中講義 バイオインフォマティクス (9) 相互作用推定
第19回 HiHA Seminar Hiroshima Research Center for Healthy Aging (HiHA)
細胞周期とその調節.
米山研究室紹介 -システム制御工学研究室-
福島県立医科大学 医学部4年 実習●班 〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇、〇〇
細胞の形と変形のための データ駆動型解析手法
高脂血症.
2017年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第1回 情報検索(1) ビッグデータを眺める
産学連携BICSシンポジウム シリーズ3回 (日本化学会春期年会 平成18年3月28日)
群馬大学 理工学府・生体調節研究所 第21回 生命科学セミナー
社会シミュレーションのための モデル作成環境
2016/10/29 がんという病気を知っていますか? 岡山医療センター 消化器外科(大腸) 國末浩範(くにすえ ひろのり)
ゲノム科学概論 ~ゲノム科学における統計学の役割~ (遺伝統計学)
研究内容紹介 1. 海洋産物由来の漢方薬の糖尿病への応用
Chemistry and Biotechnology
酵母細胞プロジェクト研究センター 春期シンポジウム
疫学概論 疾病の自然史と予後の測定 Lesson 6. 疾病の自然史と 予後の測定 S.Harano,MD,PhD,MPH.
遺伝子診断と遺伝子治療 札幌医科大学医学部 6年生 総合講義 2001年4月16日 2019/4/10.
Environment Risk Analysis
「骨粗鬆症や癌を予防するビタミンDの作用メカニズム 」
ニューロマーケティング H 経営学科3年 李 ミヌ.
背景 課題 目的 手法 作業 期待 成果 有限体積法による汎用CFDにおける 流体構造連成解析ソルバーの計算効率の検証
『学術講演会』のお知らせ 参加 ・ 不参加 住所:福井市手寄1丁目4番1号 Tel: 『過活動膀胱の治療
遺伝性疾患・先天性疾患  染色体・遺伝子の異常とその分類  遺伝性疾患  先天性疾患.
眉山学術シンポジウム 「 新しい生理活性ペプチドの発見とその生理的意義 」 「 心血管内分泌代謝と臨床研究 」
研究科横断型教育プログラム(Bタイプ) 統計遺伝学 全5回
若手研究者・学生向けに,最新技術をわかりやすく紹介する講演会 確率的情報処理としての移動体通信技術
Department of Neurogenomics
遺伝的交叉を用いた 並列シミュレーテッドアニーリングによる タンパク質立体構造予測
構造的類似性を持つ半構造化文書における頻度分析
平成28年度前期 H 改訂.
名古屋大学 環境医学研究所 病態神経科学分野
高次元データにおける2次形式の近似について
先進予防医学共同専攻臨床疫学 臨床疫学とは 現在の取り組みと成果 研究材料・手法 未来のあるべき医療を見つめて改革の手法を研究します。 特徴
北海道大学病院 がん遺伝子診断部 ☎ (FAX; 7099)
11月21日 クローン 母性遺伝.
自然言語処理2015 Natural Language Processing 2015
細胞膜受容体-天然物リガンド間架橋に最適化した架橋法の開発
植物のCa2+-活性酸素情報伝達ネットワークと自然免疫・形態形成の制御
疫学概論 疫学研究の目的 Lesson 1. 疫学研究 §A. 疫学研究の目的 S.Harano,Md.PhD,MPH.
自然言語処理2016 Natural Language Processing 2016
集中講義(東京大学)「化学システム工学特論第3」 バイオインフォマティクス的手法による化合物の性質予測(1) バイオインフォマティクス概観
2018年度 植物バイオサイエンス情報処理演習 第9回 公共データバンクの代謝パスウェイ情報
分子生物情報学(0) バイオインフォマティクス
北大MMCセミナー 第100回 附属社会創造数学センター主催 Date: 2019年7月11日(木) 16:30~18:00
Presentation transcript:

バイオテクノロジー詳論 バイオインフォマティクスの医療への応用 バイオテクノロジー詳論 バイオインフォマティクスの医療への応用 2006年6月6日(火) 生物機能制御学講座 濱田浩幸

バイオインフォマティクス 生命科学と情報科学、情報工学が融合した学問分野。遺伝子解析情報を元に並列コンピュータで各遺伝子の機能予測実験を行なったり、データベース化された実験結果を元に遺伝子間の相互作用を予測したりするなど、主に遺伝子に関する情報をコンピュータによって分析する学問のこと。「生命情報学」「生物情報学」などと略される。遺伝子解析の進展により近年急激に発展している学問分野であり、各国の研究機関や民間企業による研究競争が激化している。 コンピュータ用語辞典 狭義の意味のバイオインフォマティクス

広義のバイオインフォマティクス 遺伝子に限らず生物の実験データをコンピュータで整理したり、解析すれば、 バイオインフォマティクスである。 遺伝子に限らず生物の実験データをコンピュータで整理したり、解析すれば、       バイオインフォマティクスである。  生命現象の解明のためのコンピュータツール  およびアルゴリズムの開発  生命現象に情報理論およびモデルを適用 生物学 情報科学 課題 手法 バイオインフォマティクス DNA二重 らせん構造 酵素反応 のM-M式

医療への適用 メディカル(医療)インフォマティクス 疾患の原因(遺伝子)の究明 合併症の機序(遺伝子間相互作用)の解明 遺伝子を用いた体質や薬剤耐性の判別 副作用(代謝経路)の検討 化学物質やタンパク質の立体構造解析 適正処方の検討 臓器のコンピュータシミュレーション ・・・・ 狭義

狭義の医療インフォマティクス 新薬の開発では、候補となる分子を選択する際に、薬効および薬物の安定性など様々な生化学実験を行い、最良の物質(分子)を選択しなくてはならない。この実験は大変な労働量を伴い、新薬開発の遅延原因の一つであった。 近年、DNAマイクロアレイ、DNAチップ、質量分析機によるタンパク質の同定などを利用することで、これらの実験を同時に進行させる、ハイスループット分析法が開発された。 これらの方法を用いれば、数千、数万という大量の実験結果を得ることができるが、その膨大なデータを整理して結論を導くことは非常に難しい。 情報科学的手法を用いて、これら大量の生化学実験データから新薬開発に重要な情報を抽出する。

広義の医療インフォマティクス Δ マルチフィジックス有限要素法と生体医工学への応用 Δ 人工関節の摩耗シミュレーションと設計 Δ マルチフィジックス有限要素法と生体医工学への応用 Δ 人工関節の摩耗シミュレーションと設計 Δ 肝炎治療における薬物応答性の予測 :          データマイニングによるSNP解析 Δ 腹膜透析療法プランニングソフトウエアの開発 Δ クリニカル・ゲノム・インフォマティクスの情報基盤 Δ バイオインフォマティクスの新しい挑戦課題:         核内受容体と生活習慣病 Δ 心血管系疾患の病因,病態形成機構における         ゲノム情報の意義と臨床応用への展望 日本バイオインフォマティクス学会 医療インフォマティクス講演会 060603

狭義の医療インフォマティクスの形態

アレイデータのクラスタリング(1) 対象とする遺伝子を抽出するための技術

アレイデータのクラスタリング(2) ノイズに強く、重要な遺伝子を正確にグループ化 V1・V2 :寄与度

アレイデータを用いた判別分析(1)

アレイデータを用いた判別分析(2)

アレイデータを用いた判別分析(3) A4用紙の配布資料を見て!

遺伝子間相互作用の推定(1)

遺伝子間相互作用の推定(2) A3用紙の配布資料を見て!

重要な遺伝子およびその代謝物が絞られたら、 計算機シミュレーション(1) 重要な遺伝子およびその代謝物が絞られたら、 関連する代謝系を解析する

計算機シミュレーション(2)

細胞周期G2/M phaseの 数理モデルの構築と網羅的システム解析 よろしくお願いします。 ↓ まず最初に細胞周期について説明させていただきます。

狭義の医療インフォマティクスの形態

広義の医療インフォマティクス Δ マルチフィジックス有限要素法と生体医工学への応用 Δ 人工関節の摩耗シミュレーションと設計 Δ マルチフィジックス有限要素法と生体医工学への応用 Δ 人工関節の摩耗シミュレーションと設計 Δ 肝炎治療における薬物応答性の予測 :          データマイニングによるSNP解析 Δ 腹膜透析療法プランニングソフトウエアの開発 Δ クリニカル・ゲノム・インフォマティクスの情報基盤 Δ バイオインフォマティクスの新しい挑戦課題:         核内受容体と生活習慣病 Δ 心血管系疾患の病因,病態形成機構における         ゲノム情報の意義と臨床応用への展望 日本バイオインフォマティクス学会 医療インフォマティクス講演会 060603

薬物経皮吸収システムの開発 鎮痛剤・更年期障害剤・強心剤 表皮 : 脂溶性 真皮 : 親水性 阻害剤・酵素・障壁 株式会社 JMSが開発いたしました腹膜透析プランニングソフトウェア 「PD NAVI」のご紹介をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。 まず、簡単にPD NAVI開発の背景につきまして、簡単にご説明いたします。 腹膜透析療法は、慢性腎不全患者の腎置換療法でございますが、腎臓の働 きから簡単にご説明いたしたいと存じます。 表皮 : 脂溶性 真皮 : 親水性       阻害剤・酵素・障壁

心拍調律メカニズムの解明 洞房結節 左心房 右心房 左心室 右心室 活動電位の伝播に伴う興奮現象の引き込み

腹膜透析療法プランニング ソフトウェアの開発 第二回日本バイオインフォマティクス学会 九州支部講演会・医療インフォマティクス 2006年 6月 3日 九州大学大学院農学研究院生物機能科学部門 大学院システム生命科学府生命情報科学講座 ○濱田浩幸 ・ 岡本正宏 ありがとうございます。九州大学の濱田と申します。このたびは、このような機会をいただき、ありがとうございます。 さて、今日は、末期腎不全療法の1つであります、腹膜透析療法の処方検討や腹膜の透析能力を評価するソフトウェアの開発につきまして、ご紹介させていただきます。よろしくお願いします。

まとめ 医療インフォマティクスは、遺伝子発現量を解析し、診断および処方設定に有効な知見(エビデンス)をもたらす。 臨床データを説明する数理モデルの設計、薬物の分子設計など、あらゆる医療に関連するデータの解析を、現在では、医療インフォマティクスとして認識している。

参考文献など 先端のゲノム医学を知る 著者:中村祐輔 わかる!使える! DNAマイクロアレイデータ解析入門 監訳:辻本豪三 他 先端のゲノム医学を知る 著者:中村祐輔 わかる!使える! DNAマイクロアレイデータ解析入門 監訳:辻本豪三 他 パターン識別 監訳:尾上守夫 ハーバード大学講義テキスト 生物統計学入門 監訳:竹内正弘 ゲノム情報生物学 監修:松原謙一 他 バイオインフォマティクス事典  編集:宮野 悟  他 コンピュータ言語 C言語など

どちらか1問を答えてください 1.バイオインフォマティクスを用いて、肝がんに罹患しているか否かを判別するシステムを開発する手続きを簡単に説明してください。 2.バイオインフォマティクスを用いて、糖尿病の対症療法であるインシュリンによる血糖値制御の投与計画を設計する手続きを簡単に説明してください。

細胞内シグナル伝達経路の シミュレーション STAT1の核移動 インターフェロン処理前 インターフェロン処理後1h フォスファターゼ STAT1の核移行 免疫系サイトカインの細胞内 シグナル伝達経路パスウェイ インターフェロン処理後6h

ホストディフェンスにおける シグナルパスウェイ解析 シミュレーション 情報駆動型創薬設計 フォスファターゼ阻害剤なし 通常の状態 フォスファターゼ阻害剤あり 核内フォスファターゼ 阻害がある場合 実際に実験をしてみると 確かにSTAT1は核の外に 出ていかなかった。 ホストディフェンスにおける シグナルパスウェイ解析 シミュレーション シミュレーションの結果、核内フォスファターゼ を阻害するとSTAT1は核から細胞質に戻れない と予想された。(赤は核内STAT1の量)