PF-ARフロントエンド部における冷却水流量計に関する評価 菊地貴司A)、渡辺一樹B)、兵藤一行A) A)高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 B)三菱電機システムサービス 1.概要 放射光科学実験施設のPF-ARでは、65億電子ボルト(6.5Gev)リングから発せられる放射光を用いて様々な実験が行われている。このリングから放射光を取り出す最上流のビームライン部分はフロントエンドと呼ばれている。フロントエンドとは加速器リングから出射される放射光を成型して、実験ステーションへ安全に供給または遮断をするとともに、真空を保護するための装置でもある。フロントエンドを構成するマスク、アブソーバーなどは放射光が当たることによって温度上昇し損傷するのを防ぐために、水を使った冷却が不可欠となっている。 今年度AR-NE5Cを建設した際に、フロントエンド部の冷却水流量計として導入した製品は、他のビームラインでも使用されている実績のある製品であったが、加速器運転が始まってから流量計測に関するエラーが頻発し、ビームラインインターロックが動作して加速器運転が停止してしまうことが頻発した。加速器運転が流量計のエラーによって停止する事が無い様に、応急的ではあるが講じたエラー対策と、新たに流量計の動作テストをオフラインで行った結果を報告する。 2.冷却水流量計の使用状況 この流量計は加速器リングトンネル内にあるフロントエンド部に使用されている(図1)。 流量計で測定された流量は電気信号として取り出され、実験ホール側に設置された東京電子製のウオーターフローディテクターで流量が表示される(図5)。また、ウオーターフローディテクターの出力から、横河電機製のネットワーク対応のデータアクイジションユニットMW100に取り込まれweb上でモニターできる。 3.対策 Ⅰ流量計のモニターを開始 Ⅱストレーナー交換、マグネット追加(ごみ対策) Ⅲテストベンチを構築し個々の流量計をテスト Ⅳフロントエンドモニターへの取込を開始 図3.モニター画面 図4.テストベンチ 図5.フロントエンドモニタ 図1.流量計使用状況 図2.流量計 5.流量計の設計変更 4. 流量計についての検証 流量計の取付方向を、図6の様に変えて流量測定を行った。 結果はどの取付方向でも気泡はすぐ に抜けることが観測されたので、取付 方向に留意する必要は無くなった。 しかし、取付方向によって流量に変化 があることと、流量が2L/m付近では不 安定だと言う事が分かった 流路が羽根車の下 流路が羽根車と水平 流路が羽根車の上 流路が垂直 図6.取付方向 図8.流路位置の変更 流路位置を3.5mmと1.5mm羽根車に近づけた流量計を試作した(図8)。 流路を変えた流量計を、それぞれ取付方向も変えて流量の違いが出るか測定した結果が図9である。 結果としては、3.5mm流路を近づけたタイプは理想値から少し離れるが流量の流量 が1L/min位から測定できている。これは、低流量域(数L/min程度)まで計測が必 要な我々の要求に適合している。取付方向で観てみると3.5mm流路を近づけたタイ プでは、流路が羽根車の上にくるように配管した物が理想値に近いといえる。 図7.取付方向の違いによる流量変化 6.まとめ 対策としては、流量計のモニターをすることによって動作不良を事前に知ることが出来るようになり、加速器運転が停止することを減らせるようになった。流量計の動作テストをして分かったことは、取付方向によって流量に違いが出てくること、3.5㎜流路を羽根車に近づけたタイプの方が流量が多く表示されると言う事である。同じ流量でも、流量が多く表示されると言う事はそれだけ安定して回っていると考えられるので、今後は流路を近づけたタイプの導入を検討したい。また、今回テストした流量計は冷却水がが真直ぐに抜けるタイプの物であった。PFリングの加速器グループで使用されている流量計は冷却水の入る位置と出る位置が90°換わっている流路がL型のタイプを使っている。今回のタイ プを I 型として、この二種類の流量計に関する評価、流路径の違いによる流量計測に関する評価を今後行う予定である 謝辞 流量計テストベンチ構築についてアドバイスと協力を頂いた内山隆司氏(KEK加速器)、飯島 寛昭氏、廣藤直也氏(三菱電機システムサービス)に感謝する。 図9.流路位置を変更して測定