東北地方太平洋沖地震と原発事故 福島第一原子力発電所の事故について
ウランの核分裂の模式図
核分裂とは何か 核分裂とは、原子核が分裂して異なる原子核になる現象です。原子炉の中で起こる現象では、ウラン235の原子核に中性子が飛び込むと、原子核は不安定な状態になり、分裂して異なる原子核に変わります。このときエネルギーが発生し、また同時に中性子も放出されます。この中性子が他のウラン235原子核に飛び込むとまた核分裂が起こります。このように核分裂が継続的に起こっている状態を核分裂連鎖反応といいます。
放射性ヨウ素 放射性ヨウ素 読み方:ほうしゃせいようそ 放射能をもつヨウ素で、数種類のものがある。特にヨウ素-131(半減期8.06日)、ヨウ素-133(半減期20.8時間)は、ウランの核分裂によって生成される。従って、原子力発電所の事故では、最も注目される放射性核種である。 チェルノブイル原子力発電所の事故では大気中に大量に放出され、幼児に大きな放射線障害(ヨウ素は、甲状腺に集まる特徴があるために、甲状腺被ばくによる甲状腺機能障害が発生)を引き起こした。 またこれとは反対に、ヨウ素-131は、医療用としても用いられ甲状腺機能検査、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう;hyperthyroidism)や或る種の甲状腺ガンの治療に用いられる。
セシウム137 セシウム137 (13755Cs, caesium-137)はセシウムの放射性同位体で、主に核分裂により生成する 30.1年の半減期を持ち[2]、ベータ崩壊によりバリウム137の準安定同位体、すなわちバリウム137m (137mBa, Ba-137m)になる(95%の崩壊がこの同位体を作り、残りの5%が基底状態の同位体を作る。)。バリウム137mの半減期は約2.55分で、これはすべてガンマ崩壊によるものである。1グラムのセシウム137の放射能の量は3.215 テラベクレル (TBq)である。
福島第一原子力発電所 1971年(昭和46年) 3月26日:1号機の 営業運転を開始する。 1号機 出力 46.0万KW 燃料 二酸化ウラン 2号機 出力 78.4万KW 3号機 出力78.4万 KW MOX燃料 (プルサーマル) 4号機 出力 78.4万 KW 5号機 [全て沸騰水型軽水炉]
軽水炉について (1)核分裂反応よって生じた熱エネルギーで軽水を沸騰させ、高温・高圧の蒸気として取り出す原子炉である。 (1)核分裂反応よって生じた熱エネルギーで軽水を沸騰させ、高温・高圧の蒸気として取り出す原子炉である。 (2)原子炉の種類は、使用する減速材、炉心から熱を取り出す冷却材などによって区別されています。わが国の原子力発電所では、アメリカで開発された「軽水炉」と呼ばれる原子炉が採用されています。 (3)この原子炉は軽水(普通の水)が減速材と冷却材に兼用されているのが特徴で、燃料には濃縮ウランを用います。 (4)軽水炉は世界の原子力発電の主流となっており、蒸気を発生させるしくみの違いによって沸騰水型炉(BWR)と加圧水型炉(PWR)の2種類に分けられますが、核分裂の方法や減速材として水を使う点は、どちらの形式も同一です。
沸騰水型原子炉
沸騰水型軽水炉
過去の主なトラブル 1976年4月2日 構内で火災が発生したが外部には公表されなかった。しかし田原総一郎に宛てた内部告発により事故の発生が明らかになり、告発の一ヶ月後東京電力は事故の発生を認めた。 1978年11月2日 3号機事故 日本初の臨界事故とされる。この事故が公表されたのは事故発生から29年後の2007年3月22日になってからであった。 1990年9月9日 3号機事故 主蒸気隔離弁を止めるピンが壊れた結果、原子炉圧力が上昇して「中性子束高」の信号により自動停止した。INESレベル2。 1998年2月22日 4号機 定期検査中、137本の制御棒のうちの34本が50分間、全体の25分の1(1ノッチ約15cm)抜けた。
福島第一原発事故の経過(1) (1)9.0の地震が襲ったとき、原子炉は全て自動停止プロセスに入った。地震発生から数秒後には制御棒が炉心に挿入され、ウランの核分裂連鎖反応は停止した。 (2)停止した後は、冷却システムが残留熱を取り除かねばならない。残留熱負荷は通常の運用条件の熱負荷のおおよそ3%だ。 (3)地震は原子炉のゲイブ電力供給を破壊した。1時間は物事はうまく進んだ。複数の緊急ディーゼル発電機のうちの1つが必要な電力を供給するために作動させられた。 (4)その後、津波が襲った。発電所設計時に想定されていた津波よりもより大きいものだ。津波は全てのバックアップのディーゼル発電機を破壊してしまった。
福島第一原発事故の経過(2) (5)燃料の覆いに対してある程度のダメージが生じる前に冷却系を回復させることは出来なかった。 (6)核燃料それ自体は未だ健在であるが、それを覆うジルコニウムの被覆が溶け始めた。 (7)今起こっていることは、ウラン崩壊の副産物のいくつか──放射性セシウムとヨウ素──が蒸気に混ざり始めたということだ。 (8)大事な点として、酸化ウランの燃料棒は3000℃まで大丈夫なので、ウランは未だコントロール下にあるということだ。ごく少量のセシウムとヨウ素が大気中に放出された蒸気の中から検出されている。
福島第一原発事故の経過(3) (9)検出された少量のセシウムによって、オペレータは、燃料棒の一つの第一の格納容器のどこかが破られたことを知る。 (10)圧力弁が解放されたときにいくらかの放射線物質が放出された。放射化した蒸気による全ての放射性同位体は無くなった(崩壊した)。ごく少量のセシウムとヨウ素が漏出した。 (11)福島第一原発で水素爆発や燃料棒の露出などの危険な状況が続く。 (12)使用済み燃料の貯蔵プールの水温上昇など、福島第一原発の各施設で重大な事象が多発している。
原発事故の緊迫した状況について (1)東京電力福島第1原発の高濃度放射能漏れ・爆発事故で、東電側が14日夜、同原発の職員全員を退去させる方針を政府に打診していたことが分かった。現地での作業継続は困難と判断したとみられ、自衛隊と米軍にその後の対応を委ねる構えだったという。 (2)菅直人首相は打診を拒否し、東電側も一部職員を残すことになったが、東電はその時点で高濃度の放射線被ばくが避けられない原子力災害に発展する可能性を認識していたことになる。
原子力施設への影響に伴う避難について 福島第一原発について (1)東京電力(株)福島第一原子力発電所から半径 20km圏内の住民の方は避難してください。 (2)半径20km以上、半径30km圏内の住民の方は外出しないで自宅や事務所など屋内退避するようにしてください。 福島第二原発について 東京電力(株)福島第二原子力発電所から半径 10km圏内の住民の方は避難してください。
原発事故と今後について (1)第一の格納容器には限定的なダメージがある。これは冷却水に幾らかの放射性セシウムとヨウ素が漏出したことを意味する。 (2)第三の格納容器内の冷却水を扱う施設がある。放射性セシウムとヨウ素はそこから除去され、最終的に最終処理場に放射性廃棄物として貯蔵されることになるだろう。 (3)冷却水として使われた海水はある程度放射化する。制御棒が完全に挿入されているため、ウランの連鎖反応は起こっていない。 (4)これは「主な」核反応が起こっていないことを意味し、放射化には関与しない。ウランの崩壊はずいぶん前に終了しているため、中間生成物の放射性元素(セシウムとヨウ素)はこの時点でほとんど消失している。 (5)燃料棒とプラント全体は潜在的なダメージをチェックされる。これには4~5年かかる。 (6)重要な問題は長期に渡る電力不足になると考えている。おおよそ半数の日本の原子炉はおそらく査察されなければならないだろう。これにより国家の15%の電力生成能力が失われる。 (7)炉心溶融が進む最悪のシナリオを通ったとしても、環境中への影響は極めて限定的に封じ込められることに留意して欲しい。40年前に建築された原子力発電所が、想定基準値をはるかに超えるM9.0という地震に遭遇し、その中で機能不全に陥りながらも最後の一線を超えないように現場の方々の不眠不休の努力が続けられている。
東京消防庁の連続放水
東京消防庁ハイパーレスキュー隊 原子力安全・保安院から、3月11日14時46分頃に発生した東北地方太平洋沖地震による原子力施設への影響についてお知らせします。 原子力発電所関係 ○福島第一原子力発電所 【放水関係】 ・東京消防庁ハイパーレスキュー隊が3号機の使用済燃料プールに向け放水作業を実施中。 放水開始(14:10)終了予定(24:30)
福島第1原発で爆発 1号機 ・福島第一1号機、核燃料の7割破損… 2号機 爆発 ・爆発音、福島2号機 「冷却」に欠陥、致命傷 安全3原則、破綻 3号機 水素爆発 ・3号機も爆発=原子炉は健全 4号機 爆発・火災 ・高濃度放射能漏れ 福島4号機で水素爆発 福島第1原発4号機、燃料プールの水温上昇 福島第一4号機で火災、爆発音も… 屋根には損傷・外壁に8m四方の穴が2ヶ所 福島4号機、格納容器損傷…高濃度放射能が拡散
福島原発近く海水から放射性物質 最大で基準の126倍 福島原発近く海水から放射性物質 最大で基準の126倍 東日本大震災で被害を受けた福島第一原発近くの海水から、最大で安全基準の126倍にあたる濃度の放射性物質が検出されたことを、東京電力が22日未明の記者会見で明らかにした。漁業への影響などを評価するため、今後も調査を続けるという。 東電によると、21日午後2時半に放水口付近で0.5リットルの海水を採取して調べたところ、ヨウ素131が原子炉等規制法の基準の126.7倍、検出された。この水を1年間、毎日飲み続けると、一般人の年間限度の126.7倍にあたる放射線を被曝(ひばく)することになる。このほかセシウム134が基準の24.8倍、セシウム137が16.5倍検出された。 こうした放射性物質は、魚などの体内にとりこまれて濃縮され、さらにその魚を食べた人の体に悪影響を及ぼす恐れもあるため、東電は今後も調査する。 海水への流入原因は今のところ不明。原発から漏れ出て空中を漂っていた放射性物質が雨とともに海中に落ちたり、使用済み核燃料を冷やすための放水作業で、地下にしみこんだ水が海に流れたりした可能性があるという。