T2K実験におけるニュートリノビームモニター(INGRID)の開発 京都大学 修士1回生 川向 裕之 他 T2K ND280mグループ JPS2007 @首都大学東京
Contents T2K実験の概要 INGRID Detector プロトタイプシンチレーターのテスト 結論
T2K実験の概要
T2K実験の概要 目的 ν ν J-PARC ν消失事象の精密測定 ν出現事象の探索 Super-Kamiokande e e μ J-PARCに前置検出器(ND)を設置、ニュートリノビームの種類・エネルギー及びフラックスを測定 → SKでの測定結果を予測!
前置検出器としてのINGRID Detector T2K実験⇒Off – axis法を用いることでSKで観測されるνのエネルギー領域を、振動確率が最大になるようにあわせることができる! しかし同時にビーム方向のずれに対して非常に敏感 以上より、親πビーム軸上、ターゲットから280mの位置に正しくニュートリノビームの方向を測るための検出器の設置は必要不可欠である!これを、 INGRID (Interactive Neutrino GRID Detector) とよぶ。 Tareget & horn 崩壊領域 したがって・・・ ビームダンプ *ニュートリノビームの方向を精度よく測る必要がある!! (← 28cm(off-axis 角にして1mrad)よりも十分よい精度) *ニュートリノビームは水平・上下方向ともに拡がりをもって入射 → ビームプロファイルをカバーするため、広範囲にわたる検出器でなければならない! 280m muon monitor
INGRID Detector ~Interactive Neutrino GRID Detector
INGRIDへの要求 ① Ⅰ.各モジュールの中でニュートリノイベントを見る! ν beam 10m x 10m 鉄(100cm x 100cm x 10cm)とシンチレーター(100cm x 100cm x 1cmが水平・鉛直方向の2層)のサンドウィッチ構造 鉄とニュートリノのCC反応で生じた荷電粒子(主にμ)を検出 シンチレーターを水平・鉛直方向ともにセグメント化 → 粒子の飛跡、エネルギーを測定 → CC反応を同定、かつニュートリノのエネルギーを再構成。
INGRIDへの要求 ② 本講演では、本実験で使用が検討されている二種類の シンチレーターの検出効率及び光量について、MPPCに Ⅱ.各モジュールでのイベント数からビームプロファイルを再構成! ニュートリノビームは拡がりを持って入射 → 少なくとも±5mをカバーしたい 右図は水平方向のビームプロファイルの図。鉛直方向に±50cmを積分したもの。 本講演では、本実験で使用が検討されている二種類の シンチレーターの検出効率及び光量について、MPPCに よる読み出しの結果を発表する。 各検出器でのニュートリノ反応のイベント数を数える。 イベント数分布に対してgaussian型を仮定してフィッティング → ビーム中心を再構成する!
プロトタイプシンチレーターのテスト実験
実験目的・方法 ・実機の候補となる二つのシンチレーターについて、宇宙線を用いて検出効率、及び光量を測定! INGRIDに対する要請より、トラッカーシンチレーターに *99.5%以上の検出効率 *12 p.e以上の光量 が要求される。 過去のビームテスト、MCシミュレーションなどから必要 ・実機の候補となる二つのシンチレーターについて、宇宙線を用いて検出効率、及び光量を測定! → 上記の要求を満たすかどうかを見る。 また、読み出しには新型光検出器「MPPC」を使用 PMTよりも大きな光量が期待 *詳細な特性については次の五味くんの トークを参考にしてください MPPC実物 (上)とコネクター with WLSF (下).
Candidate scintillators (top view) ロシアシンチ 厚さ : 1cm 10cm 100 cm サイバーシンチ(参考用) 厚さ : 1.3cm 80 cm フェルミシンチ 厚さ : 1.5cm これらのシンチレーターをWLSF (波長変換ファイバー)を用いて読み出す(φ=1mm) 40 cm
ロシアシンチ測定セットアップ 50cm Trigger 1 50cm MPPC PMT Trigger 2 20 cm 5 4 10 cm *3つのシンチレーターをトリガーにし、コインシデンスをとる。 *さらに場所ごとの光量・検出効率も測定 ←ファイバーによる減衰の影響を見るため. 20 cm 5 4 10 cm No1~5 はトリガースポット. スポット間は20 cm. 読み出しは PMT or MPPC 3 2 1 100 cm
検出効率、及び光量の定義 0.5 p.e以上のイベント数 検出効率 (%) = 全トリガーイベント数 Landau fitの平均 ー ペデスタル 光量(p.e) = 1p.e peakのch ー ペデスタル *ロシアシンチを読み出し口から10cmのところで測定したときのヒストグラム。 *赤い曲線はランダウ関数でフィットした図。 閾値=0.5p.e 以下、同じようにトリガースポットを遠くへずらしながら測定した結果を示す。
ロシアシンチ測定結果 光量(p.e) 30 検出効率(%) <横軸は読み出しからトリガースポットまでの距離(cm)。> 左図:青色がMPPC、赤色がPMTによる光量。 片側読み出しで十分な光量(平均24.5p.e、>12.0p.e) 右図:MPPCによる検出効率。閾値は0.5 p.e 現在のMCシミュレーションの要求 (>99.5%) を十分満たす。
フェルミシンチ測定セットアップ *約10日間、1000イベント毎に1ファイルで、5ファイルを測定 50cm Trigger 1 50cm MPPC Trigger 2 MAPMT *上からフェルミシンチ、サイバーシンチ、ロシアシンチ(S字) MPPCは温度変化に対して敏感→温度計を置き、温度依存性を見る。
ヒストグラム(0.5p.e の閾値でカット後) Russian Scibar Fermi
温度依存性の結果 ℃ 22 21 20 10日間 19 Run 1 Run 2 Run 3 Run 4 Run 5 50 40 30 *上のグラフが温度変化、下のグラフはフェルミとサイバーシンチの光量変化 ⇒期待通り、温度の上昇⇒光量低下、温度降下⇒光量増加の相関が見れる。
フェルミシンチ測定の結果 平均光量 (厚さによ る較正済み、p.e/cm) PMT読み出しでのサイバーシンチ及びMPPC読み出しでのロシアシンチの光量は、過去の実験データとコンシステント。 ロシア w/MPPC 25.9 44.8 サイバー w/MPPC フェルミ w/MPPC 32.7 *MPPC読み出しの場合、サイバー・フェルミシンチともに要求以上の光量が得られた! *10日間で温度依存性も、期待通りの相関が見られた(温度上昇→光量低下) ロシア w/MAPMT miss measured… サイバー w/MAPMT 10.8 フェルミ w/MAPMT 11.0
まとめ <結論と今後の課題> プロトタイプシンチレーターの評価・課題 *読み出しにMPPCを用いた場合、ロシアシンチよりもフェルミシンチのほうがより大きな光量を得られることがわかった。 *本実験でのファイバーのインストールまで考慮すると、フェルミシンチが望ましい。(ロシアのS字のインストール作業は大変。) ⇒MPPCの新しいパッケージとともに、より実機に近いタイプで期待通りの結果が得られるかを確かめる必要がある。 シミュレーションへのフィードバック *今回の実験結果をインプットとして、さらに詳細なバックグラウンドの見積もり、飛跡の再構成の確立を目指す。
Back Up
PMT読み出しによる結果 10 100 検出効率 予想よりもかなり悪い値。 (シミュレーションによる要請は検出効率>99.5%) 95 光量 (p.e) 検出効率 トリガーポジション(cm) トリガーポジション(cm) 予想よりもかなり悪い値。 (シミュレーションによる要請は検出効率>99.5%) 平均光量 = 98% 平均検出効率= 6.7 p.e
セグメント化された検出器 ~その2~ accept!! rejected セグメント化された検出器 ~その2~ Vetoシンチも同様にセグメント化する。 とりわけVetoではこのセグメント化が検出器外からやってくるバックグラウンドを除去する際に非常に有効に働く。 考えられるバックグラウンドの大部分はビーム上流の壁面でのニュートリノ相互作用によるもの(MCシミュレーションで検証) → バックグラウンドイベントは後方からのトラックとして再構成される。 ・ニュートリノの飛跡を再構成するために連続した三層にヒットがあることを要求 → このイベントをν‐CCイベントとしてアクセプトする。 もしヒットがあったトラッカーよりも上流のVetoにヒットがあった場合 mu accept!! rejected この場合、考えられるのは図のように検出器の外からニュートリノが降ってきた場合になる。 →このイベントはバックグラウンドとして除去!!
Result by MPPC (V = 70.0V ) bias efficiency 99.8 % 32.09 p.e 9.6 p.e Light yields ( By MPPC ) Light yields (by PMT) Trigger position efficiency 10cm (20cm) 99.8 % 32.09 p.e 9.6 p.e 30cm (60cm) 99.9 % 31.35 p.e 7.7 p.e 50cm (100cm) 99.9 % 25.63 p.e 6.4 p.e 70cm (140cm) 99.9 % 21.51 p.e 5.3 p.e 90cm (180cm) 99.6 % 14.3 p.e 4.8 p.e Same experimental setup as the past one ( by PMT ) .
MPPC shows good performance! 平均検出効率 = 99.8 % Summary for Russian scintillator *MPPC shows a greater performance than PMT for photon counting. *Light Yields and efficiency , shown above , meet the demand from current MC simulation.
光量のキャリブレーションと予想光量 Scibar 46.3 1.3cm 20cm 35.6p.e Fermi 49.3 1.5cm 20cm 別の実験で得られたデータから、FermiシンチとScibarシンチの厚さを考慮して光量を比較する。 別の実験 でのL.Y 読み出しまでの距離 厚さ 厚さ1cmの場合予想される光量 Scibar 46.3 1.3cm 20cm 35.6p.e Fermi 49.3 1.5cm 20cm 32.8p.e 実機で予定されているサイズで考えたときの光量の減衰を見る。(attenuation length = 350cm、クロストークの効果含む) 20cm 40cm 60cm 80cm 100cm Scibar 35.6p.e 31.7p.e 30.0p.e 28.3p.e 26.7p.e Fermi 32.8p.e 29.2p.e 27.6p.e 26.1p.e 24.6p.e
温度変化(グラフ) Run 1 Run 2 Run 3 Run 4 Run 5 20.3 21.3 21.0 20.4 20.1 18.9 Max 20.3 21.3 21.0 20.4 20.1 Min 18.9 20.3 20.0 19.5 19.5 Ave. 19.5 20.8 20.3 20.1 19.8
MC Simulationの内容 ν + N → l + N’ (N : nucleon) ν + N → l + N’ + π <ニュートリノイベントシミュレーション with geant4> [メインの反応は荷電カレント(CC)反応(73.7%)] CC-QE CC-1π CC-DIS CC-coherent π ν + N → l + N’ (N : nucleon) ν + N → l + N’ + π ν + N → l + N’ + mπ’s ν + O → l + O + π 16 16 [中性カレント(NC)反応も用いられている。(26.3%)] ・ NC – QE ・ NC – 1π ・ NC – DIS ・ NC – coherent π ν + N → ν+ N’ (N : nucleon) ν + N → ν+ N’ +π ν + N → ν+ N’ + mπ’s ν + O → ν+ O +π 16 16
系統誤差の考察 各検出器モジュールで測定されるニュートリノイベント数の系統的不定性に対する要請を求める必要がある! 陽子ビームのずれに対するINGRIDの感度→統計誤差を抑えればOK! 系統誤差の寄与は考えていない。 各検出器モジュールで測定されるニュートリノイベント数の系統的不定性に対する要請を求める必要がある! ◆各モジュールが系統誤差をもつと仮定。 ◆ニュートリノイベント数を変化させてビーム中心を再構成する。 結果 : 系統誤差を2%以内に抑えなければならない! <系統誤差の主な要因> バックグラウンド含有率の不定性 検出器の検出効率(tracker efficiency)の不定性 2006年12月26日現在までのシミュレーション結果より、シグナルに対するこのイベントレートは0.1%以下 十分無視できるレベル!
Tracker Efficiencyに対する要求 検出効率の変化に対するニュートリノイベント数と統計誤差の変化を見る。 イベントセレクション後の中心にあるモジュールでの検出効率とニュートリノイベント数及び統計誤差との間の相関 左下の図より検出効率1%の変化に対してニュートリノイベント数は約4%変化している。 ⇒ニュートリノイベント数の誤差を2%の精度で測定する場合、検出効率不定性を0.5%以内に抑えなければならない! Tracker efficiency(%) 4 Sys. error(%) 2 Trackerの平均検出効率 ⇒99.5%以上を要求!! 99% 99.5%
INGRID (neutrino beam monitor) 直接ニュートリノ反応を用いることで、ニュートリノビーム方向を測定 ・エネルギーが3GeV以下のニュートリノを測定する ← SKに届くエネルギー領域に対応する! ・ビームコミッショニング時には1ヶ月程度の統計量で測定、その後は1日毎の統計量でビーム強度および安定性をモニター。 295km SK 280m ビーム軸 Target ココ! <ミューオンモニター> ◆親πの崩壊で生成されるミューオンのエネルギー・方向を測定 ◆バンチ毎の計測が可能。
MPPC ( 新型光検出器) 読み出しの検出器としてMPPC(新型光検出器)をテスト WLSF内で発光される緑色の光に対してPMTよりも高い量子効率. 現在、T2K実験でのいくつかの検出器で使用予定。 詳細な特性については次の五味君のトークを参考に。 MPPC実物 (上)と コネクター with WLSF (下). MPPCでの1p.e peak