オンライン紛争解決(ODR) ~Eコマースにおける取り組み~ 2009.11.9 一般社団法人ECネットワーク 沢田 登志子 http://www.ecnetwork.jp/ 091109慶応義塾大学法科大学院
自己紹介 1984-2003 経済産業省に在籍 2003.4- 2006.3 次世代電子商取引推進協議会(ECOM)主席研究員 1984-2003 経済産業省に在籍 1998-2000 Eコマースの消費者保護政策を担当 2003.4- 2006.3 次世代電子商取引推進協議会(ECOM)主席研究員 インターネット関連ADR実証実験「ネットショッピング紛争相談室」運営 (経済産業省からの委託事業) *ECOM・・・Eコマース関連企業約300社を会員とする任意団体。1996年に設立され、B2B電子商取引に係る技術標準化等の活動を行う。 ・ 2006.4- 一般社団法人ECネットワークを設立 ECOM実証実験の成果(トラブル事例、解決ノウハウ)を、ネット販売を行う事業者(特に中小企業)に還元。 →目的:「安心して参加できるEコマース市場」構築 現在の会員数:140 (楽天、DeNA、ケンコーコム、その他中小ネットショップ、弁護士、研究者など)
ODR発展の(1つの)背景・・・Eコマース ◆インターネットの普及・商用化(1997~) →国境を越える消費者取引 →国境を越える消費者トラブル ◆電子商取引の発展には、市場全体の信頼醸成が重要 ・・・OECD電子商取引消費者保護ガイドライン →事前規制は無理・・・有効な紛争解決手段が不可欠 →しかし裁判は非現実的・・・国際裁判管轄?準拠法?? ⇒そこでADR ⇒しかもオンラインADR(ODR)
ODRの歴史 2004頃~ 実用化phase 1996頃 “hobbyist” phase(オタク期) 1997-1998 “experimental” phase(実験期) 1999-2000 “entrepreneurial” phase(ベンチャー期) 2001-2004 “institutional” phase(組織的取り組み期) ・・・公的組織、裁判所、既存ADR機関が本格的に参入 2004.8 全世界に115サイト(うち稼動中:82) ・北米→欧州・アジア。途上国でも開始。 ・mediationを行うサイトが最も多い。次に仲裁、苦情処理、自動交渉。 ・扱う紛争は、家族関係からドメインネーム、民族紛争等、多様。 ・「オフラインの紛争をオンラインで解決」も増加。 出典:“115 and Counting: The State of ODR 2004” Melissa Conley Tyler http://www.odr.info/unforum2004/ConleyTyler.htm 2004頃~ 実用化phase
オンライン相談の二国間連携 2001年~日米連携協定(Complaint Handling Agreement) ③合意フォーマットのメールで 苦情内容を伝達(英語) ⑧対応方針をメールで伝達 (英語) ④伝達 ⑦対応 ②苦情フォームに 入力(日本語) BBB地方支部 (Local BBB) ⑨対応方針をメールで 伝達(日本語) 日本の 消費者 ①売買契約 ⑤伝達 ⑥対応 米国・カナダの 事業者 (BBB会員/非会員) 【ADR連携の役割】 事業者への影響力 論点整理 翻訳(日⇔英) 【課題】 時間がかかる 人手がかかる
ODRプラットフォーム 2006~2007年 米・加⇔英 共通ウェブサイト (ODRプラットフォーム) TrustUK 米国・カナダの 2006年7月~10月に約800件 共通ウェブサイト http://www.crossborderadr.org/ (ODRプラットフォーム) TrustUK 共同運営 システム開発 (米国商務省の 補助金) ③自動的にメール (苦情が入ったことの通知 +ID, PW) ②苦情フォームに入力 ④対応をプラットフォームに 書き込む ⑤自動的にメール (対応が書き込まれたことの通知) 米国・カナダの 事業者 (BBB会員/非会員) ①売買契約 英国の 消費者 【ADR連携の役割】 事業者への影響力 【メリット】 効率化 事例の蓄積・共有
International Consumer Advisory Network (ICA-Net) EC business Country B CALO in Country G (ex) Industry Group ④ Request for response ② Create “Case Room” and invite CALO B CALO in Country B (ex) Industry Group ⑤ Inform about their response CALO in Country A (ex) ADR org. ⑥ Write in progress ① File a complaint ⑦ Receive a notification of writing Consumer Country A ③ Join the Case room Case Room 1 Wrong/broken goods ⑧ Provide information Case Room 5 Case Room 2 Fraud? ③ Join the Case room CALO in Country F (ex) TM org. CALO in Country C (ex) Consumer Group Case Room 4 Case Room 3 Law enforcement entities CALO in Country E (ex) Gov. CALO in Country D (ex) ADR org. ★ Exchange legal info Automatically created progress report ICPEN econsumer.gov Exchange information *CALO; Consumer Advisory Liaison Office 7
現在の参加国・参加機関 Singapore: Consumers Association of Singapore (CASE) Malaysia: National Consumer Complaint Centre (NCCC) Thailand: Department of Business Development (DBD) Vietnam: Vietnam E-commerce and IT Agency (VECITA) Taiwan: Secure Online Shopping Association (SOSA) US & Canada: BBB Japan: EC Network Consumers International (CI) UK: the Trading Standards Institute France: Forum des droits sur l'internet 8
Handled Cases on ICA-Net Case 1: 偽UGGブーツ・・・BBB トラストマークの不正使用 Consumer: Japan Business location: China CALO involved: EC Network (Japan), BBB (USA) 日本の消費者からECネットワークへの相談。オーストラリアのサイトと思ってUGG ブーツを買ったら、中国から偽物が送られてきた。 サイトには、BBB と TRUSTe のマークが掲載されているが、クリックしてもリンク先がない。 ECネットワークからBBBにその旨伝えたところ、BBBの法務部門から当該サイトに警告メールが送られ、翌日には全てのマークが削除されていた。
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Handled Cases on ICA-Net Case 2: ネガティブ・オプション Consumer: Japan Business location: Japan, US CALO involved: EC Network (Japan), BBB (US) 日本の消費者がソフトウェアをダウンロードで購入したら、オンラインゲームの権利がついてきた。申込み確認画面には「0円」と出ていたので、そのまま注文ボタンをクリックした。 1か月後にクレジットカードに月額980円の請求が来た。販売画面をよく見ると、「14日間の無料お試し期間後は有料」と小さく書いてある。 販売者は、米国企業の日本子会社。カスタマーサポートになかなか電話が通じなかった。ようやく連絡がつき、ゲームの契約は解除できたが、既に払った1か月分の料金は返金しないという。 この苦情をEC Network がBBBにつなぎ、BBBが、当該社の米国本社(BBB会員)に伝えたところ、返金に応じた。 しかし、「広告方法が欺瞞的である」という消費者の主張に対しては否定的な回答だったため、意見交換を続け、その結果、数ヵ月後に、「有料」の表示を大きくする等の改善がなされた。 また、この過程で、ネガティブ・オプションと呼ばれる販売方法に関する日米の考え方につき、有益な情報交換ができた。
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Handled Cases on ICA-Net Case 6: 詐欺的オークション代行業者 Consumer: France Business location: Japan CALO involved: EC Network (Japan), Related org: Forum des droits sur l‘internet (France), Cabinet Office (Japan) フランスの消費者が、代行業者を通じ、日本のオークションサイトで商品を落札。数ヶ月間で、47アイテム分の代金・手数料・送料を支払ったが、商品が送られてこない。 フランスのインターネット専門ADR機関(FDI)から日本の内閣府に苦情が伝えられ、ECネットワークが紹介された。 ECネットワークが、消費者から詳しい事情を聞いた上で代行業者にコンタクトしたが、電話番号は使われておらず、事務所を訪ねたが既に退去していた。
ICA-Netの意義と課題 1. 個別紛争解決 2. 情報交換・情報共有 3. 紛争予防 4. 商慣行の改善 - 課題 - - 意義 - 1. 個別紛争解決 2. 情報交換・情報共有 3. 紛争予防 4. 商慣行の改善 - 課題 - ・ネットワーク拡大 ・法執行機関等との連携 14
Thank you! 沢田登志子 sawada@ecnetwork.jp