光化学 5章 5.2 Ver. 1.0 FUT 原 道寛.

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FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
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光化学 5章 5.2 Ver. 1.0 FUT 原 道寛

問題5.2章 次の化合物の名前を日本語で記せ。 A B C D Cr E F G H Mo W I J K L

問題5.2章 溶媒の粘度と拡散速度との関係を示せ (1文字0.5 pt) 100文字

問題5.2章 S1分子(1M1*)のτs = 100 nsをBと光化学反応させ、50%以上が反応するには、Bの濃度をどのくらいする必要があるか? 100文字

光化学I 5章 光化学における時間スケール 5.1光の吸収・放出と分子運動 5.2励起状態分子の動的挙動 “光化学”を学ぶにあたって 序章 光とは何か 1章 分子の電子状態 2章 電子励起状態 3章 分子と光の相互作用 4章 光化学における時間スケール 5.1光の吸収・放出と分子運動 5.2励起状態分子の動的挙動 5.2.1 励起状態からの物理過程の時間領域 a.放射過程ー蛍光およびリン光 b.無放射過程ー内部変換および項間交差 5.2.2 励起状態における化学過程の時間領域 a.一分子反応過程 b.分子間反応過程 5章 分子に光をあてると何が起こるか 6章 光化学の観測と解析 7章 どのように光を当てるか 8章 光化学の素過程 9章 光化学反応の特徴 10章

それぞれの分子に固有の寿命 =時間スケールを持っている。 光吸収して励起状態になった分子 5.2 励起状態分子の動的挙動 それぞれの分子に固有の寿命 =時間スケールを持っている。 光吸収して励起状態になった分子 励起状態から起こる 化学過程と物理過程を含む すべての速度定数の和(∑ki)の逆数 最も速い過程の速度 =寿命に最も大きな影響 励起状態の寿命 A B C D E F G

5.2 励起状態分子の動的挙動 A B

5.2.1 励起状態からの物理過程の時間領域 a.放射過程_蛍光およびリン光 ⇒電子遷移の最大吸収波数(n0)と遷移確率(f)に依存。(式5・1) 蛍光やりん光などの放射速度定数kem 遷移の吸収帯の最大分子吸光係数εmaxに比例。 遷移確率 εmax≧104では、f~1:許容遷移 p-ターフェニル・アントラセンのππ*遷移 εmax~102では、f ~ 10-3 ベンゼンの長波長ππ*遷移 ベンゾフェノンのnπ*遷移 f < 10-5、f は数ケタ変化 スピン禁制であるS0 → T1遷移 A B C D E F G H I

5.2 励起状態分子の動的挙動 kem=4倍のみ:影響は少ない ∴遷移確率 fによって決定。 5.2 励起状態分子の動的挙動 kem=4倍のみ:影響は少ない ∴遷移確率 fによって決定。 v0 = 4 x 104 cm-1 ⇒ 2 x 104 cm-1 励起一重項状態の寿命(τs) 三重項状態(τT) ≠放射過程の速度定数(kF&kP) 実測の蛍光寿命&燐光寿命 A B C D E F

εmax=3 x 104 (f = 1) :許容ππ*遷移の吸収 kem=? 実測蛍光寿命τF=1 ns 蛍光量子収率ΦF=1 放射速度定数の計算 p-ターフェニル 330 nm(ν0=3 x 104 cm-1) εmax=3 x 104 (f = 1) :許容ππ*遷移の吸収 kem=? 実測蛍光寿命τF=1 ns 蛍光量子収率ΦF=1 蛍光放射速度定数 kF=1*(ΦF*τs)-1=109 s-1=kem:上限 A B C

εmax~20 (f~10-4):禁制度の高いnπ*遷移 kem=(3.7 x 104)2 x 10-4 ≈ 105 s-1:下限値 放射速度定数の計算 270 nm(ν0~3.7 x 104 cm-1) εmax~20 (f~10-4):禁制度の高いnπ*遷移 kem=(3.7 x 104)2 x 10-4 ≈ 105 s-1:下限値 蛍光過程よりきわめて速い その他の過程が存在 ⇒蛍光:きわめて弱い&認められない。 アセトン 予測される蛍光放射速度(kF<107 s-1) <<<項間交差が極めて速い(kISC~1011 s-1) ベンゾフェノン:蛍光は示さない A B C D E F H G

通常の有機化合物のS0⇒T1吸収 :禁制遷移=観測されない。 遷移金属:M(CO)5(NHEt2)(M=Cr, Mo, W) スピン禁制であるりん光 重原子効果によって弱い明確なS0⇒T1吸収 重原子を有する化合物 ~400 nm,ε~5000:配位子場遷移 比較的強い吸収 Wのみ、約440 nm:S0⇒T1遷移 錯体:533 nm:りん光 りん光寿命 5.1 μs (77 K) ε≦102  ⇒りん光放射速度定数≦106 s-1:上限値 通常の有機化合物のS0⇒T1吸収 :禁制遷移=観測されない。 遷移金属:M(CO)5(NHEt2)(M=Cr, Mo, W) A B C D E F G H I J K

アセトフェノン&ベンゾフェノン: 10 cm以上の長い光透過経路 スピン禁制であるりん光 nπ*S0⇒S1吸収より長波長側 εmax:1~10-2:nπ*S0⇒T1吸収 kem=1.0~102 s-1 Bp:kP=1.2 x 102 s-1 アセトフェノン&ベンゾフェノン: 10 cm以上の長い光透過経路 ππ*S0⇒T1吸収:弱い かろうじて、ヨードエタン溶媒中で観測される。 kp<1.0 s-1であり、ナフタレンのりん光寿命=数秒 競争反応が速いため、 室温の流動溶液中ではりん光が観測されにくい。 π共役構造の芳香族化合物 A B C D E F G H

b.無放射過程 内部変換および項間交差 過程 内部変換 項間交差 放射過程とは違う 機構・時間スケール 無放射過程 A B C D

内部変換 速度 振動モードの相違 S1状態の最低振動状態(v’=0) ⇒S0の高振動状態(v>>1)への移行 b.無放射過程:内部変換および項間交差 内部変換 S1状態の最低振動状態(v’=0) ⇒S0の高振動状態(v>>1)への移行 速度 両者の振動波動関数の 重なり(Franck-Condon因子)に依存 =ゆっくりした振動(v’=0)が激しい振動(v>>1)に 突然変わるのは本来困難。 =両者の振動状態の相違が大きければ大きいほど困難 振動モードの相違 S0とS1間のエネルギー差(ΔE:kJmol-1)に依存。 内部変換速度定数kIC(式5・2) A B C D E F G H I J

典型的な有機化合物や遷移金属錯体のS0⇒S1間 b.無放射過程 内部変換および項間交差 典型的な有機化合物や遷移金属錯体のS0⇒S1間 ΔE=209~418 kJmol-1(50~100 kcal mol-1) kIC=106-108 s-1 高いS2とS1の間 ΔE<126 kJmol-1 (30 kcal mol-1) = kIC> 1011 s-1 S2⇒S1への内部変換はきわめて速い ∴S2⇒S1およびS2⇒S0の過程の蛍光は観測されない。 アズレン ΔE~167 kJmol-1(40 kcal mol-1):S2⇒S0の蛍光 ポルフィリン S2⇒S0の蛍光 A B C D E F G H

ベンゾフェノンのS1(1nπ * )⇒T1(3nπ * ) 異なったスピン状態間の無放射過程 項間交差 S1⇒T1、S1⇒T2、T1⇒S0 速度を決定 スピンー軌道相互作用の程度 二つの状態間のエネルギー差(ΔEST):表5,2 ベンゾフェノンのS1(1nπ * )⇒T1(3nπ * ) 速度:~1011 s-1 S1(1nπ*)⇒T2(3π π*)の項間交差過程+ T2(3ππ*)⇒T1(3n π*)の内部変換過程 S1とT2の間のΔESTが小さいことによる速い項間交差。 もう一つの原因:S1-T2間のスピンースピン相互作用 A B C D E F G H I J K

S1(1nπ*)の電子配置 T2(3ππ*)の電子配置 項間交差において π(↑↓)n(↓)π*(↑) π(↑)n(↓↑) π*(↑) スピンー軌道相互作用も・・・ S1(1nπ*)の電子配置 π(↑↓)n(↓)π*(↑) T2(3ππ*)の電子配置 π(↑)n(↓↑) π*(↑) 項間交差において π軌道(pz軌道)の電子1つは 直交するn軌道(py軌道)の波動運動に変わる。 ⇒軌道運動によって作られる 電場と磁場に大きな変動を引き起こす ⇒電子のスピン運動も影響 ⇒異なったスピン状態への変化に対する禁制度を弱める。 A B A B C D E F G H

アセトン ナフタレン 1nπ*⇒3nπ*:電子の軌道運動変化なし ⇒スピンー軌道結合 アセトン << ベンゾフェノン 項間交差 アセトン 1nπ*⇒3nπ*:電子の軌道運動変化なし ⇒スピンー軌道結合  アセトン << ベンゾフェノン 項間交差:3倍近く遅い。 ナフタレン 1ππ*→3ππ*と軌道運動に変化なし スピンー軌道相互作用:小さくなり ΔEST~126 kJmol-1 (30 kcal mol-1) アセトンと比べて遅い。 A B C D E F

スピンー軌道相互作用の 大きいも一つの例 ナフタレンと1-ブロモナフタレンの 項間交差速度の比較 3桁違う。 原子にはスピン軌道結合定数(ξ) =原子番号が大きい原子ほど大きい。 Br原子(Z=35)、 ξ=29 kJmol-1(7.0 kcal mol-1) A B C D ξ:クサイ

重原子効果が顕著な場合:[Ru(bpy)3]2+ 2価のRuII原子に2,2’-ビピリジン(bpy)が3分子配位した化合物 ~450 nm S0→S1遷移 吸収 Ruのdπ軌道電子 →bpy配位子のπ*軌道へ励起 =MLCT遷移(metal-to-ligand charge-transfer transition) 励起 蛍光を発しない >1011 s-1で三重項T1、3MLCT*に項間交差 室温で、~1 μsの強いりん光、615 nmを示す。 S1の1MLCT*励起後 Ru原子による重原子効果によって スピン反転を伴う項間交差やりん光過程の効率(速度)が高くなった 効果 A B C D E F G H I J K L M N O

5.2.2励起状態のおける 化学反応の時間領域 励起分子が単分子的に化学反応する場合の時間限界は? a.一分子反応過程 速度:1012~1014 s-1=化学過程の速度の限界 結合の解裂が1回の振動の間に起こるとする 蛍光放射速度の上限 109 s-1=ほぼ起こらない。 三重項状態:ほとんど生成しない。 起こる現象は? A B C D E F

遷移金属カルボニル錯体 M(CO)6 M=Cr, Mo, W 非常に速い光化学反応の実例 220 nm ε~160 M-1 cm-1 結合解裂(HI → H + I) 量子収率=1 速度 109 s-1以上 よう化水素(HI) CO配位子を放出、量子収量=1 遷移金属カルボニル錯体 M(CO)6 M=Cr, Mo, W A B C D E F

非常に速い光化学反応 効率的な合成法 化学過程の速度が蛍光放射速度の 下限値より小さい場合 言い換えると 配位不飽和種M(CO)5に他の配位子L(ピリジン、ホスフィン)を配位。 化学過程の速度が蛍光放射速度の 下限値より小さい場合 S1からの化学反応は起こらないか、効率が低い 言い換えると S1で反応が効率よくおこるための速度 約106 s-1が下限 A C B D

寿命の長いT1では・・・。 T1での反応 寿命が長いので、化学反応が関与する確率は高い!! 例:ノリッシュII型(Norrish Type II) A B C F D E G I H

β開裂 nπ*励起状態のカルボニル基が γ位の水素原子を引きぬく: 速度109 s-1内外 1,4-ビラジカル生成 T1からの化学反応 nπ*励起状態のカルボニル基が γ位の水素原子を引きぬく: 1,4-ビラジカル生成 オレフィンとエノール (最終にはケトン)が生成 速度109 s-1内外 β開裂 A B C D E F G 109 s-1 =1 Gs

5-メチル-2-ブタノンの場合 S1でも水素引き抜きが起こる しかし、S1の反応量子収量は0.3 T1への項間交差が比較的遅い A B C D E

b.分子間反応過程 二つの分子が相互作用するために 媒質の中を分子が動き回ること =拡散(diffusion)媒質分子を押しのけながら動く 反応に有効な距離=有効衝突半径内に 媒質の中を分子が動き回ること =拡散(diffusion)媒質分子を押しのけながら動く 媒質の粘度 押し退けるためのエネルギー 拡散速度kdif 温度が高いほど、大きい 粘度が小さいほど、大きい A B C D E 化合物 拡散速度 ペンタン 3 x 1010 M-1 s-1 ベンゼン 0.5-1 x 1010 M-1 s-1 メタノール エタノール グリセリン 4 x 106 M-1 s-1 F I G J H K

拡散律速反応 (diffusion controlled reaction) 分子間反応速度 分子間反応速度 拡散速度+何回衝突すれば反応が起こるか? 有効衝突によって決定 拡散律速反応 (diffusion controlled reaction) 1回の衝突で起こる反応 分子間反応速度の上限 出会い錯体形成概念も必要である。(7章) A B C D E F G

酸素分子による消光反応 酸素分子 拡散律速で酸素が 励起分子を消光する速度 基底状態が常磁性の三重項 S0とS1の差は95 kJ mol-1 と小さい 1回の衝突で励起分子を消光できる。 有機溶媒中の酸素濃度 ~10-3 M 拡散律速で酸素が 励起分子を消光する速度 kdifx[O2]≒1010 M-1s-1 x 10-3 M=107 s-1 A B C D E F G H I

消光と励起状態(S1)が 失活する速度(寿命の逆数) kdifx[O2]≒ 1010 M-1s-1 x 10-3 M=107 s-1 消光と励起状態(S1)が 失活する速度(寿命の逆数) S1の寿命は10-8 sより短い S1は酸素によって消光される速度より 1桁以上早く失活 S1の酸素による消光は部分的である。 A B C D E

消光と励起状態(T1)が失活する速度(寿命の逆数) kdifx[O2]≒1010 M-1s-1 x 10-3 M=107 s-1 消光と励起状態(T1)が失活する速度(寿命の逆数) T1の寿命は10-6 sより長い⇒106 s-1 T1の失活速度の100倍以上も大きい T1はほぼ完全に消光。 有機化合物のりん光放射速度102 s-1より遅い 同じことが酸素以外でも言える!! 液体窒素温度77 Kで固めた状態 拡散速度は無視=分子間消光は起こらなくなり、 りん光検出。 A B C D E F G H

過程:~13 kJ mol-1 (3 kcal mol-1)以上 典型的な分子間光反応の初期過程 A B C 分子間光反応の初期過程 エネルギー移動 電子移動 励起錯体の形成 過程:~13 kJ mol-1 (3 kcal mol-1)以上 発エルゴン性(exergonic)⇒拡散律速過程 D E F

1M1* + M2ー(拡散律速反応) → 50%以上が反応するには? 光化学反応を効率よく行わせる方法 S1分子(1M1*) τs = 50 ns 1M1*  + M2ー(拡散律速反応) → 50%以上が反応するには? M2=2 x 10-3 M以上である。 A B C

参考文献 光化学I 井上ら 丸善(株)