基礎ゼミ資料 波としての光 H22年 4月19日 山田 博仁.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
レーザーとは 応用プロジェクト I レーザ誘起化学反応の直接追跡 (担当:勝村庸介、工藤久明、石川顕一) 石川顕一.
Advertisements

基礎セミ第7章 (1-4) 偏光のしくみと応用 12T5094E 龍吟. 目次 光の偏光とは? 複屈折とは? 偏光を作り出すもの (偏光プリズム、偏光板、位相板)
前時の確認 身のまわりで電波が使われているものは?
光の回折 鳥取工業高等学校 足利裕人.
生体分子解析学 2017/3/2 2017/3/2 機器分析 分光学 X線結晶構造解析 質量分析 熱分析 その他機器分析.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/5講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
       光の種類 理工学部物理科学科 07232034 平方 章弘.
基礎ゼミ資料 波としての光 H23年 5/16, 5/23, 5/30, 6/6 山田 博仁.
物理Ⅰの確認 電波(電磁波)は 電流の流れる向きと大きさが絶えず変化するときに発生 ・電場と磁場の方向は直角に交わっている(直交している)
木下基、Manyalibo J. MatthewsA、秋山英文
電磁気学C Electromagnetics C 7/1講義分 光導波路と光共振器 山田 博仁.

5.アンテナの基礎 線状アンテナからの電波の放射 アンテナの諸定数
前回の内容 結晶工学特論 第4回目 格子欠陥 ミラー指数 3次元成長 積層欠陥 転位(刃状転位、らせん転位、バーガーズベクトル)
量子ビーム基礎 石川顕一 6月 7日 レーザーとは・レーザーの原理 6月21日 レーザー光と物質の相互作用
基礎ゼミ 光学のすすめ 第15章 光を用いた情報機器
光の干渉.
前回の内容 結晶工学特論 第5回目 Braggの式とLaue関数 実格子と逆格子 回折(結晶による波の散乱) Ewald球
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 7/7講義分 電磁波の偏り 山田 博仁.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/11講義分 電磁波の偏り 山田 博仁.
黒体輻射とプランクの輻射式 1. プランクの輻射式  2. エネルギー量子 プランクの定数(作用量子)h 3. 光量子 4. 固体の比熱.
ナノデザイン特論2 レーザーの基礎
量子ビーム基礎 石川顕一 6月 7日 レーザーとは・レーザーの原理 6月21日 レーザー光と物質の相互作用
分布定数回路(伝送線路)とは 電圧(電界)、電流(磁界)は回路内の位置に依存 立体回路 TE, TM波
トリガー用プラスチックシンチレータ、観測用シンチレータ、光学系、IITとCCDカメラからなる装置である。(図1) プラスチックシンチレータ
電磁気学C Electromagnetics C 6/12講義分 光導波路と光共振器 山田 博仁.
光ファイバー通信入門 通信システム工学B 山田 博仁 Communication Systems Engineering B
電磁気学C Electromagnetics C 5/28講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
電磁気学C Electromagnetics C 6/8講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
黒体輻射 1. 黒体輻射 2. StefanのT4法則、 Wienの変位測 3. Rayleigh-Jeansの式
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/30講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/12講義分 電磁波の偏り 山田 博仁.
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
電磁気学C Electromagnetics C 6/5講義分 電磁波の偏波と導波路 山田 博仁.
高エネルギー陽子ビームのための高時間分解能 チェレンコフビームカウンターの開発

電気回路学 Electric Circuits 情報コース4セメ開講 分布定数回路 山田 博仁.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/4講義分 電気双極子による電磁波の放射 山田 博仁.
電磁気学C Electromagnetics C 6/17講義分 電磁波の偏り 山田 博仁.
光スイッチングデバイス.
宇宙線ミューオンによる チェレンコフ輻射の検出
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/9講義分 電磁場の波動方程式 山田 博仁.
1.光・音・力.
電磁気学C Electromagnetics C 5/29講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 5/23, 5/30講義分 物質中でのMaxwell方程式 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
レーザについて レーザについて チョット 学習しましょう!.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/11講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 5/29講義分 電磁場の運動量 山田 博仁.
機器分析学 旋光度 旋光分散スペクトル 円偏光二色性(CD)スペクトル.
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/14講義分 電磁波の偏り 山田 博仁.
マイクロ波生成プラズマの分光測定 環境計測 高橋 順三.
外部共振器型半導体レーザー装置の製作 物理工学専攻 小菅 洋介 (M1) 〔指導教員: 熊倉 光孝〕
Winston cone を用いた チェレンコフカウンター
電気回路学 Electric Circuits 情報コース4セメ開講 分布定数回路 山田 博仁.
それでは,室内向けレーザーレーダ用の「レーザーレーダパネル」について,その動作原理を説明します.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/6講義分 電磁波の偏り 山田 博仁.
電磁気学C Electromagnetics C 5/20講義分 電磁場の波動方程式 山田 博仁.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 5/22, 5/29講義分 物質中でのMaxwell方程式 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/6講義分 電磁波の偏り 山田 博仁.
生体分子解析学 機器分析 分光学 X線結晶構造解析 質量分析 熱分析 その他機器分析.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 5/28, 6/4講義分 物質中でのMaxwell方程式 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
電磁気学C Electromagnetics C 7/10講義分 電気双極子による電磁波の放射 山田 博仁.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/25講義分 電磁波の偏り 山田 博仁.
教育学部 自然環境教育課程 天文ゼミ 菊池かおり
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/11, 6/18講義分 物質中でのMaxwell方程式 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
振幅は 山の高さ=谷の深さ A x A.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/7講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
シンチレーションファイバーを 用いた宇宙線の観測
60Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定―
Presentation transcript:

基礎ゼミ資料 波としての光 H22年 4月19日 山田 博仁

受講生 松澤 智(B0SB2104)理学部物理学科、田守 未来(B0MB2051)医学部保健学科看護学専攻、 工藤 海(B0TB1088)工学部機械知能・航空工学科、木所 一祥(B0TB2071) 工学部情報知能システム総合学科、 小村 駿(B0TB2085)工学部情報知能システム総合学科、宮本 和紀(B0TB4111) 工学部材料科学総合学科

スケジュール 回 日 時 場所 テーマ 担当 第1回 4/19(月) 16:20~ 202 波としての光の性質 山田  回     日     時    場所     テーマ        担当 第1回  4/19(月) 16:20~  202  波としての光の性質   山田 第2回  4/26(月) 13:30~  202  レーザーの基礎     山田 第3回  5/10(月) 14:30~  202  ホログラムの実験    山田 第4回  5/17(月) 13:30~  202  まとめ            山田 第5回  5/24(月) 13:30 ~ 506  レーザー         松浦先生 第6回  5/31(月)   ? ~   ?   レーザー         松浦先生 第7回  6/7(月)    ? ~   ?   レーザー         松浦先生 第8回  6/14(月)   ? ~   ?   レーザー         松浦先生 第9回  6/21(月)   ? ~   ?   超音波           梅村先生 第10回 6/28(月)   ? ~   ?   超音波           梅村先生 第11回 7/5(月)    ? ~   ?   超音波           梅村先生 第12回 7/12(月)   ? ~   ?   超音波           梅村先生

各種電磁波の波長と周波数 光は電磁波の一種 !! 電磁波の伝搬速度: 真空中では約30万km/秒 屈折率nの媒質中では、

電磁波の基本的性質 電磁波は、電界(電場)と磁界(磁場)が横波として伝搬していくもの 電磁波は、真空中や空気中など、何もないように見える空間でも伝わる エーテル(電磁波を運ぶ媒体)は存在しない 磁界 電界 光の進行方向

偏光(偏波) 振動面 電界の波 光の進行方向 磁界の波 偏光面 直線偏光 光の進行方向と磁界ベクトルを含む面を光の偏りの面又は偏光面、また、光の進行方向と電場ベクトルを含む面を振動面と呼ぶ 偏光面が回転しながら伝搬する光もあり、楕円偏光や円偏光と呼ばれている 電界の波 左旋性円偏光

偏光 電界の振動方向がバラバラ 振動方向に「偏り」がない 「偏光していない」という 太陽や電球などからの光 レーザー 光の電界 ある特定方向に振動する成分が多い 振動の向きに「偏り」がある 「偏光している」という 水面や路面での反射光 ※人間の眼では偏光の違いを(ほとんど)識別できない

偏光子 偏光フィルター (偏光子, PLフィルターともいう) ある特定方向の振動成分だけが透過できる g 偏光の状態を調べることができる。 偏光フィルターの向き (マークで示されている) 偏光フィルター (偏光子, PLフィルターともいう) ある特定方向の振動成分だけが透過できる g 偏光の状態を調べることができる。 

偏光子の働き この方向の偏光成分を吸収 偏光子は、光のある特定方向の偏光成分のみを吸収または反射させることにより、 それと直交する方向の偏光成分を透過させるもの やってみよう 偏光子を2枚重ねて、どちらか一方を回転させて見てみよう 偏光子の偏光方向を直交させて重ねた場合、光は殆ど通らない では、偏光方向を直交させて重ねた2枚の偏光子の間に、もう一枚の偏光子を挟んで、それを回転させたらどうなるかな?

偏光子の働き 偏光子の偏光方向を直交させて重ねた場合、光は殆ど通らない 偏光方向が直交する2枚の偏光子の間に斜め方向の偏光子を挟むと光が透過する

偏光子の働き Q. この場合、入射光の何%の光が透過するだろうか? 入射光が円偏光しているとして、そのパワーを1とする 1枚目の偏光子を通過するパワーは 0.5 2枚目の偏光子を通過するパワーは0.25 3枚目の偏光子を通過するパワーは0.125

s偏光, p偏光とブリュースター角 s × × p q 水面に平行な方向に振動している波は 強く反射される (s偏光という) PLフィルターを置いて撮影した画像 s偏光と直交する波はあまり反射されない (p偏光という) × × p q p偏光を通すPL越しに撮影した画像 g 電球の反射光が見えなくなった. 反射が0になる角度q を「ブリュースター角」という

ブリュースター角 屈折率の異なる媒質の界面に、ある角度で光が入射する時、入射面に平行な偏光成分(P-偏光)と、垂直な偏光成分(S-偏光)とでは反射率が異なり、P-偏光においては、ある角度(ブリュースター角)で反射率がゼロとなる 電界の 振動方向 P-偏光 電界 S-偏光 媒質Ⅰ 媒質Ⅱ x z 媒質Ⅰ 媒質Ⅱ y qi qr qt ブリュースター角 ブリュースター角が存在する訳 電磁波が反射するメカニズムは、入射波によって界面に誘起された誘電分極からの電磁波の放射と考えることができる Ei この方向には、電磁波を放射できない ブリュースター角で媒質Ⅱに入射する電磁波は、媒質Ⅱ内の界面付近に分極を生じるが、その分極は反射角の方向には電磁波を放射できないため

偏光フィルターによる反射光カット 海面や雪面からの反射が眩しい時、偏光サングラスをかけると眩しくなくなる理由は? P-偏光 P-偏光に対してはブリュースター角が存在するため、ある角度での反射光は弱くなる。一方、S-偏光の光に対してはブリュースター角が存在しないので、強い反射が起きる。従って、 S-偏光の光をカットするように偏光子を配置すると、反射光の大部分をカットできる。 電界 偏光子 S-偏光 電界 偏光子 偏光フィルターなし 偏光フィルターあり

偏光フィルターの効果の例 室内の物の写り込み:大 室内の物の写り込み:ほとんどなし 路面の反射:小 路面の反射:大きい <室内からガラス越しに写した風景>

液晶ディスプレイのしくみ 2枚の偏光フィルター(偏光子)を、向きが同じになるよう配置すると光が通るが、直交するように配置すると光が通らない 液晶に光を通すと、液晶分子の配列に沿って、光の偏光方向は90º回転しながら通過する 液晶を通過した光は偏光方向が90º回転し、2枚目の偏光フィルターを通過する。配向膜間に電圧を印加すると、液晶分子の向きが揃い、光の偏光方向は回転しないので、光は偏光フィルターを通過できない 出典: http://www.sharp.co.jp/products/lcd/tech/s2_1.html

青空の偏光方向 偏光方向 太陽からの離角90度 空気の分子に太陽光が当たるとレイリー散乱が起きる。散乱光強度は光の波長の4乗に反比例する。即ち、波長の短い青い光ほど強く散乱され、そのために空は青く見える。レイリー散乱光は偏光しており、空が澄んでいれば太陽からの離角90度の空から最も強く偏光した散乱光がやってくる。ミツバチは、青空の偏光を見て太陽の方角を知ると言われている。大気汚染や水蒸気があると、偏光度は減少し、曇天では殆ど偏光していない。

ヒトも光の偏光方向を感知できる? 君は、ハイディンガーのブラシが見えるかな? 電界の振動方向 ハイディンガーのブラシ 偏光した光(液晶画面の白い画面など)を見ると、このような模様が見えることがある。 これは、人の網膜の細胞の複屈折によるもので、この現象の発見者にちなんでHaidinger’s brushと呼ばれている。ただし、個人差があるので、見えない人もいる。

色とスペクトル 身の回りの光には、様々な波長成分が含まれている どの波長成分どれくらい含まれているかを表した図を「光のスペクトル」という 一方、ヒトの眼(網膜)には、光を感じる4種類の細胞(視細胞)がある 錐体細胞 青を感じる細胞 緑   〃 赤   〃 (色を感じる) 杆体細胞 (明暗を感じる) 3種類の錐体細胞をどのような割合で刺激するかが、色の認識を主に決める (その他に脳での視覚情報処理も行われる)

光のスペクトルの例 紫 青 緑 黄 橙 赤 高輝度ハロゲンランプ * 1nm=10-9m 近赤外光 放射強度 [任意単位] 波長 / nm* 放射強度 [任意単位] 高輝度ハロゲンランプ (夜間の工事現場などで使用される) 波長 / nm* HATAYA PH-505 (500W) * 1nm=10-9m (1nm= 0.001mm)

分光器について 人によって色の感じ方や表現方法はまちまちなので、色を「見た感じ」で決めるのは科学的な計測には向いていない。 色客観的に計測するために、「分光器」が用いられる。 反射鏡B(集光) 反射鏡A(平行光化) 光ファイバー スリット 回折格子 短波長カットフィルター スペクトルのデータ (パソコンへ) 測定しようとする光 リニアCCDセンサー (受光素子アレイ) 分光器の外観 光ファイバー入力・USB出力型 Ocean Optics社製USB4000 内部構造とその仕組み

レーザーとは Q. レーザーの光とそうでない光とは何が違う? いろんな色の光が混じっている 単一の波長(色)の光みからなる 太陽,電球などからの光 光の波長も,偏光状態も,方向もバラバラな波の集まり 波長 単一の波長(色)の光みからなる 山,谷のタイミング(位相)も揃っている 偏光状態もそろっている 進む方向も揃っている レーザー装置の一例 (He-Neレーザー)

コヒーレントな光を人工的に発生させる装置がレーザー レーザーとコヒーレント光 レーザー光は、コヒーレントな光である コヒーレントとは、波の位相がきれいに揃った状態をいう コヒーレント インコヒーレント 単色性 インコヒーレント光 (コヒーレントでない) t 光の電界 f 又は λ 光の強度 コヒーレント光 t 光の電界 f 又は λ 光の強度 自然界に存在する光は全てインコヒーレント光  例: 太陽光、炎から出る光、蛍の光、白熱電球、蛍光灯、LED コヒーレントな光を人工的に発生させる装置がレーザー

レーザー光の発生方法 レーザー光を得るには、まず、光を増幅させる媒体が必要 でも、自然界には、光増幅媒体など存在しない 人工的に光増幅媒体を作らなければ、レーザーはできない では、光増幅媒体をどのようにして得るか? 光は、原子などが励起された状態から低いエネルギー状態に遷移する時に発生する 光の吸収 自然放出 誘導放出 減衰 増幅 入射光 出射光 発光 物質(原子系)と光との相互作用 以下の3つの課程が同時に起きている 二準位系 (原子など) E1 E2 電子など

熱平衡状態 E1 E2 Maxwell-Boltzmann分布 P(E) E 熱平衡状態では、励起準位の原子数は基底準位の原子数よりも少ない k: ボルツマン定数 T: 媒質の温度 n1> n2 吸収 誘導放出 n2: 励起状態の原子数 n1: 基底状態の原子数 正味では減衰 誘導放出の起きる確率 = Bn2 I 吸収の起きる確率 = Bn1 I I: 入射光の強度 B: アインシュタインのB係数 自然放出の起きる確率 = An2 A: アインシュタインのA係数 Bn1 I > Bn2 I 熱平衡状態では、吸収の確率 > 誘導放出の確率となり、入射光は減衰して出てくる

反転分布 反転分布 E1 E2 P(E) E 励起準位の原子数が基底準位の原子数よりも多い状態を反転分布という Tが負(負温度状態) n1< n2 誘導放出 吸収 n2: 励起状態の原子数 n1: 基底状態の原子数 正味では増幅 Bn1 I < Bn2 I 反転分布では、誘導放出の確率 > 吸収の確率となり、入射光は増幅されて出てくる レーザーとは、何らかの方法で反転分布を作り出し、放射の誘導放出(Stimulated emission)を用いて光を増幅する装置

レーザーは光の発振器 光増幅媒体が得られたならば、光を光増幅媒体に戻してやるようなしくみ(帰還回路) を実現してやれば、光の発振が起こる この場合、帰還回路の利得が1を上回れば、発振が持続的に起こり、強いレーザー光が得られる レーザとは、光の発振器 Amp. 電気の発振器 正帰還回路 + 光増幅媒体 光の正帰還回路 鏡 レーザー LASER: Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation 光 増幅 誘導放出 放射出

出展: www.phlab.ecl.ntt.co.jp/master/04_module/002.html 半導体レーザー 半導体レーザー (Laser Diode: LD) 光を増幅する媒体が半導体からなり、 pn接合への電流注入により、電子の反転分布状態を作り出せる 特徴: ・ コンパクト (チップ本体は0.3mm角程度)     ・ 取り扱い容易 (乾電池2本程度で動作可能)     ・ 直接変調で数Gbpsの高速変調が可能     ・ 高信頼性 (通信用のInGaAsPレーザは100万時間以上の寿命に)     ・ 安価 (FTTH用LDはチップコストで数百円、CD用LDは数十円に) 電子 ホール p型 n型 へき開面(鏡面) チップの構造 出展: www.phlab.ecl.ntt.co.jp/master/04_module/002.html

半導体レーザの発振特性 単一縦モード発振 l DFBレーザーの発振スペクトル 縦多モード発振 Δλ l λ0 半導体レーザの電流-光出力特性 FPレーザーの発振スペクトル

光をレンズで絞るとどうなる? 1. インコヒーレント光(蝋燭の光、:蛍光灯からの光、太陽からの光など)の場合 2. コヒーレント光(レーザー光)の場合 光の波長程度まで絞れる

レンズの開口数 (Numerical Aperture: NA) レンズ焦点でのビーム径 レーザー光のようなコヒーレント光を絞った場合のビーム径は? レンズの開口数 (Numerical Aperture: NA) qf 2w0 2wf qf < q a q f n f : 焦点距離 a : レンズの有効半径 n : 媒質の屈折率 (空気中の場合は1) 2w0: 入射ビーム径 l : 光の波長 焦点でのビーム径 Ex.) 波長1mmの光を、NA=0.5のレンズの有効径をフルに    活用して絞った場合、どの程度まで絞れるか? 答 直径約1.3mm

DVDの記録容量 DVDの記録領域の面積は? レーザービームのスポット径は? ・ レーザー光の波長: l = 650 nm ・ レンズの開口数: NA = 0.65 12 cm 4 cm 記録領域 ビーム径 2wf は、 ビームの占める面積は、 記録可能な情報量は、 記録領域の面積 / ビームの占める面積 従って、 実際のDVDの記録容量は、片面1層で4.7GB

ブルーレイディスク(BD)の記録容量 BDの記録領域の面積は? レーザービームのスポット径は? ・ レーザー光の波長: l = 405 nm ・ レンズの開口数: NA = 0.85 ビーム径は、 ビームの占める面積は、 記録可能な情報量は、 従って、 実際のBDの記録容量は、片面1層で25GB 因みにコンパクトディスク(CD)の場合は、 ・ レーザー光の波長: l = 780 nm ・ レンズの開口数: NA = 0.45 で、記録容量は片面1層で650 or 700 MB

衛星間光通信 ガウスビーム波 r 強度分布 w0: ビームウエストサイズ ガウスビーム波の広がり角 2w0 2Dq l: 光の波長 Ex.) 波長1mmの光を、直径1mのビームにして月に送った場合、    月面でのビームスポットサイズはどのくらいになるか?    ただし、月までの距離は約38万km 答 直径約120m

知ってますか? 1. 波(光や電波や音波)を使って物を見ようとするとき、どれくらい小さい物体まで   見ることができるのか? 波長分解能、空間分解能は何で決まる? 例えば、X線CTスキャナー、光CT、超音波エコー診断、レーダーなど 2. 光ディスク(CD, DVD, BD)に情報を記録する際の記録容量はどのように決まる?   (光のスポットサイズと光の波長、レンズのNAとの関係は?) 記録容量は、 CD (700MB) < DVD (4.7GB) < BD (25GB) 何故? 3. 自由空間光通信で、なるべく遠くまで光を送るにはどうすればいい? パラボラアンテナの大きさと指向性の強さの関係は?

ホログラム 1. 普通の写真とホログラムの違いは? - 普通の写真は2次元画像、ホログラムは3次元(立体)イメージを再生可能 - 普通の写真は光強度の強弱(色も)を2次元イメージとして印画紙に記録 - ホログラムは物体から反射される光の波面を印画紙に記録 - 普通の写真は、一部が欠けるとその部分の画像情報は完全に失われる - ホログラムは、一部が欠けても全体のイメージを再生可能 2. ホログラムの作り方は? 3. ホログラムの種類は? より詳しくは、http://homepage2.nifty.com/kubotaholo/kind.htm モノクロ 通常のホログラム カラー(白色光再生) - レインボーホログラム - リップマンホログラム 縦方向の視差を犠牲にして 白色光再生を実現 (クレジットカード) 物体光と参照光を、記録材料の表裏から対向するように入射させて作製するホログラム - デニシュークホログラム 乾板を通して物体に光を当てて撮影

ホログラムの原理 より詳しくは、http://homepage2.nifty.com/kubotaholo/principle.htm 像の記録 像の再生 出典: フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」

ホログラムの作り方 普通の写真の撮り方 ホログラムの作り方と像の再生 出展: http://labo.e-silkroad.org/eSRA-class/tana2/esra-class2.html

ホログラムの作り方 通常のホログラム作製光学系 写真乾板 レーザー 被写体 デニシュークホログラム作製光学系 出展: http://www12.plala.or.jp/ksp/wave/holography1/ 通常のホログラム作製光学系 レーザー 写真乾板 被写体 デニシュークホログラム作製光学系

光子の偏光 光子(フォトン)には-1, 0, 1のスピンがあり、それに対応する偏光状態が有る 光子の横偏光状態および縦偏光状態をそれぞれ   および  というベクトル表示で表すと、+45度偏光、-45度偏光、右旋性円偏光、左旋性円偏光の光子はそれぞれ と表される。 偏光子を通ってきた光子は偏光子の偏光方向に偏光しており、このような状態を純粋状態と呼ぶ。それに対して、縦横どの方向に偏光しているのかが特定できない状態を混合状態と呼ぶ。 縦偏光状態の光子は、45度傾いた偏光子を50%の確率で透過します。その場合、45度傾いた方向の純粋状態となります。 S = -1 S = 1 光子 光子 左旋性円偏光 右旋性円偏光

ヤングの干渉縞 2つのスリットを通った光がスクリーン上で干渉すると干渉縞が現れる スリット スクリーン スリット スクリーン スリットの後ろに偏光方向が直交する偏光子を置くと干渉縞が消える

光子による干渉縞 1個の光子(フォトン)による干渉では干渉縞は現れない スリット スクリーン 光子 しかし、上の実験を複数回繰り返すことにより干渉縞が現れる スリット スクリーン 光子

量子消去の実験 スリット スクリーン スリットの後ろに偏光方向が直交する偏光子を置くと干渉縞が消える 光子 スリット 更に、偏光方向が斜め45度の偏光子を置くと再び干渉縞が現れる スクリーン 光子

量子消去の実験が示唆するもの ここで紹介した干渉縞の挙動は、古典的な波動光学によっても説明できる。 しかしこの実験は、1個の光子による干渉実験を複数回繰り返した場合でも同様の結果をもたらす。 スリットの後ろに偏光方向が直交する偏光子を置くと干渉縞が消えるのは、この場合、光子がどちらのスリットを通過したのかを知ることができるようになったからである。 しかし、偏光子の後ろに、偏光方向が斜め45度の別の偏光子を置くと再び干渉縞が現れるのは、光子がどちらのスリットを通過したのかを知ることがもはやできなくなったためである。つまり、光子が両方のスリットを同時に通過する可能性が復活したからである。これを量子消去と呼ぶ。 ところで、量子消去の奇妙なところは、スリットを通過した後でもその経路情報を消去すれば干渉縞が現れるところで、(どちらのスリットを通過したのかという)過去の事象を、未来の行為(量子消去)によって操作できる点である。