メンデルの法則:本日のメニュー メンデルの法則 優劣の法則 分離の法則 独立の法則 人に見られるメンデル遺伝 メンデルの法則が合わない例 優劣の法則に合わない遺伝 独立の法則に合わない遺伝 メンデルの法則のメカニズム Mitosis Meiosis 染色体と組換え モルガンの突然変異研究
メンデルの法則 メンデルの遺伝の法則は、発表された当時(1865)は誰からも理解されなかった。早すぎた天才の悲劇である。1900年になってド・フリース、チェルマク、コレンスの3人によって、独立にメンデルの法則が再発見され、コレンスによって3つの法則にまとめられた。その後、染色体研究の進展に伴い、遺伝子が染色体上の実体であることが認められ、現在の遺伝子の考えに発展する。 Gregor Mendel (1822-1884) オーストリアの修道院の牧師
メンデル以前に 遺伝の法則が発見されなかった理由 親と子はよく似ていることから、遺伝の概念はすでにあった。 純系を使った交配実験が行われなかったので、明瞭な結果が得られなかった。 メンデルは、実験を始める前に数多くの遺伝的な特徴について、純系を得るための作業をおこなった。自家受粉による系統選抜。 そして最終的に7つの、明らかに対照的な(対立する)特徴(形質、caharacter)を持つエンドウの種子を選んだ。
メンデルが利用した形質 1)黄色と緑色の種子(seed color)、 2)丸い種子としわあるの種子(seed shape)、 3)黄色と緑色のさや(pod color)、 4)背丈が高いか低いか(stem length)、 5)さやが膨らんでいるか平たいか(pod shape)、 6)花の色が紫色か白色か(flower color)、 7)花が茎の頂端につくか茎全体につくか(flower position on stem)
メンデルが行った実験 P世代 Parental generation P F1世代 (first filial generation
F2世代 (second filial generation) 自家受粉 705 224
他の形質もF2で同様の出現頻度
メンデルが考えた説明 (1)形質を支配する要素(現代語法の遺伝子とほぼ同じ)がある。 (2)要素は粒子のような形で一対存在し、父親と母親から一つずつ受け継ぐ。 (3)F1では片親からの要素が、もう一方の要素の性質を覆い隠してしまう。 これらの3つの仮定で 優劣の法則、分離の法則が説明される 法則の命名はコリンス 優性(dominant):英語の意味は「現れる」 劣性(recessive):英語の意味は「隠れる」
1. 優劣の法則 P 父親と母親が入れ替わっても同じ F1 形質を支配する独立した要素があり、 劣性の要素の働きは優性の要素によって隠される 母親の遺伝子 (1/1)A 父親の遺伝子 (1/1)a (1/1)Aa 父親と母親が入れ替わっても同じ
2. 分離の法則 分かれるメカニズム 減数分裂 父親と母親が入れ替わっても同じ 2つの遺伝子は粒子のようにふるまい、生殖細胞には各々の対の片方しか含まないように分かれる 分かれるメカニズム 減数分裂 F1世代の父親と母親が持つ遺伝子 母親の遺伝子Aa (1/2)A (1/2)a 父親の遺伝子Aa (1/4)AA (1/4)Aa (1/4)aa 父親と母親が入れ替わっても同じ
Mitosis (通常細胞の分裂) と Meiosis(生殖細胞の分裂:減数分裂)
細胞分裂mitosis 1 2 3 4 5 6
減数分裂meiosis 有性生殖では、二つの特殊な性細胞すなわち配偶子(gamate)がつくられ、これが結合して接合子(zygote)となる過程を含んでいる。たいていは、配偶子は二つの別の親から得られるが、一つの親が両方の配偶子をつくることもある。動物では、卵(egg)と精子(sperm)が配偶子で、受精卵(fertilized egg)が接合子である。
3. 独立の法則 メンデルは、二つ(dihybrid cross)またはそれ以上の形質をもつ交配種についても分析した。二つの対立遺伝子はそれぞれ独立して分配される。 母親の遺伝子 父親の遺伝子 独立の法則が成り立つのは 遺伝子が異なる染色体にある場合 父親と母親が入れ替わっても同じ
人にも見られるメンデル遺伝
優劣の法則があてはまる形質 優性形質 劣性形質 富士額 Widow's peak 一直線の額 Straight hairline 耳たぶあり Free ear lobes 耳たぶなし Attached ear lobes 舌を丸くできる Tongue Rolling 丸くできない 指の第二関節の毛 Mid-Digital Hair 第二関節に毛がない 割れあご Dimpled Chin 割れていない
人間の遺伝実験はできない (遺伝的純系を作れない) 家系分析による推定
問題:「耳たぶあり」が優性/劣性のどちらであるかを推定せよ。また、各人の遺伝子型を推定せよ。
答
メンデルの法則が合わない例はたくさんある メンデルの法則が成り立つ条件 (1)はっきりとした対立遺伝子である (2)遺伝子は別の染色体上にある この条件が満たされないとき、優劣の法則や独立の法則は成り立たなくなる。分離の法則だけは一般に成り立つ。 しかし、メンデルが考えた原理を少し拡張すれば、多くの場合は説明がつく。 拡張:(1)優劣の法則は表現型の問題で、遺伝子型に関しては影響を受けない。(2)染色体と組換えを考慮する。(3)対立遺伝子は1対とは限らない。(4)同じ形質に多くの遺伝子座が関与するかもしれない。(5)性染色体
独立の法則が合わない例 Vestigial b+,vg Wild b+,vg+ Black b,vg+ Black & Vestigial: b, vg の純系を作り、 Wildと交配させると
P F1 9 2 2 3 F2 9:3:3:1の比率にならない
遺伝子座は同じ染色体上にある ⇨連鎖 P F1 F2 9:3:3:1と3:0:0:1の中間になる 組換え
組換え率の推定には戻し交配を使う P F1
組み換え率は(206+185)/(965+206+185+944)に100をかけて17%
組み換え率は、連鎖している染色体上の距離に比例 組換え率が小さいほど遺伝子の距離が近いことを利用して、染色体地図が描ける
(incomplete dominance) 優劣の法則が合わない例 白のオシロイバナ 赤のオシロイバナ × ピンクのオシロイバナ 不完全優性 (incomplete dominance) F1
メンデルの法則が当てはまらない、その他の例 複対立遺伝子(Multiple gene) ひとつの遺伝子座に3種類以上の遺伝子が関わる場合 ABO血液型、鶏冠(単冠pprr、バラ冠ppRRかppRr、マメ冠PPrrかPprr、クルミ冠PPRR、PpRR、PPRr、PpRr) ポリジーン遺伝(Polygene) 多数の独立した遺伝子対が同じ形質に関わる場合 身長、肌の色 伴性遺伝(sex-linked inheritance) 性染色体上にある遺伝子が関わる場合
モルガンの突然変異の研究
ショウジョウバエの突然変異 White eye Black w+ b w b+
モルガンは赤目の♀と白目の♂をかけ合わせてみた。 F2でどんな比率が期待されるか? P F1 F2
突然変異体「black」の場合 P P F1 F1 F2 F2
モルガンが考えた性決定メカニズム
モルガンが考えた染色体上のw遺伝子
後に、♂はY染色体をもつことがわかった
染色体数の異常 Yをもたない♂は正常に発育するが精子に受精能力がない Yを過剰にもつ♀は正常に発育し、正常な卵を生産する
参考 英語で学べるモルガン遺伝学 ニュージャージー州立大学の 「Morgan Genetic Tutorial」サイト キーワードで見つけるか、 http://morgan.rutgers.edu/MorganWebFrames/htmldocs/contents.php クイズもあっておもしろい。 この講義で、ショウジョウバエに関する図表を拝借しています。 次回は卓上計算機を持参のこと。