中小口径望遠鏡を用いた超新星を はじめとする突発天体観測とその未来

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中小口径望遠鏡を用いた超新星を はじめとする突発天体観測とその未来 山中雅之 広島大学宇宙科学センター 日本学術振興会特別研究員

Today’s Topics 超新星の新たな多様性とその起源 Super-Chandrasekhar SN 2009dc Peculiar Type Ia SN 2012Z 超新星(と突発天体)の観測の将来

超新星の観測からわかること(Ia, Ib/c) λ0 λ 56Ni 56Co 30day 明るさ 極大からの日数 スペクトル 外層 P Cygni profile 相対強度 observer 内層 Diffusion time : M, Eに依存 56Ni    56Co    56Fe γ γ, e+ 8.8 days 111 days λ λ0 波長 膨張大気の速度 内部のエジェクタとガンマ線が噴出物質と相互作用⇒熱化、可視域に放射ピークが来る黒体放射 光度曲線

超新星の観測的特徴と分類 II Ic Ia Ia II Si Ib Ic 吸収線 × ○ strong Hydrogen Helium Kanata/TRISPECで取得したスペクトル 吸収線 Hα Hydrogen ○ II × Helium Si strong weak Ia Hβ II CaII Ic SiII OI Ib Ic CaII SII SiII 大質量星の重力崩壊型 Ia OI CaII 低質量連星系を成す白色矮星の熱核暴走反応爆発

? Ia型超新星の未解決問題 主系列or巨星 白色矮星 白色矮星のチャンドラセカール限界質量(回転なし)約1.4M◎ 明るい Altavilla et al. 2004 白色矮星のチャンドラセカール限界質量(回転なし)約1.4M◎ ゆっくり減光 光度曲線から距離の推定が可能 ⇒宇宙論的な距離の決定 爆発メカニズム、親星は未解決 : 30年来の問題 ⇒早期からの測光分光がプローブとなる。

⇒S/Nの良いデータを得られることが期待 SuperNova 2009dc 4月9.31日(UT)、距離 89.3Mpc 近傍銀河UGC 10064にて発見。 16.5等 (CBET 1762) 4月16日分光観測 : Ia型特有のスペクトルを示した。 CIIの吸収 ⇒極めて明るい SN 2006gzに よく似ている (CBET 1768)。 Super-Chandrasekhar SNe なら3例目の発見!? 過去2例に比べて近い距離の銀河で発生 ⇒S/Nの良いデータを得られることが期待

Super Chandrasekhar SN 2009dc Gunma, Subaru/FOCASのスペクトル Yamanaka+ 2009

Super Chandrasekhar SN 2009dc Typical SN Ia SN 2009dc C Ni,Fe Ni,Fe Yamanaka+ 2009 ✓Mv=-20.3+/-0.19 (Mv=-19.3 mag for typical SN Ia) ✓ 56Ni mass ~ 1.8 +/- 0.5 Si,S,Ca ✓Thick C layer

Super Chandrasekhar SN 2009dc 読売新聞2009年9月14日 天文学会秋季年会2009年記者発表! 日本の中小口径がそのポテンシャルをいかんなく発揮した一つの例

-大学間連携における光赤外ネットワーク- “OISTER” Kl国内の大学・公共天文台が持つ10以上の1-2mクラス光赤外線望遠鏡群による観測ネットワークの構築 ⇒中口径望遠鏡の突発天体への特化!

国内望遠鏡での観測体制 神山天文台 (京都産業大学) 1.3m 望遠鏡 可視光分光 入来観測所 名寄天文台 (鹿児島大) (北海道大学) 可視光撮像 石垣島天文台(NAOJ) 1.0 m 可視光撮像 木曽観測所 (東京大学) 1m 可視光撮像 東広島天文台 (広島大学) 1.5m 可視光撮像 分光観測 近赤外線観測 ぐんま天文台 1.5m JHKsバンド 可視分光 高分散分光 明野観測所 (東京工業大学) 0.5m 可視光撮像 岡山天体物理観測所 0.5m 可視撮像 西はりま天文台. 2.0 m 近赤外線撮像 可視光分光?? 神山天文台 (京都産業大学) 1.3m 望遠鏡 可視光分光 岡山天体物理 観測所 1.88 m 近赤外線撮像

OISTERにおける超新星の観測状況 SN 2011by (normal Type Ia) 2011. 4. 29 – 観測中 4天体の共通点 ✓ 母銀河が近い( < 30Mpc ) ⇒明るくなることが期待される✓ 爆発直後数日( < 5-7 day ) 11byを除いて 発見から3等近い増光 ⇒ 最外層構造 ⇒ 親星、爆発モデル SN 2011by (normal Type Ia) 2011. 4. 29 – 観測中 SN 2011dh in M51 (transient Type IIb) 2011. 6. 2 – 観測中 SN 2011fe in M101 (normal Ia; bright) 2011. 8. 24 – 観測中 SN 2012Z (Ia-pec, 02cx-like) 2012. 2. 2 – 観測中 可視近赤外線において時間的に密に観測できた

Peculiar Type Ia SN 2012Z

(Peculiar Type Ia SN ; 02cx-like event) SN 2012Z in NGC 1309 (Peculiar Type Ia SN ; 02cx-like event) Coordinates (ATEL 3900) R.A. 03:22:05.35, Decl. -15:23:15.6 5’ x 5’ LOSS(バークレーの観測チーム)によってV~18.0等で近傍銀河NGC 1309 (20Mpc) にて1/29に 発見 (ATEL 3900) 02cx-like 05hkの極大1週間前のプロファイルによく似ている (ATEL 3901) 2/2 Swift/UVOTによるToO観測 V~15.5等 わずか3日で2.5等の増光 ⇒爆発直後! (ATEL 3909) c3 c2 c1 c5 c4 SN 5等星 FOV 15’ x 15’ (Red in DSS) 極めて面白い天体!

02cx-like objects 光度減少率-極大光度の 相関関係に従わない ⇒距離指標に使えない! Narayan et al. 2011 ⇒距離指標に使えない! SiII 6355 線速度<8000 km/s 小さい運動エネルギー ? (典型的なIa 10000km/s) 最も暗い超新星SN 2008ha ⇒ 重力崩壊型の可能性も? Valenti et al. 2009, Nature, 459, 677

光度曲線 Preliminary より長い波長で極大日が より遅れる。 BバンドとRcバンドで 10日差 (典型的なIa型で 2日差) ⊿m15(B)~1.8 (典型的なIa型 : 1.1 - 1.4) Mv~ -16 mag ! (典型的なIa型 : -19.2 +/- 0.3 ) Preliminary

スペクトル Preliminary 2/3 – 2/4 初期においてやや高い励起温度の吸収線 2/9以降からやや低いSiII6355などのIa型超新星に特徴的な吸収線が現れ始める。 2/9 – 2/12 炭素(CII 6580)検出 ⇒親星起源の物質か? SiIII FeIII SiII Preliminary CII CaII

12Z in 02cx-like objects SN 2012Zは間違いなく 新種超新星の一つ! 12Z 12Z 12Z Narayan et al. 2011

LSST 時代(2020-)の突発現象 μ~30-33 ⇒m=16-23 LSST white paperより ☆SN 2009dc (Yamanaka+) ★SN 2012Z SN 2005cs (Kawabata+) μ~30-33 ⇒m=16-23 LSST white paperより

あれば嬉しい

まとめ 国内キャンペーンで観測した特異なIa型超新星を2例紹介した。 SN 2009dcは3例目のSuper-Chandrasekhar SNで、史上最も明るいIa型超新星だった。 SN 2012Zはよく観測された4例目の特異なIa型超新星だろう。 超新星(+正体不明突発現象)の未来は明るい。

簡易測光マニュアルの作成 SN 2011fe 観測依頼時にあまりに大量 のデータ解析に追われての対策案 M1・M2レベル向け(一度はIRAFで 解析経験があると読める) 初学者向けの日本語で書かれたテキストは無かった。(全32ページ) ⇒高田氏著のDAOPHOTの簡易マニュアルも参照してください。 どうぞご自由にダウンロードしてください http://home.hiroshima-u.ac.jp/myamanaka/data/daophot_manual.pdf

1990-1997 Turatto+ 2007

Origin of Supernovae V.S. IIP (IIL?, IIb?) Ib/c ?? Ia Core Collapse Red Giant IIP (IIL?, IIb?) Single Degenerate V.S. Wolf Rayet ?? Double Degenerate Ib/c ?? Ia Core Collapse