Flat Panel Detectorの エネルギー感度特性 ー直接変換方式と間接変換方式の比較ー 越田吉郎、高田光雄、鈴木陽、能登公也 金沢大学大学院医学系研究科保健学専攻
背景 近年,放射線医学の発展に伴い,長年使われていたアナログ方式をディジタル化とする移行が進み、フィルムレス化への傾向が強い. 今日,画像分野においてディジタル化が進んでいる.しかし,CRやFPDの研究はまだ不十分であり,一般撮影の撮影条件は,以前のアナログ式の条件を用いているのが現状である. 近年,放射線医学の発展に伴い,長年使われていたアナログ方式をディジタル化とする移行が進み、フィルムレス化への傾向が強い. しかし、こうした状況の中でディジタル機器のComputed RadiographyやFlat Panel Detector(FPD)研究はまだ不十分であり,一般撮影の撮影条件は,以前のアナログ式の条件を用いていることが多いのが現状であり,ディジタル化に対応した条件を確立できれば有効性が向上する。
X線energyの変換方式
目的 そこで,コンピュータシミュレーションのEGS4を用い,FPDの直接変換法と間接変換法のエネルギー特性を検討し、エネルギーと線量の関係を調べ ,最適エネルギーを検討する. モンテカルロシミュレーション法を用い、FPDの直接変換法と間接変換法におけるエネルギー特性を検討し、エネルギーと検出器の吸収線量の関係を調べることによって、撮影条件の有効化を図ることを目的とした。
使用機器 FPD装置: 島津製作所製 (RADIOTEXsafire)直接変換方式 SIEMENS社製 島津製作所製 (RADIOTEXsafire)直接変換方式 SIEMENS社製 (AXIOM AristosMX/NX)間接変換方式 X線照射装置: 島津製作所製 UD 150L-RⅡ グリット: SIEMENS社製 80本、15/1、Paper Smit röntogen社製 60本、13/1、Carbon Fiber 三田屋製作所製 40本、12/1、Al 60本、14/1、Al 線量計: 東洋メディック株式会社製 RAMTEC-1000D 使用機器はこちらです。
対象とした光子エネルギー 単一エネルギーのX線 10 keV~150 keV (10 keV間隔) 連続エネルギー(一次X線) 材料と方法です。 単一エネルギーは10keV~150keVの10keV間隔です。 連続エネルギー,管電圧50kV~130kVの10kV間隔です。これは、管球から空気を介して直接検出器に到達する1次X線です。 また、人体を透過した時と等価とされるAl板を付加したとき、つまり、人体透過後と仮定される連続エネルギー、50,70,90,120kV。 以上をEGS4を用いて、直接変換法では検出器αーSeを、間接変換法では検出器CsIのエネルギー特性を調べます。 単一エネルギーのX線 10 keV~150 keV (10 keV間隔) 連続エネルギー(一次X線) 50 kV~130 kV(10 kV間隔) IEC61267で公表されたAl 付加後の連続エネルギー 管電圧50,70,90,120 kV 水20cmの層を付加した連続エネルギー
管電圧と付加Alの関係 RADIATION QUALITY NO. 管電圧[kV] 半価層[mm] 付加のAl[mm] RQA 3 50 International Electrotechnical Commissionの発表した、50kV、70kV、90kV、120kVの管電圧の時に、人体に等価のAl板の厚さの関係です。 RADIATION QUALITY NO. 管電圧[kV] 半価層[mm] 付加のAl[mm] RQA 3 50 4.0 10.0 RQA 5 70 7.1 21.0 RQA 7 90 9.1 30.0 RQA 9 120 11.5 40.0 IEC 61267:1994
シミュレーション (EGS4) [照射条件] ターゲット角度:12 ° 総ろ過:2.5 mmAl当量 ターゲットから検出器の距離 1 m シミュレーションによる条件です. X線管球の照射条件はターゲット角度12度、総ろ過は2.5mmAl当量です。直接変換法、間接変換法ともに、ターゲット角度から検出器の距離は1mで、光子の数は 50万個としました。 直接変換法のディテクターの配列はこのようにしました。 クリック 間接変換法のディテクターの配列はこのようにしました。 クリック 直接変換法 [照射条件] ターゲット角度:12 ° 総ろ過:2.5 mmAl当量 ターゲットから検出器の距離 1 m 光子の数:50 万個 光子 Glass 1 mm エポキシ樹脂 1 mm 金 0.5 μm α-Se 1mm 間接変換法 光子 CsI 550 μm α-Si 100 μm
Response(感度) の定義 検出器の吸収線量 [Gy] Response = 空気カーマ [Gy] エネルギー特性の指標とする、レスポンスの定義です。検出器の吸収線量を、空気の吸収線量で割りました。ここでは、同じ空気カーマに対する検出器の吸収線量を感度としました。 検出器の吸収線量 [Gy] Response = 空気カーマ [Gy] *同じ空気カーマに対する検出器(α-SeとCsI) の吸収線量の比を感度とした * α‐Seのイオン収集率を考慮していない * CsI発光効率およびα‐Si蛍光収率を考慮していない
方法 (FPDの物理特性) 入出力特性 タイムスケール法による ディジタル特性曲線 解像特性 エッジ法による プリサンプリングMTF タイムスケール法による ディジタル特性曲線 解像特性 エッジ法による プリサンプリングMTF ノイズ特性 RMS粒状度 コリメータ絞り 付加Alフィルタ 150cm 線量計 次に、フラットパネルディテクタの物理特性を測定しました。 評価項目は、入出力特性、解像特性、ノイズ特性の3つです。 ディジタルシステムでは、相反則不軌の影響がないことから、入出力特性はタイムスケール法を用い、ディジタル特性曲線を測定しました。 ジオメトリーは図の通りです。 解像特性は、タングステンのエッジ板を用いたプリサンプリングMTFを測定しました。エッジをわずかに傾けて撮影し、エッジ像のディジタルデータから合成ESFを作成し、これを微分して合成LSFを求め、フーリエ変換してMTFを算出しました。 ノイズ特性は、RMS粒状度を算出することにより評価しました。 散乱線絞り 50cm タングステン 12mm 検出器表面
FPDの入出力特性 直接変換方式 間接変換方式 入出力特性の結果です。 入射線量とディジタル値との間に直線関係が見られ、直接変換方式は16383で一定になり、間接変換方式は4095で一定となりました。 直接変換方式では、90,70,120,50kVの順に傾きが小さくなり、間接変換方式では、90,120,70,50kVの順に傾きが小さくなりました。
連続エネルギー エネルギー特性 Response 120kV 90kV 70kV 光子数 50kV 120kV 90kV 70kV 50kV 連続エネルギー エネルギー特性 このグラフが、50kV、70kV、90kV、120kVの管電圧での、連続エネルギーの入力スペクトルです。 クリック 右のグラフが、連続エネルギーのスペクトルを入力した時の、50kV~120kVの10kV毎の管電圧でのエネルギー特性です。この結果より直接変換法のほうがレスポンスが良いこと、また、実効エネルギーが高くなると、感度がどのように推移するかが分かります。ただし、このスペクトルは人体を透過したものではありません。 120kV 90kV 70kV Response 光子数 光子数 50kV 120kV 90kV 70kV 50kV
直接変換法(α-Se) RQA 7 RQA 5 RQA 9 RQA 3 直接変換法の結果です。50kV~120kV、10kVごとの単一エネルギーのスペクトルを入力した時のエネルギー特性で、横軸が光子エネルギー、縦軸がレスポンスです。このグラフに、先ほどの、50kV~130kV、10kV毎の管電圧の連続エネルギーのスペクトルを入力した時のエネルギー特性を加えると クリック こうなります。 さらに人体に等価のAl板をはさんだ、50kV、70kV、90kV、120kVのエネルギー特性を加えると クリック こうなります。 これより、90kVがもっともレスポンスがよく、感度としては70~100kVあたりが良いことが予想されます。 ただし、低電圧のほうが(光電効果の影響により)コントラストは良くなりますが、70kV以下になると急激にResponseが悪くなります。 RQA 7 RQA 5 RQA 9 RQA 3
間接変換法(CsI) RQA 7 RQA 5 RQA 9 RQA 3 間接変換法の結果です。50kV~120kV、10kVごとの単一エネルギーのスペクトルを入力した時のエネルギー特性で、横軸が光子エネルギー、縦軸がレスポンスです。このグラフに、50kV~130kV、10kV毎の管電圧の連続エネルギーのスペクトルを入力した時のエネルギー特性を加えると クリック このようになります。 さらに人体に等価のAl板をはさんだ、50kV、70kV、90kV、120kVのエネルギー特性を加えると クリック このようになります。 これより、90kVがもっともレスポンスがよく、感度としては70~120kVあたりが良いことが予想されます。ただし、70kV以下では急激にResponseが悪くなります。 ただし、低管電圧のほうが(光電効果の影響により)コントラストは良くなります。 しかし、これらの結果は、感度としての結果であり、画質上どうなるのかは分からないので実測でMTFやDQEの結果を求める必要があります。 RQA 7 RQA 5 RQA 9 RQA 3
直接変換法 エネルギーごとの実測との比較 入出力特性 基準 1.34% 11.76% 比率 6.91% ディジタル値 6.91 1.34 直接変換法 エネルギーごとの実測との比較 入出力特性 6.91 1.34 11.76 基準 1.34% 比率 11.76% ディジタル値 6.91%
間接変換法 エネルギーごとの実測との比較 特性曲線 基準 0.93% 1.91% 比率 13.9% ディジタル値 13.9 1.91 間接変換法 エネルギーごとの実測との比較 特性曲線 13.9 1.91 0.93 基準 0.93% 1.91% ディジタル値 比率 13.9%
間接変換法 実測との比較 シミュレーションの比率 実測の比率 % 50kV 0.444 0.506 13.9 70kV 0.856 間接変換法 実測との比較 シミュレーションの比率 実測の比率 % 50kV 0.444 0.506 13.9 70kV 0.856 0.872 1.91 90kV 1 120kV 0.903 0.912 0.93
直接変換法 実測との比較 シミュレーションの比率 実測の比率 % 50kV 0.557 0.596 6.91 70kV 0.958 直接変換法 実測との比較 シミュレーションの比率 実測の比率 % 50kV 0.557 0.596 6.91 70kV 0.958 0.945 1.34 90kV 1 120kV 0.817 0.914 11.76
DQE(Detective Quantum Efficiency) 直接測定できる項目を使って k: 検出器出力 MTF(f):プリサンプリングMTF q: 単位面積あたりの入射X線光子数 WS(f): ノイズウィナースペクトル
グリッドの物理特性 グリッドの物理的特性 ・コントラスト改善度(CIF) ・露出倍数(BF) ・選択度 撮影条件: ・管電圧…120kV ・コントラスト改善度(CIF) ・露出倍数(BF) ・選択度 撮影条件: ・管電圧…120kV 100kV 80kV 60kV 50kV 方法です。 1.線量計、mixDP,グリッドを図のように配置したナロービーム条件にて、グリッドを置いた時とグリッドを取り除いた時の一次X線の量の比を求めて一次X線透過率を測定しました。 2.次にブロードビーム条件における図の配置で、グリッドを置いた時とグリッドを取り除いた時の一次X線の量の比を求めて散乱X線透過率を測定しました。 3.また、ブロードビーム条件における図の配置で規定された一次X線遮蔽版を取り除いた状態で、グリッドを置いた時の全X線測定値とグリッドを取り除いた時の膳X線測定値の比を求めて全X線透過率を測定しました。 使用した管電圧は50kV、60kV、80kV、100kV、120kVです。 4.測定した値を用いてコントラスト改善度・露出倍数・選択度を算出し比較しました。
コントラスト改善度と露出倍数の比較 CIF(コントラスト改善度)=Tp(一次X線透過率)×BF(露出倍数) B-K特性 結果です。 コントラスト改善度は一次X線透過率と露出倍数の積で与えられます。 コントラスト改善度と露出倍数の関係は、図の通りになりました。 図より、同じコントラストを得るのに、インタースペーサAlよりPaperやCarbonの方が少ないX線量で得られることが分かります。
MTF(グリッドなし) 直接変換方式 間接変換方式 ナイキスト周波数≒3.3 [cycles/mm] 両方式とも、ナイキスト周波数までは線質による大きな差は見られませんでした。 ナイキスト周波数≒3.3 [cycles/mm] ナイキスト周波数≒3.5 [cycles/mm]
MTF(グリッド使用) 直接変換方式 間接変換法式 (12/1 40本) (15/1 80本) (14/1 60本) (12/1 40本) (15/1 80本) (14/1 60本) グリッドを使用した場合のMTFの結果です。
RMS粒状度 RMS粒状度の結果です。 RMS値が低いほど、粒状性が良いことをあらわします。 線量が増加するとRMS値は低下しました。 直接変換方式では、0.7mGy、間接変換方式では、0.5mGy以上で減少の程度は小さくなり、一定値に近づく傾向が見られます。
まとめ 入出力特性 直接変換方式での感度の良いのは、 直接変換方式での感度の良いのは、 90kV(RQA7)>70kV(RQA5)>120kV(RQA9)>50kV(RQA3) 間接変換方式では、 90kV(RQA7)>120kV(RQA9)>70kV(RQA5)>50kV(RQA3) シミュレーションとの誤差 実測との比較では,数%以内であり、大きい誤差でも13.9%であった グリッド特性 B-K特性曲線より、中間物質はCarbon>Paper>Alの順に良い。 解像特性 グリッドなしでは、直接変換方式・間接変換方式ともにMTFに差は見られない。 ノイズ特性 線量を多くするとRMS粒状度は向上するが、直接変換方式では0.7mGy、間接変換方式では0.5mGy以上でRMS粒状度は一定になる。間接変換方式の方がRMS粒状度は良い。 結果のまとめです。
結論 FPDの最適条件 両方式ともに、感度が最も良い線質はRQA7(90kV)で、RQA3(50kV)は感度が低い。90kV前後が最適管電圧 RMS粒状度が一定になる線量は、直接変換方式で0.7mGy、 間接変換方式で0.5mGyである。 グリッドの選択 少ないX線量で同等なコントラストを得られる事からグリットの中間物質がAlの物よりPaperやCarbonを用いた方が良いと考えられる。 結論・考察です。 今後の課題 ウィナースペクトルを測定することにより、その結果とMTFの結果を用いて、NEQ(雑音等価量子数)・DQE(検出量子効率)を求め、総合的な評価をする必要がある。
補足(入射スペクトル) 連続エネルギー 連続+付加Al 連続+付加水 50kV, 70kV, 90kV, 120kV 補足です。 軟線が大幅にカットされ、硬いスペクトルになっているのが分かります。 今後、骨や肺の透過後のスペクトルを用いることにより、骨条件、肺野条件での感度の最適エネルギーが推測されます。 50kV, 70kV, 90kV, 120kV