真柳 誠(茨城大学/北里研究所) 第105回日本医史学会学術大会 2004年5月16日 鶴見大学会館(横浜市) 満洲医科大学旧蔵古医籍の行方 Whereabouts on Old Medical Books Collection of Manzhou Medical University 真柳 誠(茨城大学/北里研究所) 第105回日本医史学会学術大会 2004年5月16日 鶴見大学会館(横浜市)
満洲医大の古医籍 従来の知見 1 1929年、満鉄副総裁の松岡洋右氏は大連満鉄図書館に命じ、北京の書肆から3万冊の古書を購入。 満洲医大の古医籍 従来の知見 1 1929年、満鉄副総裁の松岡洋右氏は大連満鉄図書館に命じ、北京の書肆から3万冊の古書を購入。 うち古医籍1414種・約6千冊が南満医学堂、後の満州医大に寄贈された。 この整理・研究にあたったのが岡西為人氏らの中国医学研究室と後の東亜医学研究所で、蔵書目録の『中国医学書目』(1931)と『続中国医学書目』(1941)から概要が分かる。
満洲医大の古医籍 従来の知見 2 1945年の日本敗戦で満洲医大は中華民国の国立瀋陽医学院と改名され、岡西氏は48年5月まで留用された。 満洲医大の古医籍 従来の知見 2 1945年の日本敗戦で満洲医大は中華民国の国立瀋陽医学院と改名され、岡西氏は48年5月まで留用された。 この前後、古医籍の多くが民国政府の中央衛生研究院図書館に移管されたが、正確な年代は分からない。 さらに49年に新中国となり、55年に北京に創設された中医研究院に移管され、現在にいたる 。
従来の知見 3 移管経緯まとめ 大連・満鉄図書館(1929) 奉天・南満医学堂(1931頃) 奉天・満州医大(1941頃) 従来の知見 3 移管経緯まとめ 大連・満鉄図書館(1929) ↓ 奉天・南満医学堂(1931頃) 奉天・満州医大(1941頃) 瀋陽・国立瀋陽医学院(1945) 北京・中央衛生研究院(1948前) 北京・中国中医研究院(1955~)
瀋陽・中国医科大学の蔵書 1 手前は旧満洲医大の病棟。 当校は瀋陽医学院の後身、すなわち満洲医大の後身でもある。 瀋陽・中国医科大学の蔵書 1 手前は旧満洲医大の病棟。 奥は新築の病棟で煉瓦の外壁は同様。 当校は瀋陽医学院の後身、すなわち満洲医大の後身でもある。
瀋陽・中国医科大学の蔵書 2 旧図書館の正面 現在は学生会館 旧図書館の全景
瀋陽・中国医科大学の蔵書 3 左奥の高いビルが現図書館
瀋陽・中国医科大学の蔵書 4 当図書館には古医籍がカードで884枚あるが、一部に洋装本もある。善本書庫で線装本を数えたところ915タイトルあった。カード数より多いのは、同一書の上帙と下帙が別々の書架に置かれる例が多いため。うち古医籍は779、史書・類書・目録等が122タイトルあった。
中国医大蔵書5 稿本『宋以前医籍考』 岡西氏『宋以前医籍考』15冊は、第1~4冊(左写真の左側4冊)が瀋陽医学院刊の活字本 。 中国医大蔵書5 稿本『宋以前医籍考』 岡西氏『宋以前医籍考』15冊は、第1~4冊(左写真の左側4冊)が瀋陽医学院刊の活字本 。 右写真はその第1冊の封面。
瀋陽・中国医科大学の蔵書 6 第五冊目以降は岡西氏の驚くべき精緻な万年筆手校本。 瀋陽・中国医科大学の蔵書 6 第五冊目以降は岡西氏の驚くべき精緻な万年筆手校本。 「三七・三・二六・晩完了/此日残寒、長子卒業中学」ほかの識語も。
瀋陽・中国医科大学の蔵書 7 これらには満鉄・満洲医大の旧蔵印や、1954年の中国医科大蔵印がある一方、両者の中間に当たる民国時代の瀋陽医学院蔵書印がない。 すると古医籍の多くが瀋陽医学院に移管された際、これらだけは別に保管されていたが、1954年になって中国医科大学に収蔵されたらしい。 さらに不思議なことに、遼寧中医学院図書館の蔵書票が各書に貼られている。同校は1958年に瀋陽に創設されたので、その設立にあたり古医籍が一度中国医科大学から譲渡された後、再び中国医科大学に戻ったらしい。
内蒙古図書館 1 呼和浩特市の内蒙古図書館では日本関連古医籍を中心に閲覧し、9点に満洲医大・中国医科大・遼寧中医学院の蔵印等を認めた。
内蒙古図書館 2 別に瀋陽医学院による「岡西為人先生寄贈/中華民国三七(一九四八)年五月四日」の記入がある和刻『金匱要略』が一点あった。
内蒙古図書館 3 この和刻『金匱要略』には中国医科大学・遼寧中医学院の蔵印等がある。 内蒙古図書館 3 この和刻『金匱要略』には中国医科大学・遼寧中医学院の蔵印等がある。 しかもこれら中国医科大学・遼寧中医学院旧蔵書の全ては、帙に「中国書店/幾冊幾元」の票も貼られている。
内蒙古図書館 3 当図書館の古籍担当者によると、恐らく70年代後期に北京の古書店である中国書店より購入したものという。 内蒙古図書館 3 当図書館の古籍担当者によると、恐らく70年代後期に北京の古書店である中国書店より購入したものという。 するとこれらの書は、文化大革命の動乱期に、遼寧中医学院ないし中国医科大学から北京の中国書店に流れ、内蒙古図書館が70年代後期に購入したものと思われる。
その他 一方、ドイツの知人は80年代に北京の中国書店で上掲の和刻『外台秘要方』を購入。「南満洲鉄道株式会社」「南満医学堂」「中国医科大学図書館(1954.9.20)」「遼寧中医学院」の蔵印や蔵書票がある。
結論 満洲医大旧蔵書移動図 奉天・満州医大(1941頃) 瀋陽・国立瀋陽医学院(1945) 某所(岡西氏?) 結論 満洲医大旧蔵書移動図 奉天・満州医大(1941頃) 瀋陽・国立瀋陽医学院(1945) 某所(岡西氏?) 北京・中央衛生研究院(1948前) 瀋陽・中国医科大学(1954) 北京・中国中医研究院(1955~) 瀋陽・遼寧中医学院(1958) 瀋陽・中国医科大学(1958後) 北京・中国書店(70年代) 現在 現在 内蒙古図書館・ドイツほか
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