北部を中心とした 関東平野の夏季の気温分布特性 市原 正浩
研究目的 平成19年8月に国内最高気温を更新した「熊谷」 をはじめとした関東平野の北西部は、猛暑地域 として有名である。 大学が位置する宮代町周辺は、これらの地域と 比べて、どのような気候特性となっているのか? また、東京都心部と比べた場合はどうなのか? 夏季の「暑さ」を中心に、宮代町周辺の気候特性 の把握を試みた。
研究方法 小学校の百葉箱を利用した、関東平野の高密度 気温観測網(広域Metros)のデータを利用する。 広域メトロスは、首都大学東京をはじめとした大学間連携による ボランティア・グループで運営されている。 設置地点は、約200校。日本工大は、宮代・幸手・久喜・加須・羽 生・板倉・藤岡などを担当。約100日毎にデータ回収に周回。 今回は、欠測データが少ない、2006年と2008年 の夏季(7月~9月)を解析対象とした。
首都圏の小学校 205地点 (約2.5km間隔) 広域Metros AMeDAS 担当場所 NIT N m 205地点 (約2.5km間隔) NIT 首都圏201箇所の小学校の百葉箱中に温度計を設置 広域Metros N AMeDAS 担当場所 m
本研究で特に注目した地点 広域Metros AMeDAS NIT 鶴ヶ島 館林 板倉 藤岡 太田 深谷 熊谷 葛西 堀切 八潮 越谷 春日部 久喜 鴻巣 桶川 大宮 浦和 新宿 本研究で特に注目した地点 NIT 首都圏201箇所の小学校の百葉箱中に温度計を設置 広域Metros N AMeDAS m
AMeDASと広域Metrosの比較 広域Metros→強制通風していないが、系統的に高く出る傾向は認められない
→晴天日だけ選んでも、日毎の気温変化パターンが異なる 2006年夏季の晴天日(13日間)の気温変化 NITに比べ新宿が高温化する夜 NITに比べ館林が高温化する日 NITに比べ葛西が低温化する日 →晴天日だけ選んでも、日毎の気温変化パターンが異なる
NITと各地点の気温差日変化(2006年夏季) 13~17時に高温化 夜間に高温化、日中は同等 午後から夕方に低温化 館林ほど高温化しない
NITと各地点の気温差(2006年夏季) 館林は高温時にNIT よりも3℃以上高温化 する場合がある 新宿は夜間にNIT
NITと各地点の気温差(2006年夏季) 大宮は熊谷と同じくらい暑い 大宮は高温時NITより も3℃程度高温化する 場合がある 大宮との気温差は 熊谷との気温差と同等 大宮は熊谷と同じくらい暑い
気温差分布に差異が現れる原因は何か? NIT 強い南風の日 さいたま市 や館林が 高温化する 春日部付近まで海風が進入
気温差分布に差異が現れる原因は何か? NIT やや西よりの南風の夕方 熊谷・館林が高温化 NITも高温に 海風の進入 は弱い
気温差分布に差異が現れる原因は何か? NIT 5m/s 東よりの風の日 館林もNITも高温化しない
気温差分布に差異が現れる原因は何か? NIT 5m/s 北よりの風が 北部に入った日 館林や熊谷 だけではなく 都心も高温化
風向による気温差の変化(NIT≧30℃のとき) 館林は南風時に最も高温化。 東風時は高温化が弱い傾向。 湾岸は南風時に最も低温化。 東風時は低温化が弱い傾向。
一方、夜間から早朝の気温差分布は? NIT 5m/s 静穏な夜 都心区部のみが高温化 東京の湾岸には海風が残る 郊外は冷える
気温差分布に差異が現れる原因は何か? NIT 5m/s 北風が都心まで 進入した夜 都心部の高温域が南に拡大 横浜が高温化 郊外は冷える
★高温時にNITより暑くなる地域はどこか? 越えた時間帯の 平均気温差分布 館林・熊谷よりもさいたま市付近の方が暑い! 延べ時間:195.5時間
★さらに高温となった時、暑くなる地域はどこか? NIT NITが34℃を 越えた時間帯の 平均気温差分布 館林も高温化。さいたま市付近はやはり暑い。 延べ時間:24.7時間
まとめ 「熊谷」よりも「館林」の方が高温であった。 「館林」は午後遅く~夕方にかけて高温化する。 風系によって、高温となるエリアが移動する。 日最高気温という極値を比べると「館林」が暑い となるが、高温の持続時間を考えると、むしろ 「さいたま市」の方が暑いといえる。 東京都心部と比べた場合、夜間~早朝、これら の地域はしっかりと冷え、熱帯夜になりにくい。