弱磁場中性子星(低質量X線連星系)における

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弱磁場中性子星(低質量X線連星系)における エディントン限界付近での状態遷移) 高橋 弘充(ひろたか) 低質量な恒星 アンドロメダ銀河(X線) (~ 1 M ) ~500天体 半分以上がLMXB 弱磁場中性子星 (< 109 G) 低質量X線連星系(LMXB) 通常銀河における支配的なX線種族 定常放射:数時間~年で変動 SPECTRAL STATES OF XTE J1701−462: LINK BETWEEN Z AND ATOLL SOURCES Lin et al. 2009, ApJ, 696, 1257

コンパクト天体への質量降着流 弱磁場中性子星(NS)、恒星質量ブラックホール、活動銀河核 莫大な重力エネルギーが解放 X線 (質量M~1.4M 、半径~10km) → 運動エネルギー、放射エネルギー どのようにエネルギーが変換されているのか? ・LMXBの物理的な描像 黒体放射 (BB) TBB rBB 東モデル (満田 et al. 1984、牧島 et al. 1989) 定常放射:降着円盤+NS表面 弱磁場NSでは、降着流は磁場の影響を受けない 光学的に厚く 幾何学的に薄い 多温度黒体放射 (MCDモデル) NS 降着円盤 1 20 10 4 Energy [keV] 最内縁半径:rin 最内縁温度:Tin 観測量:温度、半径 → 光度 ∝ r2・T4 基本法則:ステファン-ボルツマン法則

LMXBの状態遷移 ・状態遷移 color-color 図(CCD) Z天体:形がZ Atoll天体:形が環礁 カラー:カウントレートの比 Hard color = (高帯域)/(中帯域) Soft color = (中帯域)/(低帯域) color-color 図(CCD) (Haisinger et al. 1989) Horizontal Upper banana Island Normal Flaring Lower banana 数時間~年で変動 スペクトル解析:特徴がなく、どんなモデルでも合ってしまう 日本が頑張ってきた Z天体:形がZ Atoll天体:形が環礁 暗い エディントン限界以下 質量降着率: 明るい エディントン限界付近 光度 それぞれの状態での物理的な描像は? ブラックホール連星系なら、low/hard, high/soft, Slim disk 状態。。。

CCD, HID Atoll天体 Z天体 Cyg-like (“Z”型) Sco-like (“ν”型)

XTE J1701-462 I: Cyg-like Z II~IV : Sco-like Z V: atoll Branch 青:Horizontal (HB) 緑: Normal (NB) 赤: Flaring (FB) 金: HB/NB 接点 黒: NB/FB 接点 ・2006~2007にかけてアウトバースト ・観測史上はじめて、Z天体 => atoll 天体 => 静穏へと遷移した ・RXTE で 866 観測(総時間~3 Ms) ・Type I バースト(NS表面での核融合反応)も V 期に2回観測された ・8.8 kpc ?, inclination ~ 70 deg?

スペクトル MCD + BB + Power-law モデル ・降着円盤 ・NS表面 ・周囲の高温ガスで  コンプトン散乱された放射

CCD, HID ←個別の時期ごと 全時期を重ねて ・Cyg-like => Sco-like => Atoll と遷移 ・Z状態では、その都度 HB, NB, FB がある ・状態遷移の説明には、質量降着率+αが必要

Sco-like 変動のタイムスケール FB NB NB/FB接点 => FB NB/FB => HB/NB ・各branch をトレースする時間スケール  FB~10分、NB~数時間、HB~1日 ・FB は先へ行くほど、短い時間スケール ・NB は中間が短い時間スケール(両端は安定) ・HB は不明

パラメータの変動 MCD + BB + Power-law モデル ・降着円盤(LMCD, kTMCD, RMCD) ・NS表面 (LBB, kTBB, RBB) ・周囲の高温ガスでコンプトン散乱された放射 Power-law の寄与 < 30%

パラメータの変動 Atoll (high/soft)状態 ・L ∝ T^4 ・R : ほぼ一定 => ステファンボルツマンの法則   +円盤の最内縁半径は標準降着円盤の最終安定軌道? => ブラックホール連星系の high/soft 状態と描像が一致

パラメータの変動 Z状態(NB/FB, HB/NB接点) ・そもそも Cyg-like FB については再現できていない。。。  どちらの接点も  同じような振る舞い。 ・RMCD 増  (最内縁が膨れる   放射圧が効いている?) ・Atoll状態は、  NB/FB 接点とつながる

パラメータの変動 Z状態(FB) ・L∝ T^4/3 上に乗る (質量降着率が一定で、 TMCD増、RMCD減  (質量降着率が一定で、   TMCD増、RMCD減 => 円盤の最内縁がAtoll   状態と同程度まで縮小 ・なぜBB放射が変化する  のかは不明

パラメータの変動 Z状態(NB) ・NB/FB => HB/NB へ向け、 MCD は変化しないのに LBB増(TBB一定、RBB増)  両者をつなぐ状態  と考えられる。

パラメータの変動 Z状態(HB) ・LBBの変化は小さい ・LMCD は、HB/NB 接点 から離れるほど減少  から離れるほど減少 ・LMCD+Lhard tail  は変動が少ない。  => hard tail も円盤起源?

著者達の考え(1) ・XTE J1701-462 によって、観測史上はじめて、  Cyg-like => Sco-like => atoll 状態の遷移が観測された。  これは質量降着率の変化に依存した変動だろう。  よって、Z状態の中に HB, NB, FB があるのは、  単純な質量降着率では説明できない現象ではないか?  質量降着率@atoll = 1 とすると、          @ Sco-like ~ 30         @ Cyg-like ~40-60

著者達の考え(2) ・Z状態は、HB/NB と NB/FB のそれぞれの接点を通る 2本の直線が基準では?  2本の直線が基準では? ・HB/NB の方が BB(NS表面)の flux が高いので、  HB/NB の接点が slim disk 状態(移流が優勢)  NB/FB の接点が標準降着円盤の状態  にあるのでは?(ただし p-free モデルの必要性はない)