地球内部磁気圏探査に向けた 高エネルギーイオン観測器の設計 平原研 M2 渡邊 健太
●内部磁気圏とは 内部磁気圏の粒子 : プラズマ圏(電離圏起源) (~eV) リングカレント (0.1~数百keV) 放射線帯 (>MeV) ・1950年代に発見。安定な領域だと考えられてきた。 ・1990年以降のあらたな衛星観測により磁気嵐に伴って 激しく変動していることが再発見。 >300keVの電子フラックス Dst指数 : 地磁気の変動 磁気嵐の指標 高エネルギー電子の生成機構は? -磁場が大きな影響を与えている 主相 回復相 Miyoshi & Kataoka 2005
●内部磁気圏でのイオンの役割 内部磁気圏研究を進める上で大きな障害となってるのは、内部磁気圏の 基本場がよく分かっていないことである リングカレントを電流として直接観測することは困難 プラズマ圧の空間勾配から間接的に電流を求める方法 ・磁力線に垂直方向の電流密度 [Parker,1957] [Lui et al,1987] 内部磁気圏研究を進める上で大きな障害となってるのは、内部磁気圏の 基本場がよく分かっていないことである ・内部磁気圏では、数百eV~数MeVのイオンがプラズマ圧を担うが、こ のような広いエネルギー範囲の粒子と電場と磁場を同時に計測した 衛星はかつて無い。 ・リングカレントの発達や消失によって電磁場が発生することは予期 されているが、この二次的な効果が荷電粒子に与える影響について はほとんど知られていない
●プラズマ粒子観測器とHEP-iのスペック プラズマ粒子観測器(ERG衛星) 10-1 10 100 103 102 105 104 107 106 energy(eV) TSP-i LEP-i MEP-i HEP-i TSP-e LEP-e MEP-e HEP-e XEP-e 電子 イオン :オプション HEP-iの求められるスペック エネルギー範囲 : 100keV~1MeV 視野 : 180deg×360deg (衛星のスピンを利用) 角度分解能 : 10deg×10deg 時間分解能 : 4s ,1spin period (3次元の分布関数)
●計測原理(HEP-i) TOF (Time of Flight)型 質量分析 E v m Collimator (Carbon Foil) 入射粒子 Collimator (Carbon Foil) 半導体検出器(SSD) Start Signal Stop Signal MCP TOF (Time of Flight)型 質量分析 E v m 1)粒子がCarbon foilを透過して観測器内に入射してくる時、2次電子を放出する。それをStart SignalとしてMCPで検出。 2)入射粒子がSSDに到達するとエネルギーが計測される。同時にSSDから2次電子が放出されそれをStop SignalとしてMCPで検出。 3)Start,Stop Signalの時間差と粒子のエネルギーEから粒子の質量を算出することで、電子、イオンの切り分け、さらにイオン種を弁別することが可能となる。
●HEP-i 概念図 形状パラメタ 観測器の大きさ : φ160 mm 高さ : 40 mm MCP(有効エリア) : φ105mm 側面から見た図 carbon foil start -ele stop-ele 上から見た図 観測器の大きさ : φ160 mm 高さ : 40 mm MCP(有効エリア) : φ105mm SSD (有効エリア) : 16×36 mm コリメーター Carbon Foil : 10.5×1.5 mm Carbon Foilから SSDまでの距離 : ~60 mm 形状パラメタ G-factor : ~0.08cm2sr MCP 入射粒子の軌道 SSD 電子到達領域
●二層構造SSDを用いた電子、イオンの弁別 原理 電子>100keV イオン<1MeV SSD HEP-iの場合) ・100keV以上の電子は一層目を透過し、 1MeV以下のイオンは一層目で止まる SSDの厚さが必要。 ・一層目と二層目でカウントのあった粒子は 全て電子とみなす。 シミュレーション設定 ・SSD 12um 500um ・最大入射速度ベクトル 30x5 degree ・エネルギー -電子 100,300,500,700 800,900,1000(keV) -プロトン 700,800,900,1000 (keV) 100keV電子の一層目透過確率 92%
●電子をイオンとみなしてしまう場合 ① ② ③ シミュレーション設定 ●SSDからの信号閾値は ~30keVであると設定 二層目に到達しない。 AE8MAX,AP8MAX シミュレーション設定 Differential flux L=4, E=100~1400keV エネルギー分布 SSD表面と入射粒子のなす角 ;30x5 deg イベント数 1000000 event
●電子をイオンとみなしてしまう場合 0.05% ・二層目での損失エネルギーが30keV以下 ・一層目での損失エネルギーが100keV以上 誤認してしまう確率は 0.05% ・一層目の厚さが12umのSSDなら100~800keVのプロトンと電子の弁別が可能 - これまでのシミュレーションでは不感層を考慮に入れていない - 強度面で不十分 - 作成が困難
●質量分析器の設計 T = t2-t1 粒子の計測時間 実際に計測する時間 側面から見た図 carbon foil start -ele stop-ele 上から見た図 粒子の計測時間 MCP 入射粒子の軌道 SSD incident particle start-ele stop-ele 電子到達領域 ti t2 時間 t1 t1 : start ele MCPに到達 t2 : stop ele MCPに到達 ti : 入射粒子SSDに到達 実際に計測する時間 T = t2-t1
●Start,Stop電子 Start電子の引き出し SSDからの2次電子について n 法線ベクトル α v 初速ベクトル Carbon FoilやSSD表面で発生する電子の 初期エネルギーは数eV程度であると知られ ているが、シミュレーションでは1~10eVの間 の値を等確率で与えた。 Start電子をMCPに到達させるために Carbon Foilから放出された二次電子を 加速させる。 SSD側に700kVの電位を与えた メッシュを設置 v 初速ベクトル n 法線ベクトル α Carbon Foil SSD メッシュ Carbon Foil 初速ベクトルがCarbon Foil,SSDの法線に対 してαとなる確率がcosαに比例するような確 率分布をとった。 Start電子 700V
●イオンの軌道
●Start電子の軌道 -1.5kV 0.5kV MCP 1.5kV
●Stop電子の軌道 0.6kV -0.55kV MCP 1.5kV SSD 0.1kV
●計測時間 100keV 1MeV 1MeVのプロトン,start,stop電子の飛行時間 Stop電子の飛行時間が分散している
構造 Φ160×50 mm エネルギー範囲 100keV~1MeV イオン種 H,He,O 視野 180deg×360deg (衛星のスピンを利用) 角度分解能 10×10 deg 時間分解能 4s ,1spin period (3次元の分布関数) G-factor ~0.08 cm2・sr
●放射線帯電子 シミュレーション設定 ・Double Layered SSD : 300um 1mm 70×18 mm ×3 ・MCP : Φ105mm ・Shield : Al 5mm 入射粒子 AE8MAX,AP8MAX 初期座標 -HEP-iを覆う球殻の上半球 速度ベクトル -球の内側にランダムに入射 エネルギー分布 Differential flux L=4, E=1~6MeV イベント数 1000000
●シミュレーション結果 Integral flux イベント数について 今回、球殻の半径は20cmと設定 -上半球の表面積は約5000cm2 p>1MeV p>10MeV e>1MeV e>3MeV e>10MeV 実際は 5000/2×106=2.5×109(/s) SSDによる検出 SSD1 173counts SSD2 185counts SSD3 172counts 一層目のみ反応したカウントはない
MCPによる検出 粒子のMCP到達時のエネルギーをプロット MCP 到達電子の個数 1217 gamma 1974 gamma線 400keV< MCP到達領域 赤 電子 緑 gamma線 分布に斑があるように見えるが
●まとめと今後 ○半導体検出器のみで電子とプロトンの弁別の可能性を検討した。 -100keV~の弁別を実現させるためには12 um以下の薄さの SSDが必要なことが分かった。 ○質量分析器の設計を行った。 -1MeV以下の粒子種の弁別が可能 stop電子の飛行時間の分散を抑えられれば、さらに高いエネルギー での弁別が可能 ○TOFのわりこみについて考察 -エネルギー、飛行時間、電子到達領域の三重相関をとることによる ノイズ評価