研究進捗報告 河合 佑太 海洋モデルミーティング 2016/03/03
現状況のサマリー 前回までの数値実験では, 積分時間が依然不足していた. 海洋を 4000 年積分したことで, 結合系が落ち着き始めた. 長くて海洋 1000 年 計算時間短縮のために, 環境を乗り換えた 計算時間が 1/7 に! 海洋を 4000 年積分したことで, 結合系が落ち着き始めた. 大気海洋大循環のパターンは M07 とよく似たものが得られた. しかし, 海氷の厚さや塩分は増え続ける. 計算結果を現在解析し, 問題点を整理中 海氷モデル再考 輸送過程 海氷面アルベドのパラメタリゼーション 部分氷 結合系の熱収支・水収支 rigid-lid 近似に伴う制約 なぜか * 熱慣性が小さすぎる.
結合モデルによる水惑星の気候実験 目的 設定 結合モデルの振る舞いを確認 惑星パラメータは, 現在地球の値 大気モデル 海洋モデル 解像度: 水平約 6° x 6°, 鉛直 26 層 初期条件: 等温(280 K), 静止 海洋モデル 2次元 (東西平均モデル) 解像度: 南北約 3 °, 鉛直 60 層 年平均・日平均した入射放射フラックスによって, 結合系を駆動する. 入射放射フラックスの南北分布(W/m2)
計算結果: 全球平均値の時系列 初期から 20 サイクル目まで (海洋約 4000 年間積分に相当) 大気上端 放射収支 地表面温度 積雪量 結合 run の 20 サイクルの結果を繋ぎ合せた 物理場はようやく落ち着き始めているが, 海氷の厚さはまだ増え続けている. 積雪量 海氷の厚さ 長時間積分ののち, 物理場はようやく落ち着く傾向が見え出した. しかし, 海氷の厚さや塩分はまだ増え続けている
結果: 平均状態 東西風, 温位 子午面循環, 比湿 大気 降水量 海氷 東西流, 温位 子午面循環, 塩分 0.0 海洋 循環の特徴を簡単に説明 水惑星の海洋大循環 風応力で駆動された循環が卓越する 渦による循環 東西流, 温位 子午面循環, 塩分 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0.0 海洋
結果: 平均状態 This study Marshall et al. (2007) 温位, 東西風 大気 海氷 温位, 東西流 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0.0 海洋
結果: 平均状態 This study Marshall et al. (2007) 子午面循環, 比湿 大気 降水量 子午面循環, 塩分 6. Currently, we are conducting numerical experiment of aquaplanet climate with our coupled model in which present Earth parameters are used. 8. In this poster presentation, we will overview our model and the preliminary results. 子午面循環, 塩分 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0.0 海洋
結果: 大気・海洋大循環の南北熱輸送 HA HA + Ho Ho This study Marshall et al. (2007) HA: (乾燥静的エネルギー+湿潤静的エネルギー)*v Ho : Cpo * Θ * ( v + vbolus ) + 拡散フラックス 合計(HA+HO)では, 極大が 2 つあるような分布となった. Ho の輸送の南北分布が関係しているように見える.
海洋南北熱輸送の収支 This study Marshall et al. (2007) ボーラス輸送の寄与が小さい オイラー輸送(破線) ボーラス輸送の寄与が小さい 子午面循環による熱輸送で, 海洋熱輸送の分布は, 大体決まっている. ボーラス輸送(点線) 等密度面混合(一点破線) Total(実線)
海氷面アルベドの再考 - OSR - OSR Enderton et al. (2009) 破線: Aqua 海氷面アルベド - OSR は, 極域で 30 W/m2 ほど少ない
海氷面アルベドのパラメタリゼーション 自分の計算におけるアルベドの値 雪面: 0.80, 融解中の雪面 0.735, 氷面: 0.65 一方, Enderton et al. (2009) によれば, Marshall たちはより精巧に海氷面アルベドを指定 氷の厚さ依存性 αImax + (αImin – αImax) * exp(-hI/hIα) 雪面の温度依存性 -5 度以下: αScold, 0 度以上: αSwarm (-5 度~0度の間は線形で変化) 雪の年齢 e-folding time 5 日で αSold まで減少 Enderton et al.(2009) Table 1.
rigid-lid 近似と関係した問題点 海洋全体積は変えられない 順圧ロスビー波の分散関係を変調させる. 楕円方程式を解かないといけない. 理由 淡水の流入や蒸発に伴う塩分(濃度)の増減は, どうのように表現するか? virtual salinity flux (F) でパラメタリゼーション 塩分収支の厳密な議論は, rigid-lid 近似を使う場合できない ! 順圧ロスビー波の分散関係を変調させる. 楕円方程式を解かないといけない. rigid lid 近似 あるいは
rigid-lid 近似と関係した問題点 どう対処するか? 調査中 (implicit) linear free surface 塩分収支の問題に対しては, 完全な解決にならない しかし, 実用的かつ私たちの興味に対しておそらく適している. 実装はしているが, 結合計算には試していない. nonlinear free surface 私たちの興味に対して, 計算コスト高で不向きかも Roullet et al. (2000)
まとめ, 課題 M07 とよく似た大気海洋大循環パターンが得られた. しかし, 結合系全体はまだ平衡に達していない. 課題 海氷の厚さ, 塩分が増え続けている 海氷の輸送過程の考慮が必要かもしれない. 課題 海氷の扱いの再考 海氷の輸送過程 海氷面アルベドのパラメタリゼーション (この後, 言及) 熱収支, 水収支の確認 トレーサー(温位, 塩分)の収支 そもそも rigid-lid 近似の制約はどの程度か? (この後, 言及)