生物学 第3回 生物は進化した 和田 勝
前回の復習・生物を分ける 新しい生物が見つかると、基本となる種を同定します。 種とは何か? 定義するのは難しいが、 「種とは、互いに交配しうる自然集団で、それは他の集団から生殖の面で隔離されている」 (マイヤによる定義)
前回の復習・生物を分ける 階級 Rank 界 Kingdom 門 Phylum 綱 Class 目 Order 科 Family 属 Genus 種 Species この二つを組みあわせて学名とします。
前回の復習・生物を分ける ちなみにヒトは 動物界(Animal kingdom) 脊索動物門(Phylum Chordata) 脊椎動物亜門(Phylum Vertebrata) 哺乳綱(Class Mammalia) サル(霊長)目(Order Primates) サル(真猿類)亜目(Suborder Anthropoidea) ヒト類上科(Superfamily Hominoidea) ヒト科(Family Hominidae) ヒト属(Homo) ヒト(sapiens) Homo sapiensと表記します。
前回の復習・生物を分ける リンネは動物と植物の二界に分けました。 → 現在では五界 動物界 植物界 菌界 原生動物界 モネラ界
種の保全 生物多様性と種の保全 (Biodiversity and conservation) ここでは、多様な生物種との共存が豊かな世界を保障するという一言だけにしておきます。
生物多様性の起源 このような生物多様性はどのようにして生じたのでしょうか。 リンネの時代には種の普遍性を疑うものはいませんでした。ただし、リンネは、交配実験から雑種ができることを認識していたようです。
進化論とダーウィン 神がすべての生物を創ったとする考えには、矛盾することが多くなってきました。 生物は神によって創造されたものではなく、自然選択によって進化してきたのだと考えたのがダーウィン (Charles Darwin、1809-1882)でした。
進化という考え 地質学、古生物学、比較解剖学の成立と知識の集積。 ●化石生物と現生生物の類似性 ●形態の相同(homology) ●痕跡器官(vestigial organ)
進化という考え 前肢の骨の相同 別々に創ったと考えるより、共通の祖先から進化したと考えたほうが自然に思えます。
ダーウィンの登場 ダーウィンは1831年、22歳のとき、ビーグル号による世界一周の航海に出ました。 船長の話し相手兼博物学者として乗船したのです。
ビーグル号の航海 航海は5年かかりました。この間、多くの生物を観察し、種が不変でないことを確信していきます。
自然選択による進化 しかしながら、どのようにして進化が起こったのか、すぐには解決がつきませんでした。 マルサスの人口論を読んで、限られた資源では競争が起こることをヒト以外の生物にも当てはまることに気がつきます。 ハトの品種改良を調べ、人為選択により品種ができることを研究します。
自然選択による進化 ウォーレスの手紙に押されるように1858年リンネ学会で発表。 1859年には、それまで書き溜めていたノートの内容をまとめて、『種の起源』を出版しました。
自然選択による進化 1)生物の集団には変異(variations) が存在する 2)変異は親から子に伝わる が存在する 2)変異は親から子に伝わる 3)すべての子が、生まれ出た生息環 境で生き残ることはできない 4)生き残る確率に、変異による差が ある
この後はビデオ教材を見る この後、「ダーウィンの大冒険」(2004年11月3日TBSで放送した番組)を見ました。
ダーウィンフィンチ ビデオに出てきたダーウィンフィンチはゾウガメと並んで有名な鳥です。
ダーウィンフィンチ ガラパゴス諸島に生息するダーウィンフィンチは14種類いて、姿かたちは似ているが、嘴の形が異なります。これは食性を反映していると考えられています。
変異の存在
この変異は遺伝する
環境の収容力<繁殖力 エルニーニョ現象による旱魃によって、種子を付ける植物に変化が起きた(乾燥に強い果皮の厚い植物が残る)。
環境に適合したものが子を残せる 嘴の高いものが生き残っていることがわかります。
自然選択による進化 自然選択によって進化が起こって、生物多様性が生まれたことを疑うヒトはいません。 現在では、自然選択のもとになる変異は、遺伝子DNA分子の突然変異によって生じることがわかっていますが、ダーウィンはもちろん遺伝子は知りませんでした。
自然選択による進化 自然選択によって進化が起こって、生物多様性が生まれたことを疑うヒトはいません。 現在では、自然選択のもとになる変異は、遺伝子DNA分子の突然変異によって生じることがわかっていますが、ダーウィンはもちろん遺伝子は知りませんでした。
嘴の大きさを支配する遺伝子 現在では、嘴の大きさを支配する遺伝子があることがわかっています。 BMP4(bone morphogenetic protein、骨形成タンパク質)が嘴の大きさに関与しているようです。 したがって、このタンパク質をコードする遺伝子の発現量の違いが嘴の大きさを決めている可能性が大です。
嘴の大きさを支配する遺伝子 Science, 305, 1462-1265(2004)より
キーワード「遺伝子」 遺伝についてまだ話してもいないのに、突然「遺伝子DNA」という言葉が出てきました。「遺伝子がコードするタンパク質」ってなんでしょう。 これについては、遺伝現象についてお話してから、詳しくお話します。 しばし待て!
メンデルの出番 実はダーウィンと同時代にイギリスから遠く離れた(当時の感覚では)チェコのブルノの修道院でメンデルが遺伝の研究をしていたのです。 ここでメンデルに登場してもらわなくてはなりません。