VERAのプロジェクト観測とその成果 本間 希樹 国立天文台 水沢VERA観測所
VERA: VLBI Expolration of Radio Astrometry 4台の電波干渉計で 銀河系の測量を行う 入来 水沢 石垣島 小笠原 最長基線 : 2300 km 完成:2002年春
新技術:2ビームアンテナ 2ビームアンテナ : 焦点面上に2つの受信機を設置 2天体を同時に観測することで大気揺らぎをキャンセル 目標精度 : 10 マイクロ秒角 Normal VLBI station VERA station reference atmosphere Target source 通常のVLBI局とVERA局の模式図
銀河系全域の直接測量は21世紀のフロンティア VERAの目標:銀河系測量 年周視差 銀河系の大きさ: 約 30 kpc 太陽系 天の川銀河の中心 銀河系の中心まで 距離 8 kpc 視差 125 μ秒角 銀河系の測量には、10μ秒角が測れる装置が必要 銀河系全域の直接測量は21世紀のフロンティア
2006/07年シーズンのプロジェクト観測 銀河系中心 (3天体) PI: 小林 近傍ミラ型変光星の周期光度関係(5天体) PI:面高 近距離分子雲 (3~4天体) PI:廣田 中距離銀河円盤計測 (~15天体) PI:本間
銀河系中心 プロジェクト Sgr B2 Sgr A 銀河系中心の位置天文観測 銀河系中心距離 R0 銀河回転速度 Θ0 銀河回転速度 Θ0 銀河中心部1 kpc以内の 構造/運動 Sgr A 1度 150 pc Sawada et al. 2004 6 Kassim et al, 1999
ミラ型変光星 脈動変光星のイメージ 脈動しながら質量放出を 起こす。星周領域でメーザー が観測される。 マゼラン雲中の周期光度関係 脈動しながら質量放出を 起こす。星周領域でメーザー が観測される。 将来的には多数の変光星の観測から、マゼラン雲の距離や、脈動変光星の理解が進むと期待される
近傍分子雲の観測 Orion 分子雲など、近傍の重要天体の距離を計測 ローカルアームの構造 pi = 2.29 +/- 0.1 mas Hirota et al. (2007), D = 437 +/- 19 pc pi = 2.29 +/- 0.1 mas オリオン分子雲
中距離円盤プロジェクト 太陽から5kpc程度以内のメーザーを観測し、距離と運動を計測 太陽近傍の銀河系ディスクの基本構造を探る 銀河系定数 R0, Θ0 銀河回転曲線 渦巻き構造, 密度波の検証 各星形成領域の研究 HR図O型星の較正
VERAの観測天体の分布図 中距離円盤 銀河系中心 その他 (ミラと近傍星形成 領域は除く) 腕の形状と構造を トレースできると期待 される
主な成果の紹介 ミラ型変光星 → 中川氏の講演 近距離分子雲 → 廣田氏の講演 銀河円盤計測 → 本間 (一部 佐藤氏の講演)
S269 (シャープレス269) S269 : 星が生まれている領域 D:5.28 +/- 0.24 kpc (2004年11月~) 強い電波を出す星 人類が三角測量で計測した、最も小さい視差/最も遠い距離
年周視差計測の歴史 Parallax measurements since 1838 (S/N > 5) This work (VERA) Distance (pc) VLBI Hipparcos (1989) Bessel (1838) Ground-based optical year
記者発表(と余談) 2007年7月10日に S269とOrion-KLの 結果について記者 発表 NHKニュース、各紙 で取り上げられた NHKニュース、各紙 で取り上げられた 毎日新聞(07/8/22) →
S269の銀河系内での位置と運動 距離 ~5.3 kpc 銀河系スケールに手が届く時代に ~30 kpc (c.f. R0 ~ 8 kpc) LSRに対する固有運動 (V_l, V_b) = (-4.6, -4.1) km/s 銀河回転が相殺されて見えない → 太陽近傍と同じ銀河回転速度を持つ Θr /Θ0 = 1.00 +/- 0.03 ~30 kpc 太陽系
銀河回転曲線に対する制限 1天体の計測ながら、回転曲線に強い制限が付く S269 No dark matter 13 kpc までフラットな回転曲線を強く支持
W49Nによる銀河回転計測 W49N:nearly on the Solar circle HII regions with VLA W49N:nearly on the Solar circle Massive SFR at D ~ 11 kpc W49N Line of sight Sun Solar circle 20000 AU H2O maser with VERA
W49Nの固有運動 2005年10月から1年間の運動 (位置基準:J1905+0952) 銀河面に沿った動きが見える → 銀河回転を検出 最も明るく、分子雲の視線速度に近いスポットの動き 銀河面 銀河面に沿った動きが見える → 銀河回転を検出
W49Nの固有運動と銀河回転速度 今回の観測から、 μ= 6.5 +/- 0.1 mas/yr 分子雲の観測から Vr (km/s) μ (mas/yr) 観測値 今回の観測から、 μ= 6.5 +/- 0.1 mas/yr 分子雲の観測から V_r = 9 +/- 5 km/s この観測を再現する Ω(=Θ0/R0)は、 Ω= 30.0 +/- 0.6 (km/s/kpc) (R0 = 8.0 kpcを仮定、依存性は弱い) Sgr A*(Reid ら)に次ぐ、2例目の銀河系スケールでの銀河回転計測
銀河回転速度の比較 今回の観測 Ω= 30.0 +/- 0.6 (km/s/kpc) Reid & Brunthaler (2004) (VLBAで8年) Ω = 29.45 +/- 0.1 (km/s/kpc) 両者はerror barの範囲で一致している → Sgr A*の銀河面内の運動も小さい V_t ~ 5 +/- 5 km/s (c.f., V_t ~ 18 +/- 7 in Reid & Brunthaler) Sgr A*が銀河中心に静止している重要な証拠 → BH質量への制限、Binary説の棄却などに 重要
見えてきた銀河系の奥行き これまでにVERAで年周視差が計測された星の分布 銀河系の模式図 太陽付近の模式図 太陽系 NGC 281 S269 ρ oph Orion S Crt Illustration courtesy: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (SSC/Caltech)
まとめと今後の展望 VERAによって銀河系の奥行き・回転が見える時代がいよいよ到来 中距離円盤プロジェクトは、2007年度も新規に20天体程度、3年で50天体を目標に継続 興味ある方の様々な形での参加・共同研究を歓迎します。