メディア社会文化論 2015年11月19日.

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メディア社会文化論 2009年12月4日.
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メディア社会文化論 2015年11月19日

6.本(書籍) 6.1本の存在論-本の垂直性 本の垂直性(後世を意識した媒体性)・・・その垂直性を強く示すのもの 過去には写本(cf中井正一「委員会の論理」1936)がその典型かと(稀少資源の紙に書かれた媒体)。 現在は、本の市場の外にある図書館もその垂直性がありうる。  (公共図書館の無料原則の潜在的な理由であるかも・・・門外漢の呟きだが)

垂直性と物神性 本の物神性・・・このような本の垂直性と随伴して(平行して)本の物神性というものが生じてくる。 「本は踏むべからず」 反対に プリントアウトした資料・・・使わなくなったら裏紙はメモに 古新聞・・・ちり紙交換、ゴザ、レジャーシート

物神化(フェティシズム) 下着フェチ、脚フェチ・・・下着、脚によって本来性欲が充たされるわけではない。 貨幣へのフェティシズム・・・貨幣を万能の価値のように崇めること。本来、単に労働時間の記録・証明。労働時間の交換の媒体。 物神化(フェティシズム)=本来崇拝すべきものでないものを、神のように崇めること

そう考えると、我々の性欲もフェティシズムに過ぎないとの見方もできる。 性欲・・・フェティシズム 本来の愛(交換)の対象・・・遺伝子 お金・・・フェティシズム 本来の取引(交換)の対象・・・労働時間

本のフェティシズム① 本のコレクション、つんどく・・・読まれてなんぼのものなのに 蔵書・文庫・傷めずに読む(書き込み厳禁)→一つの図書館の源流か 物神化していない現実・・・ 単にテープやマイクロフォンがなかった時代、著者の声や考えを記録したものにすぎない面(子曰く、あるいは筆記者としてのプラトン)

本のフェティシズム② 要は昔の本の機能は、テレビやラジオが果たしうる 本のフェティシズム示す言葉 1.本を踏むべからず ・・・「知-集合性の証」としての本への尊敬の念を、子どもに植え付ける。集合性への畏れ、おののき

本のフェティシズム③ 2.読書百遍、意自ずから通ず →ある種の「全体性」が本にはあるとみなされる。 ・・・作者の単なる「部分」ではなく、「部分」でありつつ「全体」を象徴するものとして捉えられる。本当は作者の考えの一プロセスを示すものに過ぎないのに。 3.「人間書物」という言い方。ミハイル・イリーン(1895-1953)『書物の歴史』 ・・・これは逆にいえば、知恵者の人間よりも、書物の方が 本来上の存在という意識があることがうかがわれる。

本のフェティシズムの理由 1.宗教上の教典や歴史、特に正史が紙(あるいは紙の前史となる文字の記録媒体)の利用をかなり独占 ▽昔のヨーロッパの大学、神学部中心。 日本でも鎌倉五山、京都五山は学問の中心、bible は語源的に本の意味もある。the Book は「聖書」の意味にも。 神学や仏教哲学が学問・哲学の中心であった。修道院の図書館の姿にみられるもの

従来の本・・・聖書、歴史書・・・集合性の証し(デュルケム) ▽現在の本 でも 内なる他者性を含める・媒介性(矛盾するものを媒介し=結びつけつつ、体系づける)    少なくとも、本の素材となった雑誌や新聞の記事(書き下ろしでない本の場合)や、著者のメモ(書き下ろしの場合)の作成にかかった時間よりも多くの時間が1ページに投入。

▽労働価値説的にも、雑誌や新聞よりも、本は価値がある。 2.本の物神性の背景としての、言葉の物神性 ▽「人生は一行のボオドレエルに若かない」(芥川龍之介『或阿呆の一生』 )・・・芸術至上主義的な立場

3.蓄積的で精査されて作られる情報源であり、更新がしづらいだけに、普遍的真理が盛り込まれていると考えられる可能性が高い。 ▽ネット情報の反対の正確

6.2出版社の二つの仕事 「本屋」という言葉の二義性、多義性 出版屋さん?書店さん?場合によって印刷屋さん、製本屋さんとも 現在の出版社の主な仕事 ・・・雑誌作りと本作り(ただし双方は連動するが、仕事内容はだいぶ違う)

「書き下ろし」という言葉 従来「書き下ろし」は、本の帯の謳い文句・売り文句 普通、本は書き下ろしではなく、雑誌・新聞の連載を集める(編集する)ことで作られる。

雑誌の編集部員の二つの機能 雑誌作り・・・新聞作りと本作りの中間的性格 編集部員が新聞同様自分で記事を書く場合 (記者的機能) 編集部員が外部の寄稿者の原稿を割り付けていく場合(編集者的機能) ・・・実際は著者として署名する有名人に、編集部員がインタビューして作る記事も多い

大手出版の商社的機能 大手出版社 編集や雑誌制作の何割かは子会社や別会社に(外注・アウトソーシング) 自分たちは実質、名前を貸したり、販売網を提供したりするだけという場合もある。 雑誌でも記者的機能はしなくなる(外注ゆえ) →商社的機能

本のみの出版社 本のみの出版をする会社 ほとんど人員を要さずに、大きな仕事 全国的に良く知られているところでも、社員数名も・・・採用は一社当たり10数年に一度 本作りは、電話1本と人脈があれば出来る 窮極の外注産業・・・文章は作家先生や有名教授。版下作りは版下屋さん。印刷は印刷屋さん、製本は製本屋さん、表紙デザインはデザイナー。挿絵は挿絵画家先生。

昔は、印刷屋と出版屋と本屋(場合によっては版画屋、画家、作家)がある程度、同じ人物や企業によって担われていた              ↓ 分業化 本屋で多様な意味に

(出版社をはじめ)全てのマス・メディア産業 商社的機能(編集者的機能の窮極) 記者的機能(自前でものを作る) 企業の大規模化、老舗企業のブランド価値の向上・・・ 現代に近づくにつれて 記者的機能→商社的機能

記者的機能は非分業(自給自足)に近い 商社的機能は分業 よって現代になればなるほど前者→後者に マスメディア企業が大規模になればなるほど 前者→後者に(編集プロダクション・制作プロダクション)(「発掘!あるある大事典」(関テレ)の納豆騒動)

(余談) 編集プロダクション、制作プロダクション(下請け)・・・元請けの大手マスメディアに較べ就職しやすい ただしいつまでも安月給、元請けの若手正社員の部下にとどまる キャリアを積んで転職するのなら良いかも。

6.3出版物の販売 委託販売(ほぼ、岩波と福音館を除き) 書店は出版物の陳列棚・・・買い取らない 短いサイクルで流れていく(児童書は例外) 委託販売で売れ残った出版物・・・取次店経由で出版社に返品・・・3-5年のスパンで倉庫に保管(在庫は課税の対象に。税法が本を物神化しているようにも思われる)・・・倉庫で3-5年経ったもの・・・裁断・・・古紙市場に

6.4出版物の特徴 互換性が効かない→ブランド忠誠心(特定の著者・特定の出版社だから買う・読むという人が多い)が強まる(後藤将之) 放送にはない特徴 新聞は放送と出版の中間 代替可能性に対する代替不可能性 Cf.ホルクハイマー&アドルノ『啓蒙の弁証法』

商品とは?1/3 出版物は「商品性」が多少弱い情報商品かもしれない では、商品とは? 価格の付いているものは全て商品?→違う、でも我々の日常感覚はそう。(違う例・・・政府刊行物は例えば、商品ではないが、定価はついている)(法人化以前の国立大授業料)

商品とは?2/3 商品・・・「資本」を富ませるもの・利潤をあげるもの 資本家(株主)に配当を得させ、しかも資本を自己増殖していくもの    G-W-G' なぜ自己増殖するか・・・労働者に払う賃金以上に資本の側が利益を得るから 資本は、自己増殖すること(儲けを得ること)を自己目的とする

商品とは3/3 要は商品は理想や価値よりも利益を優先する(「資本の無方向性」) 情報財のほとんどが商品であること・・・資本の自己増殖という目的のために、情報の中身が歪められる虞が常にある。 大量生産のもの、流通の速いものほど、利益至上主義になりやすい(商品性が強い)

本と商品性 逆にサイクル長く(紙は長持ちする、でも「酸性紙?」、でも50年は持ち堪える)、多品種少量生産の情報媒体である本は、こういう商品性はやや弱いといえる。 とはいえ、現実の書店は委託販売→サイクル速い→図書館の意義(流通期間の短い本という媒体を、紙という媒体の寿命に相応しく、長いものとする)

ともあれ、大半の本は商品であるということに注意を要する。 そして図書館の資料の大半は本であり、本の大部分は商品である点には、留意を要する。 商品でない本・・・政府刊行物、非売品、自費出版など。政府刊行物以外、商品になりえた本より二級品(格下)のイメージもある。

素人の男女より、モデルはイケメン美女揃い だけど、大半のモデルの性格はきっと悪い お袋さんの家庭料理より、レストランの食事は舌に愉しい だけど、外食ばかりする人は早死にする

商品は非商品の同類より絶対、質は上。 だけど、利益志向故の、歪みがある