平成25年12月20日 根室牛削蹄師会講習会資料 平成25年度乳牛肢蹄に関する活動について 根室農業改良普及センター 主 査 田 口 容 士
平成24年度の活動について(1) 平成24年度は根室管内の乳牛肢蹄の現状について、根室生産連と合同で実態調査を行った。 調査農家は25戸で調査頭数は1681頭だった。 調査結果は冊子化して管内酪農家全戸に配布した。 各種講習会で調査結果を解説した。
平成24年度の活動について(2) 平成24年度に根室牛削蹄師会役員会及び講習会で活動内容を解説した。 根室牛削蹄師会の皆さんより、本活動に関して高い評価を頂いた。 今後は削蹄牛の治療歴や肢蹄で困っている酪農家に関する情報提供について、力強いご支援を頂けるようになった。
平成25年度の活動について これらの背景を踏まえ、平成25年度は実際に肢蹄に関して困っている酪農家7戸に対して技術支援を行っている。 技術支援を行った結果、管内酪農家に参考として貰えるような事例の収集に努めている。
平成25年度の重点改善項目 牛が選び食いしやすいTMR改善 TMR調整直後と残飼の粒子サイズが極端に違うと、飼槽上で分離し、選び食いを促進していることが強く疑われます。 混合順番や餌押し回数、混合割合などの検討をすすめました。 第一胃の異常発酵を招きやすい単味飼料の特定と給与改善 第一胃内で急激に発酵し易いデンプンが多いと飼料計算上は問題無いように見えても、急激な胃内で発酵し、蹄への負担増という形で現れます。 選び食いを想定してゆっくりと分解する単味(例:ビートパルプやコーンの加工方法が違う物の組み合わせ)の使用を推進しました。 蹄浴の回数と濃度 改善 効果的な薬浴をすすめ、薬浴の頻度と薬剤濃度を守るよう対応しました。
改善事例1 別海町G牧場 労働力4.0人 経産牛288頭 年間乳量2800トン FS飼養(ミルキングパーラー) TMR給与(細切サイレージ) 別海町G牧場 労働力4.0人 経産牛288頭 年間乳量2800トン FS飼養(ミルキングパーラー) TMR給与(細切サイレージ) 蹄底潰瘍が頻発 間違った蹄浴法 甘い除ふん作業
改善項目 選び食いの現況確認 飼料内容が適正か確認 蹄浴薬剤の適正利用 除ふんの適正化
細かな物だけを選び食いしている! 給餌前後のTMRの粗さ 強い 弱い 反芻の強弱 19mm以上 2~8% 19~8mm 30~35% 10~20% 4mm以下 30~40% 推奨値 TMR調整直後 残飼
TMRの栄養濃度 澱粉濃度が高まりやすいTMR! (赤色数字に課題あり) 第一胃の異常発酵が起こりやすい
ルーメン内でのエネルギーの消化速度 原料や品質によって消化速度は違う (カナダ サスカチュワン大学畜産学部)
(Herrera Saldana et.al. 1990) ルーメン内での澱粉の消化 穀物によって澱粉の発酵速度は違う! (Herrera Saldana et.al. 1990)
選び食いが蹄に与えるメカニズム 第1胃(ルーメン)環境が崩れる ルーメンアシドーシスの誘発 蹄には毛細血管が集中=最初に症状が出る エンドトキシン増えると免疫細胞が頑張る アシドーシスで多量のルーメン内微生物が死んでしまう 免疫細胞が頑張るとサイトカインが増す 死滅した微生物の細胞壁からエンドトキシンという内毒素が作られる サイトカインは作られた場所で免疫細胞を呼び寄せようとするために、炎症反応を起こす 毛細血管は末梢部に集中しています。(蹄、子宮、乳房等)
改善事例 その2 別海町E牧場 労働力3.5人 経産牛121頭 年間乳量1120トン FS飼養(アブレストパーラー) 改善事例 その2 別海町E牧場 労働力3.5人 経産牛121頭 年間乳量1120トン FS飼養(アブレストパーラー) TMR給与(細切サイレージ) 蹄冠部赤く、PDD常在 飛節に頑固な腫れ 転倒による廃用が頻発
改善項目 配合飼料多給によりTMRのタンパク質が過剰傾向(高MUN) 蹄浴薬剤濃度が薄い 蹄浴槽が大きすぎて、水量が多い 牛床構造に問題点が多い 待機場の滑り防止
現況 飼料設計はJA営農センターが行うようになり、目立った跛行は減った。 獣医師の往診も明らかに減少した(後継者より)。 蹄浴は冬期間のため休止 待機場に、滑り止めを今までの2倍量散布し、防散タンカルからホタテ殻細粒の散布に変更 待機場のコンクリート打ち直し、目地切りを来春検討
待機場 ・ゴムスクレッパーにより毎日きれいに除ふん ・磨き上げたかのようになめらかなコンクリート表面 ・破損により補修したコンクリート面は 余り滑らない ・牛舎と待機場の境目が濡れやすく 非常に滑りやすい
牛床 ・通路を基点とした牛床の高さが34㎝であった(20㎝程度を推奨) ・牛床が高すぎるため、横臥しづらい状況にある ・FS牛舎の飛節損傷の大きな要因 ・古めのFS牛舎でよく見られる傾向