CO2排出権取引市場の意義と各国の取り組み 上野 純 岡本 晃助 橋本 航
目次 1.排出権取引とは?(橋本) 京都議定書 2.アメリカ排出権取引(岡本) 3.EUにおける排出権取引 京都議定書 2.アメリカ排出権取引(岡本) 3.EUにおける排出権取引 4.日本とどう関連していくか?(上野) 5.今後の展開
1.排出権取引とは? 地球温暖化に関わる温室効果ガスを削減するための経済的手法。 国・各企業に温室効果ガスの排出権を割り当てる。 割り当てられた排出権だけでは足りない国や企業が、排出量以上に排出権を持ってる、国や企業から購入できる。 全体の排出量をコントロールするシステム。
A国 排出権 取引 B国 キャップ・アンド・トレード 削減失敗 削減クリア 不足分を金銭で購入 A国の余裕分 不足分を満たす 排出権取引を 利用し購入 (例) A国が温室効果ガスの抑制努力をして目標数値をクリア、B国が目標に達しなかった場合、B国はA国から排出権取引によって、金銭で不足分を購入できるシステムである。市場取引という経済的手法を取り入れることによって、より柔軟に世界全体の温室効果ガスを抑制するのがねらいである。 4
京都議定書とは何か? 京都議定書の概要 ・目標を達成するために、システム導入。 ・先進国の温室効果ガスの数値目標を各国ごとに設定。 (排出権取引・クリーン開発メカニズム・共同実施) ・途上国に対しては、数値目標など新たな義務など導入なし。 *詳しくは資料をご覧下さい。
どんな規制があるのか? 遵守(じゅんしゅ) 約束を遵守されることを担保するために、罰則方式で設定されている。 ・報告義務不遵守 温室効果ガス、各種排出量の数値に関しては、各国が集計して報告する。 ・排出枠不遵守 約束した割当量を超過し排出した場合は、排出量の3割増で次期排出枠から差し引く。
なぜ、排出権取引ができたのか? 温室効果ガスの排出量を一定量削減するための費用が、国・産業種別で違う。 温室効果ガスの対象である二酸化炭素を削減するための新しい技術やシステムとして必要とされる。 社会全体で活動し、削減費用が最も少ない形で温室効果ガスを削減できると期待される。
削減目標 出典 (Yahoo!カーボンオフセット)
1位 アメリカ(21.4%) 2位 中国 (18.8%) 3位 EU (12%) 排出ランキングTOP3 1位 アメリカ(21.4%) 2位 中国 (18.8%) 3位 EU (12%) *1位のアメリカが二酸化炭素排出量が多いのは、1人当たりのエネルギーの消費量が多いため。また、飛行機・自動車(デトロイト)・化学工場(化石燃料)から出る大気汚染。1人当たりの自動車保有率が高い。これらが関係していると思われる。
2 アメリカの排出権 ・人口1人当たりの排出量は米国が20.9トンもあり、日本の9.8 トン に比べても2倍以上であることが分かる。 10 ・上の表を見て排出量が多いのは、米国であり、世界の20.8%と約 5分の1を占めている。 ・人口1人当たりの排出量は米国が20.9トンもあり、日本の9.8 トン に比べても2倍以上であることが分かる。 10
2.1 アメリカ政府の考え方 1.ブッシュ政権の排出権対す る考え方 1.ブッシュ政権の排出権対す る考え方 ・世界的に見ても排出量が 多く、一番に排出削減に取り 組まないといけないアメリカ がブッシュ政権では・・・ 排出権取引制度が経済成 長の妨げになるという認 識 が強く、その表れとしてブッシ ュ大統領は2001年に事実上 の京都議定書離脱の発表し ている。 2.今後の排出権に対する 考え方 ・米国の大統領選挙では 共和党のマケイン上院議 員と民主党のオバマ上院 議員がともにキャップ&ト レードの導入に前向きで あることを表明している。 ・地域および民間レベル でもキャップ&トレードの導 入に前向な 考えである
3 EUにおける排出権取引 EU排出権は年々増加傾向 にあり、運用が始まった・・・ 500億ドルまで増加した 2005年には市場規模は・・ 79億ドル 2007年には・・・ 500億ドルまで増加した 次に取引方法の一つであるEU-ETS について説明します
3.1 EU-ETSについて ・2005年1月から施行されたEU-ETSですが2005年から2007年度ま で を第1フェーズ、2008年から2012年までを第2フェーズとしそれぞ れの期間でルールなどが違ってきている。そこで上の表で違いを表し た。 13
3.2 排出権取引制度担当官の EUでの今後の見通し 3.2 排出権取引制度担当官の EUでの今後の見通し ・欧州委員会、排出権取引制度担当官のサイモン・マー 氏(下の写真)の見解によるとEUでは京都議定書による 8%のCO2削減目標のうち排出権取引により3.5%削減 できるとの見込みである。 ・またサイモン・マー氏ほぼ目標の半分のCO2を削減で きることから排出権取引は今後非常に有効な取引である とみている。 サイモン・マー氏
4日本はどのように取り組むか? 京都議定書の規定により温室効果ガス削減目標が- 6%義務とされている。 日本ではEU ETSのような本格的な排出権取引は 行われていない。 自主参加型排出権取引制度という独自の市場が試用 中である。
4.1自主参加型排出権取引制度 自主参加型排出権取引制度とはEU ETSと違い強制参加ではなく自主参加 であることが特徴である。 不足や余剰の排出枠 目標保有参加者 A社 取引参加者 D社 排出枠 B社 環境省 補助金 不足や余剰の排出枠 C社 自主参加型排出権取引制度とはEU ETSと違い強制参加ではなく自主参加 であることが特徴である。 目標保有参加者は、補助金を受けて導入する設備によって削減されるであ ろう削減量を自社で算出し、自分たちで削減目標を設定する。また取引対象 ガスもCO2のみとなっている。取引参加者は排出枠の取引を目的として参加 している。削減目標を達成できなかった場合のペナルティは補助金を返還し なければならない可能性がある。 他の参加者からの排出枠の積極的な購入や、クリーン開発メカニズム(CDM) による排出権の獲得も目標達成として認められている。
4.2海外からの排出権の購入 CDMを行いCO2 排出削減技術や資金の支援 技術も低く作業効率の悪い 発展途上国の政府や企業 技術も高く作業効率も良いが排出枠に悩む 日本企業 発展途上国側は日本の優れた技術や資金を得ることができる 日本企業は技術や資金を援助したことによる削減分のco2排出権を獲得 クリーン開発メカニズム (CDM: Clean Development Mechanism) 発展途上国の企業にCO2排出削減技術や資金の支援をおこない、削減できた排出量の一 定量を企業のCO2削減分に当てられるシステムである。
4.3国内排出権取引の今後の見通し 現在の排出権取引は企業ごとに排出量が定められて おらず強制参加でない。 参考となるEU ETSも試行段階にあり必ずしもCO2 が、削減しているとはいえない。 強制参加となると、CO2排出枠のかけ方にも、かけ方 の基準によって有利になる企業や不利になる企業も でてくるため問題。
5今後の展開 世界的にはCO2排出権取引は発展の方向へと向かっ ている EU…取引対象の温室効果ガスの増加や、目標達成 不可の場合の罰則強化 アメリカ…地球温暖化に関する京都議定書からの離脱 日本…温室効果ガス削減目標が-6%でありながら未 だに自主参加型の排出権取引
5今後の展開 排出権取引の問題 公平な排出枠の設定ができているのか。 厳しい排出目標の設定をさけるため、京都議定書に加 盟していない途上国の効率の悪い工場の稼働率が上 昇して、世界の排出量がかえって増えかねないといっ た問題 不足分の排出枠は金で解決すればよいと考える企業
5今後の展開 排出権取引による効果 排出目標を設定することにより企業になるべくCO2を、 排出させないことができる。 省エネルギーな技術を生み出すきっかけにもなる。 CDMにより途上国の発展の手助けもできる。 未解決の諸問題もあるが、すでに見てきたような地球 温暖化対策のひとつの大きな役割に注目していきた い。