Lincolns Lawyers & Consultants

Slides:



Advertisements
Similar presentations
家族と法律. 婚姻は のみに基づいて 成立し,夫婦が を有す ることを基本として, ○ により,維持されなければな らない。 配偶者の選択,財産権,相続,住居の選定, 離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の 事項に関しては,法律は と両性の ○ に立脚して,制定 されなければならない。 日本国憲法.
Advertisements

1 個人情報保護について 弁護士法人龍馬 弁護士 舟木 諒,板橋俊幸. 情報化社会 □ 個人情報保護法の概要 2003 年(平成 15 年) 5 月 23 日成立, 2005 年(平成 17 年) 4 月 1 日全面施行。 ◆成立の背景 プライバシー侵害 国際上の問題 住民基本台帳問題 個人情報漏洩問題.
2006 年度 民事執行・保全法講義 第 2 回 関西大学法学部教授 栗田 隆. T. Kurita2 目 次  強制執行の意義  債務名義(民執 22 条)  執行力の拡張(民執 23 条)
国及び地方公共団体が分担すべき役割の明確化 機関委任事務制度の廃止及びそれに伴う事務区分の再構成
秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然として知られていないもの(不2Ⅳ)
商標の国際登録 ~海外で権利を得る方法~.
北朝鮮人権侵害問題啓発週間とは 北朝鮮による日本人拉致問題について 政府主催「拉致問題シンポジウム」 政府主催「ふるさとの風コンサート」
2016年度 民事訴訟法講義 12 関西大学法学部教授 栗田 隆
2004年1月1日に発効したPCT規則改正の概要.
2013年 民事訴訟法3 関西大学法学部教授 栗田 隆 第6回 (目次) 訴訟承継 任意的当事者変更.
【資料3】 条例検討会議について 平成28年8月30日 福岡市障がい者在宅支援課.
ドイツ 医師会強制加入の規定 義務違反に対する処罰規定
2016年度 民事訴訟法講義 8 関西大学法学部教授 栗田 隆
2005年度 民事執行・保全法講義 第2回 関西大学法学部教授 栗田 隆.
ベンチャーのためのアメリカ法人設立 (国境を越えたビジネス展開)
社会人基礎Ⅱ 第2回 業界・企業分析の基礎 法令の視点から.
裁判員制度と日本の刑事司法 ー公判審理のあり方を中心にー
2014年度 民事再生法講義 8 関西大学法学部教授 栗田 隆
交通事故 1.交通事故の発生状況 2.自動車損害賠償責任保障法 3.中間責任主義 4.運行供用者 5.運行支配と運行利益
於:大阪弁護士会館 2013年6月22日(土) 介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット 共同代表 弁護士 藤 岡 毅
1.心身の発達と健康な結婚生活 2.結婚生活と家族の健康
人権と教育基本法.
北朝鮮人権侵害問題啓発週間 ・北朝鮮人権侵害問題啓発週間とは ・北朝鮮による日本人拉致問題について 「拉致問題パネル展」についてのお知らせ
2016年度 民事訴訟法講義 秋学期 第11回 関西大学法学部教授 栗田 隆
知的財産権講義(14) 主として特許法の理解のために
「子どもたちが作った映像を見て インドを知ろう!」 (実施対象:一般)
請求権競合論 1.請求権競合論とは 2.問題点1,2 3.学説の対立 4.請求権競合説 5.法条競合説 6.規範統合説
2012年度 民事訴訟法講義 12 関西大学法学部教授 栗田 隆
保険募集における 代理店賠責の必要性 御社に所属している代理店は大丈夫ですか? 一般社団法人 日本損害保険代理業協会
(安全衛生活動についての基礎研修) 安全配慮義務とは?
看護現場における 労務管理の法的側面① <労働法と労働契約>
中級日本語 第 14 課  吉林華橋外国語学院 日本語学部 製作.
専門職(弁護士)後見人の経験を中心に 弁護士 宋 インキュ
2017年度 民事訴訟法講義 秋学期 第7回 関西大学法学部教授 栗田 隆
市民オンブズマンは 地方自治体の情報公開を どう進めてきたか
GDPRの適用開始に向けて 個人情報保護委員会事務局.
社会人基礎Ⅱ 第2回 業界・企業分析の基礎 法令の視点から.
2005年度 民事執行・保全法講義 秋学期 第5回 関西大学法学部教授 栗田 隆.
大阪大学一般事業主行動計画 一般事業主行動計画の策定について 一般事業主行動計画策定年月日 一般事業主行動計画策定の計画期間
国際的な情報セキュリティへの取り組み 各国の対応とサイバー犯罪条約 インターネット時代のセキュリティ管理.
§7. 平和主義 2007年7月3日・10日 社会科学部 憲法.
§5. 平和主義 人間科学部 憲法.
取締役の責任と代表訴訟 ・取締役の責任軽減 ・代表訴訟の合理化.
仲裁を起こすなんて滅多にないことですよね。 でも大丈夫です。わからないことがあったらなんでも 事務局に聞いてください。
世界から見たら? サンフランシスコ講和条約 敵国条項 日米地位協定 日米安保条約 日米原子力協定 憲法改正 基地問題 経済問題 原発問題
著作権入門セミナー 第1回 著作権制度の基礎 用賀法律事務所 弁護士  村瀬 拓男.
2001.12.4 エルティ総合法律事務所所長弁護士 システム監査技術者 藤 谷 護 人
2006 民事執行・保全法講義 秋学期 第15回 関西大学法学部教授 栗田 隆.
「政府標準利用規約(第2.0版)」の概要 「政府標準利用規約(第2.0版)」の概要は以下のとおり。 1.基本的なコンテンツの利用ルール
「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 行政行為その2 行政行為の効力.
2017年度 民事訴訟法講義 12 関西大学法学部教授 栗田 隆
2013年度 民事訴訟法講義 10 関西大学法学部教授 栗田 隆
「不 当 利 得」 の 構 造 債権 第一章 総則 第二章 契約 第三章 事務管理 第四章 不当利得 第五章 不法行為.
第7回 (目次) 上訴概論 判決の確定 控訴 控訴の利益 控訴の提起とその効力 附帯控訴と控訴人の新請求
Kinjo-Gakuin Univ. © 2008 Motohiro HASEGAWA
討議テーマ① 現行憲法に緊急事態条項を 創設すべきという意見がありますが どう思いますか?
圧力強化の先に見えるものー制裁の効果と今後の展開
日韓関係の「危機」 韓国大法院判決 情報パック11月号.
2008年度 倒産法講義 民事再生法 9 関西大学法学部教授 栗田 隆.
知的財産高等裁判所 の設立経緯と意義 大阪高等裁判所判事       塩 月 秀 平.
2017年度 民事訴訟法講義 8 関西大学法学部教授 栗田 隆
ミニディスカッション ~ディスカッションの流れ~ 講義④
成人年齢18歳 賛成 1班 古森 橋本 近藤 前澤.
旧朝鮮半島出身労働者に関する事実とは? 事実その1 事実その2 ところが,
日本国内で運転する際に必要な国内・国際運転免許証について
2015年度 民事訴訟法講義 1 関西大学法学部教授 栗田 隆
DI者の権利擁護にかかる相談窓口とソーシャルワーク・ポリシー
2006年度 民事執行・保全法講義 第5回 関西大学法学部教授 栗田 隆.
討議テーマ② 現行憲法9条に自衛隊について 明記すべきという意見がありますが どう思いますか?
個人情報に関する基本方針 基本方針 具体的な取り組み 相談体制
Presentation transcript:

Lincolns Lawyers & Consultants 16/10/2014 オーストラリアの家族法と ハーグ条約 Lincolns Lawyers & Consultants リンカーンズ総合法律事務所 弁護士 占部英高

16/10/2014 オーストラリアの家族法とハーグ条約 本日のセミナー 序章 本旨 よくある質問

16/10/2014 オーストラリアの家族法とハーグ条約 1. 序章  ハーグ条約の概要

2. 本旨 2. 裁判申し立て・請求原因事実 1. 子の返還請求手続き 3. 監護権の侵害 4. 抗弁事実•返還拒否事由 16/10/2014 オーストラリアの家族法とハーグ条約 2. 本旨  1. 子の返還請求手続き 2. 裁判申し立て・請求原因事実 3. 監護権の侵害 4. 抗弁事実•返還拒否事由

4. よくある質問 1. 連れ去られた子との面会交流 2. 子の返還後の手続き 3. 連れ去られた先がハーグ条約未加盟の場合 16/10/2014 オーストラリアの家族法とハーグ条約 4. よくある質問 1. 連れ去られた子との面会交流 2. 子の返還後の手続き 3. 連れ去られた先がハーグ条約未加盟の場合 4. ミラー・オーダーとは

本日のセミナー (計50分) 序章 (10分) 本旨 (20分) よくある質問 (10分) 質疑応答 (10分) 16/10/2014 オーストラリアの家族法とハーグ条約 本日のセミナー  (計50分)  序章  (10分)  本旨 (20分)  よくある質問 (10分)  質疑応答  (10分)

1. 序章:ハーグ条約の概要 ハーグ条約とは 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」 ハーグ国際私法会議(HCCC) 16/10/2014 1. 序章:ハーグ条約の概要 ハーグ条約とは 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」 ハーグ国際私法会議(HCCC) オランダ/1893年設立  1976年:検討        1980年10月25日:採択        1983年12月1日:発効        2014年10月現在:世界91カ国が締約             (外務省ウェブサイトより)      

ハーグ条約の目的 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」 16/10/2014 1. 序章:ハーグ条約の概要 ハーグ条約の目的 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」 近年、人の移動や国際結婚が急増 1970年代頃から、監護権の侵害を伴う、16歳 未満の子の国境を越えた連れ去りが急増 子がそれまでに生活していた常居所地国に子 を迅速に返還する国際協力の取り組み 親子の面会交流の実現

子の返還手続きの流れ 挿絵 子 夫 妻 子 日本 オーストラリア 中央当局 (外務省) ③通報 中央当局 9条 ④所在確認 16/10/2014 子の返還手続きの流れ 日本 オーストラリア 中央当局 (外務省) ③通報 中央当局 (外務省・法務省・連邦警察) 9条 ④所在確認 ⑤裁判所などが子を送り返す 命令 ②申し立て 11条・12条 監護権の 侵害 7条 8条 ①夫/妻が子を 連れて 無断で日本に帰国 夫 妻 子 夫/妻  夫/ 妻 子 離婚または 関係が破綻 ⑥ 送り返す

16/10/2014

1. 序章:ハーグ条約の概要 2014年4月1日 日本とハーグ条約 1. 序章:ハーグ条約の概要 2014年4月1日 日本とハーグ条約 2013年1月28日: 第183回通常国会において,ハーグ条約 の締結が承認され、国際的な子の奪取 の民事上の側面に関する条約の実施に 関する法律(条約実施)が成立        2014年1月24日: 条約の署名,締結,公布にかかる閣議決 定を行うとともに,条約に署名を行った 上で,オランダ外務省に受諾書を寄託 2014年4月1日: 発効

日本人の母親が父親の同意なく、またはその国の裁判所の命令に違反して、子を日本に連れ帰った例 16/10/2014 日本人の母親が父親の同意なく、またはその国の裁判所の命令に違反して、子を日本に連れ帰った例 元妻は2009年、そのころ8歳の息子と同6歳の娘を日本へ連れ帰っ たまま、米国へ 戻っていない。同州の司法当局は男性に監護権を認め、 元妻に逮捕状を出していた。  ただ、日本は、国際結婚で生まれた子どもの親権争いに関する「ハー グ条約」に未加盟。 判決が直ちに日本国内で執行できるわけではない。 米国などは日本に同条約への早期加盟 を求めている。 (2011年5月10日12時20分 読売新聞)

16/10/2014

キーポイント 刑事罰 (国内法) (国内法) 慰謝料 監護権の侵害 子の返還手続き (ハーグ条約) 1. 序章:ハーグ条約の概要 16/10/2014 1. 序章:ハーグ条約の概要 キーポイント  国境を越えた子の連れ去り  刑事罰 (国内法) (国内法)  慰謝料  監護権の侵害 (ハーグ条約・国内法)  子の返還手続き (ハーグ条約)

返還請求手続き 適用対象となるケース 2. 本旨 16歳未満の子の国境を越えた移動 子の連れ去りや留置が、ハーグ条約締 約国間で起こった場合 16/10/2014 2. 本旨 返還請求手続き 適用対象となるケース 16歳未満の子の国境を越えた移動 子の連れ去りや留置が、ハーグ条約締 約国間で起こった場合 連れ去りが子の監護権の侵害を伴う

16/10/2014 2. 本旨 返還請求手続き 日本の中央当局(外務省)

返還請求手続き オーストラリアの中央当局(法務省) 2. 本旨 ハーグ条約に関する一般情報の提供 16/10/2014 2. 本旨 返還請求手続き オーストラリアの中央当局(法務省) ハーグ条約に関する一般情報の提供 返還請求手続きに関する情報の提供(International Social Service) 子を連れ去られた親へ金銭的サポート(Overseas child abduction scheme)

16/10/2014 2. 本旨 返還請求手続き オーストラリアの中央当局(外務省)

16/10/2014 2. 本旨 返還請求手続き 豪州連邦警察の取り組み 子の連れ去りの防止 エアポート・ウォッチリスト

2. 裁判申立て・請求原因事実 2. 本旨 子が16歳未満である 子が連れ去られ、又は留置される直前に条約 締約国に常居所を有している 16/10/2014 2. 本旨 2. 裁判申立て・請求原因事実 子が16歳未満である 子が連れ去られ、又は留置される直前に条約 締約国に常居所を有している 子の連れ去り・留置が子の常居所地国の法令 によれば申立人の監護権を侵害する

3. 監護権の侵害 2. 本旨 申立人は子の常居所地国の法令で子の監護権 を有しているか? 監護権/単独親権/親権 16/10/2014 2. 本旨 3. 監護権の侵害 申立人は子の常居所地国の法令で子の監護権 を有しているか? 監護権/単独親権/親権 申立人はハーグ条約上の概念として子の監護 権を有しているか? 子の居所指定権を保有する: ハーグ条約5条(a)

3. 監護権の侵害 豪家族法 2. 本旨 子の最善の利益(60CC条) 共同監護責任(61DA条) 監護命令(65DA条) 16/10/2014 2. 本旨 3. 監護権の侵害 豪家族法 子の最善の利益(60CC条) 共同監護責任(61DA条) 監護命令(65DA条) 子が両親と同じだけの時間または、実質的で 意味のある時間を過ごす権利 (65DAA条)

16/10/2014 2. 本旨 4. 抗弁事実•返還拒否事由 連れ去りから1年以上経過した後に裁判所へ の申立てがされ、かつ子が新たな環境に適応 している場合 (ハ12条2項) 申立人が連れ去り時に現実に看護の権利を行 使していなかった場合 (ハ13条1項 (a)) 申立人が事前の同意又は事後の黙認をしてい た場合 (ハ13条1項 (a))

16/10/2014 2. 本旨 4. 抗弁事実•返還拒否事由 返還により子が心身に害悪を受け、又は他の耐え難 い状況におかれることとなる重大な危険がある場合 (ハ13条1項(b)) 子が返還を拒み、かつ該当子がその意見を考慮する に足る十分な年齢・成熟度に達している場合 (ハ 13条2項) 返還の要請を受けた国における人権及び基本的自由 の保護に関する基本原則により返還が認められない 場合(ハ20条)

1. 連れ去られた子との面会交流 4. よくある質問 ハーグ条約21条 監護権を有していない 子の常居所地国に取り残されている 16/10/2014 4. よくある質問 1. 連れ去られた子との面会交流 ハーグ条約21条  監護権を有していない  子の常居所地国に取り残されている  海外で暮らす子と接触することができる地位を有する  相手親により、面会交流が妨げられている

16/10/2014 4. よくある質問 2. 子の返還後の手続き  監護者指定の審判手続きを行う   監護命令の取得 (65DA条)

4. よくある質問 3. 連れ去られた先がハーグ条約未加盟の場合 ① 日本で離婚訴訟を提起し、子の親権者指定 について付帯処分の申立てをする 16/10/2014 4. よくある質問 3. 連れ去られた先がハーグ条約未加盟の場合 ① 日本で離婚訴訟を提起し、子の親権者指定 について付帯処分の申立てをする  ② 子が連れ去られた先の外国における利 用可 能な国内法手続きに従って子の返還を求 める方法により、子の返還を求める

4. よくある質問 4. ミラーオーダーの取得 ある国の裁判所が出した命令と同一内容で他国の裁判所が出 す命令 16/10/2014 4. よくある質問 4. ミラーオーダーの取得 ある国の裁判所が出した命令と同一内容で他国の裁判所が出 す命令 日本にはミラーオーダ制度はない オーストラリアでは、ハーグ条約による子の返還手続きの裁 判で、返還命令を出すための条件として用いられることがあ る。

16/10/2014 オーストラリアの家族法とハーグ条約 質疑応答

終わりに オーストラリアの家族法とハーグ条約 ご清聴ありがとうございました。 個別のお問い合わせは下記までお寄せ下さい。 16/10/2014 オーストラリアの家族法とハーグ条約 終わりに ご清聴ありがとうございました。 個別のお問い合わせは下記までお寄せ下さい。 リンカーンズ総合法律事務所 弁護士:占部英高 (T) (03) 9600 1181 (E) urabe@lincolnslawyers.com.au