慶應義塾大学商学部 吉川肇子 (きっかわとしこ) 低頻度の事象の 言語的表現 慶應義塾大学商学部 吉川肇子 (きっかわとしこ)
主観的確率推定はどの程度正確か 低い生起確率のリスクについては過大評価、高い生起確率のりすくについては過小評価 このことの意味は、「人は両極端な確率をうまく認識できない」(確率推定の幅がない)ということではないか
きわめて低確率のリスクをどう表現するか 確率を表現するためには数値的な表現だけでなく、言語的な表現を用いるはず(まれに、ときに、など) 言語的表現の研究(吉川ら、1999)を紹介 目的:程度の副詞と文末表現の組み合わせにより、どの程度の生起確率と推定されるか検討 題材:医薬品、検査、化粧品の副作用表現
従来の研究結果 中程度の確率を示す表現の方が、極端な確率を示す表現に比べて曖昧に解釈される(竹村、1990) きわめて低い生起確率を表現する日本語表現についてはほとんど研究がない
結果の概要 「ごくまれに」は文末表現にかかわらず、確率の推定を低くさせる 同じ副詞を使っていても文末表現が異なれば差が生まれる場合もある 「時に発疹が現れることがあります」>「時に発疹が現れます」 同じ副詞を使っていれば文末表現が異なっていても差がない場合もある 「まれに発疹が現れます」=「まれには発疹が現れることがあります」 表現間の差異は、中程度の確率表現で少ない 時に、まれに、あまり、など
今後の課題 確率にかかわる言語表現は、状況による差がないとする研究結果と、差があるとする研究結果と両方がある もし状況による差がないとすると、ここで紹介した研究結果を直ちに災害情報の表現に適用可能である しかし、差があるとする研究がある以上、災害を素材としてこの点を確認したい