W-CDMA 松下温 (慶應義塾大学 理工学部)
W-CDMAが日欧の次世代共通規格となる W-CDMA (次世代) NTTドコモ、エリクソン……W-CDMA シーメンス、アルカテル……CDMA+TDMA GSM方式のインフラの上で利用できる (世界で5000万人利用) 低コストでスムーズに次世代へ移行可能 エリクソンやノキヤ(フィンランド)に、GSM市場で先行を許した……次世代で打破したい NTTドコモ案にBT、TIM(テレコムイタリアモーバイル)、 ドイツのマンネヌマンなど支持 ドコモ方式とGSMとの互換性の確保を宣言して支持集める ETSI(Europe Telecom Standard Inst.)の投票で 98年1月30日 W-CDMAが日欧の次世代共通規格となる <W-CDMA>Ver.2
日本と協調して多数派を工作した欧州にクァルコム社が最後の対抗をしている形態 アメリカの動向 日欧統一規格(W-CDMA) 北米方式(cdma2000) 一本化交渉が日米欧で活発化 アメリカのクァルコム社がCDMAの基礎技術を日欧に供与しない方針を明確化 チップレート 米国 : 3.6864M Hz 日欧 : 4.096 M Hz 日欧では、クァルコムの技術をそのまま使うと、多大なライセンス料が発生するという不安がある 日本と協調して多数派を工作した欧州にクァルコム社が最後の対抗をしている形態 <W-CDMA>Ver.2
次世代システムのポイント 既存するインフラが無視できない規模(GSMなど) 最小投資でスムーズな移行が重要 両方式が併存した場合、少数派は利用地域の拡大に負担が重い 多数派へ移行せざるをえない 世界で最も早く次世代方式を導入せざるをえない日本 ……多数派にいたい アメリカは日本に欧州との橋渡しを期待 次世代サービスの遅れる可能性が大 <W-CDMA>Ver.2
[ W-CDMA実験システムアクセス系インタフェース ] W-CDMA方式 実験システムの構成 [ W-CDMA実験システムアクセス系インタフェース ] この実験システムは 商品質音声,N-ISDN,パケット,モデム信号などを統合的に提供 有線区間はATM 無線区間はCDMA MCCインタフェース MS BTS BSC機能 MSC機能 無線インタフェース BTS-MCCシミュレータ間 インタフェース MS : Mobile Station BTS : Base Transceiver System MCC : Mobile communication Control Center <W-CDMA>Ver.2
無線伝送系の構成 マルチバンド 4つの帯域幅………………1.25, 5, 10, 20MHz 伝送レートに応じてチップレートの異なる拡散コード 音声、低レートのデータ……1.25, 5MHzのチップレート 2Mbpsのデータ…………20MHzのチップレート <W-CDMA>Ver.2
主要諸元 基地局は通話では別々のコード(基地局間の非同期) 全基地局で共通のコード 報知チャネル <W-CDMA>Ver.2
二重拡散コードの利用 各セルでのチャネル管理それぞれ独立 無限に近い数の拡散コードを作り出すため ショートコード ロングコード 伝送チャネルは両コードの組み合わせで指定 IS-95のようなセル間同期システムでは 同一のロングコードを各セルでチップ位相を変えて使用 セル間でのチップレベルでの同期必要 GPSのような,同期のために,絶対時計必要 W-CDMAでは各セルごとに異なるロングコード セル間非同期を実現 屋内/屋外を連続的にサポート可能 二重拡散を利用 <W-CDMA>Ver.2
2階層符号割り当て フルコードセット/セル フルコードセット/移動局 1コード/セル 1コード/移動局 下り 上り 拡散符号はチャネライゼーション符号とスクランブリング符号の2階層構成とし、セルの識別、移動局の識別、コードの識別を実現する。 フルコードセット/セル フルコードセット/移動局 チャネライゼーション 符号レイヤ スクラブリング 符号レイヤ 拡散符号はチャネライゼーション符号とスクランブリング符号の2階層構成とし、セルの識別、移動局の識別、コードの識別を実現する。 チャネライゼーション符号 直交符号であり、同時に同一局で使用したときの符号間干渉を最小にする。直交符号には数に制限があり、どのセルでも符号セット全ての符号語が用いられる。 全てのセルで共通に使われるため、セルの区別ができない。 下り セル内の移動局の識別およびマルチコード伝送時のコードの識別のために使われる。 上り マルチコード伝送時のコード識別のためのみに使われる。 スクランブリング符号 異なるセルでは送信局が異なるため直交化は期待できない。直交符号である必要はないため多数の符号が存在するので、各セルまたはユーザに異なる符号を割り当てることができる。 セルを識別するために使用。 移動局を識別するために使用。 1コード/セル 1コード/移動局 下り 上り <W-CDMA>Ver.2
チャネライゼーション符号 OVSF(直交可変拡散率符号) 符号間干渉を防ぐため直交符号。 マルチコード伝送を実現するには、拡散率の異なる符号である必要有り。 OVSF(直交可変拡散率符号) 直交符号のツリー構造を使う Hadamard-Walsh符号になる C1.1=1 C4.1 C4.2 C4.3 C4.4 C2.1 C2.1 C2.1 C2.1 C2.2 C2.2 C2.2 C2.2 1 1 1 1 1 1 -1 -1 1 -1 1 -1 1 -1 -1 1 = = C2.1 C2.2 C1.1 C1.1 C1.1 C1.1 = 1 1 1 -1 = <W-CDMA>Ver.2 Orthogonal variable spreading factor
OVSF(直交可変拡散率符号) 符号Cn(m)からC2n(2m-1), C2n(2m) は拡散率が2倍で互いに直交 (例) C64(1) C64(2) :音声ユーザ C32(2):データユーザ 同時に割り当て可能 さらに高速のデータ通信: C16(2), C8(2) 極端に高速のデータ通信に対しては、1つの通信チャネルに複数の拡散符号を割り当てるマルチコード伝送も可能である。 複数の符号を使用すると振幅変動が大きくなりピークファクタの観点からは不利になるが、拡散率が極端に低い符号を使うことによる特性劣化の心配はない。 <W-CDMA>Ver.2
スクランブリング符号 Gold系列 特性 非同期系CDMAによく使われる 周期が等しく、相互相関の常に低い2つのM系列を加算して得られる 特性 符号長がkビットの場合、1つの回路から2^k+1通りの符号が得られる 相互相関値の絶対値は最大でもM系列の約2^(1/2)に抑えられる シフトレジスタ M系列とは、DS-CDMA方式の拡散符号によく使われるもので、利点としては、 1周期中の0と1の発生確率が一定である。必ず0が1つだけ少ない。 自己相関関数の波形はインパルス関数によく似ている。 プリファードペアと呼ばれるM系列同士の相互相関値はきわめて低い。 しかし、プリファードペアと呼ばれる符号系のパターンが増やしにくいという致命的な欠点がある。符号系のパターン数はそのまま同じ周波数帯を使って同時に通話できるユーザの数に当たるのだが、プリファードペアの数はせいぜい1桁である。 M系列には相互相関値を常に低く抑えることのできるプリファードペアが少ないこともあり、なかなか使われていない。そこで、考え出されたのがGold系列である。 この系列は、周期が等しく、プリファードペアである2つのM系列を単位加算することで得られ、符号の発生回路もM系列のものを使える。 比較的多くのパターンが得られる系列だが、M系列から派生した者なので、相互相関値を0にすることはできない。また、自己相関特性もM系列に劣る。しかし相互相関特性が簡単な計算で割り出せ、同時に通話できる回線数の見積もりが簡単にできるので、非同期CDMAの拡散符号としてよく用いられる。 <W-CDMA>Ver.2
パイロット同期検波 パイロットシンボルを用いた同期検波を採用。 下りパイロット信号は送信電力制御(TCP)ビットなどとともに 時間多重して伝送される。 送信電力制御の制御遅延を短くでき、移動機受信部の簡易化も可能。 上りパイロット信号はデータとIQ多重して伝送される。 連続送信が可能となる。送信信号のピークファクタ低減効果もある。 TDDモードは断続送信のため下り同様時間多重して伝送する。 TPCなど パイロット データ1 データ2 1スロット 1スロット W-CDMAはパイロットシンボルを用いた同期検波を採用している。下りパイロット信号はTPC(送信電力制御)ビットなどともに時間多重して伝送される。これにより、送信電力制御の制御遅延を短くできる。 IQ多重について Cos波にIチャネルsin波にQチャネルを割り当てる IQは互いに直交。合成されてQPSK波となる Q Q パイロット TPCなど データ I I 上り 下り パイロットシンボルの多重 <W-CDMA>Ver.2
SIRベース送信電力制御(1) 希望波を逆拡散により抽出するため、各チャネルの受信レベルがほぼ等しくなることが必須。 個別チャネル:クローズドループ 上り下りとも専用チャネルが割り当てられている。 上りチャネルのSIRを測定ターゲット値と比較 移動局が信号送信 Cdmaは干渉を前提としたシステムであり同程度の電界強度で受信される信号の中から希望はを逆拡散により抽出する。従って各チャネルの受信レベルがほぼ等しくなることが必須である。W-CDMAはSIRベースのオープンループ送信電力制御とクローズドループ送信電力制御により高速高精度の受信レベル制御を実現している。ここでは送信電力制御がより重要な上り伝送について、個別チャネルと共通チャネルの送信電力制御の概要を説明する。 個別チャネルは基地局と移動局の間に上り下りとも専用のチャネルが割り当てられている。基地局は、移動局が受信する上りチャネルのSIRを測定し、ターゲット値と比較し、下りチャネルTCPビットにより、移動局に送信電力の増減を指示する。TPCビットは1スロット(667micros)に1ビット割り当てられており、667ごとに1dBステップという、高速高精度のクロースドループ送信電力制御が可能である。 ランダムアクセスチャネルの信号は単発の信号であり、また個々のランダムアクセル信号に対応する下りチャネルが存在しないので、クロースドループの送信電力制御はできない。そこで、移動機は下り共通チャネルのSIRを測定し、無線伝送路の伝搬損失を推定し、送信電力を決定する。このオープンループ送信電力制御により、ランダムアクセル信号の受信電力も制御可能となった。 BS 下りチャネルのTPCビットにより移動局に送信電力の増減を指示 <W-CDMA>Ver.2
SIRベース送信電力制御(2) ランダムアクセスチャネル:オープンループ 単発の信号であり、個々のランダムアクセス信号に対応するチャネルは存在しないためクローズドループは無理。 下り共通チャネルのSIRを測定 BS 無線伝送路の伝搬損失を推定し送信電力を決定 <W-CDMA>Ver.2
フレーム構成 パイロットシンボルによる同期検波(上り/下り とも) 1フレーム16スロット 各スロットにパイロットシンボルと閉ループ送信電力制御 フレーム長10msec, 0.625msecごとにパイロットシンボルと電力制御ビット(TPC)を送る スーパーフレーム (640ms) …… 無線フレーム (10ms) 制御フレーム #1 #2 …… #64 タイムスロット (0.625ms) タイムスロット #1 #2 #3 …… #16 符号化データ ………… パイロット シンボル (Pilot) 送信電力制御 (TPC) ピット <W-CDMA>Ver.2
適応送信電力制御 [閉ループ送信電力制御] 基地局では逆拡散された信号をRAKE合成する 上り回線 移動局 基地局 送信データ 拡散変調 電力増幅 逆拡散 RAKE復調 Eb/Io測定 TPCビット TPCビット 拡散変調 比較 受信データ RAKE復調 逆拡散 送信データ 目標Eb/Io 下り回線 [閉ループ送信電力制御] 基地局では逆拡散された信号をRAKE合成する [1ビット当たりの受信信号エネルギー](ED) [干渉+熱雑音電力スペクトル密度](IO) ある定められたED/IOと比較して 大きいとき → 移動機へ送信電力を下げるようなTPC送信 タイムスロットは0.625msなので、高速移動中でも送信電力を瞬時に追従する を測定する <W-CDMA>Ver.2
無線チャネル構成 物理チャネル……異なるコード 論理チャネル……タイムスロット化して同じ位置のものを集めたもの 報知チャネル : 12 報知チャネル : 12 共通制御チャネル : 12 (FACH,RACH) (PCH) 個別物理チャネル : 300 論理チャネル……タイムスロット化して同じ位置のものを集めたもの <W-CDMA>Ver.2
論理チャネル構成 制御チャネル(CCH:Control Channel) 共通制御チャネル(CCCH:Common Control Channel) 報知チャネル(BCCH:Broadcast Control Channel) 報知チャネル1(BCCH1) 報知チャネル2(BCCH2) ページングチャネル(PCH:Paging Channel) 下りアクセスチャネル(FACH:Forward Access Channel) 下りアクセスチャネル-ロング(FACH-L:FACH-Long) 下りアクセスチャネル-ショート(FACH-S:FACH-Short) ランダムアクセスチャネル(RACH:Random Access Channel) ランダムアクセスチャネル-ロング(RACH-L:RACH-Long) ランダムアクセスチャネル-ショート(RACH-L:RACH-Short) 個別制御チャネル(DCCH:Dedicated Control Channel) 孤立個別制御チャネル(SDCCH:Stand-alone Dedicated Control Channel) 付随制御チャネル(ACCH:Associated Control Channel) トラフィックチャネル(TCH:Traffic Channel) 個別トラフィックチャネル(DTCH:Dedicated Traffic Channel) ユーザパケットチャネル(UPCH:User Packet Channel) <W-CDMA>Ver.2
論理チャネル 報知チャネル(BCCH) ページングチャネル(PCH) 下りアクセスチャネル(FACH-L/S) 基地局から移動局に対してセル、又はセクタ毎のシステム的な制御情報を報知するための片方向チャネル ページングチャネル(PCH) 基地局から移動局に対して、広いエリアに同一の情報を一斉に伝送するための片方向チャネル 下りアクセスチャネル(FACH-L/S) 基地局から移動局に対する制御情報、又はユーザパケットデータを伝送するための片方向チャネル ランダムアクセスチャネル(RACH-L/S) 移動局から基地局に対する制御情報、又はユーザパケットデータを伝送するための片方向チャネル 孤立個別制御チャネル(SDCCH) 制御情報のための Point to Point の双方向チャネル(1物理チャネル専有) 付随制御チャネル(ACCH) 制御情報のための Point to Point の双方向チャネル(DTCHに付随したチャネル) 個別トラフィックチャネル(DTCH) ユーザデータを転送するための Point to Point の双方向チャネル ユーザパケットチャネル(UPCH) ユーザパケットや制御情報を伝送するための Point to Point の双方向チャネル <W-CDMA>Ver.2
アクセス手順 報知(とまり木)チャネルを開く アクセスチャネルRCHで通信要求 SDCCH設定 ユーザ認証(乱数送信して暗号をもらう) LAI,上りロングコード 下りロングコード 周辺セル下りロングコード RACH上りロングコード FACH,PCH下りショートコード 獲得 アクセスチャネルRCHで通信要求 スロットALOHA衝突ありうる SDCCH上下ショートコード 位置登録 SDCCH設定 TMU → IMUI変換 ユーザ認証(乱数送信して暗号をもらう) 結果照合 通話チャネル設定 上下通話用ショートコード <W-CDMA>Ver.2