物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第5回半導体の色(2) ー半導体の電気的性質ー 物理システム工学科量子機能工学分野 佐藤勝昭
半導体の構造 ダイヤモンド構造 閃亜鉛鉱(ジンクブレンド)構造 黄銅鉱(カルコパイライト)構造 非晶質(アモルファス) Diamond structure
半導体のバンド構造 半導体中の電子のエネルギーはバンドと呼ばれる幅を持ったエネルギー領域の値をとる。 バンドとバンドの間にはバンドギャップと呼ばれる隙間がある。電子はこの範囲のエネルギーをもてない。
フェルミ分布 電子はフェルミ粒子なので1つの軌道には(s=+1/2とs=-1/2の)2つの電子しか入ることができない。 占有の様子は、フェルミ分布関数f(E)で表すことができる。フェルミエネルギーEfが存在し、T=0ではE<Efのときf(E)=1, E=Efのときf(Ef)=1/2、E>Efのときf(E)=0である。式で書くと次式で表される。
状態密度とフェルミ分布 各状態は、バンドの底から順に占有される。 バンドの中にフェルミエネルギーEfが存在すると、バンドには電子の満ちた部分と空いた部分ができ、電界を加えたとき、高いエネルギーの状態に遷移できるので、伝導性が保証される。 バンドギャップの中にフェルミエネルギーEfが存在すると、絶対零度では、バンドギャップの下のバンドは電子で満たされ、上のバンドは電子が空っぽとなり、絶縁体または半導体となる。
状態密度N(E)、分布関数f(E)、占有状態密度N(E) f(E)の関係
バンドギャップと半導体の吸収端 Eg h>Eg h フォトン・エネルギーE=hがエネルギー・ギャップEgより小さいとき、価電子帯の電子がE=hを得ても、伝導帯に遷移できないので、光は吸収されず透過する。 フォトン・エネルギーがエネルギー・ギャップよりも大きいと、価電子帯の電子が伝導帯に遷移することができるので、光吸収が起きる。吸収が始まる端っこということで、エネルギー・ギャップを吸収端のエネルギー、それに相当する波長を吸収端の波長という。吸収端の波長より長い波長の光は透過する。 伝導帯 Eg h>Eg h 価電子帯
直接遷移と間接遷移
透過波長領域 下の図は赤外線検出器の窓材として用いられるセレン化亜鉛(ZnSe)の光透過スペクトルである。ZnSeのエネルギーギャップは2.67eVであり、吸収端の波長は463nmである。実際には、吸収スペクトルは吸収端の長波長側まで裾を引いているので、図のように550nm付近より短い波長では光が通らなくなる。20m付近の吸収はフォノンによる。
実空間で見た間接遷移 =2x(2/3a)(1,1,1) k=(3/2a)(1,1,1) k=(0,0,0)
半導体のバンドギャップと透過光の色 1.5eV CdS GaP HgS GaAs 3eV 2.5eV 2eV ZnS Eg=2eV 800nm 300nm ZnS Eg=2eV Eg=2.2eV Eg=2.6eV Eg=3.5eV Eg=1.5eV 白 黄 橙 赤 黒 3.5eV 4eV 透過域
半導体の色 透過光の色 反射光の色 バンドギャップより低いエネルギーの光を全部通す Eg>3.3eV:無色透明 Eg=2.6eV:黄色 diamond http://www.sei.co.jp/ Ge http://www.ii-vi.com/ ZnSe, ZnS http://www.ii-vi.com/ Si http://www.anstro.gov.au/ HgS www.lotzorox.com/cinn3b.JPG GaAs http://www.ii-vi.com/
半導体の吸収端 半導体 Eg[eV] g[nm] InSb 0.18 6889 Ge 0.67 1851 Si 1.11 1117 InP 1.35 919 GaAs 1.42 873 CdTe 1.56 795 CdSe 1.74 712 GaP 2.26 549 CdS 2.42 512 ZnSe 2.67 463 GaN 3.39 366 ZnS 3.68 337 QUIZ それぞれ何色か 考えてみよう
半導体のバンドギャップと絵の具の色 Mixed crystals of yellow cadmium sulfide CdS and black cadmium selenide CdSe, showing the intermediate-band-gap colors http://webexhibits.org/causesofcolor/10.html
佐藤勝昭作品 5/8-5/18上野都立美術館で展示中