Activation of phosphatidylinositol-3 kinase, AMP-activated kinase and Akt substrate-160 kDa by trans-10, cis-12 conjugated linoleic acid mediates skeletal muscle glucose uptake Journal of Nutritional Biochemistry 24 (2013) 445–456 trans-10, cis-12共役リノレン酸によるPI3K、AMPK、AS160の活性化は、骨格筋の糖取り込みを調節する。 2015/01/05 U4 眞野 僚
骨格筋における糖取り込みの経路 Exerc Sport Sci Rev. 2011;39(2):102-108. IRS-1のチロシンリン酸化 PI3Kが活性化して細胞膜上のPIP3の増加 Aktが活性化 AS160(Akt substrate of 160 kDa)は、Rab GTPase-activating proteinで、Aktによってリン酸化されることで、下流のRab10、Rab11、Rab14がGDP結合型⇒GTP結合型に変わり、GLUT4小胞と結合し、細胞膜と結合する。 LKB1によってAMPKのThr172がリン酸化 Exerc Sport Sci Rev. 2011;39(2):102-108.
CLA(conjugated linoleic acid)について ・自然界には、少なくとも28種類の異性体が存在する。 ・c9,t11-CLAは、乳製品や反芻動物の肉に含まれる。 ・リノール酸からステアリン酸を合成する過程で生成されるCLAには、c9,t11-CLA、t10,c12-CLAがほぼ1対1で含まれている。 ・健康機能食品に含まれている。 Kishino et al, PNAS, 2013
背景と目的 ・ZDFラットに対して経口ぶどう糖負荷試験を行ったところ、CLAには抗糖尿病作用が認められた。1) ・ZDFラットにおいて、t10,c12-CLAは肥満症を通じてインスリン抵抗性を引き起こす。2) ⇒意見が割れていたが、近年はインスリン抵抗性を改善するという意見が一般的 ・骨格筋以外の細胞では、CLAのターゲットとなる分子の特定が行われているが、CLAが骨格筋のGLUT4の膜移行にどのように関わるのかについてはまだ分かっていない。3) ・経口ぶどう糖負荷試験…現在ではWHOの基準に従い、75gのブドウ糖を負荷し2時間後の血糖値を測定した時に、2時間後の血糖値が200mg/dl以上ならば糖尿病型と診断される。 ・ZDFラット…ヒト成人の II 型糖尿病及びその合併症に近い病態を発症する近交系ラット 3)CLAは膵臓のGPR40に作用して、インスリン放出を制御する。 CLAの異性体が、骨格筋のGLUT4の膜移行に直接作用するであろうという仮説の検証と、c9,t11-CLAとt10,c12-CLAの異性体特異的な糖取り込みに与える影響を比較した。 Ryder J et al, Diabetes, 2001 Chung S et al, J Biol Chem, 2005 Schmidt J et al, J Biol Chem, 2011
CLAの添加濃度、時間の検討 これ以降のCLAの添加時間、濃度は60 µM、15分で実験を行う。 1.L6細胞を24時間無血清培地で培養 3.1 µCi/mlの[3H]-2-デオキシグルコースを10分添加 4.測定 これ以降のCLAの添加時間、濃度は60 µM、15分で実験を行う。 CLAが骨格筋細胞の糖取り込みを調節するかどうか調べるため 飽和による影響を避けるため、一番初めに有意差が認められた60 µMを適用 ・測定法について…電離放射線がシンチレータにあたることによって、蛍光が放出される。この蛍光を光電子倍増管が増幅して、電流に変換され、これを測定することで 入射した放射線のエネルギーを測定することができる。
2-NBDGによる糖取り込み量の確認 どちらのCLAもインスリンと同様に糖取り込みを上昇させた。 1.L6細胞にインスリン 100 nM、CLA 60µMを15分添加 2.100 µMの2-デオキシグルコースと2-NBDGを10分添加 3.蛍光顕微鏡で画像を撮り、画像解析により定量化した。 CLA-mix:c9,t11-CLA、t10,c12-CLAを30 µMずつ添加 C C9,t11-CLAはインスリンの1.4倍、t10,c12-CLAはインスリンの0.6倍、CLA-mixはちょうど中間くらいになった。 どちらのCLAもインスリンと同様に糖取り込みを上昇させた。 また、c9,t11-CLAの添加の方がより多く取り込んだ。
BSAに結合するべきかどうかの検討 これ以降の実験では、BSAは使わずにエタノール/無血清培地を使用する。 1.L6細胞を24時間無血清培地で培養 2.CLA 60 µMを15分添加 (1%w/vのBSA含有培地を用いた) 3.1 µCi/mlの[3H]-2-デオキシグルコースを10分添加 4.測定 BSAに結合したCLAの異性体が、エタノール/無血清培地に溶かした場合と異なる影響が見られるか調べるため より大きな差が見られるBSAなしに決定 他の研究者らもBSAには結合させていない これ以降の実験では、BSAは使わずにエタノール/無血清培地を使用する。 ※CLAはエタノールに溶かしてあるため
糖の流入経路の確認 CLAもインスリンと同様に、GLUT4を介した糖取り込みに影響を与える。 1.L6細胞を24時間無血清培地で培養 2.サイトカラシンB 1 µMを15分添加 3.インスリン 100 nM、CLA 60 µMを15分添加 (1%w/v BSA含有培地) 4.1 µCi/mlの[3H]-2-デオキシグルコースを10分添加 5.測定 60 µM 流入経路を確認するために、GLUT4阻害剤であるサイトカラシンBを用いて実験を行った。 F-アクチンに結合して、G-アクチンが結合するのを阻害するキャッピング機能によりF-アクチンの脱重合を起こします。 インスリン、CLAの糖取り込み量が減少したことから、CLA刺激の糖取り込みもインスリンと同様にGLUT4を介した経路であることが分かった。 Cytochalasin B:GLUT4の膜移行阻害剤 CLAもインスリンと同様に、GLUT4を介した糖取り込みに影響を与える。 240 µM
CLAがGLUT4の膜移行を促進していることが分かった。 免疫染色による確認 1.L6細胞を無血清培地で一晩培養 2.L6細胞にインスリン 100 nM、CLA 60µM、CLA-mixを15分添加 3.GLUT4に対する抗体を用いて免疫染色 →の部分を拡大 三角形がGLUT4 刺激無しでは核内に多く分布しているが、インスリン、CLA刺激によってサイトソルへ放出されている CLAがGLUT4の膜移行を促進していることが分かった。
CLAがGLUT4の膜移行を促進していることが分かった。 GLUT4-EGFPの蛍光で膜移行の確認 1.L6筋芽細胞にFuGENE6を用いて、GLUT4-EGFPを導入 2.無血清培地で一晩培養 3.インスリン 100 nM、CLA 60µMを15分添加 4.GLUT4に対する抗体を用いて免疫染色 CLAがGLUT4の膜移行を促進していることが分かった。
細胞膜上のGLUT4が細胞内のGLUT4に比べて存在量が多かった。 ウエスタンブロットでの確認 1.L6細胞を無血清培地で一晩培養 2.インスリン 100 nM、CLA 60µMを15分添加 3.細胞分画キットを用いて、細胞膜、細胞質に分画 4.GLUT4、IGF-1αの抗体を用いてウエスタンブロット 細胞膜上のGLUT4が細胞内のGLUT4に比べて存在量が多かった。
MAPKのシグナルについて MAPK カスケードは真核生物の間で広く保存されているセリン/スレオニン プロテインキナーゼファミリーであり、細胞増殖や細胞分化、細胞遊走、細胞死のように多くの細胞のプログラムに関わっている。MAPK シグナルカスケードは3階層のモジュールから構成されている。MAPK は MAPK キナーゼ(MAPKKs)によってリン酸化、活性化され、その MAPKK は MAPKK キナーゼ(MAPKKKs)によってリン酸化、活性化される。MAPKKK は低分子量 G 蛋白ファミリーや他のプロテインキナーゼとの相互作用によって活性化され、MAPK モジュールは細胞表面の受容体や外部からの刺激と連携されている。 http://www.cstj.co.jp/reference/pathway/MAPK_Cascades.php
→CLAは細胞外、環境ストレス、酸化ストレス、分裂促進ストレスには関与しない。 2.インスリン 100 nM、CLA 60µMを15分添加 3.それぞれの抗体を用いてウエスタンブロット MAPK : Mitogen-activated Protein Kinase SAPK : Stress-Activated Protein Kinase JNK : c-jun NH2-terminal kinase CLAはNullと同じ結果となった。 →CLAは細胞外、環境ストレス、酸化ストレス、分裂促進ストレスには関与しない。
CLAはIR、Akt、IRS-1のリン酸化には関与しない。 2.インスリン 100 nM、CLA 60µMを15分添加 3.それぞれの抗体を用いてウエスタンブロット CLAはIR、Akt、IRS-1のリン酸化には関与しない。
CLAはPI3K、AS160のリン酸化を通じて糖取り込みを調節する。 CLAは、PI3Kに干渉して、Aktには干渉しない経路によって、AS160のリン酸化を増加させるかもしれない。
LY294002によって、CLAによる影響が妨げられた。 2.LY294002 10 µMを15分添加 3.インスリン 100 nM、CLA 60µMを15分添加 (Fig.3E) 4.1 µCi/mlの[3H]-2-デオキシグルコースを10分添加 5.測定 (Fig.3F) 4’.AS160に対する抗体を用いてウエスタンブロット LY294002:PI3K阻害剤 LY294002によって、CLAによる影響が妨げられた。
CLAの作用点はどこか?(AMPKのシグナル)① 2.インスリン 100 nM、CLA 60µMを15分添加 3.それぞれの抗体を用いてウエスタンブロット LKB1:AMPKの上流のシグナル分子 ACC:AMPKの下流のシグナル分子 ウエスタンの結果は、レジュメ参照 CLAは、異性体毎に異なるAMPKのシグナル分子に関与する。
CLAの作用点はどこか?(AMPKのシグナル)② 2.AICAR 1mM、Dorsomorphin 1µMを15分添加 3.インスリン 100 nM、CLA 60µMを15分添加 (Fig.4B) 4.1 µCi/mlの[3H]-2-デオキシグルコース10分添加 (Fig.4C) 4’.AS160に対する抗体を用いてウエスタンブロット AICAR:AMPKのアクティベータ― Dorsomorphin:AMPKの阻害剤 AICAR添加では、CLAは上昇しない Dorsomorphinは、t10,c12-CLAのみ作用 AICARの添加では、CLAによる糖取り込みの増加が見られない。 Dorsomorphinの添加では、t10,c12-CLAのみ糖取り込みの減少が見られた。
CLAの作用点はどこか?(AMPKのシグナル)③ 1.アデノウイルスを用いて、L6細胞にAMPKα-WT、AMPKα-DNを遺伝子導入(36時間培養) 2.インスリン 100 nM、CLA 60µMを15分添加 (Fig.4D) 3.1 µCi/mlの[3H]-2-デオキシグルコース10分添加 (Fig.4E) 3’.AS160に対する抗体を用いてウエスタンブロット DN:dominant negative AMPKのDNでは、Insulin、CLAによる糖取り込み量の増加が抑制される。
CLAがAS160のリン酸化を通じて糖取り込みを増加させるためには、インスリン依存性(PI3K)、あるいは非依存性(AMPK)のエフェクターを必要とする。
CLAとインスリンの同時添加による影響① 3.1 µCi/mlの[3H]-2-デオキシグルコースを10分添加 次に、インスリンと共存しているとどうなるのかを調べた。 インスリンの濃度に応じて糖取り込み量が増加した。
CLAとインスリンの同時添加による影響② 2.インスリン 100 nM、CLA 60µMを15分添加 3.AMPK、Aktに対する抗体を用いてウエスタンブロット ・インスリンは、AMPKのリン酸化には影響しない。 ・同時添加により、Aktのリン酸化の割合が増加した。
インスリンの濃度が、CLAの糖取り込みに与える影響 2.インスリン 100 nM、CLA 60µMを15分添加 (Fig.5D) 3. 1 µCi/mlの[3H]-2-デオキシグルコースを10分添加 (Fig.5E) 3‘.Aktに対する抗体を用いてウエスタンブロット インスリンのみ…200 nM以上では脱感作 感作とは、強い痛みを何度も経験したり、長期にわたって痛みが続くと、刺激に対して過敏になることがあります。 過敏になってしまうと、従来は「1」の刺激に対して「1」の痛みを感じていたものが、「1」の刺激に対して「3」にも「5」にも増幅された痛みに感じるようになってしまいます。 このように過敏になった所を元の状態へして行く事を「脱感作」と言います。 t10,c12-CLAは、200 nM以上、c9,t11-CLAは200 nM以内でインスリンの効果を高める。
T10,c12-CLAはPI3K、AMPKを阻害した時にAS160のリン酸化が減少したことから、これらはつながっていることが分かる。 ・しかし、これらがどのように作用してリン酸化が起きるのかなど、具体的な結果は得られなかった。
AMPKが関与する経路 細胞内のcAMP濃度の上昇 LKB1 AMPK TBC1D1