情報法 第6講 情報不法行為(2) プロバイダ責任.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
国立市大学通りの景観権侵害 に基づく損害賠償請求事件 1. 事件概要 国立市大学通りの景観権侵害に基づく損 害賠償請求事件 原告 ― 大学通り周辺の住民 被告-東京都 国立市 2.
Advertisements

個人情報保護講座 目 次 第1章 はじめに 第2章 個人情報と保有個人情報 第3章 個人情報保護条例に規定されている県の義務 第4章 個人情報の漏えい 第5章 個人情報取扱事務の登録 第6章 保有の制限 第7章 個人情報の取得制限 第8章 利用及び提供の制限 第9章 安全性及び正確性の確保 第 10.
1 個人情報保護について 弁護士法人龍馬 弁護士 舟木 諒,板橋俊幸. 情報化社会 □ 個人情報保護法の概要 2003 年(平成 15 年) 5 月 23 日成立, 2005 年(平成 17 年) 4 月 1 日全面施行。 ◆成立の背景 プライバシー侵害 国際上の問題 住民基本台帳問題 個人情報漏洩問題.
法務部・知的財産部のための 民事訴訟法セミナー 関西大学法学部教授 栗田 隆 第 10 回 補助参加.
不法行為法の効果 1.序 2.損害賠償の方法 3.損害賠償の主体と複数者の関与 4.損害賠償額の算定 5.損害賠償額の調整 6.損害賠償請求権の特殊問題.
計算機リテラシーM 第 7 回( 2 ) 著作権 伊藤 高廣
第6章 インターネットと法律(後編) [近代科学社刊]
求償・免責について 第三者加害行為事案に伴う事務
求償・免責について 第三者加害行為事案に伴う事務
知的財産権を考えよう! 社会と情報 ⑪.
インターネットでの権利侵害と プ ロ バ イ ダ の 責 任
インターネットを取り巻く法律 情報社会と情報倫理 第13回.
ケータイ・ネット安全教室 被害者・加害者にならないために
法律行為(契約) 民法上の法律行為の代理 商法行為の代理
第2回 インターネット上の名誉毀損 2014年10月9日(木)
秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然として知られていないもの(不2Ⅳ)
医療事故 2002.6.7.
伊豆大島 三ツ磯の池埋立 損害賠償請求事件.
特殊の不法行為 1.特殊の不法行為の種類分け 2.責任無能力者の監督者の責任 3.使用者の責任 4.共同不法行為
ネットワーク上の不正行為に関する使用者責任の検討
情報技術と著作権.
「事 務 管 理」 の 構 成 債権 第一章 総則 第二章 契約 第三章 事務管理 第四章 不当利得 第五章 不法行為.
社会問題 安楽死、尊厳死 (参考)
サイバー犯罪と捜査 ~なぜ犯人は捕まったのか~
債権 債 権 法 の 構 造 (不法行為法:条文別) 第709条 不法行為の要件と効果 第710条 非財産的損害の賠償
経済活動と法 ~不法行為~ <製造物責任>.
「医法研 被験者の健康被害補償に 関するガイドライン」について
労働者派遣法改正に伴う建労法の改正内容 平成26年2月 建設・港湾対策室.
インターネットの規制   最近の話題から メディアコミュニケーションⅢ 6/20/08.
取引情報委員会活動報告 ープライシング・マトリックスについてー
第6章 インターネットと法律(前編) [近代科学社刊]
交通事故 1.交通事故の発生状況 2.自動車損害賠償責任保障法 3.中間責任主義 4.運行供用者 5.運行支配と運行利益
模擬裁判2008 ~ウルトラマンは正義か?~ 事件の概要.
第2回 インターネット上の名誉毀損 2009年10月9日(金)
一般の不法行為 1.不法行為の成立 2.故意・過失 3.権利侵害ないし違法性 4.違法性をめぐる問題 5.違法性と過失の関係 6.責任能力
人権と教育基本法.
情報システムと社会.
違法・有害情報に関するQ&A 内閣官房IT担当室
ネットワークコミュニケーション (教科書88ページ).
第3章 ネットワーク犯罪(後半) [近代科学社刊]
平成16年度 商法Ⅰ 講義レジュメNo.10 運送人の責任 高価品の意義(578条) 運送人の重過失(581条)
2016年度 民事訴訟法講義 秋学期 第11回 関西大学法学部教授 栗田 隆
請求権競合論 1.請求権競合論とは 2.問題点1,2 3.学説の対立 4.請求権競合説 5.法条競合説 6.規範統合説
インターネットと法律 電子商取引 プライバシー 著作権 特許 電子政府
保険募集における 代理店賠責の必要性 御社に所属している代理店は大丈夫ですか? 一般社団法人 日本損害保険代理業協会
安全配慮義務違反 安全配慮義務違反(債務不履行責任)に対しての高額化する民亊損害賠償
SNSに 画像を投稿するときは・・・ 情報セキュリティ(流出・漏洩),自他の権利(肖像権) ■指導のねらい
第20回 商事関係法 2005/12/ /11/8.
マナー講座 ブログと紙の日記は     何がちがうの? 情報科主任 岡本弘之 2006 情報科.
2018/11/8 民 法 の 構 造 (編別) 事務管理・不当利得・不法行為.
第6章 インターネットと法律(後編) [近代科学社刊]
法教育における アニメーションの効用 明治学院大学法科大学院 加賀山 茂 2018/11/8 法教育におけるアニメーションの効用.
Claim Report 公衆責任保険の事例紹介 重要事項 結果 支払保険金額
健康・安全〔事故〕 自転車に乗り 「ながらスマホ」は犯罪? ■指導のねらい  自他の安全面に配慮した行動ができる。
P2P概説 P2P概説 第2回 /
技術相談申込書 受付番号: 受付日:平成 年 月 日 貴社名 部署・役職 お名前 ご連絡先 【ご相談の内容】 相談タイトル:
個人情報保護法案整備の背景 情報処理の普及 (インターネットの普及) プライバシーの権利 個人情報の保護の必要 脅威 事故
SNSに 画像を投稿するときは・・・ がぞう とうこう 情報セキュリティ(流出・漏洩),自他の権利(肖像権) ■指導のねらい
2001.12.4 エルティ総合法律事務所所長弁護士 システム監査技術者 藤 谷 護 人
第13回 法律行為の主体②-b(無権代理、表見代理)
ネットへの書き込みと その責任 これから第6回グループ検討会の発表を始めます。 ご指導よろしくお願いします。 1.
「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 行政行為その2 行政行為の効力.
「不 当 利 得」 の 構 造 債権 第一章 総則 第二章 契約 第三章 事務管理 第四章 不当利得 第五章 不法行為.
法務部・知的財産部のための 民事訴訟法セミナー
ダウンロード違法化(文化庁案) ○法改正するとされていること ○権利者団体がするとされていること
2008年度 倒産法講義 民事再生法 9 関西大学法学部教授 栗田 隆.
インターネットと法律 電子商取引 プライバシー 著作権 特許 電子政府
情報社会における 法と個人の責任  辻本 遼二郎.
33事件 精神障害者の自殺 (東京高判平13・7・19) 事実概要
求償・免責について 第三者加害行為事案に伴う事務
Presentation transcript:

情報法 第6講 情報不法行為(2) プロバイダ責任

プロバイダ責任の追及 (1)プロバイダ責任追及の構図 (2)プロバイダ責任と表現行為の萎縮 (3)プロバイダ責任制限法(今週)

(4)B.プロバイダ責任制限法 4条1項[送信防止措置不実施の責任制限] ネットで不特定人に流した 情報により権利侵害 プロバイダが侵害情報の 送信防止を技術的に可能 一 プロバイダが権利侵害を知っていた 二 プロバイダが侵害情報流通を知り、これによる権利侵害 を知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合 一,二のいずれかに該当しなければ免責   該当すれば免責されない    =不法行為の要件を具備すれば、賠償責任あり ただし、プロバイダ自身が発信者の場合は別=免責されない

4条1項の構図 免責→ プロバイダ 送信停止可能 (でも停止措置はしない) 侵害情報 権利侵害 サーバ 不特定多数の インターネット 権利侵害は知らず、 知ることができた 相当の理由がある とはいえない 送信停止可能 (でも停止措置はしない) 侵害情報 権利侵害 サーバ 不特定多数の インターネット ユーザー INTERNET 被害者 掲示板利用者

(4)B.プロバイダ責任制限法 4条2項[送信防止措置実施の責任制限] ネットで不特定人に流した 情報の送信防止を実施 送信防止により発信者に損害発生 送信防止措置が必要最小限 一 不当な権利侵害と信じるに足りる理由があった 二 侵害情報送信防止を求められたプロバイダが発信者に 意見照会をして、七日以内に不同意の回答がない 一,二のいずれかに該当すれば免責   該当しなければ免責されない  =不法行為または契約違反となれば、賠償責任あり

4条2項の構図 免責→ プロバイダ 送信停止 (必要最小限の停止措置) 情報 サーバ 権利侵害 の外観 不特定多数の インターネット 不当な権利侵害と 信じる相当の理由 がある 免責→ プロバイダ 送信停止 (必要最小限の停止措置) 発信者に照会し送信 停止に不同意の回答なし 情報 サーバ 権利侵害 の外観 不特定多数の インターネット ユーザー INTERNET 表見被害者 掲示板利用者=発信者

(4)C.判例 動物病院対2ちゃんねる 女雀士清水香織対2ちゃんねる DHC対2ちゃんねる 会社員対2ちゃんねる 予備校対MILKCAFE 損害賠償棄却、差止(削除)請求認容 ダイビングショップ対2ちゃんねる エイジアン対2ちゃんねる

A.名誉毀損・プライバシー侵害の成立をめぐる主張立証責任 (5)プロバイダ責任に関する残された論点 A.名誉毀損・プライバシー侵害の成立をめぐる主張立証責任 請求原因 被害者に対する権利侵害 故意・過失=条理上の作為義務違反 被害者の権利が侵害されていることをプロバイダが知っていたか、知りうべき場合は当然の前提 公共性、公益目的、真実性または相当性がないことも前提のはず 因果関係、損害

(5)プロバイダ責任に関する残された論点 B.差止めと損害賠償 不法行為に対する一般的理解 人格権侵害での可能性 損害賠償が原則 差し止めは特に例外的な事情がある場合 人格権侵害での可能性 過失がない場合でも差し止めは可能 特定の情報削除ならば、表現の自由への侵害も最小限 被害者救済につながる =損害賠償を認めず、差し止めのみ認めることも考えられる。