地方公務員災害補償基金富山県支部 平成21年8月21日 認定請求手続 地方公務員災害補償基金富山県支部 平成21年8月21日
公務災害認定の要件 以下の2つの要因が認められることが必要 1.公務遂行性 2.公務起因性
公務遂行性 疾病の場合 負傷の場合 =公務に内在する個々の有害因子を受ける危険にさらされている状態 =任命権者の支配下にあること =公務に内在する個々の有害因子を受ける危険にさらされている状態 ・公務起因性の第一次判断基準 負傷の場合 =任命権者の支配下にあること ・施設管理下にあれば公務に従事していなくても認められる(休憩時間) ・施設管理下でなくても公務に従事していれば認められる(出張)
公務起因性 疾病の場合 負傷の場合 =経験則上傷病等の発生が公務に内在する危険の具体化したものであること =経験則上傷病等の発生が公務に内在する危険の具体化したものであること ・公務従事中であれば、反証(公務との相当因果関係がない私的行為など)がなければ公務起因性ありとされる ・休憩時間など公務に従事していない時は、勤務場所等の施設の設備の不完全や管理上の不注意に起因することが証明される必要あり 疾病の場合 =公務と疾病の間に相当因果関係(相対的に有力な役割を果たしたと医学的に認められること)があること ・公務における有害因子の存在 ・有害因子の曝露条件 ・発症の経過及び病態
公務上の負傷の認定基準 公務上の災害として認められる場合 1.職務行為等に起因する負傷 2.出張又は赴任期間中の負傷 3.特別の事情下の出退勤途上の負傷 4.レクリエーションに参加中の負傷 5.勤務場所又はその付属施設の設備の不完全又は管理上の不注意によるもの 6.入居が義務付けられている宿舎の不完全又は管理上の不注意による負傷 7.職務遂行に伴う怨恨による負傷 8.公務上の負傷又は疾病と相当因果関係をもって発生した負傷 9.1~8のほか、公務と相当因果関係をもって発生したことが明らかな負傷
公務上の負傷の認定基準 ただし、1~9に掲げる場合であっても、 (1) 故意又は本人の素因によるもの (2) 天災地変によるもの (1) 故意又は本人の素因によるもの (2) 天災地変によるもの (3) 偶発的事故によるもの(私的怨恨含む) については公務外となる。 ⇒公務起因性が認められないため
公務上の疾病の認定の基本的な考え方 負傷の場合と異なり、発症原因が公務によるものか、本人の素因によるものかの判断が難しい(公務起因性の問題) 公務上の有害因子によって、基礎疾患又は既存疾病の自然経過を超えて著しく増悪し、発症したと医学的に認められるか? =たまたま公務中に発病したというのでは×
公務上の疾病の認定基準 1.公務上の負傷に起因する疾病 2.職業性疾病 3.その他公務に起因することが明らかな疾病 ・上記2と同様の考え方 ・何ら素因を有していなかった者が負傷により発病した場合だけでなく、疾病の素因があって早晩発病する程度であった者が負傷によって発病時期が著しく早まった場合などでも認められる 2.職業性疾病 ・当該疾病にかかるそれぞれの業務に伴う有害作用の程度が当該疾病を発症させる原因となるに足るものであり、かつ、当該疾病が医学経験則上当該原因によって生ずる疾病に特有な症状を呈した場合は、特に反証のない限り公務上 3.その他公務に起因することが明らかな疾病 ・上記2と同様の考え方
心臓・脳血管疾患の認定 心臓・脳血管疾患は、高血圧等の血管病変又は動脈瘤等の基礎的病態が、加齢や一般生活等における諸種の要因によって増悪する ⇒医学経験則上、血管病変等を著しく増悪させ、発症原因とするに足る強度の肉体的・精神的負荷があったと認められることが必要(過重負荷) ①職務に関連してその発生状態を時間的、場所的に明確にしうる異常な出来事・突発的事態に遭遇したこと ②通常の職務に比較して特に過重な職務に従事したこと ③過重負荷を受けてから症状の顕在化までの時間的間隔が医学上妥当であること
精神疾患に起因する自殺の認定 自殺は一般に様々な要因が影響するため、以下の要件のいずれかに該当し、かつ、本人の個体的・生活的要因が主因となって自殺したものではないことが必要 1.異常な出来事・突発的事態に遭遇したことにより、驚愕反応等の精神疾患を発症したことが、医学経験則上明らかに認められること 2.異常な出来事・突発的事態の発生、又は行政上特に困難な事情が発生するなど、特別な状況下における職務により、通常の職務に比較して特に過重な職務を行うことを余儀なくされ、強度の肉体的疲労、精神的ストレス等の重複又は重積によって生じる肉体的、精神的に過重な負担に起因して精神疾患を発症していたことが医学経験則上明らかに認められること ※精神疾患そのものの認定についてもこの基準を準用する
認定請求にあたって 認定請求時には以下のポイントを考慮 1.公務遂行性(公務中の事故か?)が立証できているか? 2.公務起因性(公務と傷病に相当因果関係があるか?)が立証できているか?
具体事例その1(公務外) A市給与課支給係班長 男性 35歳 左脳出血 A市給与課支給係班長 男性 35歳 左脳出血 時間外勤務中(午後11時50分頃)に発症し救急車で搬送される。当日は人事異動に伴う給与データの入力作業に従事。 発症前一週間の勤務状況は2日間は午後5時半に、3日間は午前1時に退勤。その間の週休日2日間は勤務なし。 発症前一ヶ月間は81時間の時間外勤務。時間外勤務なしの日は4日間あり、年次休暇も4日取得。 発症前一ヶ月を超える期間については、100時間を超える時間外を行っていた月もあるものの、その後約一ヶ月全く時間外を行っていない月もある。 高血圧(166/100)、肥満(BMI 34.2)で前年度健康診断は「要受診」
具体事例その1(公務外) 脳血管疾患の発症原因とするに足る強度の精神的・肉体的負荷(過重負荷) 1.発症前一週間程度から数週間程度にわたる、いわゆる不眠不休又はそれに準ずる特に過重で長時間に及ぶ時間外勤務 2.発症前一ヶ月程度にわたる、過重で長時間に及ぶ時間外勤務(発症日から起算して週当たり平均25時間程度以上の連続) 3.発症前一ヶ月を超える、過重で長時間に及ぶ時間外勤務(発症日から起算して週当たり平均20時間程度以上の連続) 本事案の場合上記基準のいずれにも該当せず 高血圧、肥満というリスクファクターを有していたことからみても、公務と疾病の間に相当因果関係があるとは認められない
具体事例その2(公務上) A県警察本部警務課長 男性 56歳 高血圧性脳内出血 A県警察本部警務課長 男性 56歳 高血圧性脳内出血 出張中の警務部長の代理として、警察本部長出席の幹部会議で重要案件の説明を行った後に発症し、救急搬送された。なお、当該業務は発症2日前に急遽部長から指示を受けたもので、かつ、被災職員本人にとっては内容をほとんど関知していない案件であったため、短時間で把握し間違いの無いように説明しなければならないという緊張感があった 高血圧症、高脂血症、糖尿病等を治療中 発症前一ヶ月間においては、異動直後であることに加え制度改正への対応なども加わり、115時間の時間外勤務を行っていた
具体事例その2(公務上) ・ 部長の代理として突発業務に従事したことは、警務課長という職責からして通常想定される範囲内の業務であり、特に過重な業務であったとは認められない ・ 以前より高血圧等の素因を有しており、本件疾病を発症するに足るリスクを抱えていた ・ しかしながら、発症前一ヶ月間に100時間を超える時間外勤務を行っており、これが過重負荷となって血管病変等の自然的経過を早めて、本件疾病を発症させたことも否定できない 公務が相対的有力原因として認められる
通勤災害の認定 通勤による災害、すなわち、職員が勤務のため、住居と勤務場所との間の往復、複数就業者の就業の場所から勤務場所への移動又は住居と勤務場所との往復に先行若しくは後続する住居間の移動を、合理的な経路及び方法により行うこと(公務の性質を有するものを除く。)に起因する災害をいう。
通勤災害の認定 「勤務のため」 =当該移動が全体としてみて、勤務と密接な関連をもって行われるもの (1)「勤務のため」と認められる場合の例 =当該移動が全体としてみて、勤務と密接な関連をもって行われるもの (1)「勤務のため」と認められる場合の例 ・途中で勤務又は通勤に関係あるものを忘れたことに気付き、取りに戻る場合 ・レクリエーション(公務災害と認定される場合)に参加する場合 ・遅刻して出勤、あるいは早退する場合 (2)「勤務のため」と認められない場合の例 ・途中で自己都合により引き返す場合 ・任意参加の親睦会等に参加する場合 ・勤務終了後、勤務場所で相当時間にわたり私用を弁じた後、帰宅する場合
通勤災害の認定 「合理的な経路及び方法」 =社会通念上、移動に用いられる経路及び方法のうち、一般に職員に用いられると認められる経路及び方法 =社会通念上、移動に用いられる経路及び方法のうち、一般に職員に用いられると認められる経路及び方法 ○問題となるのは、通勤届と異なる経路及び方法をとっていたとき (1)「合理的な経路」と認められる経路の例 ・交通事情によりやむを得ず迂回する経路 ・自動車通勤者が燃料補給及び修理のためガソリンスタンド等へ立ち寄る経路 ・共稼ぎの職員が子どもを保育所等に連れていく(迎えにいく)経路 (2)「合理的な方法」と認められる方法の例 ・通常公共交通機関を利用している者が、①勤務終了後の私用のため、自動車 を利用して出勤する場合、②遅刻状態にあるため、間に合うようにタクシーを利用した場合、③雨天のため、妻に自家用自動車で送らせた場合
逸脱又は中断 ・逸脱=通勤とは関係のない目的で合理的な経路からそれること ・中断=合理的な経路上で、通勤目的から離れた行為を行うこと 逸脱又は中断した場合、その間及びその後に発生した災害 は、原則として通勤災害とはならない。 ただし・・・ 逸脱・中断が日用品の購入、その他これに準ずる日常生活上必要な行為 であり、やむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合には、 経路に復した後の災害については通勤災害として取り扱う。
逸脱又は中断