日本の住宅の現状と今後 これから、日本の住宅の現状と今後について、発表します。発表者は太幡誠です。よろしくおねがいします。 太幡 誠
目次 1.はじめに 2.住宅という商品 3.住宅の工法 4.工業化住宅 5.住宅の現状 6.展望 7.おわりに 8.参考文献 こちらは目次です。ご覧のような流れで進めたいと思います。
1.はじめに 4月から住宅業界に就職するため、業界の知識を蓄えるためにも、住宅業界の現状や展望について研究しようと考えた。 高齢化やインターネットの普及などにより、住宅のビジネスの仕方が変わるのではないかと感じた。 はじめに、このテーマを選んだ研究動機を述べたいと思います。動機は2つあります。1つは、4月から住宅業界に就職するため、業界の知識を蓄えるためにも、住宅業界の現状や展望について研究しようと考えました。もう1つは、高齢化やインターネットの普及などにより、住宅のビジネスの仕方が変わるのではないかと感じ、その点も研究したいと思いました。
2.住宅という商品 他の耐久消費財と異なる点 住宅の価値 ・使用価値 ・・・ 安全に暮らし英気を養うシェルター ①使用期間が長い、高額商品 ①使用期間が長い、高額商品 ②購入した時が完成形ではない商品 住宅の価値 ・使用価値 ・・・ 安全に暮らし英気を養うシェルター ・居住価値 ・・・ 家族の交流拠点 ・交換価値 ・・・ 融資を受けるための担保 まずはじめに、住宅という商品について説明します。 住宅が他の耐久消費財と異なる点は2つ挙げられます。 まず1つ目に、使用期間が長く、高額商品である点です。この特徴があるため、数年使って買い換える消費パターンが存在しにくい商品です。また、高額商品であるため、ひとつの商品を構成する部品点数も数万点に及び、裾野は極めて広いといえます。そのため、経済波及効果が大きく、産業全体の景況動向に大きな影響を及ぼします。 2つ目に、購入した時点が完成形ではない商品である点です。住宅を購入するということは、住まい作りをするということです。住まい作りは、住んでいる全期間に徐々に着実に続けられるものであり、一般の耐久消費財のように売買が行われる以前に「つくる」ことが終わっている商品ではありません。そのため、住宅は購入時ではまだ未完成の商品だと言えるのです。 そして、住宅を価値の面から考えると、3つの価値が挙げれます。 使用価値とは、家族が雨露をしのぎ、安全に暮らし、英気を養うシェルターとしての価値です。居住価値とは、家族の交流拠点、コミュニケーションの場、地域社会の重要な単位としての価値です。交換価値とは、資金を迫られた時に、融資を受けるための担保としての価値です。
3.住宅の工法-① 軸組工法(在来工法) 木造住宅 枠組壁工法(ツーバイフォー[2×4]工法) 丸太組工法 住宅 鉄筋コンクリート系住宅 鉄骨系住宅 軸組工法(在来工法) 枠組壁工法(ツーバイフォー[2×4]工法) 丸太組工法 次に、住宅の工法について簡単に説明します。 住宅の工法は、専門の技能者が初めから最後まで建てる住宅と、工場である程度生産されたものを現場で組み立てるプレハブ住宅とで分けれます。 一般的に専門の技能者が建てる住宅は使われている構造材の材質により、木造住宅、鉄筋コンクリート系住宅、鉄骨系住宅の3つに大別されます。その中でも、木造住宅は、一般的に在来工法と呼ばれる軸組工法、一般的に2×4と呼ばれる枠組壁工法、丸太組工法に分けられます。 一方、プレハブ住宅も使われている構造材の材質により、木質系、鉄鋼系、コンクリート系の3つに大別されます。 プレハブ住宅 木質系プレハブ住宅 鉄鋼系プレハブ住宅 コンクリート系プレハブ住宅
3.住宅の工法-② 依然として 『在来木造』 の建て方が根強い 次にこちらのグラフをご覧ください。 これは、平成15年度新設住宅着工統計から、戸建て住宅の工法別着工シェアを割り出したグラフです。戸建て住宅の工法別のシェアは、在来木造が35万3828戸で70%、2×4が5万4606戸で11%、プレハブが7万1950戸で14%、その他(RC等) は2万7357戸で5%となっています。 RCとは、鉄筋コンクリート工法のことです。この結果から、依然として在来木造の建て方が根強いことがわかります。 戸建て着工数:50万7741戸 木造の魅力:天然素材の木を用いることから肌合いが良く、通気性、感触などの点で根強い人気がある。欧米諸国でも共通した魅力。 RC構造とは? ■RC構造は鉄筋コンクリート造のこと RC構造のRCとは、Reinforced-Concreteの略で、直訳すると「補強されたコンクリート」です。つまり、RC構造とは、その名の通り、コンクリートを鉄筋で補強した構造のことなのです。 元々はヨーロッパの植木職人が植木鉢を作るときに、針金で補強したのが最初だと言われています。 依然として 『在来木造』 の建て方が根強い
4.工業化住宅-① 『プレハブ住宅』 工業化住宅とは 今日的実例 工業的に進んだ技術がその生産に適用され、その技術の合理性が有効に発揮されるように変革、整備された住宅関係者社会の仕組みによってつくられた住宅 次に、工業化住宅について説明します。 工業化住宅とは、工業的に進んだ技術がその生産に適用され、その技術の合理性が有効に発揮されるように変革、整備された住宅関係者社会の仕組みによってつくられた住宅のことです。この定義で特徴的な点は、工業化住宅はハードな技術面と、ソフトな社会的仕組みの面を持っているものであり、その姿は時代とともに変わりえるという点です。 この工業化住宅の今日的実例として、プレハブ住宅が挙げられます。 これから、プレハブ住宅について、詳しく説明したいと思います。 (その理由は、今日の住宅生産において、生産が工業的に進んだ技術を適用していること、生産供給の仕組みが、木造住宅に見られる従来のものと異なる形で整備されていること、の2点からです。) 今日的実例 『プレハブ住宅』
4.工業化住宅-② プレハブ住宅とは Prefabricated House あらかじめ工場で柱・梁・土台などの部材を加工、あるいはパネル化しておき、建築現場で組み立てる方式。少しでも工場で量産化する部材を増やし、コスト軽減と品質の安定化を図ろうとするものである。 プレハブ住宅とはPrefabricated Houseの略です。これはあらかじめ工場で柱・梁・土台などの部材を加工、あるいはパネル化しておき、建築現場で組み立てていく方式です。少しでも工場で量産化する部材を増やしコスト軽減と品質の安定化を図ろうとするものです。 プレハブ住宅の起源:大和ハウス「ミゼットハウス」1959年 ・・・ 勉強部屋用として発売 メリット:コスト軽減 工期の短縮 品質の安定化 デメリット: プラン、デザインに制約が出る
工業化住宅-③ プレハブ住宅の現況 新設住宅の、およそ7戸に1戸がプレハブ住宅 出展:プレハブ建築協会 こちらのグラフをご覧ください。これは、プレハブ住宅の最近10年間の推移を表したグラフです。このグラフを見ると、ここ10年のプレハブ住宅のシェアは、14%で推移し、伸び悩みの傾向にあることが見て取れます。 平成15年に着工されたプレハブ住宅は 159,224戸(対前年比 1.0%減)で、シェア(全住宅に占める割合)は13.7%となっています。これは、新設住宅 117万戸のうち 、およそ 7 戸に 1戸がプレハブ住宅という計算になります。 現在プレハブ住宅は、戸数、シェアは確かに伸び悩みの傾向にあります。しかし、消費者のアンケート調査の回答では、高評価を得ている結果が出ています。また、住宅生産を担う各種の専門技能者の高齢化、絶対数の減少という問題があります。そのため、工業化住宅の需要は今後、増加するものと思われます。 出展:プレハブ建築協会
5.住宅の現状-① 戸数の面では充足 住宅数と世帯数 1968年(昭和43年)にはじめて、総住宅数が総世帯数を上回った。 平成15年度 総住宅数:5387万戸 総世帯数:4722万世帯 一世帯あたりの住宅数:1.14戸 次に、住宅の現状について説明したいと思います。 まず、住宅数と世帯数の関係についてです。 日本の住宅は、1968年(昭和43年)に初めて総住宅数が総世帯数を上回り、年々戸数面での充足が進んでいます。平成15年度には、住宅数は総世帯数4722万世帯に対して5387万戸となり、一世帯当たりの住宅数は1.14戸に達しました。日本の住宅は、戸数の面では充足を果たしたと言えます。 戸数の面では充足 出展:平成15年度 住宅・土地統計調査
日本の住宅供給は新規建設が中心、良質な住宅ストックが不足 5.住宅の現状-② 欧米の新設着工数と耐用年数 日本 イギリス アメリカ フランス ドイツ 新設着工数 123万 16万 109万 30万 33万 耐用年数 26年 141年 103年 86年 79年 出展:平成8年度 建設白書 次に、新設着工数と耐用年数について見ていきたいと思います。 こちらは日本と欧米を比較した表です。この表から、日本は欧米と比べて耐用年数が極めて短く、新設着工数が多いことがわかります。 つまり、日本の住宅供給は新規建設が中心で、良質な住宅ストックが不足しています。 このことから、日本は住宅を大量消費・大量廃棄していると言えます。 日本の住宅供給は新規建設が中心、良質な住宅ストックが不足 日本は住宅を大量消費・大量廃棄
新築一辺倒からストックの有効活用にシフト 5.住宅の現状-③ 平成15年度 住宅需要実態調査 *改善内容の内訳 リフォーム:37%(13.1%増) 新築:10.3%(3.3%減) 建て替え:8.6%(5.0%減) 改善の「意向」がある 19.8%(2.2%減) 次に、住宅需要の実態ついて見て行きたいと思います。 平成15年度の住宅需要実態調査で、現在の住まいに改善の「意向がある」と答えた世帯は19.8%で、前回の平成10年度 の調査時よりも2.2%減りました。 しかし、「改善の意向がある」と答えた世帯の改善内容の内訳をみると、 リフォーム:37%(13.1%増) 新築:10.3%(3.3%減) 建て替え:8.6%(5.0%減) となっています。このことから、リフォームの需要が増大していることがわります。 近年の住宅需要の動向は、新築一辺倒からストックの有効活用にシフトしていると言えます。 リフォームの需要が増大 新築一辺倒からストックの有効活用にシフト
6.展望-① コミュニティを意識した住環境を整備 住まいに隣接した、コミュニケーションが生まれる場の整備 インターネットの普及や核家族化によって、人と人との結びつきが希薄化 近隣住民とのコミュニティの形成が状況改善の鍵 コミュニティと騒音の関係 -話し声を邪魔と感じる- 顔も見たこともない 60% 挨拶をする関係 35% 立ち話をする関係 27% 住まいに隣接した、コミュニケーションが生まれる場の整備 次に、展望について述べたいと思います。ここでは、私が考える、住宅業界がこれから行っていくべき課題を述べたいと思います。 まず1つ目に、コミュニティを意識した住環境を整備することです。ここでのコミュニティとは、人々が共同体意識を持って共同生活を営む地域のことです。 現代は、インターネットの普及や核家族化により、人と人との結びつきが希薄になってきている現状があります。特に、子供たちにはこの現状は深刻です。叔父や、叔母が家庭の中にいないので、規律や手本を教え、社会と交わる能力を鍛えてくれる、しつけ役の相手が欠けています。そこで、子供たちはもちろん、私たち大人も、積極的にコミュニケーションできる隣人関係が必要です。そのため、近隣住民とのコミュニティの形成が重要だと私は考えました。 興味深い調査結果があります。他人との交流を好み積極的に隣人と関わっている人々にとって、普段からつきあいのある人の話声は、邪魔な声というより、むしろ隣人の生活ぶりを感じることができる親しみのある音として聞こえているというのです。この調査では、話し声を邪魔と感じるパーセンテージは、「顔も見たことも無い」関係だと60%「挨拶をする」関係だと35%、「立ち話」をする関係になると27%にまで減少しています。この結果は、近所との交流が少なくなるほど、生活音は邪魔なものと感じられやすくなるということです。つまり、コミュニティの形成が、近隣騒音問題を解決する一つの要素でもあるということです。 現代には、画一化された外部に閉ざされた住宅の並びをつくるのではなく、「人と人とが助け合い、支えあい、その環境を分かち合って住むための」コミュニティとしての住環境を作ること重要です。そのためには、住まいに隣接した空間に小さなコミュニケーションが生まれる場を整備する必要があります。路地や公園などの共有空間を活用して、出会いとコミュニケーションが生まれる環境をつくることが必要です。 コミュニティとは? 【community】 人々が共同体意識を持って共同生活を営む一定の地域,およびその人々の集団。地域社会。共同体。 →昔の下町のイメージ
6.展望-② バリアフリーを意識した住まい作り ・バリアフリー化のサポート ・販売時の段階でのバリアフリーの導入 高齢化社会へ向かうスピードは西欧諸国に比べ2倍 2050年には65歳以上の人口は総人口の32% 高齢者が安心して過ごせる、住環境の整備が急務 次に、バリアフリーを意識した住まい作りをすることです。 日本の高齢化社会へ向かうスピードは他の西欧諸国に比べ2倍も速く、2050年には65歳以上の人口は総人口の32%になると予測されています。このような状況では、高齢者が安心して快適に過ごせる、住環境の整備が急務です。 これからは、バリアフリーに対応した住宅改修を行うケースが増加していくものと考えられます。そうした中では、住宅を供給した側が、アフターサービスとして住宅のバリアフリー化を積極的にサポートするようになると思います。また、家を建てる段階から、バリアフリー構造を積極的に取り入れることが大切です。住環境のバリアフリーは誰にとっても使いやすいものです。また、高齢者対応の総コストの観点から見た場合、最初からバリアフリー対応をしている住宅は、後からバリアフリーに改修した場合に比べてコストを低く抑えられます。今後は、住宅を販売する側と購買する側の双方が、バリアフリーに歩み寄ることが大切です。特にメーカー側は、バリアフリーを導入した質の高い住宅を打ち出していく必要があると思います。 高齢者住宅の現状 必要とされる住宅数:約570万戸 現在の住宅数:約10万戸 560万戸も足りない! ・バリアフリー化のサポート ・販売時の段階でのバリアフリーの導入
6.展望-③ 多量な情報を整理し、消費者の判断を支援 専門的な知識を持った人が、多量の情報を整理し、消費者の判断をサポート 家作り検討時にインターネット活用 8割 インターネットの普及により、情報の量や質は向上 しかし、住宅取引の経験は増えない 3つ目に、多量な情報を整理し、消費者の判断を支援することです。 インターネットの利用者は、2003年末で7730万人に達し、人口普及率は6割を超えて、着実に普及しています。このインターネットにより、多様な情報の収集が誰にでも手軽にできるようになりました。伊藤忠商事が運営している住宅の総合情報サイト「家作りネット」の調査結果では、家作り検討時の情報源として、インターネットを8割の人が活用している結果が出ています。 以上のように、インターネットの普及により、消費者が得られる情報の量や質は格段に向上しました。 しかし、一生の中での住宅取引の経験はそう増えるものではありません。また、合理的な判断を行うには、高い技術性や専門性が必要です。 その点を踏まえると、多くの情報の中でかえって、合理的な判断に迷う消費者が増加する可能性があります。そのため、一人ひとりに適した助言や客観的な情報を求めるニーズが高まると思います。 こうしたことから、専門的な知識を持った人が、消費者のライフスタイルなどを踏まえながら、多量の情報を整理し、消費者の判断をサポートすることが求められると思います。 多くの情報の中で、かえって合理的な判断に迷う 専門的な知識を持った人が、多量の情報を整理し、消費者の判断をサポート
7.おわりに 日本の住宅は量的な充足を果たし、品質の向上への転換期を迎えている。 これからは、ただ単に住宅という空間を供給するだけではなく、生活を意識したサービスを提供することが重要になってくると考えられる。 おわりとして、現在の日本の住宅は、量的な充足を果たし、品質の向上への転換期を迎えているといえます。これからは、ただ単に住宅という空間を供給するだけではなく、生活を意識したサービスを提供することが重要になってくると考えられます。生活の出発点となる住宅という大きな商品は、まだまだ開拓する部分が残っている商品だと感じました。 ハード:空間 ソフト:生活
8.参考文献 「工業化住宅・考」 監修:松村修一 学芸出版社 1987年 「よくわかる住宅業界」 著者:池上博史 日本実業出版社 2004年 「工業化住宅・考」 監修:松村修一 学芸出版社 1987年 「よくわかる住宅業界」 著者:池上博史 日本実業出版社 2004年 「住まいと文化」 企画・監修:住宅金融公庫 財団法人住宅金融普及協会 2000年 国土交通省住宅ホームページ http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/ プレハブ建築協会ホームページ http://www.purekyo.or.jp/ 家作りネットホームページ http://www.iezukuri-net.com/