6.図書館の歴史 (1)西洋における図書館の歴史 1.粘土板の図書館 メソポタミアの古都ニネヴェで、紀元前7世紀、アッシリア王国、アッシュールバニパル王の王宮跡から多くの粘土板が発掘された。 世界最古の文書館(図書館)といわれる。
(1)西洋における図書館の歴史 2.アレクサンドリア大図書館 紀元前3~2世紀において、ヘレニズム文明の中心地アレクサンドリアにあった古代世界最大の一大学術図書館。 博物館(ムーゼイオン)の中に置かれており、学術の中心であった。 パピルス文書70万巻を所蔵。 紀元7世紀ごろ完全に消滅したと思われる。 2002年10月に再建。
3.中世の図書館 6世紀ごろ修道院図書館が出現する。以後中世キリスト教世界にあって、学問と図書館の中心は修道院であった。 9世紀、宮廷図書館が出現する。カトリックを中心とする中世の社会的基盤は13世紀以後衰え始める。 13世紀には大学が出現し、大学には図書館が備え付けられた。パリ、プラハ、ハイデルベルクなど、各地に大学が作られた。
3.中世の図書館(続き) ・写本の時代であり、図書は非常に貴重なものであった。 ・13~14世紀には修道院図書館は衰退し、代わりに王侯貴族や新興資産階級の個人コレクションが現れる。 ・14世紀のヨーロッパの図書館にあっては、図書館は公的な財産として受け継がれ、散逸しないようにする、そのための管理責任者が必要であるとの認識ができあがっていた。
・15世紀グーテンベルクによるヨーロッパ世界で初めて活版印刷が行われる。 3.近代の図書館 ・15世紀グーテンベルクによるヨーロッパ世界で初めて活版印刷が行われる。 ・同じ内容の文献が大量にかつ安く作り出せる時代が来た。図書館機能が保存中心から利用中心へと転換。 ・フィレンツェにおけるニッコロ・ニッコーリの蔵書は、市民に公開された。市民に公開された図書館の始まりである。
3.近代の図書館(続き) ・16世紀 コンラート・ゲスナーによる世界書誌『万有文庫』(Bibliotheca Universalis)が作成された(1545)。 ヨーロッパ各地の写本12,000点の総合目録。 ・17世紀 フランスのマザラン卿は王室図書館に次ぐ6万冊の蔵書を作った。司書ガブリエル・ノーデがその任に当たった。マザランは図書館を研究のために来館するすべての人々に開放した。ノーデは、『図書館設立に関する提言』(1627)を発表し、図書館は民衆のためのものであって、一部特権階級のものであってはならない、と強調した。
4.近代公立図書館の成立前史 (18世紀イギリスとアメリカ) 18世紀後半、イギリスで「会員制図書館」が活動を開始。教養書、娯楽書の貸出は、一般市民の間にも定着する。 「職工学校図書館」も作られ、労働者工員ばかりでなく地域住民の利用も許した。 アメリカでは、フランクリンが1732年、フィラデルフィア図書館会社を設立。会員制図書館といえる。 充実するにつれて、非会員にも利用の道を開き、公共図書館としての性格を強めていく。
4.近代公立図書館の成立(19世紀イギリス) イギリスで、エドワード・エドワーズらの努力で1850年に公共図書館法が成立。 公共図書館は、社会改良運動の一環として、労働者対策の意味合いで考えられた。 その背景として、18世紀から始まった市民の読者層の拡大と、それを受けて会員制図書館の広がり、職工学校図書館の普及に示された、市民の側からの教育施設への要求といったものがあった。
4.近代公立図書館の成立(19世紀アメリカ) アメリカでは、1810年代から20年代にかけて、東部諸州で州の中央行政図書館が相次いで設立。 1854年アメリカ最初の大規模公共図書館として、マサチューセッツ州の図書館法にもと設立されたボストン公共図書館が開館した。エドワード・エヴァレットとジョージ・ティクナーの2人の功績によるところが大きい。 無料、公費による運営、すべての人への公開、法律に基づいて設立、という近代公立図書館の理念を実現したものである。
西洋における図書館の歴史(まとめ) ・近代以前の図書館 資料があるゆえに図書館が必要とされる ・近代以後の図書館 資料があるゆえに図書館が必要とされる ・近代以後の図書館 図書館があるゆえに資料が必要とされる (岩猿敏生)
20世紀-ドキュメンテーションの成立- 文献量増大と図書館の変化 ヨーロッパを中心に、文献情報を網羅的に収集し、これを提供する企てが起こる。さらに図書や雑誌だけでなく、雑誌論文やパンフレット等に関する情報も提供しようとする。 国際書誌協会(International Institute of Bibliography) 1895年、ポール・オトレとアンリ・ラ・フォンテーヌによりベルギーで設立。 その後、FID(1937、International Federation for Documentation→1988、International Federation for Information and Documentation)へ。2002年閉鎖。
FID(IIB)の活動 「あらゆる分野、すべての時代、あらゆる言語」を網羅した、いわば印刷による人類の遺産のすべてを記録にとどめることを目的に活動を始めた。 しかし当時の技術と組織力では、その事業は不可能であった。代わりに、部分としての文献を含めた、あらゆる情報の組織化を図るための技術の開発を目指した。最大の成果は、国際十進分類法(UDC)の考案と維持であった。 UDCはその後別団体が管理することになり、FID閉鎖後も存続している。