生産環境整備学講座 灌漑排水学研究室 石井沙智子

Slides:



Advertisements
Similar presentations
日本近海におけるホシササノハベラの 遺伝的分化の解析 保全生態学研究室 川瀬 渡 2006 年 2 月 21 日 -日本沿岸域の環境保全のために-
Advertisements

水と命のゆりかごづくり ~十勝川中流部における湿地造成実験 ~ 水と命のゆりかごづくり ~十勝川中流部における湿地造成実験 ~ 発表番号: B- 19 北海道帯広農業高等学校 農業土木工学科3年 林 凌太.
ESH DATABANK 1 環境関連法令. ESH DATABANK 2 法の体系 憲 法 行政法 民事法 刑法 公害犯罪処罰法 民法 民事特別法 国の法令 自治体法令 国際法 法律 政令 省令 条例 規則 告示 条約・議定書 国際宣言・憲章.
土性を考慮した有効水分量の検討 生産環境整備学講座  灌漑排水学研究室      玉内 翔子.
研究1:東京湾内湾は魚類にどのような場を提供しているのか?
背景と目的 結論と展望 材料と方法 結果と考察
雨水吐越流が都市河川・堀川に与える影響について
河川工学 -河川環境- 昼間コース 選択一群 2単位 朝位
3 市民としてどう行動していくか 地球温暖化対策 生物多様性を守る 地域の自然環境(みどり・水辺)を守る.
ビオトープ造成事業後の 環境評価に関する研究 〜地表性昆虫の多様性を用いて〜
外来種問題の真実 新潟53PickUP実行委員会.
C08031 高木信宏 C08032 高橋亮祐 C08033 高山健二 C08035 寺田曉彦
外来植物の侵入・拡大モデル 都市社会工学科 保全生態学研究室  秋江 佳弘.
ラオス中南部のメコン川流域の農村地域における漁労活動とタイ肝吸虫症
絶滅危惧植物シラタマホシクサの 保全に関する研究 岩井貴彦 システムマネジメント工学科 UCコース
平成19年度 岐阜大学応用生物科学部 生産環境科学課程 環境生態科学コース 水利環境学研究室 下出 大介
イシガイ類幼生の魚類への寄生状況 魚類を介した移動に関する研究
モード付き並列機械における オンラインスケジューリング
⑥ 生活排水対策について.
No. 1 外来生物の影響と対策 熊本野生生物研究会・熊本市立千原台高校 坂田拓司.
土木って何? コンクリート工学研究室 岩城 一郎
資源の空間的不均一性がプランクトン群集の共存に与える影響: 格子モデルシミュレーションによる予測
農業農村整備の環境配慮における 地域環境資源センターの役割
北上川の自然とそのとらえ方  北上川の自然環境を全体的に把握するために、北上川の各場所の植生と、物理的条件のデー タを整理して、北上川の環境を区分しました。  川の形(狭くて深い、広くて浅いなど)によって、冠水頻度(洪水などによって水に浸る頻度)の違う場所ができ、その違いによって、土壌の水分条件も変わり、生育する植物が決まります(図1)。さらに、それらの植物をすみかとして好む生き物も少しずつ変わります。
ビオトープ水田における プランクトン相の特徴
オオクチバス・ブルーギルの生息場所に 水の透視度が及ぼす影響
個体識別したオオサンショウウオの 行動の追跡による生態解明
山崎川の魚類の 生息環境からみる河づくり 都市社会工学科  加藤顕成.
徳山ダム建設が タコノアシ個体群に及ぼす影響
ヤマトシジミによる 木曽三川汽水域における生息地評価
社会システム論 第5回 生態系(エコシステム).
ビオトープ水田内の環境変化が 淡水魚に与える影響
水質調査の現地観測手法について 茨城大学農学部 黒田 久雄.
静岡大学システム工学科 前田研究室4年 50113006 阿部 茂晴
新学習指導要領説明会 技術・家庭(技術分野) 内容の数が2から4へ  ・改善の基本方針  ・内容の解説  ・指導計画の作成.
1.田んぼ(棚田)の多面的な役割り 「生態系サービス」
(株)ウエスコ 環境計画事業部 自然環境課 森定 伸
絶滅危惧種サギソウの遺伝的分化 保全生態学研究室   鈴木雅之.
図3 地球環境変動の中核的課題と動向 自然圏(Natursphäre) 人類圏(Anthropophäre) 生物圏 大気圏 水文圏 土壌圏
「三角形の面積の変化の様子を一次関数としてとらえることができる。」
灌漑強度の違いに着目した 被覆灌漑の有効性の検討
土壌水分が大豆の生育に及ぼす影響 生産環境整備学講座 灌漑排水学研究室 林 春奈.
静岡大学システム工学科 環境分野 前田研究室 伊藤 啓
環境配慮型水路における   魚類の好適生息環境の検討 水利環境学研究室 塚本敏博.
日本学術会議主催 学術フォーラム 巨大災害から生命と国土を護る 災害に強い農業生産基盤の整備と国土保全 公益社団法人農業農村工学会 塩沢 昌.
自然・環境ブック 新潟県 良好な水質の確保 <内容> ・水質ってなんだろう? 2ページ ・水質はどうやって確認しているの? 7ページ
新聞発表 /7/16 大和田・菅原・鈴木・山中.
トンネル栽培における 水消費メカニズムの解明
4章 開水路における不等流(2) 漸変流 4-1漸変流とは ① 断面形状や底面形状が緩やかに変わる流れ。
日本のゴルフ場の環境破壊 中神 徹.
生物多様性保全推進支援事業 1.地域における生物多様性の保全再生に資する活動への支援
周辺圃場の土地利用変化が 水田の水需要に与える影響
流速ベクトル.
魚道について.
BASUMO大作戦 D班:斎藤、下村、御簾納、山崎.
河川工学 -洪水流(洪水波の伝播)- 昼間コース 選択一群 2単位 朝位
関西空港周辺海域でのバイオテレメトリーによる魚類の行動測定 Ⅰ
水田地帯における 小型魚類の分布状況と 環境要因について
生物学 第18回 どうして地球上には多様な生物が 生息しているのか 和田 勝.
環境配慮型水田におけるイシガイ類の生息域及び 水管理による成長量の違い
NETIS(国土交通省新技術情報システム)登録品
湖岸湿地における生物多様性と人間活動 東京大学保全生態学研究室 西廣淳 2011年10月12日
私の研究姿勢(1) 具体的な解を求める 研究とは,科学者の立場から,社会に明確な判断材料を与えることです.
Water Quality Problems in Reservoirs and Rivers
生きもの調査 ①捕獲調査 ②同 定 2学期に実験で確かめてみましょう! 伊自良北 小学校
「この写真は、どこの写真でしょう」.
ラオス平野部における小動物利用と生活空間
万博記念公園における NP0の活動状況 (万博記念機構の取り組み)
生物多様性保全推進支援事業 1.地域における生物多様性の保全再生に資する活動への支援
生物多様性保全推進支援事業 1.地域における生物多様性の保全再生に資する活動への支援
Presentation transcript:

生産環境整備学講座 灌漑排水学研究室 石井沙智子 環境配慮型水路における 魚類の生息状況 生産環境整備学講座 灌漑排水学研究室 石井沙智子

今後の環境配慮型水路の整備へと生かしたい 研究の目的 《水域間ネットワーク》      河川   農業用水路   水田 環境配慮型水路 環境配慮型水路の各施設が 魚類の生息状況に与える影響 様々な水路形態において多種多様な魚類が どういった条件の水域を好み, 産卵・生息・越冬の場にするかを把握 今後の環境配慮型水路の整備へと生かしたい

調査項目 水理調査(物理的特徴) 水質調査(化学的特徴) 魚類の捕獲調査  (魚キラー・サデ網・タモ網を利用する)

調査地の概要 A B C D 岐阜県安八郡輪之内町道下地区に位置する水路 特徴により上流からA・B・C・Dの4区間に分類した D区間は今年度末に県道工事により埋め立てられる B・C区間が環境配慮型水路(D区間の生態系の代替域として期待) A B C D

A区間 約150mの農業排水路部分 上流からコンクリート2面張り水路・土水路・コンクリート2面張り水路と分けられる コンクリート2面張り水路 調査項目 土水路

B区間 浅い 深い 魚の遡上施設(魚道)からBOX部までの約190mの農業排水路部分 環境配慮型水路 整備は平成15年春に完了 調査項目 浅い 深い 魚の遡上施設(魚道)からBOX部までの約190mの農業排水路部分 環境配慮型水路 整備は平成15年春に完了 水路構造は2面張り 多段河床 多段護岸 花いかだ 魚巣ブロック

C区間 C区間はBOX部から下流へ約170mの農業排水路部分 環境配慮型水路 C区間はB区間の整備完了後に着工し,平成16年7月に完了 水路構造は2面張り ソダ ジャカゴ 花いかだ

D区間 周りを全て水田に囲まれた昔ながらの自然河川の形を色濃く残した用排兼用水路 水際にヨシ等の植生が繁茂 多様な生物の生息場所 ワンド部

水理・水質環境 魚類の生息状況 繁殖地 越冬地 結果及び考察 水理・水質環境 魚類の生息状況 繁殖地 越冬地

水理・水質結果 A・B・C区間:青 D区間:赤 水深変動 流速変動 流速がない 止水域に近い状態が保たれている 水位変化が激しい B区間は多段河床により 深みが維持されている

水理・水質結果 A・B・C区間:青 D区間:赤 水温変動 DO変動 溶存酸素量が少ない 水温の上がる夏期にDOを高く保てる環境づくりが重要 停滞水のため変化が激しい

水理・水質結果 A・B・C区間:青 D区間:赤 pH変動 透視度変動 環境基準値を満たす 弱アルカリ性 一般の河川に比べ 低く濁っている

魚類の確認 本調査地区:5目6科20種 (輪之内町:5目9科27種) 全国的または岐阜県内で絶滅の恐れのある4種 が確認されている       (輪之内町:5目9科27種) 全国的または岐阜県内で絶滅の恐れのある4種 が確認されている デメモロコ イチモンジタナゴ カワバタモロコ メダカ

繁殖地

繁殖地の定義 本調査における魚類の繁殖期を5~10月とした 稚魚の確認地点を繁殖地として考えた 捕獲された魚類ごとの 発育段階を考慮して,稚魚 と成魚に大別した 図, 成魚の条件となる体長目安

植生の重要性 全区間において植生のある場所で稚魚が確認された  植生の重要性 全区間において植生のある場所で稚魚が確認された 繁殖期の水際植生の重要性は高く,繁殖期を通して保たれるべき環境として,今後保護していく必要がある 表,A区間稚魚確認地点 植生地 9月9日

繁殖地・生息地としての安定が確認された。 環境配慮型施設の有効性 表,B区間稚魚確認地点 花いかだ地点で    B区間6種    C区間6種確認 また、多くの魚数確認 表,C区間稚魚確認地点 花いかだの効果あり 環境配慮型施設の有効性とともに 繁殖地・生息地としての安定が確認された。

泥底部の必要性 D区間にて最も多くの魚種の確認 D区間のみで底生魚ツチフキの確認 ツチフキ 表,D区間稚魚確認地点 底生魚にとって移動期間約1・2年では短かったのでは? 今後A・B・C区間での定期的な魚類相の調査が大切

広い繁殖空間 植生による多様な生息空間 D区間工事後の生態系への影響の懸念

越冬地

水深及び水域保護の必要性 水深が維持できないところでは魚類は確認できなかった A区間は橋の下でのみ水深が確保 B区間は多段河床により水深の維持 これらの水域の状態を保護することが重要 A区間 橋の下 水域の分断 B区間 多段河床1段目

今後も続けて調査し見守っていかなくてはならない 今後の展望 各施設が能力を最大限発揮できるように 今後も続けて調査し見守っていかなくてはならない 多段護岸 花いかだ 魚巣ブロック ソダ(水中)