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Ⅲ 利用者・家族、訪問介護員他、多職種との連携におけるコミュニケーション技術について Ⅲ 利用者・家族、訪問介護員他、多職種との連携におけるコミュニケーション技術について 多職種連携におけるコミュニケーション Ⅲ 利用者・家族、訪問介護員他、多職種との連携におけるコミュニケーション技術について

利用者を支える多職種連携   さまざまな職種がかかわって、一人の利用者を支えており、たとえ、訪問介護サービスのみを利用している場合であっても、市町村や介護支援専門員、訪問介護がかかわっているのである。  サービス提供責任者が他の職種とサービス提供者会議で顔を合わせることがあっても、日頃の連携は介護支援専門員を軸とした連携となるが、他の職種の職務や役割等を理解しておくことは、連携において重要である。 訪問介護 市町村 かかりつけ医 利用者 地域包括支援センター 介護支援専門員 訪問リハ 訪問看護 ボランティア Ⅲ 利用者・家族、訪問介護員他、多職種との連携におけるコミュニケーション技術について

多職種連携を促進するために-他の職種等の理解(1) ●市町村  介護保険の保険者である市町村は、介護保険制度の実施に必要な事務を行う。具体的には、被保険者管理、保険料の賦課・徴収、要介護等認定、介護保険給付、地域密着型サービス事業者の指定等に加え、地域支援事業の実施する。地域包括支援センターの設置も市町村の役割である。 ●地域包括支援センター  高齢者が住み慣れた地域で、その人らしい生活を継続することができるように、保健・医療・福祉サービスをはじめ、さまざまなサービスを必要に応じて、総合的、継続的に提供し、地域における包括的な支援を実現する役割を果たす中核的な機関として設置された。  地域ぐるみでの努力と地域住民の自助・互助努力を促す仕組みづくりや、サポート体制を構築する重要な機能を担っており、配置基準となっている社会福祉士等、保健師等、主任介護支援専門員の3 職種を中心としたチームアプローチを行っている。  住民の各種相談を幅広く受け付ける「総合相談」、要支援1・2の人に介護予防ケアプランの作成及び介護が必要となるおそれのある高齢者に対する「介護予防ケアマネジメント(ケアプラン作成等)」、高齢者が安心して暮らせるよう、さまざまな権利を守る「権利擁護」、高齢者に対して、包括的かつ継続的サービスが提供されるように、地域の多様な社会資源を活用したケアマネジメント体制の構築を支援する「包括的・継続的ケアマネジメント支援」等を行う。 Ⅲ 利用者・家族、訪問介護員他、多職種との連携におけるコミュニケーション技術について

多職種連携を促進するために-他の職種の理解(2) ●介護支援専門員(ケアマネジャー)  要支援・要介護認定を受けた人の居宅サービス計画(ケアプラン)を作成し、他の介護サービス事業所との連絡、調整などを行う。利用者の生活や介護全般に関しての相談援助や関係する機関との調整を行い、サービス開始後もアセスメント、モニタリングを繰り返し行う。定期的なサービス担当者会議の開催や1か月に1回以上の利用者宅への訪問などが義務付けられている。 ●医師  医師は利用者に提供される医療全般に責任をもつ立場にある。利用方針を決め、薬の処方などを行う。 ●訪問看護  訪問看護は介護保険や健康保険法に基づいて、訪問看護ステーションや病院・診療所などから利用者宅などへ看護職が訪問する。訪問看護には医師の指示書が必要で、指示書により診療の補助を行う。利用者宅の医療機器や薬剤の管理を行うこともある。 Ⅲ 利用者・家族、訪問介護員他、多職種との連携におけるコミュニケーション技術について

多職種連携を促進するために-他の職種の理解(3) ●訪問リハビリテーション  利用者宅や在宅とされる施設や理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などが訪問して、医師の指示書に基づいたさまざまなリハビリを行う。  例えば、理学療法士は、病気やけがなどで身体に障害のある人に対して、座る、立つ、歩くなどの基本動作の回復や維持、悪化を予防するために運動療法や物理療法(温熱、電気などの物理的手段を利用)を実施して自立した日常生活が送れるように支援する医学的リハビリテーションの専門職である。関節可動域の拡大、筋力強化、麻痺の回復、痛みの軽減などのために個々の利用者について医学的・社会的視点から身体能力、生活環境を評価してプログラムを作成する。  作業療法士は、「身体又は精神の障害がある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行わせる」となっている ●福祉用具専門相談員  福祉用具のレンタルなどの際に利用者の病状、身体状況などに応じて用具の選択を行う。福祉用具貸与事業を行う場合、各事業所に2名以上の専門相談員を配置することが定められている。 Ⅲ 利用者・家族、訪問介護員他、多職種との連携におけるコミュニケーション技術について

サービス提供責任者の役割  訪問介護は、利用者や家族の「生活」を支える仕事である。多種多様なニーズをもつ利用者やその家族を支援するうえで、多職種と連携したチームアプローチが「カギ」を握る。  その連携の中で、サービス提供責任者が主にかかわるのは介護支援専門員である。サービス担当者会議以外の日頃の業務において訪問介護サービスの報告や訪問介護からの情報が、介護支援専門員を介して多職種と共有される。しかし、緊急時対応等においては、訪問看護師等と直接連絡を取り合うことも求められるため、チームのメンバーとは良好な関係を築く必要がある。  サービス提供責任者はそのチームの一員として、相手側の多職種の仕事を理解するために、連携に必要な最低限の知識を得ておくことが必要である。  一方で、訪問介護が何の目的で、どのような介護を行っているのか説明できなくては、相手からの理解は得られない。連携においては、相互の理解が必要である。そのためには、相手にわかるように言語化したり、コミュニケーションの能力を高める努力が必要である。  利用者を支援するためには、一緒に仕事をするチームの職種や視点の理解、そして、常に自分の仕事を振り返ることが不可欠である。  サービス提供責任者は、利用者の生活支援という視点でサービス担当者会議等で発言しなければならない。訪問介護は利用者の在宅生活を支える上では、重要な役割を担っている。その訪問介護の役割のなかで、サービス提供責任者は利用者の日常生活状況を把握できる訪問介護から多職種へさまざまなことを発信し、よりよい利用者の在宅生活へ、利用者の重度化防止へと結びつけることを担っているのである。反対に、サービス提供責任者は、サービス担当者会議等で得た情報を整理し、担当訪問介護員に伝え、よりよい訪問介護サービスへつなげる必要がある。 Ⅲ 利用者・家族、訪問介護員他、多職種との連携におけるコミュニケーション技術について

連携において重要な利用者情報 訪問介護員の情報の重要性 利用者情報保護の考え方  多職種連携の中心であり、情報の橋渡しの役割をもつ介護支援専門員にとって、サービス提供責任者からの報告や意見は、利用者の生活実態を具体的に知る材料となる。また、利用者の具体的な情報は、ケアプランの評価や見直しに非常に役に立つ。そのため、サービス提供責任者は、多職種連携のチームの一員であるという自覚をもち、担当訪問介護員からの日々の報告内容をしっかり把握する必要がある。  また、訪問介護員は医療職には直接は言わない利用者や家族介護者の意向(例えば、「先生にはあまり言っていないけど、本当はこうしてほしい」など)や、利用者の生活情報(例えば、薬を飲まずに捨てている形跡があった)など、普段の利用者からは聞けなかった重要な情報を知ることもある。  こうした訪問介護サービスにおける、訪問介護員の気づきなどの非常に重要な情報が活用されることで、生活・介護・医療支援が一体的に過不足なく提供されることにつながり、利用者の在宅生活を支えていくことができる。 利用者情報保護の考え方  訪問介護員が得る利用者の生活情報等は、多職種連携やチームアプローチにおいて重要な情報であるが、一方でそれらの情報は、訪問介護に従事する者として訪問介護員、サービス提供責任者には守秘義務も課せられている。サービス提供責任者は、運営基準上の“正当な理由”とは何なのか、利用者や家族の同意等、事業所における利用者保護におけるルールを遵守するとともに、訪問介護員においても徹底するよう、指導しなければならない。 Ⅲ 利用者・家族、訪問介護員他、多職種との連携におけるコミュニケーション技術について

具体的なコミュニケーションの留意点(1) 介護支援専門員とのコミュニケーション  サービス提供責任者には、担当訪問介護員と密な連携を図り、担当訪問介護員からの情報を精査したうえで、利用者の支援に必要な情報をタイムリーに提供することが期待されている。  情報の提供に関しては、サービス提供責任者が気になること、問題だと思うことの根拠(理由)が重要である。根拠とともに、介護支援専門員に状況報告及び課題報告を行うことが望まれる。「根拠はあいまいだが何となく気になる」といった場合は、根拠が明確でないことを断ったうえで、事実とサービス提供責任者の判断や所見を連絡する。  状況報告には、①担当訪問介護員の業務遂行状況、②利用者の心身および日常生活の変化、③各種サービスに対する利用者および訪問介護員の評価などの具体的な報告が必要となる。  訪問介護は、利用者の生活をささえるかかわりのため、他専門職が必要、また、活用できる情報を得ることができる。その情報を、介護支援専門員に対して提供・報告することで、利用者に対するケアの質の向上につなげることができる。 ●医療にかかわる留意点  常日頃から利用者の生活状況(いつ起きて、どのように食事を摂り、どのように1日を過ごすのか、どのように入浴しているのか、何時頃寝るのか、生活上の支障など)の情報は、医療サービスを提供するうえで役に立つ。 ●リハビリテーションにかかわる留意点  例えば、訪問リハビリテーションを利用することになった利用者が、リハビリをしたがらない例があるとする。訪問リハビリは1週間に1回のみのため、担当の理学療法士と利用者の関係がなかなかできないこともある。訪問介護からその利用者はどのように考える人なのか、今の希望、楽しみにしていることなどを伝えれば、理学療法士が利用者のやる気をうまく引き出すことにつなげることができる。 Ⅲ 利用者・家族、訪問介護員他、多職種との連携におけるコミュニケーション技術について

具体的なコミュニケーションの留意点(2) ●福祉用具にかかわる留意点  新しく福祉用具などが導入された場合、使い方が複雑な福祉用具もあって、訪問介護員が慣れないために事故につながる危険性もある。導入の意図や使い方、使用するうえでの留意点などは把握する必要がある。 ●看護にかかわる留意点  介護と医療の情報集約の方法として、利用者宅に配置される連絡ノートの有効利用は重要である。連絡ノートは、訪問したそれぞれのスタッフが行ったケアや拾い上げた問題点を記載するものであるため、これは誰が、いつ訪問して、どういうケアを行ったかが詳細にわかる。  しかし、ともすると行為の羅列(買い物の内容やつくった食事の内容など)ばかりが記載され、医療職にとって重要な情報(食欲や体重、体温、排せつや服薬の状況など)についての記載がなかったり、あまりに記載が多いために、実際にはほとんど読むことができないといったことも見受けられる。情報を整理したり、医療職にどうしても伝えたい情報は付箋に別途記載するなど、様々な工夫が必要となる。 Ⅲ 利用者・家族、訪問介護員他、多職種との連携におけるコミュニケーション技術について