研究テーマ A④ 「雲解像モデルの高度化と その全球モデル高精度化への利用」 平成19年度 「21世紀気候変動予測革新プログラム」応募申請 2007年2月22日 ヒヤリング審査 研究テーマ A④ 「雲解像モデルの高度化と その全球モデル高精度化への利用」 研究代表者:坪木和久(名古屋大学 地球水循環研究センター) 参画研究者:増永浩彦(名古屋大学 地球水循環研究センター) 篠田太郎(名古屋大学 地球水循環研究センター) 渡部雅浩(北海道大学地球環境科学研究院) 青木尊之(東京工業大学 学術国際情報センター) 榎本剛(海洋研究開発機構地球シミュレータセンター)
東アジア域の暖候期に名大レーダーで観測された対流セルの出現率と、それらの数値モデルによる解像限界 背景(観測) 東アジア域の暖候期に名大レーダーで観測された対流セルの出現率と、それらの数値モデルによる解像限界 500m解像度モデルの限界 2km解像度モデ ルの解像限界 積乱雲などの対流セルの表現には1km~500mの格子解像度が必要。 雲解像モデルの利用が不可欠。 沖縄周辺 (海洋上) 上海周辺 (海岸部) 中国内陸部 (大陸上) 対流セル積算出現率(%;総観測個数約 25,000 個) 1km解像度 モデルの解像限界 対流セルの面積(大きさ)
雲を精度よくシミュレーションできるように雲解像モデルを高度化し、その利用、及び全球モデルとの結合により全球モデルの高精度化に寄与すること。 研究目的 雲を精度よくシミュレーションできるように雲解像モデルを高度化し、その利用、及び全球モデルとの結合により全球モデルの高精度化に寄与すること。 雲解像モデル高度化:雲解像モデルの改良と高度化。 雲物理過程の改良(完全2モーメント化、雹、氷晶生成) 力学過程の改良(セミラグランジュ化) パラメータ改良:雲解像モデルの計算から得られるデータを利用して、全球モデルの雲についてのパラメータを改良する。 非斉一モデル結合:非静力学雲解像モデルと静力学全球モデルを結合し、全球モデルの高精度化を図る。 1格子埋め込み(スーパーパラメタリゼーション) 領域埋め込み結合(双方向通信) 比較検証実験:現在気候と温暖化気候における全球モデル出力値を用いて、主に台風の雲解像実験を行いGCMの検証を行う。
雲解像モデル “CReSS” Cloud Resolving Storm Simulator 雲スケールからストームスケールの現象のシミュレーションを地球シミュレーターなどの大規模並列計算機で行うことを目的とした、非静力学・圧縮方程式系の雲解像モデル。 地球シミュレータに最適化した純国産の雲解像領域モデルを開発することを目標として、1998年より雲解像モデルの開発を行なってきた。(一からの開発) 詳細な雲物理過程の導入。 地球シミュレータでの実績。高精度で高効率の並列化。 多様なシミュレーション:台風、集中豪雨、雪雲、竜巻など。 毎日の気象予報実験。国内外での利用。
CReSS Ver.2 のESにおける性能 CReSSの性能試験を地球シミュレータの128ノード(1024CPU) と 64ノード(512CPU) を用いて性能テストを行なった。 ベクトル化率:99.4% 並列化率:99.985% 最大利用可能ノード数:全ノード(640ノード) 利用ノード:128ノード 並列化効率:86.5% ピーク性能比率:約33% 2003年度から地球シミュレータを継続的に利用してきた実績。
CReSSを用いた格子解像度1kmでの台風のシミュレーション結果。 台風の詳細な構造や、台風の降雨帯を構成する雲が解像されている。
格子解像度500mでの五大湖上の筋雲のシミュレーション結果。 五大湖上の筋雲を構成する積乱雲が明瞭に解像されている。
格子解像度75mでのスーパーセルと竜巻のシミュレーション
◎力学過程の改良:セミラグランジュ法の導入 モデル高度化 CReSSの雲物理過程とその改良点 水蒸気 雪(降水) (qs, Ns) 霰(降水) (qg, Ng) 雨(降水) (混合比) 雲水 氷晶 (qi, Ni) 2次氷晶 雲水 (qc, Nc) 雨(降水) (qr, Nr) 雹(降水) (qh, Nh) ◎力学過程の改良:セミラグランジュ法の導入
CReSSを用いた毎日のシミュレーション実験のデータを用いて、GCMのパラメータ改良を行う。 GCMにおける大規模凝結過程 パラメータ改良 CReSSを用いた毎日のシミュレーション実験のデータを用いて、GCMのパラメータ改良を行う。 歪度が正値 凝結量 大 凝結量 Qttl Dev. Qttl Ave. Qvs ・NICAM、スーパーパラメタリゼーションについても言及。 全球の現象を陽に表現しようとしている。計算量が大きく、残念ながら全ての研究や予報、予測実験には適用できない。 歪度が負値 降水の確率密度分布の形状を規定するパラメータ (標準偏差、歪度など)の値を、雲解像モデルの結果を用いて解析する。 凝結量 小
☞ 3次元CRMを対象領域周辺のGCM格子内に埋め込み、インタラクティブに計算を行う 非斉一モデル結合 (非斉一=全球静力学+領域非静力学) 雲解像モデルをGCMの1格子点に埋め込み(スーパーパラメタリゼーション)、それを用いてGCMの高精度化を図る。 任意形状の埋め込み “雲解像モデルの重並列化”。 従来のスーパーパラメタリゼーション 2次元CRM (現状) 3次元化 GCMの格子 こういった研究自体、日本ではほぼ取り組みゼロなので、やる意味は十分あると考えている が、かといってアメリカの真似をするわけでもない ☞ 3次元CRMを対象領域周辺のGCM格子内に埋め込み、インタラクティブに計算を行う = 狭領域 super-GCM 雲解像モデル(CRM):CReSS GCM:CCSR/NIES/FRCGC GCM5,7b
領域埋め込み型双方向通信によるGCMとCReSSの結合 非斉一モデル結合 領域埋め込み型双方向通信によるGCMとCReSSの結合 雲解像モデルの重並列化による 任意領域、任意形状の埋め込み AFES (Atmospheric general circulation model For Earth Simulator)
気候モデルの出力に雲解像モデルを埋め込み、現在気候と温暖化気候における台風の発生や強度の検証実験を行う。 比較検証実験 気候モデルの出力に雲解像モデルを埋め込み、現在気候と温暖化気候における台風の発生や強度の検証実験を行う。 全球モデルに埋め込んだ雲解像モデルによる台風の発生実験例。(気圧・雨・風)
研究の役割分担と研究課題A②およびA③への貢献 まとめ 研究の役割分担と研究課題A②およびA③への貢献 雲解像モデルの高度化 雲物理過程 (名大 坪木) 力学過程 (東京工業大学 青木) GCMパラメータ改良・ 毎日のシミュレーション (名大 篠田) 非斉一モデル結合 格子点埋め込み (北大 渡部) 領域埋め込み結合 (ESC 榎本) 比較検証実験・台風実験 シミュレーション結果検証 (名大 増永) 研究 項目 A② A③ C 我々の観測で得られた雲・降水データのモデル改良への活用
期待される成果 雲に関する高度なシミュレーションモデルが開発される。 まとめ 期待される成果 雲に関する高度なシミュレーションモデルが開発される。 雲を解像する毎日の予報実験により、雲に関する物理量の統計的データが得られる。これを用いて全球モデルのパラメータ改良がなされる。 全球静力学-領域雲解像モデルの非斉一結合モデルの開発により、新しい発想での全球及び領域のシミュレーションが発展する。 その一つとして1格子埋め込み型(スーパーパラメタリゼーション)による、全球モデルの高度化が実現される。 また、領域埋め込み型双方向通信の領域高解像度シミュレーションが発展する。 GCMの温暖化実験における台風の強度や発生について、雲解像モデルと比較検証される。
対流セル群 対流システム全体のスケール
温暖化時の台風に伴う降水量や風速の大きさを、雲解像モデルで定量的に評価する。 比較検証実験 温暖化時の台風に伴う降水量や風速の大きさを、雲解像モデルで定量的に評価する。 CReSS: Press・Rain・Wind