CTA報告37 CTA大口径望遠鏡用ライトガイドの開発

Slides:



Advertisements
Similar presentations
3.8m 望遠鏡用面分光装置 2010/08/18 光赤天連シンポ 尾崎 忍夫、岩田 生、神戸 栄治、沖田 喜一(国立天文台) 吉田 道利(広島大学)、岩室 史英、菅井 肇、太田 耕司(京都 大学)
Advertisements

宇宙線ミューオンの測定 久野研究室 4回生 卒業研究 荒木 慎也 宮本 紀之 室井 章. 目次 実験内容 測定方法・結果 ・検出装置とセットアップ 解析 ・バックグラウンド除去 ・検出効率 ・立体角 ・文献 値との比較 まとめ.
CTA 大口径望遠鏡の分割鏡の開発( 3 ) 茨城大学大学院理工学研究科 加賀谷 美佳 奥村曉 F 片桐秀明 A 北本兼続 E 﨏中良介 E 周小溪 E 田中駿也 A 千川道幸 E 手嶋政廣 B,C 中嶋大輔 C 野里明香 E 林田将明 G 柳田昭 平 A 山本常夏 D 吉田龍生 A R.Krobot.
CsIシンチレータと マルチアノードPMTを用いた 硬X線撮像装置の性能測定
パノラマ動画像モデルによる 仮想空間表現システムの研究
京都大学理学研究科物理第2 宇宙線研究室 中森 健之
京都大学理学研究科高エネルギー研究室 修士一年 田口 誠
新しいVPHグリズムおよび 櫛形格子のグリズム
次世代超大型望遠鏡の 広視野補償光学系の光学設計
CTA 報告36 大口径望遠鏡用の分割鏡の開発 2012年3月24日 茨城大学大学院理工学研究科 加賀谷 美佳
CTA 大口径望遠鏡の分割鏡の開発 加賀谷 美佳 茨城大学大学院理工学研究科 宇宙線研:手嶋政廣 榎本良治 宇宙研:奥村暁
すばる主焦点搭載用10-100GeVγ線検出器 “CheSS”による かに星雲の観測報告
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 宇宙物理研究室 B 木村悠哉
CTA大口径望遠鏡 焦点面検出器の設計 山本常夏, 掃部寛隆,猪目祐介,岸田柊 (甲南大),大岡秀行, 高橋光成,手嶋政廣,中嶋大輔,花畑義隆,林田将明 (東大宇宙線研),窪秀利,今野裕介,斎藤隆行,土屋優吾,畑中謙一郎,増田周 (京大理),寺田幸功,松岡俊介,永吉勤 (埼玉理),郡司修一, 武田淳希,門叶冬樹,中森健之.
形状モデリングにおいて,任意の自由曲面を定義する必要のある場合がある.自由曲面の表現法について説明する.
前回の内容 結晶工学特論 第4回目 格子欠陥 ミラー指数 3次元成長 積層欠陥 転位(刃状転位、らせん転位、バーガーズベクトル)
3.8 m望遠鏡主鏡エッジセンサ 開発進捗 京都大学 理学研究科 M2 河端 洋人.
京大岡山3.8 m望遠鏡計画: 分割主鏡制御エッジセンサの開発
T2K実験 前置検出器のための 光検出器MPPC/SiPMの性能評価
目次 多重薄板型X線望遠鏡 レプリカ法とは 反射鏡の評価 現状と課題
Astro-E2衛星搭載 XISの データ処理方法の最適化
信号電荷の広がりとデータ処理パラメータの最適化
NeXT衛星 宇宙の非熱的エネルギーの源を探る focal length m
ひび割れ面の摩擦接触を考慮した損傷モデル
トリガー用プラスチックシンチレータ、観測用シンチレータ、光学系、IITとCCDカメラからなる装置である。(図1) プラスチックシンチレータ
放射光偏光X線を用いた撮像型 キャピラリーガス比例計数管の特性試験
CTA 報告46: CTA 大口径望遠鏡用分割鏡の開発: 形状測定システム
位相カメラの進捗状況 京都大学修士1回 横山 洋海.
高出力Nier型イオン源の開発 環境計測学研究室 清水森人 高出力Nier型イオン源開発の報告を始めます。
第14章 モデルの結合 修士2年 山川佳洋.
構造情報に基づく特徴量を用いた グラフマッチングによる物体識別 情報工学科 藤吉研究室  EP02086 永橋知行.
FPCCDバーテックス検出器における ペアバックグラウンドの評価 4年生発表 2010/03/10 素粒子実験グループ 釜井 大輔.
治療用フィルムによる線量分布測定の 基礎的検討Ⅱ
ガンマ線バースト観測用 面分光装置の紹介 岡山天体物理観測所 尾崎忍夫 共同研究者 吉田、岩田、神戸、沖田(岡山天体物理観測所)、
高エネルギー陽子ビームのための高時間分解能 チェレンコフビームカウンターの開発
CTA報告19: CTA時代におけるSNR研究
宇宙線ミューオンによる チェレンコフ輻射の検出
Thesis Supervisor: Katsushi Ikeuchi 池内克史
小型JASMINE計画の状況       矢野太平(国立天文台)       丹羽佳人(京大).
X線望遠鏡用反射鏡製作のための スパッタマスクの開発
CGと形状モデリング 授業資料 1,2限: 大竹豊(東京大学) 3,4限: 俵 丈展(理化学研究所)
XIS低エネルギー側QE PCのQE、XIS-EUのQEの測定
すばる望遠鏡による10GeV領域ガンマ線天体の観測
黒澤君計算との違い 岸本 祐二.
文化財のデジタル保存のための 偏光を用いた透明物体形状計測手法
高速カメラの分光システム開発の現況 磯貝 /13 1: 分光システムの開発要素 ・分散素子 ・フィルター
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
京大岡山3.8m望遠鏡用高分散分光器 京大宇物 岩室史英 サイエンス 太陽型星のスーパーフレア現象の解明
ガス電子増幅器を読み出しに用いた タイムプロジェクションチェンバー (GEM-TPC)の開発
イオン源ビームオンラインモニター・スキャナー
Geant4による細分化電磁 カロリメータのシミュレーション
Winston cone を用いた チェレンコフカウンター
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 学生番号 B02-014 伊藤 誠
pixel 読み出し型 μ-PIC による X線偏光検出器の開発
輻射伝搬効果の検証(中) 都丸隆行.
紫外線LEDの特性測定 理工学部 物理学科 宇宙粒子研究室   澤田 晃徳.
大型ホイールのディスク成形における 有限要素シミュレーション 有限要素 シミュレーション 工具と素材形状の最適化 材料の歩留り向上
国際宇宙ステーション搭載 全天X線監視装置搭載用CCDカメラ開発の現状
シミュレーションの現状 ver 0.3 岸本 祐二.
第5回 斜投影と等角投影 ★立体図を作図する! ★三面図から立体の形状を読みとる。.
γ線パルサーにおける電場の発生、粒子加速モデル
高地におけるγ線エアシャワー地上観測のシミュレーション
高速点火核融合実験での爆縮プラズマ計測 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター LFグループ 多賀 正樹 ・ 服部 祥治
ガス電子増幅器を読み出しに用いた タイムプロジェクションチェンバー (GEM-TPC)の開発
Smile simulation 黒澤計算 ver 1.2 (Crab ・ Cyg X-1)
Smile simulation 黒澤計算 ver (Crab)
CGと形状モデリング 授業資料 1,2限: 大竹豊(東京大学) 3,4限: 俵 丈展(理化学研究所)
本時の目標 いろいろな立体の表面積を求めることができる。
シンチレーションファイバーを 用いた宇宙線の観測
KOPIO実験のための中性子不感型光子検出器の設計
Presentation transcript:

CTA報告37 CTA大口径望遠鏡用ライトガイドの開発 日本物理学会第67回年次大会 2012年3月24日(土) 茨城大学理工学研究科 黒田和典 片桐秀明A、吉田龍生A、柳田昭平A、加賀谷美佳A、手嶋政廣B、榎本良治B、奥村曉C、林田将明D、山本常夏E、千川道幸F、他CTA-Japan一同 茨城大理A、東大宇宙線研B、名大STE研C、京都大理D、甲南大理工E、近畿大理F

CTAの大口径望遠鏡LST(Large Size Telescope) 反射鏡でチェレンコフ光を反射し、焦点面にある光電子増倍管(PMT)からなるイメージングカメラで撮像 イメージングカメラの前方にライトガイドがある イメージング カメラ ライトガイド PMT 反射鏡 LST(Large Size Telescope)完成予想図 入射光 Cherenkov Telescope Array LST 23m (10GeV~1TeV) MST 12m (100GeV~10TeV) SST 4~7m (1TeV~100TeV) 半径1km位の範囲に配置されている(p.70) Crabはかに星雲のガンマ線強度(CTAのHP:計画概要より) LSTは南半球と北半球を合わせて8台設置される。 PMT(ピクセル数)はLST1台で2841個。全部で約2万個。 角度分解能は3倍。

ライトガイドについて イメージングカメラに並んだ光電子増倍管(PMT)の隙間は不感領域 Effective Area dead space PMT ライトガイド 直径約50mm 入射光 直径38mm 有効面積は40%以上アップ

Winston Cone形状 , ある最大入射角θ以内で入射した光は100%集光 最大入射角以外の光は排除 特徴 ある最大入射角θ以内で入射した光は100%集光 最大入射角以外の光は排除 2次元 入口開口部 出口開口部 , 関係式 LST用ライトガイドの仕様 f 入口開口半径 出口開口半径 最大入射角 LGの長さ [mm] 現在、主に用いられているライトガイドの形はWinston Coneという形が多く用いられています。 しかし、Winston Coneは2次元では理想的な形状ですが、3次元で入口が円形でないものでは最適化されていません。 D = 23m f/D = 1.2 3次元で六角形の形状では最適化されていない 問題点

光線追跡シミュレーションを行い、ライトガイドの高集光・高ノイズ除去効果を最大にするように LST用ライトガイドの形状最適化を行う 研究の目的 光線追跡のツール ROBAST:ROot BAsed Simulator for ray Tracing (名古屋大 奥村曉 開発) 高集光率かつ高ノイズ光カットのLST用ライトガイドの形状は解析的に決まっていません。 本研究の目的は、光線追跡シミュレーションを行い、ライトガイドの集光率を最大にするようにLST用ライトガイドの形状最適化を行いました。

光線追跡(ray trace)のイメージ ライトガイドの中心軸からあるθだけ傾いた方向から、1mm間隔に並んだフォトンを入射させる 集光率を以下の式で定義 六角形のライトガイドはφによって形状が異なるので集光率が変化 ある入射角θ(固定)のときのφで平均化した集光率を定義 ライトガイドに1mm間隔で並んだフォトン群を角度θの方向から入射させます。 ライトガイドの入口から入射したフォトンの数と出口から抜けてPMTに到達したフォトンの数調べて、集光率を以下の式で定義します。 入射角θ毎のシミュレーションを行って高集光率高ノイズカット率の形状を探します。 θが大きいほど立体角は大きくなる 光があらゆる方向で等確率で到来すると仮定したとき θの重みのついた集光率を定義

最適化の流れ Winston Cone形状のライトガイドでの光線追跡 Winston Coneを越える形状の検証 ライトガイド表面の反射率とPMT形状の考慮 Winston Coneを越える形状の検証 2次Bezier曲線を用いた最適化(省略) 3次Bezier曲線を用いた最適化 ・ライトガイド表面反射率98%   高反射率フィルム(3MのESRフィルム)を想定 ・PMTのPhoto Cathodeは曲率半径20mmの球面 ・ライトガイドとPMTを密着させる ライトガイド PMT形状 試作の反射材には3MのESRフィルムを使用した。絶縁性があり、ライトガイド自信も絶縁のアクリルで作成することでPMTのHVのスパークを抑えられるという仮定のもとで密着させる。フィルムはポリエステル系樹脂を用いた多層膜構造で可視光領域で98%の反射率を持つ。

Winston Cone形状での光線追跡シミュレーション結果 反射率・PMT形状を 考慮した 六角Winston Cone Ideal Rate 最大入射角 重みつき集光率[%] 入射角[deg] Winston Coneでは理想の集光率よりも10%ほど低い 六角形のライトガイドではWinston Coneの特徴の理想的な集光率は得られなかった Winston Cone以上に 高集光率・高ノイズ除去率の形状はないか?

3次Bezier曲線を用いた最適化 3次Bezier曲線 始点、終点、2つの制御点の4点からなる 制御点を変化させることで曲線の形が変化 Bezier曲線は媒介変数t(0≦t≦1)を用いて以下の式で表される R Z (r,z)

最適化の方法 ライトガイドのR方向とZ方向を等間隔に分割した座標点ごとの集光率を計算 範囲を絞りながら理想的な集光率モデルと比較 重みつき集光率 Bezierの曲線 始点 終点 制御点2 制御点1 理想モデル Bezier曲線 R Z 理想モデルとの集光率(重みつき集光率)の差が最小になる制御点を探す

3次Bezier曲線でのシミュレーション結果 重みつき集光率[%] 入射角[deg] 最大入射角 BezierでWinston Coneより6%向上(25度) Ideal Rate Winston Cone 2次Bezier curve 3次Bezier curve Sin25=0.4226 6%の重み集光率アップ=平均集光率14.19%アップ Bezier曲線では、入射角20度~25度の範囲で、重みつき集光率がWinston Coneよりも最大で約6%向上

ライトガイドの試作 試作(国立天文台) 0度 10度 30度 20度 今後、集光率の検証へ 六角形の一辺で切り抜いたような形のパーツに 反射フィルムを貼り、固定用の治具にはめ込んだ ライトガイド底面でのフォトン分布の シミュレーションとの比較 シミュレーションの像 試作LGの像 0度 10度 30度 20度 今後、集光率の検証へ

まとめ Winston Cone形状での集光率 Winston Coneに代わる形状での最適化 ROBASTによる光線追跡シミュレーションを行い、高集光率・高ノイズ除去率になるようなCTAのLST用ライトガイドの形状最適化を行った Winston Cone形状での集光率 表面反射率とPMT入射窓形状の考慮 Winston Coneに代わる形状での最適化 2次Bezier曲線による形状最適化(省略) 3次Bezier曲線による形状最適化 3次Bezier曲線を用いて、入射角20度~25度の範囲で、重みつき集光率がWinston Coneよりも最大で約6%向上 今後・・・ 試作の集光率の検証 PMT応答実験

補足スライド

表面反射率とPMT形状の考慮 ライトガイド表面の反射材 PMTの入射窓 出口開口部の削り出し マックスプランク物理学研究所の高反射フォイル(300~600nmの波長域で98%)を使用予定 表面の反射率を98%で計算 PMTの入射窓 曲率半径20mmの球面形状 出口開口部の削り出し 六角形のライトガイド出口開口部と球面形状PMTの隙間からフォトンが逃げて集光率低下 ライトガイドの底面をPMT形状に合わせて削除 ライトガイドの底面 PMT入射窓形状 削り出し

光線追跡のツール ROBAST(ROot BAsed Simulator for ray Tracing) C++言語で記述 ROOTのGeometry libraryの他、非球面やWinston Coneなどの多数のGeometry関数を実装 non-Sequentialなray traceが可能 ユーザが光路や面の順番を指定しなくてよい 開発者:奥村暁  ROOT Geometry library ライトガイドのオブジェクトを作成して光線追跡 (赤い部分がPMTを表している) ROBASTはROOTというソフトをベースにしたray traceのツールです。 言語はC++言語で、ROOTのGeometry関数など多数の関数が実装されています。 光路をあらかじめ指定しない、non-Sequentialなray trace可能です。 これでライトガイドのオブジェクトを作成し、シミュレーションをして集光率を調べます。 ROOTとは、高エネルギー物理学のデータ処理・データ解析を主目的としてCERNで開発されているソフトウェア・ライブラリ群の総称です。 どの光学素子をどの順番で使用するか指定 任意の場所で それぞれ反射 non-Sequential Sequential

約50cm LED ライトガイド