CTA報告37 CTA大口径望遠鏡用ライトガイドの開発 日本物理学会第67回年次大会 2012年3月24日(土) 茨城大学理工学研究科 黒田和典 片桐秀明A、吉田龍生A、柳田昭平A、加賀谷美佳A、手嶋政廣B、榎本良治B、奥村曉C、林田将明D、山本常夏E、千川道幸F、他CTA-Japan一同 茨城大理A、東大宇宙線研B、名大STE研C、京都大理D、甲南大理工E、近畿大理F
CTAの大口径望遠鏡LST(Large Size Telescope) 反射鏡でチェレンコフ光を反射し、焦点面にある光電子増倍管(PMT)からなるイメージングカメラで撮像 イメージングカメラの前方にライトガイドがある イメージング カメラ ライトガイド PMT 反射鏡 LST(Large Size Telescope)完成予想図 入射光 Cherenkov Telescope Array LST 23m (10GeV~1TeV) MST 12m (100GeV~10TeV) SST 4~7m (1TeV~100TeV) 半径1km位の範囲に配置されている(p.70) Crabはかに星雲のガンマ線強度(CTAのHP:計画概要より) LSTは南半球と北半球を合わせて8台設置される。 PMT(ピクセル数)はLST1台で2841個。全部で約2万個。 角度分解能は3倍。
ライトガイドについて イメージングカメラに並んだ光電子増倍管(PMT)の隙間は不感領域 Effective Area dead space PMT ライトガイド 直径約50mm 入射光 直径38mm 有効面積は40%以上アップ
Winston Cone形状 , ある最大入射角θ以内で入射した光は100%集光 最大入射角以外の光は排除 特徴 ある最大入射角θ以内で入射した光は100%集光 最大入射角以外の光は排除 2次元 入口開口部 出口開口部 , 関係式 LST用ライトガイドの仕様 f 入口開口半径 出口開口半径 最大入射角 LGの長さ [mm] 現在、主に用いられているライトガイドの形はWinston Coneという形が多く用いられています。 しかし、Winston Coneは2次元では理想的な形状ですが、3次元で入口が円形でないものでは最適化されていません。 D = 23m f/D = 1.2 3次元で六角形の形状では最適化されていない 問題点
光線追跡シミュレーションを行い、ライトガイドの高集光・高ノイズ除去効果を最大にするように LST用ライトガイドの形状最適化を行う 研究の目的 光線追跡のツール ROBAST:ROot BAsed Simulator for ray Tracing (名古屋大 奥村曉 開発) 高集光率かつ高ノイズ光カットのLST用ライトガイドの形状は解析的に決まっていません。 本研究の目的は、光線追跡シミュレーションを行い、ライトガイドの集光率を最大にするようにLST用ライトガイドの形状最適化を行いました。
光線追跡(ray trace)のイメージ ライトガイドの中心軸からあるθだけ傾いた方向から、1mm間隔に並んだフォトンを入射させる 集光率を以下の式で定義 六角形のライトガイドはφによって形状が異なるので集光率が変化 ある入射角θ(固定)のときのφで平均化した集光率を定義 ライトガイドに1mm間隔で並んだフォトン群を角度θの方向から入射させます。 ライトガイドの入口から入射したフォトンの数と出口から抜けてPMTに到達したフォトンの数調べて、集光率を以下の式で定義します。 入射角θ毎のシミュレーションを行って高集光率高ノイズカット率の形状を探します。 θが大きいほど立体角は大きくなる 光があらゆる方向で等確率で到来すると仮定したとき θの重みのついた集光率を定義
最適化の流れ Winston Cone形状のライトガイドでの光線追跡 Winston Coneを越える形状の検証 ライトガイド表面の反射率とPMT形状の考慮 Winston Coneを越える形状の検証 2次Bezier曲線を用いた最適化(省略) 3次Bezier曲線を用いた最適化 ・ライトガイド表面反射率98% 高反射率フィルム(3MのESRフィルム)を想定 ・PMTのPhoto Cathodeは曲率半径20mmの球面 ・ライトガイドとPMTを密着させる ライトガイド PMT形状 試作の反射材には3MのESRフィルムを使用した。絶縁性があり、ライトガイド自信も絶縁のアクリルで作成することでPMTのHVのスパークを抑えられるという仮定のもとで密着させる。フィルムはポリエステル系樹脂を用いた多層膜構造で可視光領域で98%の反射率を持つ。
Winston Cone形状での光線追跡シミュレーション結果 反射率・PMT形状を 考慮した 六角Winston Cone Ideal Rate 最大入射角 重みつき集光率[%] 入射角[deg] Winston Coneでは理想の集光率よりも10%ほど低い 六角形のライトガイドではWinston Coneの特徴の理想的な集光率は得られなかった Winston Cone以上に 高集光率・高ノイズ除去率の形状はないか?
3次Bezier曲線を用いた最適化 3次Bezier曲線 始点、終点、2つの制御点の4点からなる 制御点を変化させることで曲線の形が変化 Bezier曲線は媒介変数t(0≦t≦1)を用いて以下の式で表される R Z (r,z)
最適化の方法 ライトガイドのR方向とZ方向を等間隔に分割した座標点ごとの集光率を計算 範囲を絞りながら理想的な集光率モデルと比較 重みつき集光率 Bezierの曲線 始点 終点 制御点2 制御点1 理想モデル Bezier曲線 R Z 理想モデルとの集光率(重みつき集光率)の差が最小になる制御点を探す
3次Bezier曲線でのシミュレーション結果 重みつき集光率[%] 入射角[deg] 最大入射角 BezierでWinston Coneより6%向上(25度) Ideal Rate Winston Cone 2次Bezier curve 3次Bezier curve Sin25=0.4226 6%の重み集光率アップ=平均集光率14.19%アップ Bezier曲線では、入射角20度~25度の範囲で、重みつき集光率がWinston Coneよりも最大で約6%向上
ライトガイドの試作 試作(国立天文台) 0度 10度 30度 20度 今後、集光率の検証へ 六角形の一辺で切り抜いたような形のパーツに 反射フィルムを貼り、固定用の治具にはめ込んだ ライトガイド底面でのフォトン分布の シミュレーションとの比較 シミュレーションの像 試作LGの像 0度 10度 30度 20度 今後、集光率の検証へ
まとめ Winston Cone形状での集光率 Winston Coneに代わる形状での最適化 ROBASTによる光線追跡シミュレーションを行い、高集光率・高ノイズ除去率になるようなCTAのLST用ライトガイドの形状最適化を行った Winston Cone形状での集光率 表面反射率とPMT入射窓形状の考慮 Winston Coneに代わる形状での最適化 2次Bezier曲線による形状最適化(省略) 3次Bezier曲線による形状最適化 3次Bezier曲線を用いて、入射角20度~25度の範囲で、重みつき集光率がWinston Coneよりも最大で約6%向上 今後・・・ 試作の集光率の検証 PMT応答実験
補足スライド
表面反射率とPMT形状の考慮 ライトガイド表面の反射材 PMTの入射窓 出口開口部の削り出し マックスプランク物理学研究所の高反射フォイル(300~600nmの波長域で98%)を使用予定 表面の反射率を98%で計算 PMTの入射窓 曲率半径20mmの球面形状 出口開口部の削り出し 六角形のライトガイド出口開口部と球面形状PMTの隙間からフォトンが逃げて集光率低下 ライトガイドの底面をPMT形状に合わせて削除 ライトガイドの底面 PMT入射窓形状 削り出し
光線追跡のツール ROBAST(ROot BAsed Simulator for ray Tracing) C++言語で記述 ROOTのGeometry libraryの他、非球面やWinston Coneなどの多数のGeometry関数を実装 non-Sequentialなray traceが可能 ユーザが光路や面の順番を指定しなくてよい 開発者:奥村暁 ROOT Geometry library ライトガイドのオブジェクトを作成して光線追跡 (赤い部分がPMTを表している) ROBASTはROOTというソフトをベースにしたray traceのツールです。 言語はC++言語で、ROOTのGeometry関数など多数の関数が実装されています。 光路をあらかじめ指定しない、non-Sequentialなray trace可能です。 これでライトガイドのオブジェクトを作成し、シミュレーションをして集光率を調べます。 ROOTとは、高エネルギー物理学のデータ処理・データ解析を主目的としてCERNで開発されているソフトウェア・ライブラリ群の総称です。 どの光学素子をどの順番で使用するか指定 任意の場所で それぞれ反射 non-Sequential Sequential
約50cm LED ライトガイド