基礎商法2_11 2016/01/06 基礎商法2 第11回 2016/1/6.

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基礎商法2_11 2016/01/06 基礎商法2 第11回 2016/1/6

本日のお題 手形の流通(1) 裏書と善意取得 裏書の種類 譲渡裏書の効力 善意取得 ※今日は、基本的に債権の移転の話 2016/1/6

裏書の意義と方式 2016/1/6

裏書の意義 裏書の意義 裏書の法的性質 一定の方式に従って手形上の権利を移転すること 手形理論と裏書 手形裏書の要素 ※一般に「裏書」といえば譲渡裏書(=手形債権の譲渡)を指すが、それ以外にも代理権授与の裏書(取立委任裏書)、質権設定の裏書(質入裏書)などの裏書がある 裏書の法的性質 手形理論と裏書 裏書も手形行為であるから、法的性質については手形学説の争いがそのまま持ち込まれる 手形裏書の要素 裏書人の署名+手形の交付 2016/1/6

裏書の基本的な効果 裏書を行うことによって、以下の3つの効果の一部または全部が生じる 権利移転的効力 資格授与的効力 担保的効力 手形上の権利(実質的権利)を被裏書人に移転する 資格授与的効力 手形上の権利者であると推定される地位(形式的資格)を被裏書人に移転する 担保的効力 裏書人が被裏書人に対して遡求義務を負う(裏書人・被裏書人間に債権債務関係を発生させる) 2016/1/6

裏書の種類と効果 裏書の種類 規定 権利移転的効力 (手形債権譲渡) 資格授与的効力 (権利者推定) 担保的効力 (遡求義務) 譲渡裏書 (通常の)譲渡裏書 ○ 特殊の譲渡裏書 裏書禁止裏書 手15Ⅰ但 △ 無担保裏書 手15Ⅱ × 戻裏書 手11Ⅲ 期限後裏書 手20 特殊の裏書 取立委任裏書 手18 質入れ裏書 手19 保証裏書 手30 ○(保証) 2016/1/6

裏書の方式 通常の場合 被裏書人を記載 裏書人が署名 被裏書人に交付 ⇒交付契約説によれば、相手方が受領(承諾)しない限り裏書の効力は生じない。ただし権利移転については善意取得(手16Ⅱ)、担保責任については権利外観理論で善意者保護 2016/1/6

裏書の書式 裏書の種類 裏書人の署名 裏書文句 拒絶証書作成免除文句 裏書人欄 第一裏書欄 被裏書人欄 第二裏書欄 白地式裏書 第三裏書欄 ※足りなくなれば補箋を貼付 2016/1/6

白地式裏書の場合 白地式裏書 白地式裏書の場合の被裏書人の裏書・権利行使方法 ・・・被裏書人欄を空欄にした裏書 ※以下次のスライド 表記金額を下記被裏書人またはその指図人にお支払い下さい 拒絶証書不要 平成22年11月20日 さいたま市大宮区桜木町1-1 甲 野 太 郎 ㊞ 2016/1/6

自己の氏名を被裏書人欄に補充して裏書譲渡または権利行使(手14Ⅱ①) 被裏書人欄空欄のまま権利行使(手16Ⅰ参照。資格授与的効力あり) 被裏書人欄空欄のまま裏書譲渡(手14Ⅱ②) 被裏書人欄空欄のまま単なる交付で手形譲渡(手14Ⅱ③) 表記金額を下記被裏書人またはその指図人にお支払い下さい 拒絶証書不要 平成22年11月20日 ②そのまま呈示 ①補充して呈示 さいたま市大宮区桜木町1-1 甲 野 太 郎 ㊞ ①補充して裏書 ③そのまま裏書 乙 山  次 郎 殿 ④そのまま交付 表記金額を下記被裏書人またはその指図人にお支払い下さい 平成22年11月22日 拒絶証書不要 さいたま市大宮区大成町100 乙 山 次 郎 ㊞ 殿 2016/1/6

譲渡裏書 2016/1/6

(通常の)譲渡裏書 手形債権の移転方法 裏書による譲渡 裏書譲渡の方法 法律上当然の指図証券性(手11Ⅰ) 指図禁止手形 手形に指図文句の記載がなくても裏書による譲渡が可能 指図禁止手形 ⇒手形(表)面上に「指図禁止」「裏書禁止」等と記載すれば当該手形は指名債権譲渡の方法のみにより譲渡可 ※「裏書禁止裏書」は担保責任を負わないだけで裏書が無効になるわけではない。別物なので注意。 裏書譲渡の方法 手形の裏面に署名(日付以外の一般的事項は印刷済) 被裏書人に交付 2016/1/6

裏書によらない手形債権の移転 包括承継(相続や合併) 転付命令 単なる交付による移転 指名債権譲渡の方式による譲渡 白地式裏書に続く交付(手14Ⅱ③) 手形の返還 ・・・権利移転的効力はある 指名債権譲渡の方式による譲渡 →認められる(最判S49.2.28民集28-1-121百-49) 効力要件 ・・・合意+手形の交付 対抗要件 ・・・譲渡人から債務者への通知(民467) 効果 ・・・権利移転的効力のみを有する(他の手形法的な効果はない) 2016/1/6

譲渡裏書の効力 権利移転的効力(手12) 裏書人の有する一切の権利を譲渡(一部裏書の禁止、手12Ⅱ) 通常は、手形金請求権+前者までの遡求権がすべて移転 手形上の権利以外の権利は裏書では移転しない ただし保証のように主債務に随伴するものは当然に移転する(最判S45.4.21民集24-4-283百-50) A B C X 振出 裏書 裏書 約束手形 民事保証 請求 Y 2016/1/6

資格授与的効力(手16Ⅰ) 担保的効力(手15) 裏書の連続した手形の所持人は手形上の権利者と推定 ⇒裏書は被裏書人に権利者推定の「資格」を与える ※裏書の連続した手形の所持人=形式的資格者 ※条文は上記のように読み替える 担保的効力(手15) 裏書人は被裏書人及びその後の手形債権者に対して遡求義務を負う。 〔例外〕 無担保裏書 裏書禁止裏書 経済的利益を有しない所持人への遡求 2016/1/6

資格授与的効力と裏書の連続 裏書の連続の概念 裏書の連続=形式的資格の発生要件→善意取得の要件のひとつ 裏書が形式的に連続 連続とは、被裏書人欄氏名=次の裏書人欄の署名 ※ただし、厳格な一致は求めない 中間に白地式裏書があっても裏書の連続は途切れない 法人・個人の区別は柔軟に考える 振出人Y ― 受取人「愛媛無尽会社岡支店長」 第1裏書人欄「岡善恵」 ― 第1被裏書人欄「(空欄)」(Xが所持) 〔判旨〕受取人欄は個人名に肩書きを付したものと解することができ、第1裏書欄と対照すれば特段の事情がない限り個人名と解するのが妥当(最判S30.9.30百-51) 2016/1/6

裏書の一部不連続 1カ所でも裏書の連続が途切れている場合、裏書の連続による資格授与的効力は一切発生せず、すべての権利移転を証明しない限り債権を行使できない 裏書の連続が途切れている場合、途切れた部分(丙川→癸丘)の実質的権利移転を証明すれば、裏書の連続は架橋されて、他の部分については資格授与的効力が働き、権利移転の証明は不要(架橋説・通説) ※裏書の抹消:被裏書人欄が抹消された場合には白地式裏書と解する(最判S61.7.18百55) 甲野太郎 ㊞ 乙山次郎 殿 乙山次郎 ㊞ 丙川三郎 殿 癸丘十郎 ㊞ 丁田四郎 殿 2016/1/6

裏書の連続した手形による権利行使 ・・・所持人は2通りの請求が可能 形式的資格(手16Ⅰの推定)による権利行使 〔所持人が主張すべき要件事実〕 振出人が手形に振出人として署名したこと ①の手形が手形要件を満たすこと 所持人が、(受取人~原告までの)裏書の連続する①の手形を所持していること 実質的権利の移転を証明しての権利行使 振出人→受取人~前者→所持人まで手形債権が移転したこと ⇒裏書の連続した手形の所持人がiiの主張だけを行った場合も裁判所はiの認定ができる(最判S45.6.24百-53) ・・・裏書の連続した手形が呈示された以上、不意打ちにならない 2016/1/6

形式的資格者に対する振出人の反証 振出 裏書 X Y1 Y2 XY2 殿 X 殿 裏書人Y2 Xの実質的権利の取得を否認 X 殿 振出人Y1 Y2の裏書は真正またはY1の有効な代行または表見代理 受取人欄は訂正したがY2の裏書はしていない 何も知らない 振出 裏書 X Y1 Y2 XY2  殿 X   殿 Y1 裏書人Y2 Y2 Xの実質的権利の取得を否認 X  殿 振出人Y1 Y1 〔最判S41.6.21民集20-5-1084百②’-86〕裏書の連続した手形の所持人の、権利者としての推定を覆すためには、手形が有効な振出、裏書によってX所持となっていないことの立証だけではなく、Xが善意取得していないことの立証もしなくてはならない 2016/1/6

形式的資格の具体的効果 権利者推定(手16Ⅰ) 善意取得(手16Ⅱ) 支払免責(手40Ⅲ) ・・・形式的資格者=権利者として推定 ・・・前者の形式的資格を信頼した取得者を保護 支払免責(手40Ⅲ) ・・・支払の場面で所持人の形式的資格を信頼した手形債務者を保護 2016/1/6

善意取得 手形法16条2項の意義 ・・・裏書の連続した手形の取得者は、たとえ前者(譲渡人)が無権利者等であって、手形の権利移転的効力が発揮されない場合であっても、手形上の権利を取得し、実質的権利者になる(正当な権利者は権利を失う)。ただし、取得者が悪意・重過失で手形を取得した場合は別である。 ※16条1項と同様に、条文の文言は上記のように読み替える 2016/1/6

善意取得と権利の変動 A B C D 振出 盗取 裏書 無権利者 善意・無重過失 善意取得 約束手形 反射的効果で消滅 権利を原始取得 (連続するよう偽装) 振出 盗取 裏書 無権利者 善意・無重過失 善意取得 約束手形 反射的効果で消滅 権利を原始取得 ※交付契約説によれば、Bの遡求義務は生じない点に注意。Bの署名後にCが盗取した場合は、Bの遡求義務については権利外観理論で処理され善意・無重過失のDは保護される。Bの署名前にCが盗取した場合には、Bは何らの債務を負わずDはBに遡求できない。 2016/1/6

善意取得の成立要件 裏書の連続した手形の所持人からの取得であること 手形法的流通方法によって取得したこと ⇒裏書の連続の意義については既出 手形法的流通方法によって取得したこと ・・・権利移転的効力のある裏書または質入れ裏書による取得 譲受人が悪意・重過失でないこと(立証責任は債務者側にある) ・・・前者が無権利であることを知って手形を取得したか、または無権利であることを重大な過失により知らなかったこと 前者が無権利者であること(?) ←学説に争い有り 2016/1/6

所持人の善意・無重過失 証明責任 悪意・重過失の内容 悪意・重過失の認定時期 手形債務者の側が証明責任を負う 手形取得時 ①小切手用紙は盗難 ②Yと支払銀行に取引なし 調査 Y B X 小切手用紙盗取 Y名義小切手交付 署名済手形盗取 裏書 最判S52.6.20百25 〔判旨〕Bが本件手形を所持することにつき疑念を懐いてしかるべき事情が認められる……にもかかわらず、なんらの調査をしなかったXに重大な過失がある 2016/1/6

善意取得の効果 その他善意取得が成立しない場合 善意取得者は手形上の正当な権利者だから、その後に裏書譲渡した場合、被裏書人が悪意・重過失であっても有効に手形を取得する。 また、善意取得者は手形上の権利を原始取得するので、盗取前の抗弁等は一切引き継がない。 ※ただし戻裏書で無権利者が手形を再取得した場合は権利を取得できない(詳細は戻裏書のところで) その他善意取得が成立しない場合 期限後裏書(手20) ・・・指名債権譲渡の効果しかない 独立の経済的利益のない者の取得 無権利者から取立委任裏書を受けた者など 当事者が指名債権譲渡によって手形を譲渡した場合 2016/1/6

善意取得の拡張 A B B代理人C D 振出 裏書 無権代理 善意取得? 約束手形 多数説:善意取得は無権利者からの取得の場面に限られる(裏書行為自体には瑕疵がないことが前提) 有力説(主に創造説):善意取得は無権利者からの取得の場面の他に、裏書の瑕疵(無権代理、制限能力、人違い等)に広く適用 判例:無権代理の場面で善意取得の成立を認めたが(最判S35.1.12百24〔次スライド〕)、有力説に立ったと断言はできない 2016/1/6

〔判旨〕裏書が形式的に連続しており、かつXは裏書譲渡により善意で手形を取得しているので、裏書が無権代理だという事実はXの権利行使に影響しない 最判S35.1.12百24 A名古屋出張所 A名古屋出張所 取締役B Y X 振出 裏書 無権限 善意 〔判旨〕裏書が形式的に連続しており、かつXは裏書譲渡により善意で手形を取得しているので、裏書が無権代理だという事実はXの権利行使に影響しない 多数説の理解① 「A名古屋出張所取締役B」はBを示す名称なので手形はY→B→Xと適法に流通 多数説の理解② Bは無権限で手形の振出を受けているから交付欠缺。よってAは無権利者。B→Xの裏書は、無権利者の無権代理人が行った裏書だからXは無権利者からの譲受人 有力説の理解: 無権代理人の裏書の瑕疵を善意取得で治癒した判例 2016/1/6

盗取者名義の裏書と無権代理人としての裏書 ※甲野太郎が第一裏書欄に署名後交付前に盗取 盗取者が自らを被裏書人と装う場合 盗取者が被裏書人の無権代理人を装う場合 表記金額を下記被裏書人またはその指図人にお支払い下さい 表記金額を下記被裏書人またはその指図人にお支払い下さい 拒絶証書不要 拒絶証書不要 平成22年11月20日 平成22年11月20日 さいたま市大宮区桜木町1-1 さいたま市大宮区桜木町1-1 甲 野 太 郎 ㊞ 甲 野 太 郎 ㊞ 丙 川  三 郎 乙 山  次 郎 乙 山  次 郎 殿 殿 表記金額を下記被裏書人またはその指図人にお支払い下さい 表記金額を下記被裏書人またはその指図人にお支払い下さい 平成22年11月22日 拒絶証書不要 平成22年11月22日 拒絶証書不要 さいたま市大宮区大成町100 さいたま市大宮区大成町100 丙 川 三 郎 ㊞ 乙山次郎代理人丙川三郎 ㊞ 殿 殿 善意取得成立 善意取得不成立 2016/1/6