電磁気学C Electromagnetics C 7/13講義分 電磁波の電気双極子放射 山田 博仁
確認事項 今後のスケジュール ・ 7/13(第12回目) 電気双極子による電磁波の放射 ・ 7/13(第12回目) 電気双極子による電磁波の放射 ・ 7/20(第13回目) 電気双極子による電磁波の放射 (第3回レポート締め切り) ・ 7/27(第14回目) 点電荷による電磁波の放射、まとめ ・ 定期試験 8/3(金)10:30~12:00 場所:202講義室 持込は一切不可 成績評価 a) 出席点: 2点×14回 b) レポート 8点×1回、12点×2回 (6/1, 7/6予定 ) c) 定期試験: 40点 a), b), c) の合計で、60点未満D(不合格) 60点以上70点未満C 70点以上80点未満B 80点以上90点未満A 90点以上AA 得点の補正は行いません 追試、再試も行いません
遅延ポテンシャル 空間領域 V の中の電荷分布 re(x’, t’)または電流分布 ie(x’, t’)が、時間的に激しく変動すると、周りの空間に電磁波が放射される。 O r R = | x - x’| x’ V re(x’, t’) ie(x’, t’) f(x, t) A(x, t) x その時、領域 V から離れた点 x での遅延ポテンシャルは、 ここで、 で表される。 ただし、電荷や電流分布が存在しない場所は真空としている。 そこで、(1)式および(2)式の右辺の積分を実行すれば、電磁ポテンシャルが求まる。 しかし、多くの場合、この積分を解析的に実行することはできない。 そこで、静電場の時と同様に、電荷分布や電流分布が、原点 O の付近のごく限られた領域にのみ存在すると仮定して求めることにする。
電磁ポテンシャルの電気双極子近似 図に示す様に、電荷分布の存在する領域が、原点 O を中心とする半径 a の球内に限られているとし、観測点 x の原点 O からの距離 r = |x| が r≫a の条件を満たしていると考えて、(1)式の被積分関数を x’/r のベキに展開する。 O f(x) r R = | x - x’| x’ a x このとき、 従って、 と近似できる。 静電場の場合と違って、距離 Rは電荷分布 re(x’, t’)の中の t’ にも含まれるので、これを展開して、 ただしここで、
電磁ポテンシャルの電気双極子近似 (7)式の t0 は、原点 O から発信された電磁波が時刻 t に観測点 x に到達するために、原点 O を出発しなければならない時刻を表している。 (5)式および(6)式を(1)式に代入し、a/r に関して1次までを考慮し、それ以上を無視すると、 と書かれる。
電磁ポテンシャルの電気双極子近似 ここで、右辺第1項の は、領域 V 内に存在する全電荷量を表しており、伝導電流が V 内のみに存在することから、V の内外への電流の出入が無いため、時間 t に依存しない一定値となる。 次に、右辺第2項の は、広義の電気双極子モーメントである。 また、右辺第3項では である。 (9), (10), (11)式を用いると(8)式は、 と表される。 ここで、 である。
電磁ポテンシャルの電気双極子近似 このように近似されたスカラー・ポテンシャルを、電気双極子近似におけるスカラー・ポテンシャルという。 次に、(2)式のベクトル・ポテンシャルは R を r に置き換えることにより、 と近似される。 ⇒ この式の導出は、各自でやってみて下さい。 このような電磁ポテンシャルに対する近似式(12), (13)を用いて、これを時間変数 t および空間変数 x で微分することにより、電磁場 E(x, t)および B(x, t)が求まる。 (12)式の右辺第1項は、点電荷 Qeのつくる静電場を与えるだけであるから、以下ではこの項からの寄与は考慮する必要はない。まず第2項を x について微分すると、 となる。
電磁ポテンシャルの電気双極子近似 従って(14)式から、 である。 次に(12)式の右辺第3項を x について微分すると、 となるから、 また(13)式より、
電磁ポテンシャルの電気双極子近似 そこで(15), (17), (18)式を以下の式に代入すると 電場 E(x, t)は、 で与えられる。 一方、磁場 B(x, t)は次のように計算される。
電磁ポテンシャルの電気双極子近似 電気双極子近似における電磁場(19), (20)式とを、 および に比例する部分に分割し、それぞれの部分の電磁場を E(0)と B(0), E(1)と B(1)および E(2)と B(2)で表すと、それらは次式のように書き表される。
電磁場の物理的意味 ここで、これらの電磁場の物理的意味を考える。 電場 E(0)(x, t)は、電気双極子 p(t0)が観測点 x につくる電場 (何故なら、教科書 p.23 における電気双極子の作る静電場の式(2.45)から容易に類推可能) 電場 E(1)(x, t)は、電荷分布の移動によってつくられる電気双極子にもとづく電場 磁場 B(1)(x, t)は と書き直されるので、定常電流に対するBio-Savart の法則の観測点を遠方においたときの近似式に他ならない。 電場 E(2)(x, t) および磁場 B(2)(x, t)が、遠方まで伝搬可能な電磁波
電磁場の物理的意味 今、電気双極子 p(t)が周期 T で振動しているとすると、それに伴って発生する電磁波の波長は cT で与えられる。この時、(21)~(26)式の電磁場はだいたい次の程度の大きさをもつことが分かる。 静電磁場 誘導電磁場 放射電磁場 今、r≫cT の条件を満たしているとき、つまり、原点 O から観測点までの距離 r が電磁波の波長 cT に比較して非常に大きいときを考える。このような領域を波動域(wave zone)といい、この領域でも残るのは放射電磁場だけであることが分かる。