2012年度冬学期「刑事訴訟法」14 証拠の関連性.

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2012年度冬学期「刑事訴訟法」14 証拠の関連性

ポイント ○証拠能力の有無 ・中心的要因である「関連性」とは何か ○類似行為(前科・前歴)による立証の許否 ○科学的証拠の証拠能力   ・中心的要因である「関連性」とは何か ○類似行為(前科・前歴)による立証の許否 ○科学的証拠の証拠能力   ・特別の基準に服するか?何故か?   ・基準の内容は?

*証拠調べの対象とされた証拠が証拠能力を有しないことが後に判明 証拠能力と証明力 ○証拠能力 ・・・・・証拠の採否の判断  ・証拠調べの対象とされ得ること(許容性)  ・事実認定の根拠としての証拠とされ得ること  *証拠調べの対象とされた証拠が証拠能力を有しないことが後に判明 ⇒証拠排除の決定(規則205条の5第2項,207条) ○証明力(証拠価値)    ・・・・・裁判所(裁判官・裁判員)の実質的な評価の対象  個々の証拠が,実質的に,証明すべき事実の存在・不存在を     推認させる力(ないしその程度)       *証人等の供述=証人等の信用性+供述内容の証明力

証拠能力の制限の理由 1.証拠法に内在的な制限 ⇒正しい事実認定の確保を目的 ①類型的に証明力が欠如し,または乏しいことを理由とする 1.証拠法に内在的な制限 ⇒正しい事実認定の確保を目的  ①類型的に証明力が欠如し,または乏しいことを理由とする      もの(狭義の関連性)       *次の②と区別して「自然的(論理的)関連性」と呼ばれることもある。   Federal Rules of Evidence   Rule 401.  Definition of “Relevant Evidence”   “Relevant evidence” means evidence having any tendency to            make the existence of any fact that             is of consequence to the determination of the action more probable or less probable than it would be without the evidence. 青字=狭義のrelevancy(関連性)           赤字=materiality 広義のrelevancy

②誤った推認を生じさせる危険が強いことを理由とするもの       *①と区別して「法律的関連性」などとも呼ばれることがある。  Federal Rules of Evidence  Rule 403.  Exclusion of Relevant Evidence on Grounds of   Prejudice, Confusion, ・・・ “Although relevant, evidence may be excluded if its probative value is substantially outweighed by the danger of unfair prejudice, confusion of the issues, or misleading the jury,・・・. ⇒実際に証拠能力が制限される場合は,①と②の要因が相関的に働いている     ことが多い。現行法上の証拠能力制限がいずれに属するかを議論することは 無益

⇒当の証拠の使用による事実解明の利益に優越する他の 利益の確保のためにその使用を認めないこと 2.証拠法に外在的な制限  ⇒当の証拠の使用による事実解明の利益に優越する他の      利益の確保のためにその使用を認めないこと            *「証拠禁止」などとも呼ばれるこもがある。       ex. 違法収集証拠の排除    証言拒絶権

現行法における証拠能力の制限 ○自白 ○伝聞証拠 ○違法収集証拠 ・・・・・憲法38条1項,刑訴法319条1項   ・・・・・憲法38条1項,刑訴法319条1項 ○伝聞証拠   ・・・刑訴法320条    憲法37条2項(証人審問権)     例外=刑訴法321~328条 ○違法収集証拠   ・・・法解釈(百選94判例)

証拠の関連性 ○条理ないし解釈による制限(証拠法内在的な制限) ex. 風評 悪性格(素行,同種前科・前歴etc.) ○何故か?          〔同種前科等〕⇒〔その種の犯罪を行う傾向・性格の人〕           ⇒〔当該犯罪を行った〕と推認 ・           類型的証明力 (正しい推認の可能性)< 誤った推認のおそれ   ○例外の余地 ・・・最(二)判平成24年9月7日〔HPに掲載〕          ・特殊な手口の犯行の前科・前歴     ⇒悪性格を経由せず or  犯人性について推認させる力大  〔特殊な手口〕=〔知りあるいは用いる人は稀〕   ⇒〔被告人は知っていた,用いたことあり〕⇒〔被告人=犯人〕        ・時間接着・場所近接の類似犯行⇒犯人性?       ・類似犯罪の前科・前歴    ⇒故意ないし認識の存在を推認させる場合  (犯人性は他の証拠により証明)         

科学的証拠の証拠能力 ○他の証拠と区別して特別の要件を課すべき理由はあるか? 従来の裁判例・・・他の証拠と基本的には同質の関連性ないし経験則  従来の裁判例・・・他の証拠と基本的には同質の関連性ないし経験則          の問題。関連性および証拠評価の判断において実質的に配慮。    科学的証拠の特殊性    ・内容についての実質的評価は専門的学識経験が必要なため,裁      判官が独自に行うのは困難。    ・「科学」の名の故の過信の危険。      ⇒まず,外形的に信頼性のある類のものかどうかで証拠としての採      否を判定(証拠能力),そのうえで,専門家の意見をも踏まえて証      拠評価。

◇一般的承認のテスト・・・Fry判決(1923年) ○アメリカの判例法の変遷    ◇一般的承認のテスト・・・Fry判決(1923年)     「当の検査およびそれが立脚する法則ないし仮説が関連の専門      分野において一般的承認を得ていること」    ◇関連性のテスト・・・Federal Rules of Evidence    ◇信頼性のテスト・・・Daubert判決(1993年)     次のような諸要因を考慮して,実質的に信頼性のあるものであると         確認される必要があり,かつそれで足りる。          ・基礎にある理論・方法が科学的に有効か           ・その理論・方法が等の事実に適切に適用され得るか           ・その理論や技能がテスト可能か           ・その理論や技法が他の専門家の吟味を受け,又は公刊されているか           ・誤謬率           ・一般的承認の有無

○アメリカとわが国との事情の異同⇒取扱いに差異? ・陪審制度と職業裁判官制度 ⇒裁判員制度実施後は異なるか?  ・陪審制度と職業裁判官制度      ⇒裁判員制度実施後は異なるか?      ・公判期日間における検討の余裕の有無      ⇒連日的開廷の要請により変化? ○厳密な意味での「科学的」証拠とはいえないが,通常の五感     の作用を超える手段・方法による認知・分析に当たる場合    にも妥当するか?       ex. 警察犬による臭気選別,筆跡鑑定等    ・検査・分析を支える理論⇒特殊な経験則?    ・信頼性確保のため,実施者,資料の扱い方,実施方法等につき      一定の条件

百選67事件(DNA型鑑定) ○原審 ○最高裁 ・通常の五感の認識を超える手段,方法を用いて認知・分析した結果 ・基準   ・通常の五感の認識を超える手段,方法を用いて認知・分析した結果   ・基準     ①認知・分析の基礎原理に科学的根拠があること     ②その手段・方法が妥当で,定型的に信頼性のあるものであること ○最高裁    ・DNA型鑑定の科学的原理が理論的正確性を有し    ・具体的な実施方法も,その技術を習得した者により,      科学的に信頼される方法で行われた    ⇒証拠として用いることが許されるとしたのは相当

参考文献 ①秋吉淳一郎「同種前科による事実認定」 刑事訴訟法判例百選(第8版)135頁以下 ②辻裕教「同種前科による事実認定」     刑事訴訟法判例百選(第8版)135頁以下 ②辻裕教「同種前科による事実認定」   刑事訴訟法判例百選(第9版)」140頁以下 ③井上正仁「科学的証拠の証拠能力(1),(2)」 研修560号3頁以下,562号6頁以下