アウトカムを指標とし、ベンチマーク手法を用いた 「周産期母子医療センターネットワーク」の構築に関する研究 平成18年度厚生労働科学研究費補助金 (子ども家庭総合研究事業) アウトカムを指標とし、ベンチマーク手法を用いた 質の高いケアを提供する 「周産期母子医療センターネットワーク」の構築に関する研究 A multicenter benchmark research on neonatal outcome in Japan. 主任研究者 藤村正哲 大阪府立母子保健総合医療センター 分担研究者 楠田 聡 東京女子医科大学周産母子医療センター 大野 勉 埼玉県立小児医療センター 中村 友彦 長野こども病院 三科 潤 東京女子医科大学周産母子医療センター 上谷 良行 兵庫県立こども病院 田村 正徳 埼玉医科大学総合医療センター
母子保健法 第2章 母子保健の向上に関する措置(第9条~第21条の4) (医療施設の整備) 第20条の2 第2章 母子保健の向上に関する措置(第9条~第21条の4) (医療施設の整備) 第20条の2 国及び地方公共団体は、妊産婦並びに乳児及び幼児の心身の特性に応じた高度の医療が適切に提供されるよう、必要な医療施設の整備に努めなければならない。 (調査研究の推進) 第20条の3 国は、乳児及び幼児の障害の予防のための研究その他母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進のため必要な調査研究の推進に努めなければならない。
○周産期医療対策整備事業の実施について(平成8年5月10日) (各都道府県知事あて厚生省児童家庭局長通知) 周産期医療対策事業実施要綱 周産期医療システムの整備 Ⅰ.周産期医療協議会の設置 構成 保健医療関係機関・団体の代表 地域の中核の周産期医療施設で周産期医療に携わる医師 学識経験者 都道府県・市町村の代表など Ⅱ.総合周産期母子医療センターの指定 (3次医療圏に一カ所=都道府県単位一カ所) Ⅲ.地域周産期医療センターの認定 (2次医療圏に一カ所以上) Ⅳ.周産期医療システムの確立のための調査分析 周産期医療システムにかかわる医療施設 マンパワーの状況 医療機関の連携状況 周産期救急医療の実施状況 周産期搬送体制の問題点の検討と搬送体制の確立 周産期ネットワークの確立 Ⅴ.周産期医療関係者の研修
平成17年(2005)人口動態調査 出生体重1500g未満の新生児 出生総数 8,197人 死亡総数 914人 死亡率 11.2%
超低出生体重児の成績の向上 死亡率の改善 % % 在胎期間 Mortality 死亡率 大阪府立母子保健総合医療センター新生児科(院内出生) 超低出生体重児の死亡率は1980年代に、まず24・25週のグループが改善してきました。さらに1990年代に入って24週未満の超早産児の救命率も50%を下回るようになってきました。 大阪府立母子保健総合医療センター新生児科(院内出生)
施設ランク別にみた脳性麻痺、未熟網膜症 1995年出生<1000g児の3歳時予後から 基幹的な施設が良好な結果をもたらす かって石塚先生を中心にした新生児委員会全国調査、そしてこの図のように厚生科学研究中村班の調査で明らかにされてきたことは、医療機関をその規模と体制から3つに分類したとき、整備された大規模NICUの成績は他に優るという結果です。基幹的な施設が良好な結果をもたらすということは諸外国からも報告されており、新生児集中治療の成績を改善するためには、基幹的施設の充実の必要性を明らかにしています。 Aランク:超低出生体重児年間入院20例以上、n = 275 Bランク:10例〜19例、n = 277 Cランク:10例未満、n = 205 厚生省研究班全国調査, 1999
ハイリスク新生児医療の戦略 1. ハイリスク新生児を新生児ICUへ集約する 2. 個々の新生児ICUの治療成績を向上させる その基礎データを得るため 1. 新生児ICUへの集約率をモニターする 2. 新生児ICU退院児のアウトカムをモニターする その実現に向けて、医療機関と行政は 1. 新生児医療の地域ネットワーク整備 2. 新生児ICU医療機関整備
28 16 27 38 21 総合周産期母子医療センター指定順(1〜40) 25 21 3 36 2 32 15 4 24 34 35 13 39 40 18 30 1 32 6 27 9 39 32 13 12 17 8 39 22 12 36 39 33 14 20 23 37 10 10 26 29 7 31 33 31 21 39
アウトカムを指標とし、ベンチマーク手法を用いた質の高いケアを提供する 「周産期母子医療センターネットワーク」の構築に関する研究 藤村 楠田 田村 大野、中村 三科、上谷 全国のセンターが参加(N=61) 全ハイリスク児の33%
データベース構築 ベンチマーク 楠田、加部 入院数と死亡率:2003年と2004年
データベース構築 ベンチマーク 楠田 施設別症例数<1500g) 160 2003年 140 症例数 120 100 80 60 50 40 20 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 施設番号 120 2004年 100 80 60 50 40 20 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50
データベース構築 ベンチマーク 楠田 施設別死亡退院率(<1500g) 2003 施設番号 2004
2003年と2004年の施設別死亡率の比較 25 20 死亡退院率(%) 15 10 5 2003年 2004年
出生体重別死亡率(<1500g) 2003年と2004年の比較 % Died Birth weight (g) 100 90 80 データベース構築 ベンチマーク 楠田 100 2003年と2004年の比較 90 80 70 60 2003 % Died 50 2004 40 30 20 10 -400g 401- 501- 601- 701- 801- 901- 1001- 1101- 1201- 1301- 1401- All infants 500g 600g 700g 800g 900g 1000g 1100g 1200g 1300g 1400g 1500g Birth weight (g)
青森県立中央病院が青森県全体に占める割合の推移
階層別死亡率と均てん化死亡抑止数 データベース構築 ベンチマーク 楠田、加部 死亡数(人) 死亡率(%) 均てん化 抑止死亡数(人) 2003 2004 死亡率上位25%で均てん化 18 26 2.6 4.1 170 149 死亡率上位50%で均てん化 66 87 5.6 5.8 120 111 平均の死亡率で 232 260 10.8 9.4 51
データベース構築 ベンチマーク 楠田 主要疾患・治療法の推移(<1500g)
母体ステロイド投与 データベース構築 ベンチマーク 楠田 100 90 平均:41% 80 70 60 50 40 30 20 10 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 100 90 平均:35% 80 70 60 50 40 30 20 10 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50
慢性肺疾患(重症) 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 100% 90% 80% 70% データベース構築 ベンチマーク 楠田 慢性肺疾患(重症) 100% 90% 平均28% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 平均17%
Clinical Indicator 死亡率ランクと疾患罹患率 データベース構築 ベンチマーク 楠田、加部 Clinical Indicator 死亡率ランクと疾患罹患率 死亡率ランク
国際比較 本研究班データ vs CPQCC-2005 施設数 入院数 死亡数 死亡率 JAPAN (2004) 50 2777 260 データベース構築 ベンチマーク 楠田、加部 国際比較 本研究班データ vs CPQCC-2005 施設数 入院数 死亡数 死亡率 JAPAN (2004) 50 2777 260 9.4 CPQCC (2005) 120 5727 599 10.5 California Perinatal Quality Care Collaboration
国際比較 本研究班データ vs CPQCC-2005 国際比較:v.s. CPQCC2005 データベース構築 ベンチマーク 楠田、加部 国際比較 本研究班データ vs CPQCC-2005 国際比較:v.s. CPQCC2005 California Perinatal Quality Care Collaboration
退院時修正在胎期間 (生存退院) 60 50 40 30 20 10 2003年 修正在胎期間 97.4±57.0 days n=1 912 退院時修正在胎期間 (生存退院) n=1 912 60 50 修正在胎期間 40 30 97.4±57.0 days 20 2003年 10 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36
<1500g死亡率と分娩数 死亡率 分娩数 R=-0.304, P=0.045 分娩数 NS:小児科病床数、NICU病床数、IPPV数、NICU医師数 総合周産期母子医療センターネットワーク研究班
<1500g死亡率とNICU夜勤看護師数 死亡率 NICU夜勤看護師数 r=-0.356, P=0.024 NS:小児科病床数、NICU病床数、IPPV数、NICU医師数 総合周産期母子医療センターネットワーク研究班
小児科医・産科医・助産師・看護師向けの 新生児心肺蘇生法研修プログラムの構築 田村 小児科医・産科医・助産師・看護師向けの 新生児心肺蘇生法研修プログラムの構築 1.EBMを踏まえた標準的な新生児心肺蘇生法のガイドラインとマ ニュアルの作成 2.適切な薬剤や蘇生器具・装置の選定と使用手順と評価に関する研究 3. 研修用教材の作成とその評価 小児科医・産科医・助産師・看護師向けの研修プログラムの開発とその評価 5. 研修講習会の実践と評価 6. 全国的な研修システムの構築とその評価
Neonatal Research Network 新生児臨床研究 ネットワーク・NRN 藤村 Neonatal Research Network 新生児臨床研究ネットワーク
統一フォローアップ実施施設の増加 実施可能 三科 フォロ−アップ体制 の構築 % 回答無し+新規指定施設 実施困難 実施見込み 100 回答無し+新規指定施設 90 80 70 実施困難 実施見込み 60 50 40 実施可能 30 実施可能+見込み 20 10 2004年 38施設 2005年 48施設 2006年1月 48施設 2006年7月 54施設
大阪府立母子保健総合医療センター学齢期検診受診者 発達予後と周産期因子の解析 大阪府立母子保健総合医療センター学齢期検診受診者 対象: 1981-1990 年に、28 wks未満 又は 1000 gm 未満で本院で生まれ、 7-9歳 となっている163人の学童 知能指数 (IQ)の測定: WISC-R 統計解析: ステップワイズ回帰分析 (SPSS) 解析した周産期因子 妊娠・分娩: 経妊・経産回数、破水-分娩時間、 切迫早産に対するbetamethasone総投与量、胎児仮死、帝切/経膣、 多胎、出生順位、胎位、胎盤病理組織の絨毛膜羊膜炎、院内・院外 新生児: 男・女、 在胎期間、 出生体重、 頭囲、胎児発育、 1分・5分Apgar 点数、 自発呼吸の確立時間、 蘇生法、 脳室内出血(grade)、 肺出血、 壊死性腸炎 人工換気日数、気管支肺異形成症、 Wilson-Mikity症候群、 その他の慢性肺疾患、 ここで超低出生体重児の周産期因子が、学齢期検診のWISC-R総合点とどのような関連を示すのか解析してみます。統計解析はステップワイズ回帰分析 (SPSS)で解析した周産期因子は妊娠分娩の因子、新生児期の因子です。
いずれも周産期の医療において対策をとることが可能な因子である 学齢期の知能に関与する周産期因子の重回帰分析 最も寄与する因子 ステップワイズ法による これらの周産期因子をステップワイズ法による重回帰分析でまとめますと、IQを増加させる因子としてもっとも重要なのは人工換気療法の日数をできるだけ短くすること、出生時の頭囲が大きいこと、5分Apgar scoreが大きいことが選択されました。いずれも周産期の医療において対策をとることが可能な因子であり、今後の超低出生体重児の予後を改善するために取り組むべき課題として、具体的な対策が求められると考えられます。 いずれも周産期の医療において対策をとることが可能な因子である
大脳白質面積と知能指数 (超低出生体重児・7-9歳) 知能指数 N=135 R=0.475, p<0.0001 1984-92年出生の7-12歳 N=135 住田 et al. 未熟児新生児誌1996;8:141 (超低出生体重児・7-9歳) 高い相関がみられる R=0.475, p<0.0001 知能指数 当科の住田らは学齢期検診受診者135名の脳MRIにおいて大脳白質の面積に注目しました。横軸に大脳白質/半球面積比〈%〉を、縦軸にIQをとりますと、高い相関係数のもとに高度に有意の正相関が示されました。この子ども達の脳白質容積が学齢期までどういう発育経過をとってきたのかは今後の検討課題ですが、NICUを退院する頃には決定されていた可能性があります。 大脳白質/半球面積比〈%〉 大阪府立母子保健総合医療センター 新生児科
結論 総合周産期母子医療センターの新生児部門(61)が参加する研究 ネットワークを組織して、データベースの構築、蘇生研修の実施、 共通フォローアップ・プロトコールの実施、多施設臨床試験の実施 を進めた。 2.極低出生体重児(<1500g) の生存率改善、施設間差の改善、臨床指標 改善(重篤疾患発症率等)等の成果があった。 3.データベースの構築・活用とベンチマークによる改善運動はアウトカ ム指標の改善に有効である。 4.一定基準(3床に看護師一人)の下でも、大規模な施設ほど死亡率は 低いことを示した。 5.恒久的な「総合周産期母子医療センター・ネットワーク」の設立を勧 告する。