デジタル情報学概論 2009年9月24日 第1回資料 担当 重定 如彦
授業の概要 コンピュータはすべての情報をデジタル情報として扱います。近年、騒がれているITはInformation Technology、すなわち(デジタル)情報技術のことです。IT社会においては、今後ますます以下のような知識が重要になってくると考えられます デジタル情報を使えば何ができるのか? デジタル情報を使った様々なシステムの仕組み デジタル情報を利用する際に気をつけなければならない事は何か?
授業の予定と教科書 デジタルとは何か? ITを支える様々なデジタル基礎技術 デジタルと社会・生活・文化 デジタルコンテンツ デジタルとビジネス 教科書 「デジタル情報学概論」 奥川峻史 桜井 哲真 著 共立出版
成績と評価 成績は「レポート」「期末テスト」の総合評価 欠席は3回までとします レポートや、授業に関する意見は、 電子メールで sigesada@hosei.ac.jp 宛に提出してください。
IT社会とデジタル情報技術 今日のIT社会では、インターネット、カーナビ、天気予報、 電子商取引など様々なITを使った技術を身近に利用できます これらのIT社会の技術はすべて、デジタル情報技術に支えられています。デジタル情報技術の中で特に重要な技術には 以下のようなものがあります 情報の符号化 どのようにして、身の回りの情報をデジタル情報に変換するか 正確で高速なデジタル情報の通信 デジタル化した情報をどうやって正確に、なおかつ高速に離れた 場所に伝達するか
デジタルとは何か? デジタル [digital] 物質・システムなどの状態を、離散的な数字・文字などの信号によって表現すること。ディジタル (大字林より) わかりやすく言うと、世の中のありとあらゆるものを「数字で表す」ということです。デジタルで表されたもののことを「デジタル情報」と呼びます
アナログ デジタルに対し、アナログという言葉があります デジタルに対し、アナログという言葉があります アナログ [analog] 物質・システムなどの状態を連続的に変化する 物理量によって表現すること (大字林より) 自然に存在する身の回りにあるものの状態はほとんどすべてアナログです。例えば、鉛筆の長さ、 リンゴの色などは「アナログ情報」です
デジタルとアナログ デジタルとアナログは、「整数」と「実数」の関係に似ています 整数、デジタル 1,2,3のように、飛び飛びの値をとります。このように連続でない値をとるもののことを「離散的」であると呼びます 実数、アナログ 実数やアナログは整数のように、飛び飛びの値ではあり ません。このようなもののことを「連続的」であると呼びます 整数 実数
アナログ情報の特徴(その1) 正確な値を測定することができない 例:鉛筆の長さを正確に測定することは不可能 定規で測った場合、mmまでしか測定不能 たとえ、電子顕微鏡で測ったとしても電子顕微鏡で 判別できる範囲の長さまでしか測定できない 正確にコピーすることができない 全く同じものを作ることは不可能 ある鉛筆と全く同じ長さの鉛筆を作ることは、そもそも 元の鉛筆の正確な長さが測定不能なので不可能 ビデオを何度もダビングすると画像が汚くなる
アナログ情報の特徴(その2) 情報の伝達に向いていない 正確にコピーすることができないということは、アナログ 情報を使って正確に情報を伝達することは困難 伝言ゲームは大抵の場合うまくいかない 噂話はどんどん内容が変わっていく 昔話などの伝承が、地域によって異なる 情報のコピーや伝達の際に、元の情報と異なった情報が 伝達されることを「情報の劣化」と呼ぶ
符号化 コンピュータで情報を扱うためには、アナログ情報をデジタル情報に変換する必要があります これを符号化(コード化、AD変換(Analog to Digital Conversion)と呼ぶ場合もある)と呼びます コンピュータがアナログ情報を扱えない理由 アナログ情報を扱うためには無限のデータ(メモリ)が必要 そもそも正確な測定が不可能なものをコンピュータの中で 正確に表現することはできない
符号化と誤差 符号化では、アナログ情報を何らかの方法で、数字(=デジタル情報)に置き換えます。この時、多くの場合、元のアナログ情報と変換後のデジタル情報の間に誤差が生じます 例:鉛筆の長さを0.01cmの単位まで測定し四捨五入する アナログ情報 デジタル情報 12.345・・・cm 12.3cm この場合、本来の鉛筆の長さとデジタル化された鉛筆の 長さを比べると最大0.05cmの誤差が発生します 符号化
符号化と精度 符号化を行う際には、変換時の精度が重要になります タンスの幅を例に挙げてみましょう 符号化を行う際には、変換時の精度が重要になります タンスの幅を例に挙げてみましょう 精度が高すぎる場合 デジタル情報のデータのサイズ(量)が大きくなりすぎる タンスの幅を123.45678cmのように表記しても無駄でしかない 精度が低すぎる場合 誤差が大きくなり、元のアナログ情報を正しく再現できなくなる 約123.45cmのタンスの幅を10cmの位で四捨五入し、100cmと表記すると、元のサイズ後23cmも誤差が発生してしまい、使い物にならなくなる 実際には? 適切な精度を見極めることが重要 タンスの場合、0.1mmの単位の情報が必要な場合はほとんどないので、0.1mmの位を四捨五入し、123.4cmとすれば充分である
符号化の例(文字の符号化) A B C D E F G H I J 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 文字は文字コード表という表を使って数字に変換します 文字コード表では、一つ一つの文字に数字が割り当てられており、その数字を使ってコンピュータは文字を表します ASCII文字コード表を使って「HEAD」を符号化した例: ASCII文字コード表の一部 HEAD 72 69 65 68 A B C D E F G H I J 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 符号化
文字の変換と精度 一見、文字の変換に精度はないように思えるかもしれませんが、文字の変換にも様々な精度があります 一見、文字の変換に精度はないように思えるかもしれませんが、文字の変換にも様々な精度があります 日本語の文章をローマ字に変換する 日本語の文章をひらがな、カタカナに変換する 日本語の文章を漢字かな混じりの文章に変換する 変換の際に、フォント(明朝体、草書体、etc.)の 情報や、文字の大きさ、色などの情報含める 小 精度 大
符号化の例(画像の符号化その1) 画像を符号化する場合、点と色の2種類の情報を符号化します 点の符号化 デジタル画像では、画像を色のついた細かい点の集まりとみなします例えば、最近のパソコンのディスプレイの多くは横1024、縦768 以上の点で構成されているものが多いようです 点を細かくすればするほど精度が上がります 下の右の画像は、左の画像の縦横の点の数を1/3にしたものです 当然点の数が多いので、左の図のほうが鮮明な画像になりますが、そのかわり、画像データのサイズは9倍になります
符号化の例(画像の符号化その2) 色の符号化 画像のそれぞれの点の色は光の3原色である「赤」と「緑」と「青」の強さで表します。それぞれの色の強さは数字で表されます。精度は色の強さを細かく表現すればするほどあがります 最近のデジタル画像の多くは、それぞれの色の強さを0~255の256段階で表します。一つの点につき256*256*256=約1600万色の色を表現することが可能です 下の左の画像は、一つの点の色を1600万色(24ビット)で、右の画像は色16色(4ビット)で表したものです。左の図のほうが色が鮮明な画像になりますが、そのかわり、画像データのサイズは左のほうが6倍になります
その他の符号化の例 音の符号化 音は波で表すことができます。音の符号化では、波の強さを数字で表します。 動画の符号化 コンピュータの動画は、パラパラマンガの要領で画像を次々に表示するものです。従って、動画の符号化は、動画を複数のデジタル画像に変換するという作業を行います。音声付の動画の場合、画像だけでなく、音の符号化も同時に行います
デジタル情報の利点(その1) コピーしても情報が劣化しない デジタル情報は、アナログ情報と異なり、情報がはっきりとした数字で表されます。従って、デジタル情報は、正確に情報を 複製することが可能です。 アナログ情報は、コピーするたびにどんどん情報が劣化していきますが、符号化を行えば、いくらコピーしてもデジタル 情報は劣化しません。ただしコピーしたときに劣化が起きない為の工夫が必要。アナログ情報にはそのような工夫はない。 もちろん、符号化の際に誤差が発生しますが、大抵の場合、適切な精度で符号化を行えば誤差は問題になりません
コピーしても劣化しない例 コンピュータのファイル コンピュータでは、「文章データ」、「画像データ」、「音データ」、「コンピュータソフト」など様々なものがファイルに保存されますが、このファイルは非常に簡単な操作でいくらでもコピーすることが可能です。そして、コピーしたファイルは元のファイルと寸分たがわない性質を持ちます 音楽CDやDVD 音楽CDやDVDでは、音楽データや動画データがデジタルデータで保存されています。従ってCDやDVDはビデオテープと異なりいくらコピーしても情報が劣化することはありません
デジタル情報の利点(その2) 情報を正確に伝達するのに適している 情報を正確にコピーすることができるということは、情報の伝達を正確に行うことができるという事です 情報の正確で高速な伝達は大昔からの人類の夢の一つでした。昔は遠く離れた場所同士で情報をやりとりする際に、狼煙(のろし)などが使われていましたが、煙の色や本数で情報をやりとりした狼煙も実はデジタル情報の一種です 無線や電気、そしてコンピュータの発明によって、デジタル情報をより正確に、早く伝達することができるようになりました
情報の伝達の例 インターネット みなさんにとって、高速なデジタル情報の伝達の最も身近な例がインターネットのウェブページや電子メールでしょう みなさんにとって、高速なデジタル情報の伝達の最も身近な例がインターネットのウェブページや電子メールでしょう ウェブページを見た時(注:電子メールの場合も同様です)には、ウェブページのデジタル情報をパソコンに送り届ける為に、膨大な数のコピー操作が行われます。インターネットが正しく動作するのは、情報が劣化しないというデジタル情報の性質のおかげなのです インターネット デジタル情報(ウェブページや電子メール)のコピー
デジタル情報の欠点 不正コピーと著作権侵害 コピーがいくらでも可能であるというデジタル情報の利点は、 逆に欠点となる場合があります コンピュータソフトや、音楽情報の不正コピーが近年問題になっていますが、これはデジタル情報が簡単に、正確に、いくらでもコピーすることができるという性質のためです 不正コピーや著作権侵害がまかり通ってしまうと、クリエイターの制作意欲や、生活が脅かされてしまうため、法律や様々な工夫で対策がとられています。不正コピーの実際の損害額は数兆円にも及ぶと言われています
授業の資料について 授業で使用したこのPowerPointの資料はなるべく授業の週の頭までに、私のホームページに置きます。予習がしたい人や、資料が欲しい人は以下のURLへ行って下さい。 http://www.edu.i.hosei.ac.jp/~sigesada/ なお、印刷する場合は、そのまま行うと紙が大量に消費されてしまうので、学校のプリンタを使って印刷する場合は、なるべく印刷の設定で「印刷対象」を「配布資料」にし、 「1ページあたりのスライド数」を「6枚」程度にするように設定をおこなってから印刷を行うようにしてください