加速器と放射線科学 FFAGの応用へ向けて 1. 加速器の利用 1) 工業利用 2) 医療 3) 環境 4) 農業 2. 規制の動き ‐加速器の利用と最近の規制の動き‐ 柴田徳思 高エネルギー加速器研究機構 1. 加速器の利用 1) 工業利用 2) 医療 3) 環境 4) 農業 2. 規制の動き
1. 加速器の利用 工業利用 電子線 材料の改質、食品照射、医療器具の滅菌、 X線ラジオグラフィ、非破壊検査 放射光 物性の研究、たんぱく質の構造解析、微量元素分析 中性子 中性子ラジオグラフィー、物性研究、生物試料解析 新機能材料研究 イオンビーム マイクロビームによる元素分析 微細ビームによるナノテクノロジー
工業利用に用いられる電子加速器 ダイナミトロン 5MeV 200kW(日本電子照射サービス) 3MeV 25mA(原研高崎) リニアック 10MeV 25kW(ホギメディカル)滅菌
材料の改質
・半導体特性改善 ・PTFE分解 ・PEフィルム、シート等架橋 ・超高温耐熱炭化ケイ素繊維 ・その他 高分子素材改質(架橋、共重合)
滅菌 照射設備 照射室 照射カート 滅菌用照射(日本電子照射サービス)
滅菌
ラジオグラフィー
非破壊検査 ライナックによる圧力容器の検査 コンクリート壁内部の検査
開発項目 生薬殺菌、医薬品滅菌、試薬、原料の滅菌 飼料、食材、香辛料、培地、土壌の殺菌 害虫処理・不妊化(検疫関係品) 有害物質処理、モノマー溶出防止処理 特殊機能素材、ガラス・宝石の着色 滅菌バリデーション エンドトキシン、ウイルス不活性化、その他 異常プリオン不活性化研究 環境改善 ダイオキシン、PCB等有害化学物分解 河川、湖沼、貯留槽等の汚泥、水の殺菌 河川、湖沼、貯留槽等の汚泥降処理 埋め立て用土壌等の殺菌 下水、排水のBOD、COD等の低滅、殺菌 廃棄物の滅菌 特殊機能フィルターの開発(グラフト重合他) 環境対策プラント開発相談 その他
医療利用 PET 現在(2003年4月) 46施設が実施、急速に増えている X線診断・治療 古くから多くの病院で行われている 粒子線治療 世界で約20施設で、治療患者総数は35,000人
医療利用 PET検査 東北大におけるサイクロトロン核医学
PET診断によるアルツハイマー MR検査では異常がなし。PET検査その結果が写真で、 脳の側面から上方にかけ薬の集積が低い部分が 見られる(矢印)。
PETによる転移がんの診断
PETによる診断 大腸がんの手術後 経過観察中X線CTでは病変が発見できませんでした。 PETでは下腹部の筋肉内に強い異常集積が認められ、 筋肉内に直径1cm弱の淡い影が認められますが、 ちょうど手術で切開した部分であり、 転移と診断することは非常に難しいケースでした。
粒子線治療 世界の粒子線がん治療施設 静岡がんセンター
環境利用 電子ビーム 脱硫・脱硝、ダイオキシンの無害化 環境ホルモンの分解・除去
電子ビームによる 脱硫・脱硝、ダイオキシンの無害化 加速器及び反応器
農業利用 食品照射 低線量照射(1kGy以下) 発芽抑制(0.05~0.15 kGy) ジャガイモ、たまねぎ、にんじん 害虫・寄生虫の除去(0.15~0.5 kGy) 穀類、豆、生鮮果実、乾燥果実・魚・肉 成熟の遅延(0.5~1 kGy) 生鮮果実、生鮮野菜 中線量照射(1~10 kGy) ライフの延長(1~3 kGy) 生鮮魚、イチゴ 腐敗菌・病原菌の殺菌(1~7 kGy) 生鮮水産物・肉、冷凍肉 食品の特性改善(2~7 kGy) ブドウのジュース収率向上 乾燥野菜の調理時間短縮 高線量殺菌(10~50 kGy) 滅菌(30~50 kGy) 肉、水産物、加工食品、病人食 食品素材や添加物の殺菌(1-~50 kGy) 香辛料、酵素製剤
加速器利用を進めるために 電子加速器の小型化 工業、医療、環境、農業の全てで用いられ ている。 粒子線治療装置の小型化 粒子線治療で小型化ができると飛躍的 に伸びると思われる。 放射光、中性子発生装置の小型化 現在、利用法について開発段階にある。 小型化が可能であれば各分野での利用が すすむと考えられる。
2. 規制の動き 放射化物 これまで、法令では定義されていなかった。 今後、放射化物の管理が求められる。 放射化物保管施設、放射化物使用施設 これまで、法令では定義されていなかった。 今後、放射化物の管理が求められる。 放射化物保管施設、放射化物使用施設 内での保管、使用が必要 1MV以下のX線の規制 これまで1MV以下のX線は放射線障害防止法 による規制は受けていない。 IAEAでは5KeV以上を提言している。 PETに対する規制 利用されているのは、11C, 13N,15O,18F で、3日もすると消滅する。 PET薬剤で汚染された物は放射性廃棄物 としての管理を要さない。 経済特区の要求で動物のPET診断の要求 が出されている。
小型加速器開発の戦略 現状 ○小型加速器の利用は徐々に広がっているが さらなる産業利用開発が必要 ○開発が民間ベースで行われる状況にはなく さらなる産業利用開発が必要 ○開発が民間ベースで行われる状況にはなく 個々のグループで開発が行われている。 ○医療用ライナックなど外国勢に取られて しまう恐れ大 望ましい進め方 ○利用目的に最適化された加速器開発 ○開発機関ごとに目的を定めて開発 ○競争的資金の創設 ○利用に必要な技術開発 ○規制の合理化