日本物理学会年次大会・総合パネル討論「現代プラズマ科学の 最前線:学際連携によるプラズマ理工学のさらなる展開」

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日本物理学会年次大会・総合パネル討論「現代プラズマ科学の 最前線:学際連携によるプラズマ理工学のさらなる展開」2009.3.29 天文学会からの視点 松元亮治 (千葉大理)

宇宙の歴史 宇宙の物質の85%はダークマター 残りの15%はバリオン ビッグバン プラズマ時代 プラズマ時代 t = 0 ビッグバン プラズマ時代 プラズマ時代 再電離後の宇宙ではバリオンの大部分はプラズマ状態にある t=38万年 中性化 暗黒時代 初代天体形成 t=数億年 宇宙再電離 ビッグバンで始まった宇宙は高温高密度のプラズマ状態を経て膨張にともなう温度低下によって中性化しますが、星が誕生するとその光によって及び電離領域が広がっていきます。従来、宇宙の物質の99%はプラズマといわれていましたが、現在では物質の85%はダークマター、残りはバリオンでそのバリオンの大部分がプラズマ状態にあると考えられています。 銀河形成 星の進化 t=137億年 (現在)

宇宙プラズマの特徴 地上では実現困難な極限状態 重力によって構造が形成される 開いた境界条件 活動性の起源 超高密度/低密度、超強磁場、超強重力 重力によって構造が形成される 多階層性:銀河団→銀河→星 太陽内部とコロナ等、密度が何桁も変化 開いた境界条件 不安定性の成長が激しい運動を引き起こす 活動性の起源 磁気エネルギー解放、粒子加速など 宇宙プラズマの特徴は、超高密度あるいは低密度、超強磁場、超強力重力など地上の実験室では実現困難な極限状態にあること、重力によって銀河団、銀河、星などの階層構造が形成されること、また、太陽内部とコロナのようにひとつの天体の中でも何桁も密度が変化する非一様状態にあること、不安定性の成長が激しい運動や衝撃波発生を引き起こすこと、磁気エネルギーの解放が激しい活動性を引き起こすことなどです。

宇宙の活動性 HINODE 2006~ 星形成 原始星 活動銀河中心 ASTRO-G 2012 銀河 太陽 星間ガス雲 ジェット 活動性の例を図に示しました。星が誕生するときにはジェットを噴出します。太陽はプラズマ球でその中心の核融合反応によって輝きます。表面活動の多くは磁場が関与して発生します。重い星は超新星爆発を引き起こします。その結果ブラックホールを形成するさいに強力なガンマ線を放射すると考えられています。ブラックホールに落下する回転物質が形成する降着円盤は活動銀河などのエネルギー源になり、X線ガンマ線を放射するとともにジェットを噴出します。 ASTRO-H 2013 SUZAKU 2005~ ガンマ線バースト 超新星爆発 大質量星 LIGO VIRGO LCGT MAXI 2009 Fermi 2008~ Swift 2004~ 重力波望遠鏡 2015~

分野連携の実績 物理学会・天文学会・SGEPSS共催プラズマ合同セッション:今回が4回目 磁気リコネクション研究におけるプラズマ実験、地球磁気圏、天体プラズマ分野の連携 US-JAPAN workshop on Magnetic Reconnection を毎年開催 学術創成研究「宇宙天気予報の基礎研究」 研究代表:柴田一成、H17-H21 核融合科学研究所と国立天文台等の連携 「階層と全体」シンポジウム、共同研究など 実験室宇宙物理学 大阪大学高部グループ:レーザー宇宙物理 天文学会ではすでに紹介がありましたように物理学会、地球電磁気・地球惑星圏学会と共催のプラズマ合同セッションを行ってきました。今回が4回目です。それ以前からプラズマ実験グループ、地球磁気圏グループと連携して磁気リコネクションに関するUS-JAPANワークショップを毎年開催してきました。また、柴田さん代表の学術創成研究宇宙天気における連携、核融合科学研究所との連携も進められています。阪大の高部グループではレーザーを利用した宇宙物理学実験が行われています。

天文分野からの今年度のプラズマ 合同セッションへの参加状況 シミュレーション技法:2件 MHD現象:12件 コンプレックスプラズマ:7件 粒子加速・加熱・相対論プラズマ:8件 乱流・輸送・非線形現象:7件 原子分子過程:5件 観測・計測・新技術+実験室宇宙物理:12件 今回のプラズマ合同セッションには天文分野からも多数の講演申込がありました。サブセッションごとの申込件数を示しました。いずれのサブセッションにも 天文学会では8並列セッションに分かれるため 一部の 講演しか聞くことができない。合同セッションにはプラズマ関連の発表をまとめて聞くことができるというメリットがある。

今後の展望 磁気エネルギー解放、粒子加速、相対論プラズマ等の分野での共同研究の推進 プラズマ診断:高分解能X線スペクトル(Astro-H) 磁気流体シミュレーションに加え、粒子シミュレーション、2流体シミュレーション、ブラソフシミュレーション、輻射流体・輻射磁気流体シミュレーション、階層連結シミュレーション等におけるさらに緊密な連携 実験室プラズマ宇宙物理学の展開 プラズマ診断:高分解能X線スペクトル(Astro-H) ダストプラズマ等 → 惑星形成 極限状況を扱う → プラズマ科学の地平を開く 3学会回り持ちの共催セッションを続けたい

END