The Hot Universe:激動の宇宙 -X線天文学入門- 第一日目

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Presentation transcript:

The Hot Universe:激動の宇宙 -X線天文学入門- 第一日目 松本浩典 京都大学理学部物理第二教室宇宙線研究室 E-mail: matumoto@cr.scphys.kyoto-u.ac.jp (mail での質問歓迎します!) Web: http://www-cr.scphys.kyoto-u.ac.jp/ 2005年1月22日 西大和学園第一日目

人間をX線で見ると... キン骨マンbyゆでたまご 全く違う世界が見えてきます 2005年1月22日 西大和学園第一日目

宇宙も全く違った姿を見せます かに星雲=中性子星のいる超新星残骸 普通の光 X線 ©CXC ©CXC 2005年1月22日 西大和学園第一日目

銀河団:巨大な火の玉 X線 普通の光 ©CXC ©CXC 銀河の集まり 数千万度の高温ガスの塊 注意:「ガス」とは単に「気体」という意味です。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

話の内容 X線とは何でしょう?(予備知識解説) X線天文学とは X線で見た宇宙 超新星爆発:星の最期の断末魔 来週の予定 ブラックホール:光の監獄 中性子星:角砂糖一個で10億トンの重さ! 銀河団:宇宙最大の階層 2005年1月22日 西大和学園第一日目

講義中不明な点は、話途中でも構わないので、いつでも遠慮なく質問してください。 講義にあたってのお願い 講義中不明な点は、話途中でも構わないので、いつでも遠慮なく質問してください。 僕もみなさんがどんなことを不思議に思うのか知りたいです。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

X線とはなんでしょう? X線といえば… レントゲン写真!! 体が透けて見える! ちなみにこれは、 X線を発見した レントゲンさんの 奥さんの写真です 結婚指輪 レントゲンさんは、1901年第1回目のノーベル物理学賞を受賞しました。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

レントゲンによるX線の発見…1895年(明治28年) 日本人もいい線行ってた! レントゲンによるX線の発見…1895年(明治28年) そのわずか10ヵ月後に、日本人もX線撮影に成功 島津源蔵=島津製作所初代社長が初の撮影に成功 ©島津製作所 2005年1月22日 西大和学園第一日目

X線は光の一種! 光とは電磁波と呼ばれる波動の一種です。 電場と磁場が 振動しながら 空間を伝わります。 ©ISAS/JAXA では、目に見える光(可視光)とX線は何が違うのでしょう? 2005年1月22日 西大和学園第一日目

X線は波長の短い光 光の種類 波長 普通の光=可視光 0.00005cm程度=5x10-5cm X線 原子一個分 ©ISAS/JAXA 光の種類 波長 普通の光=可視光 0.00005cm程度=5x10-5cm X線 原子一個分 0.00000001cm程度=1x10-8cm 2005年1月22日 西大和学園第一日目

我々の目について 「見える」とは、物体から出た光(可視光)を我々の目が「捕らえた」ことを意味します。 どうして我々の目は可視光を捕らえるようになったのでしょうか? なぜX線や赤外線を捕らえるようにはならなかったのでしょうか? 鍵は、太陽の「スペクトル」にあります。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

スペクトルについて スペクトル 色んな波長の光が、どのくらいずつ混ざっているかグラフにしたもの。 ©ISAS/JAXA 2005年1月22日 西大和学園第一日目

「スペクトル」を例えると… ミックスジュースの成分表のようなもの。 内容物の成分グラフ 2005年1月22日 西大和学園第一日目

我々の目=可視光専用カメラ ←光の量 沈む夕日。 可視光 赤外線 ←短い 波長 長い→ 太陽は可視光線をたくさん出すので、 太陽スペクトル =どの波長をどれだけ出すか ←短い  波長  長い→ ←光の量 可視光 赤外線 沈む夕日。 太陽は可視光線をたくさん出すので、 我々の目はそれを受けられるように進化した 2005年1月22日 西大和学園第一日目

光のエネルギー(E)は、波長(L)に逆比例します。 波長とエネルギーの関係 光のエネルギー(E)は、波長(L)に逆比例します。 E∝1/L 可視光:波長 L=5x10-7 mぐらい X線 :波長 L=10-10 mぐらい X線の波長は可視光の5000分の1ぐらい。 だからエネルギーは5000倍くらい。 エネルギーが高いので、人体も通過します。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

波長と温度の関係 短 波長 長 高 エネルギー 低 色 ガスの炎(2000度) たばこの火(600度) 短     波長    長 高   エネルギー  低 色 ガスの炎(2000度) たばこの火(600度) 温度が高い物体ほど波長の短い光を出す。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

物体の温度(T)はその物体が出す光の波長(L)に逆比例。 X線を出す物体の温度は? 温度はエネルギーの尺度のひとつです。 物体の温度(T)はその物体が出す光の波長(L)に逆比例。 T∝1/L 可視光を出す星: 太陽 6000度 X線の波長は可視光の5000分の1くらい。 だから、X線を出すには、温度は5000倍、 すなわち、5000 X 6000度 = 3000万度!!! X線は数千万度以上の超高温物体からしか出ない! 2005年1月22日 西大和学園第一日目

X線を出す天体は存在するか? 太陽=宇宙の中では平均点の星(6000 度) 一番青い星(高温度)でも数万度 1960年代の普通の科学者 2005年1月22日 西大和学園第一日目

物理学者ブルーノ・ロッシ 「自然は人間よりもはるかに想像力豊かである!」 1962年ロケットを打ち上げ、 初めて「X線星」を発見 ここ! ©MIT 1962年ロケットを打ち上げ、 初めて「X線星」を発見 ここ! (1905-1994) 2005年1月22日 西大和学園第一日目

この実験を一緒に行ったのが… リカルド・ジャコーニー (1931年~現在) X線天文を切り開いた業績で、 小柴昌俊(日本)、 レイモンド・デービス(米国) と共に、 2002年ノーベル物理学賞受賞! (小柴、デービス両氏は ニュートリノ天文学の開拓) 2005年1月22日 西大和学園第一日目

一見不思議ですが… 可視光 X線 X線は地球大気を貫通できません。 地球大気 可視光が貫通するのは、大気が可視光を通しやすい成分でできているから。 逆に、人間の体は可視光を通しにくい物(炭素化合物など)で出来ている。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

大気の生い立ち 大気の成分: 窒素 78%+酸素 21%+残り(1%) 宇宙に多い元素 水素 ヘリウム 軽いから蒸発 酸素 炭素 窒素 生物の体内に取り込まれた 結果として、酸素と窒素が大気中に多く残り、これらは可視光を良く通す性質がある。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

観測には人工衛星を使う! 日本は継続的にX線天文衛星を打ち上げ、世界をリードしてきた! はくちょう 1979--1985 ぎんが 1987--1991 てんま 1983--1989 あすか 1993--2001 2005年1月22日 西大和学園第一日目

現在活躍中のX線天文衛星 2001年のAstro-E衛星打ち上げ失敗により、今日本にはX線天文衛星はない。しかし… アメリカ ヨーロッパ諸国連合 XMMニュートン衛星 細かい構造まで くっきり見える 暗いものまで はっきり見える 2001年のAstro-E衛星打ち上げ失敗により、今日本にはX線天文衛星はない。しかし… 2005年1月22日 西大和学園第一日目

日本次期X線天文衛星Astro-E2 日本は今年次の衛星Astro-E2を打ち上げる! Astro-E2 超新星爆発、ブラックホールなどの謎に挑む! みなさんが大学に入る頃、Astro-E2は間違いなく世界一級の成果を出しています。 京都大学理学部物理学科に来ませんか? 2005年1月22日 西大和学園第一日目

観測装置は手作り! どこにも売ってないから… 京都大学、大阪大学、 宇宙科学研究所 マサチューセッツ工科大学 共同でASTRO-E2搭載用 X線CCDカメラを 開発中です。 X線写真とスペクトルの両方を得ることができるのが特徴 2005年1月22日 西大和学園第一日目

実験風景図 2005年1月22日 西大和学園第一日目

X線で観測する意義 可視光=普通の宇宙の姿 X線=エネルギーが高い! 発生場所のエネルギーも高い 何千万度の高温のような、 地上ではまずお目にかかれない世界、 宇宙の極限の姿を観測出来る! 2005年1月22日 西大和学園第一日目

それではいよいよ宇宙の話に入っていきます! お待たせしました! それではいよいよ宇宙の話に入っていきます! 2005年1月22日 西大和学園第一日目

膨張宇宙 現在宇宙は膨張し続けています。 (正確には、銀河と銀河の間の距離が増え続けているということ。) 例えるなら、地球が膨張して日本とオーストラリアの 距離が増えるようなもの。 ©須藤靖 2005年1月22日 西大和学園第一日目

宇宙の始まり ということは、さかのぼれば、宇宙は昔点のように小さかった、つまり宇宙には始まりがあったということです。 ある銀河 距離 D 遠ざかる速度v 距離 D 宇宙の年齢 = D/v = 約150億年 2005年1月22日 西大和学園第一日目

原子はどこから? 誕生直後の宇宙には、水素 (H) と ヘリウム(He) 以外の原子はほとんど存在しませんでした。 しかし現在は多種多彩 我々の体を作る、炭素(C)や鉄(Fe)、空気中の酸素(O)や窒素(N)などは、いったいどこで作られたのでしょうか? 2005年1月22日 西大和学園第一日目

答:星の内部での核融合 圧力 重力 内部で核融合反応を起こして、水素から 色々な原子をつくり、その時発生した エネルギーで輝いています。 星(恒星)はほとんどが水素で出来た、高温ガス(気体)です。自分自身の重力で、自分自身を固めています。 内部で核融合反応を起こして、水素から 色々な原子をつくり、その時発生した エネルギーで輝いています。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

原子について 全ての物質は、原子から出来ています。 電子 中性子 陽子 原子は、原子核と電子に分かれます。 原子核は陽子と中性子から出来ています。 電子は原子核周囲を回っています。 原子の性質は、陽子数、すなわち原子番号で決まります。 電子 陽子 中性子 ヘリウム原子の場合 2005年1月22日 西大和学園第一日目

核融合とは 核融合反応とは、原子核どうしがくっついて、 陽子の数が増えて別の原子になる反応です。 恒星の内部では、始めに4つのHがくっついて1つのHeになる核融合が起きます。 4H  He + 2e+ + 2ν + 10-12 cal その後、He + He  Be He + Be C He + C  O などの反応が起こって次々に新しい原子が出来る。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

人間が利用しているのは核分裂 原子力発電所では、逆に原子核を壊したときに発生するエネルギーを利用 (核分裂反応)。 原子力発電所では、逆に原子核を壊したときに発生するエネルギーを利用  (核分裂反応)。 まだ人類は核融合の平和利用には成功していない。 (水爆は核融合反応だが…) 2005年1月22日 西大和学園第一日目

太陽がすごく見えるのは、図体がでかいから。 核融合の効率 太陽は、1秒に1026 cal ものエネルギーを核融合で生み出すが、体重が2x1030kgもあるので、1kg当たりの発生率は 1026 cal/s  2x1030kg = 5x10-5cal/s/kg 人間は、体重60kgぐらいの人が一日2000kcal消費するので、 2x106 cal 86400s (=1日) 60kg=0.4cal/s/kg 核融合って効率悪い! 太陽がすごく見えるのは、図体がでかいから。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

じゃぁなぜ人間は核融合を目指す? 答:材料(燃料)がいくらでも身の回りにあるから。 しかし、高温高密度の状態に物質を閉じ込めておくことができないので、まだ成功していない。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

核融合の進んだ星内部構造 たまねぎのような構造をしていて、各層に色んな原子が分布しています。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

原子の放出 こうやって色々な原子が恒星内部で合成されるが、このままでは星の外部には出てこない。 太陽の8倍以上の質量の星は、寿命を終えるとき、大爆発を起こします (超新星爆発)。 超新星爆発の時に、恒星内部で合成された原子が宇宙空間に飛び散ります。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

超新星爆発 恒星は普段、核融合で発生した熱による外向きの圧力と、自分自身の重力がつりあっている。 もし燃料(水素)がなくなったら、自分の重力に対抗する圧力がなくなるので、内部へ崩壊する。その時大爆発が起きる。 (アニメーション) ©CXC ブラックホールか中性子星が残る 2005年1月22日 西大和学園第一日目

超新星爆発の実例 1987年2月23日の大マゼラン星雲 2005年1月22日 西大和学園第一日目

1987年2月24日の大マゼラン星雲 小柴先生は、この超新星爆発からのニュートリノを検出した装置を作って2002年のノーベル賞を取られました。 超新星爆発 2005年1月22日 西大和学園第一日目

超新星残骸 超新星は、1044Jものエネルギーを放出。 全世界の消費エネルギーの1026年分! (ちなみに地球の年齢は4.6x109年) これほど凄まじい爆発が起こると、周囲にその痕跡が何万年も残ります。 これを超新星残骸と呼びます。 (アニメーション) 2005年1月22日 西大和学園第一日目

超新星残骸の温度は? 超新星爆発による爆風速度(v)は、約10000km/s。 水素原子がこの速度で飛び出したとき、運動エネルギーは、 E = ½ mv2 = 8.4x10-14J ここで 水素の質量 m=1.67x10-27kg この運動エネルギーが温度に変わったら、一体何度になるでしょう? 2005年1月22日 西大和学園第一日目

魔法の定数:ボルツマン定数 エネルギー (E) と温度 (T:絶対温度) には非常に簡単な関係があります。 E=kT ここで、k:ボルツマン定数1.38x10-23J/K 先程の場合、E=8.4x10-14J だったので、T=E/k=6.1x109K=約60億度 実際には種々の影響で数千万度の物が多いが、いずれにしても超高温なのでX線を出す。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

超新星残骸のX線写真集 ©CXC Cassiopeia A Kepler Crab E0102-72 G320.4-1.2 W49B 2005年1月22日 西大和学園第一日目

超新星残骸カシオペアA 約300年前の超新星爆発の跡! X線写真 ©CXC 10光年 2005年1月22日 西大和学園第一日目

どんな原子が放出されたか? X線スペクトルを見ればわかります。 ©ISAS/JAXA 各原子はその原子に特有のエネルギーを持った吸収線や輝線X線を出します。これを特性X線といいます。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

特性X線 X線 電子が、原子核周囲の軌道を変わるときに、特性X線が放出されたり吸収されたりする。 2005年1月22日 西大和学園第一日目

カシオペアAのX線スペクトル(1) 曲がり具合から 温度がわかる。 温度約3000万度! 2005年1月22日 西大和学園第一日目

カシオペアAのX線スペクトル(2) 各原子に特有の線が出る どんな原子がそこにあるのかわかる 2005年1月22日 西大和学園第一日目

人間の体 我々の体には、炭素や鉄やカルシウムなど 多くの原子が含まれていますが、これは 全てどこかの星の内部で作られたものです。 人間は星の子供です! 2005年1月22日 西大和学園第一日目

爆発の影響は地球にも及んでいる! 地球には、絶えず「宇宙線」と呼ばれる高エネルギー粒子(放射線)が降り注いでいる! ピッ! ガイガーカウンター高エネルギー粒子が通ると、電流が一瞬流れて音が鳴る 2005年1月22日 西大和学園第一日目

空気シャワー反応 一次宇宙線 (陽子など) 大気中の原子と次々に反応 我々が浴びている二次宇宙線 2005年1月22日 西大和学園第一日目

一次宇宙線のエネルギー? 宇宙には、一粒で16Jもの運動エネルギーを持つ宇宙線も存在する! 比較: プロ野球日本記録 (158km/h)の野球ボールの運動エネルギーは、 E=1/2MV2  =1/2x(0.145kg)x(158km/h)=140J 元阪神 伊良部投手 今怪我のリハビリ中 陽子一個は1.67x10-27kg(野球ボールの1026分の1)しかないのに、運動エネルギーは1/10に迫る! 2005年1月22日 西大和学園第一日目

一次宇宙線はどこで生まれた? SN1006 超新星残骸のX線写真とスペクトルを詳しく解析し、超新星残骸で宇宙線が生まれていることを実証した。 (我々の研究室の成果です!) 2005年1月22日 西大和学園第一日目

まとめ X線はエネルギーの高い光の一種である。 X線を発生している場所もエネルギーが高い。 X線で宇宙を見ると、激しいところばかりが見える。 超新星爆発により、宇宙にHとHe以外の原子が増えてきた。 人間の体は、昔は一度は星の中にいた。 超新星爆発は宇宙線も生み出す。 2005年1月22日 西大和学園第一日目