http://saitolab.meijo-u.ac.jp/index.html 無機化学 I 齋藤軍治 2012/9/21 無機化学 I 齋藤軍治 ○ 出席: 10回以上 (>2/3) ○ レポート: 5回程度 ○ 期末試験: 授業+レポートより出題 授業内容はHP(暫定)で紹介 http://saitolab.meijo-u.ac.jp/index.html
第一章 化学の歴史(ここは 前期「化学」と重複) 第一章 化学の歴史(ここは 前期「化学」と重複) 出典 1)武田和子 「化学と人間の物語」河出書房1966 2)アイザック・アシモフ 「化学の歴史」 玉虫文一、竹内敬人訳 河出書房1967 3)フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 目的 1)社会と化学(科学)の変遷 2)化学の進化過程 3)HP(http://saitolab.meijo-u.ac.jp/index.html)で化学者のエピソードなどを紹介 A) 古代の工芸技術 前4000-前8世紀(メソポタミア文明) B) ギリシャ・ヘレニズム・ローマ(前8-3世紀) C) 4-16世紀 イスラム―インド―中国―ヨーロッパ 錬金術 D) 近代化学の誕生 (17 世紀―18世紀) E)化学の拡大。隣接科学との融合(19世紀) F)無節操的飛躍と基礎科学(20世紀~)
A) 古代の工芸技術 前4000-前8世紀 (メソポタミア文明) 金属:金、銀、銅、錫 → 青銅 → 鉄 → 鋼 石・宝石、ガラス・うわぐすり、染料と顔料、薬、香料、毒 ●「ものを焼く」、「金、銅など入手しやすいもので道具を作る」、「粘土を焼き固める」など原始的な作業は「化学」にいれない・・・ 体系化と知識の蓄積・応用により「化学・科学」となる・・・西暦紀元前4000年ほど前 ●エジプト(ナイル河) ●メソポタミア(チグリス・ユウーフラテス河)イラク・バグダッドの 南の都バブ・イル(バベル)→ バビロン → バビロニア文明 呪い・占い師(知識階級)・・加持祈祷、予言、天文(占星術)、自然現象(気候)、医療、物質(金属、毒、医薬) → 化学は最も汚い業務 → 職人・奴隷(金銀細工師、ガラス工、鉱夫、鍛冶屋(武器作成は高等職)、鋳物師) 何も記録を残していない(サイエンスではない) しかし、「物」を残す 1.金属加工品、武器、2.ガラスとうわぐすり、3.染料、4.薬、香料
17世紀のヨーロッパ人 が描いたバビロン想像図 バビロン(イラク) チグリス川 ユーフラティス川 復元されたイシュタル門
1.金属・合金 金属加工品 (戦争の道具) ●金→銅(エジプトではシナイ半島産の銅が金より古く知られていた) 1.金属・合金 金属加工品 (戦争の道具) ●金→銅(エジプトではシナイ半島産の銅が金より古く知られていた) 孔雀石[Cu2(CO3)(OH)2 マラカイト] 青緑色鉱物(宝石)を 炭火で焼く→ 緑青 粉末孔雀石+脂肪 → アイシャドウ ●鉛(紀元前3400)、銀 ●青銅: 銅と錫の合金 硬くて強い(難点 重い 武器としては扱いにくい)前2700-2000 錫の産出地(ギリシャ・英国他)と交易人(フェニキア人)→エーゲ海文明 シュメール人(鍛冶屋) 錫、アンチモン ●鉄 純粋な鉄の製造は困難・・隕石 貴重であり、あられ石(CaC O3)、ラピスラズリ(Na-Ca-Al-Si-S-O-Cl、混合物、ウルトラマリンの原料)といっしょに首飾り・・・前2000―1400年ころから ハッティ人(ヒッタイト、ヘテ)が鉄製武器でエジプトを悩ます、前1100年 アッシリア 鉄器による侵略と記録 ●真鍮: 銅と亜鉛の合金 中国 前2000年
2.ガラスとうわぐすり メソポタミア(アッシリア)・エジプト 前5000年― ラピスラズリ:エジプト、シュメール、バビロニアなどの古代から、宝石として、また顔料ウルトラマリンの原料として珍重されてきた。日本ではトルコ石と共に12月のほかに9月の誕生石とされる。ラピスはラテン語で「石」 、ラズリはペルシア語からアラビア語に入った “lazward”(ラズワルド: 天・空・青などの意でアジュールの語源)が起源で「群青の空の色」を意味している。石言葉は「尊厳・崇高」など。 孔雀石(マラカイト) Cu2CO3(OH)2 であり、銅製品にできるサビの緑青の主成分と同じである。皮膜状、粉状、微結晶の集合体(塊状や層状など)などの形態で産出する 2.ガラスとうわぐすり メソポタミア(アッシリア)・エジプト 前5000年― ●石英→薄緑色ガラス ● +孔雀石+石灰→水色、藍色 “エジプシャンブルー”最古 の合成顔料の一つ ● +コバルト → 青紫 ●炭酸ソーダ+石英 → 加熱により透明ガラス
3.染料 ●インド藍(indigo): インド大青より 青色柱状結晶、水・アルコールに不溶:繊維に染めるため、一度可溶状態にして(この場合は還元体 無色)繊維に染めてから、空気中に放置し酸化する(建染染料) ジーンズの青色 ● クリムゾン:カイガラムシより、明赤色、現在はカルミン酸のAl, Ca塩(カーミン色素、食品添加剤)、スクールカラー ● アリザリン:西洋茜の根から、赤色 建染(たてぞめ)染料・クリムゾンはHP参照 合成染料は19世紀の産物 1856 William Henry Perkin アニリンの酸化でモーブ染料(紫) 1869 茜染料 アリザリン, 1880 インディゴ BASF
インド藍でのジーンズ 色 名前 漢字・英語 同色・混同色 備考 あいいろ 藍色 インディゴ アイで染めた色 モーブ mauve #0F5474 あいいろ 藍色 インディゴ アイで染めた色 #855896 モーブ mauve アニリンから合成される染料の色 #DC143C クリムソン crimson ハーバード大学のスクールカラー B22D35 あかねいろ 茜色 アカネの根で染めた色 インド藍でのジーンズ
4.薬・香料・毒 ミョウバン、ヒマシ油、天然ソーダ(防腐剤)、乳香(乳白色~橙色の涙滴状の樹脂)、没薬 (赤褐色の涙滴状樹脂) ●ミョウバン:MIMIII(SO4) 2・12H2O[MI2(SO4), MIII2(SO4)3の複塩]で焼いてできる無水物を焼きミョウバンという(食品添加剤) 殺菌剤、染色剤、防水剤、消火剤、沈澱剤、ナスの色付け、ウニの保存剤として利用 乳香、没薬、毒ニンジン、ヒヨスはHP参照 没薬樹 ボスウェリア属植物の花 カリミョウバン 乳香 クロムミョウバン
B) ギリシャ・ヘレニズム・ローマ(前8-3世紀) ●ギリシャ文明 前8世紀~前338年マケドニア(フィリッポス王)侵略: 頭脳(机上)派・・・天文、数学、哲学、しかし化学(奴隷、職人の仕事)は進歩せず 四元素説:土、空気、火、水 ◎デモクリトス(BC469-370) 原子論 ◎プラトン(BC427-347) ◎アリストテレス(BC384-322)の四元素説(下図)+天体 火(Fire) 乾いた(dry) アリストテレス 熱い (hot) ガリレオ・ガリレイは太陽中心説(地動説)をめぐって生涯アリストテレス学派と対立し、結果として裁判にまで巻き込まれることになった。古代ギリシャにおいて大いに科学を進歩させたアリストテレスの説が、後の時代には逆にそれを遅らせてしまったという皮肉な事態を招いた。 空気(Air) 土(Earth) 湿った (wet) 冷たい(cold) 水(Water)
●アリストテレスはマケドニア王子(フィリッポス王の息子)の家庭教師 王子→アレキサンドロス三世 ●ヘレニズム時代 (ギリシャ文明の拡散と古代オリエント文明との融合)とアレキサンドリア(アル=イスカンダリーヤ)前340-前30年の期間 ●自然科学の中心はアレキサンドリア:プトレマイオス(アレキサンダー王の友人・部下、プトレマイオス一世 在位 前305-285)王朝~クレオパトラ7世(在位 前51-30) → ローマ帝国に併合 ●プトレマイオス2世 (在位 前288-246)学問芸術のパトロンとなり自然科学が隆盛、アレクサンドリア文学の黄金時代、 しかし、ヘルメス主義による「まがい科学」が横行 ●ローマ(帝国は前27年より、実用一点バリ、質実剛健、軍人国家)工学・土木建築が進む 天文、数学、哲学は進歩せず 化学は置き去り
アレキサンダー帝国 アレキサンダー大王 アレク サンド リア クレオパトラ7世 アレクサンドリア図書館 プトレマイオス2世夫妻
ヘルメス主義(英語:Hermeticism)とは、主として、ヘルメス・トリスメギストスという著者に仮託された古代の神秘主義的な一群の文献ヘルメス文書に基づく、哲学的・宗教的思想の総称。ヘルメス文書で扱われる、占星術、錬金術、神智学、自然哲学などを含み、日本語では神秘学の名で呼ばれるような概念にも近い。 例:三位一体+錬金術 → 水銀+硫黄+塩 贋金つくりが横行(金+亜鉛、銀+亜鉛、金+銅、銅+ヒ素(銀色))したため、3世紀末 贋金・偽宝石つくりに関するヘルメス術禁止令(皇帝ディオクレティアヌス) ヘルメス術の地下組織化と占星術・神秘主義の増強、アラビア、ヨーロッパへの浸透 中世錬金術に展開:エリキシル(エリクサー) 賢者の石 どんな卑金属でも金・銀に変える、どんな病気でも治す。